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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第67話

~昼・エルム湖~



「ふんふふーん♪」

ロイドと共に水上バスの甲板の手すりで外を見つめていたキーアは鼻歌を歌っていた。

「はは……キーア、ご機嫌だな。なんか色々あったけど……ちゃんと楽しめたか?」

「うんっ!またみんなで一緒におでかけしたいねー!今度はアルモリカ村とかー。」

「はは、いいかもしれないな。(……昨日の様子からすると何かあるのかと思ったけど………すっかり元気そうだし、そんなに心配はいらないかな?むしろ心配すべきは”結社”の動きの方か……局長達の話では”怪盗B”もどうやらクロスベルで暗躍するようだし……)」

「んー?ロイド、どうしたのー?」

考え込んでいるロイドを見たキーアは尋ねた。

「いや、何でもないよ。……それよりキーア。本当に昨日の夜、変なヤツを見かけたりしてないんだよな?ピンク色の服を着たヤツとか白いマントを羽織った仮面の男とか。」

「んー……見かけてないと思うけど。キーア、寝ぼけてたみたいだからちょっと自信ないかも。」

「そっか……いや、それならいいんだ。」

キーアの答えを聞いたロイドが安堵の表情をしたその時

「あら、こちらにいましたか。」

マリアベルが2人に近づいてきた。

「あ、ベルだー。」

「マリアベルさん。どうも、お疲れ様です。」

「ふふ、お疲れ様はあなたたちの方でしょう。しかし”結社”といったかしら。ふざけた連中もいたものね。わたくしの人形を攫ったのもそいつらの一員という話ですし!挙句、アーケードに人形兵器を放つとは……!これは保安部の警備体制を徹底する必要がありますわね……!」

「そ、そうですね……(民間の警備員の手に負えるヤツらじゃないと思うけど……やっぱり俺達の方で気を付けておく必要があるな。)」

怒りの表情で言ったマリアベルの言葉にロイドは内心ある決意をしながら苦笑して頷いた。

「―――まあ、それはともかく。ロイドさん、キーアさん。ふと思ったのですけど、皆で記念写真を撮らないこと?」

「ああ、いいですね!」

「えっと、記念写真って、前にみんなでいっしょに撮った?」

「ああ、みんなと一緒の思い出を写真に残しておくものさ。それを見れば今回のバカンスをいつでも思い出せるってわけだ。」

「うんっ、撮りたいー!」

「決まりですわね。そうなると……船内より甲板(こちら)の方がいいかしら?」

「そうですね。せっかくのいい天気ですし。俺、みんなを呼んできますよ。」

「ええ、お願いします。それと船内にいる添乗員に声をかけてください。記念写真のサービスならすぐに受け付けてくれますわ。」

「わかりました。」

マリアベルの言葉に頷いたロイドは二人から去り

「あ―――」

それを見たキーアは声を上げ

「………………………」

ロイドが甲板から去ると不安そうな表情で黙り込んだ。

「ふふっ……―――大切な人達に余計な心配をかけたくない。いい女は大変ですわね?」

するとその時マリアベルは口元に笑みを浮かべて言った。

「!」

マリアベルの言葉を聞いたキーアが目を見開いたその時

「何か悩みがあるのでしょう?―――わたくしならば力になれるかもしれませんわ。」

マリアベルは不敵な笑みを浮かべてキーアを見つめた。



~星辰の間~



「―――なるほど。なかなか順調のようですね。」

謎の空間でカンパネルラから報告を受けた柱―――第一柱は声を出し

「ああ、こちらの準備も9割がた目処がついた。今回のオーダーには何とか間に合わせられるだろう。」

もう一つの柱―――第六柱は声を出した。

「お疲れ様です、博士。―――カンパネルラ。”執行者(レギオン)”の動きは?」

「ブルブランはどうやら手を貸してくれるようだ。レーヴェはあの様子だともう2度と”結社”に力を貸さないどころか、敵対する様子だ。そして”彼女”については……ま、様子見でいいんじゃない?式神は貸してくれたけど今のところ介入するつもりは一切ないみたいだし。」

第一柱に尋ねられたカンパネルラは口元に笑みを浮かべて言った。

「ふむ、わかりました。マイスターと同様、彼らの意志に任せて下さい。」

「しかし”執行者”には全ての行動の自由を与えるか…………あの方の決めた事とはいえ、いささか理不尽な”掟”だねぇ。おかげで既に”漆黒の牙”に続いてあの”剣帝”まで裏切っているしさ。」

「全ては”盟主”の思し召し……是非を問う必要はありません。それより――――いらっしゃったようですね。」

「おや、来たかね。」

「フフ、時間通りだねぇ。」

カンパネルラが呟くと新たな柱が現れた!



「―――お待たせしました。もう、始めているうようですね。」

「いえ、始めたばかりです。例の件についてはもうよろしいのですか?」

新たに現れた柱―――第七柱に第一柱は尋ねた。

「ええ、後は”破戒”殿に全てをお任せしてきました。それで―――”クロスベル”でしたね。かの地に赴くのは私もいささか久しぶりです。」

「ウフフ、あまりの変わりように目を丸くするんじゃない?現代の導力文明では最先端の大都市だろうしね。」

「私も完成前にもう一度、顔を出してみるつもりだよ。どうだね、せっかくだから現地で落ち合うとしようか?」

「ええ、異存はありません。」

「―――では、お二方。以後は委細をお任せします。『幻焔(げんえん)計画』……あの方の最終計画のためには欠かせないステップです。第一段階としての仕掛け、よろしくお願いしますよ?」

「フフ、了解だ。」

「全ては”盟主”のために。」



こうして”結社”―――”身喰らう(ウロボロス)”の新たな計画は誰にも気付かれず、着々と始まった。



~同時刻・メンフィル帝国・帝都ミルス~



「ほいっと。」

結社の”使徒”達がそれぞれ動き出したその頃エヴリーヌは街中にリフィアと共に転移し

「フハハハハハッ!ようやく抜け出したぞ!さすがは我が下僕だ!」

リフィアは高笑いをしながらエヴリーヌを見つめ

「……後でエリゼに怒られても全部リフィアのせいにするからね。」

見つめられたエヴリーヌはジト目でリフィアを見つめて指摘した。

「なぬっ!?お前も共犯者なのだから、一蓮托生だろうが!」

エヴリーヌの指摘を聞いたリフィアは驚いた後エヴリーヌを見つめ

「エリゼはイリーナお姉ちゃんの次に怖いから怒られたくないし。」

「ええい、それでも”魔神”か、お前は!?」

エヴリーヌの答えを聞いたリフィアは突っ込み

「……その”魔神”も怖がるエリゼを怖くした一番の原因のリフィアがよくそんな事が言えるね……というか、リフィアだって”魔神”の血――――グラザお兄ちゃんの血を受け継いでいる癖になんでエリゼを怖がるの?……やっぱりイリーナお姉ちゃんを怖がるリウイお兄ちゃんの孫だから?」

突っ込まれたエヴリーヌは疲れた表情で指摘した後尋ね

「ぬぐっ………!」

尋ねられたリフィアは唸った。するとその時

「フフ…………相変わらずのご様子ですね。」

女性の声が聞こえてきた。

「む?」

「……?」

声を聞いた2人が振り向くとそこには優しげな微笑みを浮かべた腰までなびかせる黒髪の女性や、女性の背後に女性の仲間と思われる多くの仲間に加えて仲間の内の3人――――ダークブラウンの髪の男性、鍛え抜かれた肉体に所々鎧を装着している初老に差し掛かっている男性、明るい緑色の髪を持ち、やや耳が尖った女性、そして3人それぞれの側に宙に浮く女性の姿をした小さな人形が3体いた………………… 
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