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おぢばにおかえり

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第三十三話 明治の中でその一

                明治の中で
 私と阿波野君は映画村の中の明治通りに行きました、そこは名前の通り明治時代を舞台にした作品の為の舞台が整っています。
 ですが阿波野君は私に笑ってこんなことを言ってきました。
「そういえば近くにお化け屋敷とかあるんですよ」
「行かないわよ」
 私は彼に即答で返しました。
「そんなところ」
「行かないんですか」
「行きたいなら一人で言ってね」
 阿波野君にはっきりと言いました。
「わかったわね」
「あれっ、先輩ひょっとして」
「嫌いよ」
 自分でも言っている傍から顔が変わっているのがわかりました。もう眉を完全に顰めさせていることが。
「そうした場所は
「そうなんですね」
「何処が面白いのよ」 
 本当に心からそう思います。
「あんな場所」
「カップルで行って」
「そもそもカップルじゃないでしょ」
 私は怒っていませんが少しきつい口調になって言いました。
「私と阿波野君は」
「あれっ、そうでした?」
「そうでしたって何よ」
 いらっときました、私これまで男の子と付き合ったことはありません。デートなんてしたこともありません。ですが阿波野君はそんな私に笑って言ってきたので思わずそうなってしましまいました。
「それじゃあ阿波野君はそう思ってるの?」
「どうでしょうか」
「どうでしょうかってね」
「二人きりなのは確かですよ」
 今度はこう言ってきました。
「僕は先輩は」
「同じ大教会所属の先輩と後輩でしょ」 
 天理高校の、です。
「全然何もないわよ」
「まあ今のところは」
「今のところはって?」
「まあまあ。お化け屋敷は嫌なんですよね」
「私そうしたところは駄目なの」
 どのテーマパークのもです、何か昔奈良県にあったテーマパークのお化け屋敷はどっちもかなり怖かったそうですが。
「どうしてもね」
「じゃあ止めましょう」
「ええ、悪いけれどね」
「じゃあこの辺りを二人で見て回りましょう」
「それ位ならね」
 私もほっとして阿波野君に応えました。
「怖くないから」
「先輩怖いの苦手なんですね」
「そういうのはね」
「天理教ってお化けとか幽霊とかは関係ないですよね」
「特にね」 
 実際天理教では人は生まれ変わるという教えなので幽霊とかそういうお話とは縁がありません。もっとも幽霊のお話はあちこちにありますけれど。
「ないわよ」
「そうなんですね、何か江田島とかかなり多いみたいですけれど」
「江田島って広島の」
「はい、海軍兵学校があった」
「軍隊とか自衛隊は多いみたいね、そうしたお話」
 そうらしいことは私も聞いています。
「どうもね」
「それでなんですよ、海軍の人が出たとか」
「今の時代によね」
「そうなんですよ、海にいたとか」
「そういうお話は苦手だけれど」
 私は阿波野君に前以てこう言ってからあらためて言いました。 
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