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雪女

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第一章

                 雪女
 牧瀬小雪は中学でテニス部の部活を満喫していた。ダブルスのパートナー盛中桐子とは幼稚園から一緒で小学校の一年、二年、五年、六年中学校の三年の時は同じクラスで同じ社宅にも住んでいる親友同士だ。
 小雪は小柄でやや癖のある黒髪を長く伸ばしている。黒目がちの大人しい感じの目で顔立ちも身体もまだ幼さが残っている。
 桐子は小雪よりも頭一つ大きく脚は長くすらりとしている。茶色の髪を短くしていて細い感じの目は明るく気が強そうだ。
 性格は小雪は大人しいが桐子は強くはっきりとしている、外見だけでなく性格も正反対だ。だがそれでもだ。
 二人はいつも一緒で仲良くしている、それで桐子は小雪にこう言うのだった。
「高校も一緒にね」
「うん、行きたいね」
 学校の図書館で受験勉強をしつつだ、小雪は桐子の言葉に頷いた。
「一緒の高校にね」
「それでまたね」
「一緒にテニスしようね」
 小雪は微笑んで桐子の笑顔の言葉に応えた。
「そうしようね」
「絶対にね、だからね」
「二人共ね」
「一緒の学校に行こうね」
「そうしようね」
 そしてそこでまた一緒にテニスをしようというのだ。二人で指切りげんまんもして約束をした。そのうえでだ。
 二人共受験勉強に励み冬を過ごしていた、家でも熱心に勉強をしていた。
 小雪は一月半ばにも勉強に励んでいた、夜もそうしていたが。
 休憩で台所で牛乳を飲もうとしたらだ、もう寝る為にパジャマを着ている母の由貴にこんなことを言われた。
「寒いからホットミルクの方がいいわよ」
「ホットミルク飲んだら眠くなるから」
 それでとだ、小雪は母に返した。
「それはいいわ」
「そうなの」
「一杯飲んでね」
 そしてとだ、ホットミルクを飲んでいる母に言った。母はテーブルに座って飲んでいる。
「それでまた、よ」
「受験勉強ね」
「絶対に桐子ちゃんと一緒の高校に行きたいから」
 小雪はこのことを真剣な顔で言った。
「だからね」
「お勉強してるのね」
「ええ、絶対にね」
「勉強することはいいことよ」
 母はホットミルクを飲みつつこうも言った。
「何だかんだでそれで道が開けるからね」
「そうよね」
「ええ、寝るのもいいけれど」
 まだ十時だがだ、由貴はもう眠そうな顔だった。身体に脂肪は付いていないが目尻に皺がつきだしている。
「勉強もいいからね」
「そうよね、ただ私お母さんみたいに寝ないわよ」
「一日八時間?」
「よく寝るわね」
「あんたお父さんに似たからね」
 今は入浴中の夫のことを言うのだった。
「だからよ」
「それでなのね」
「あまり寝ないのよ、けれどお母さんはよく寝るの」
「今もなのね」
「一日平均十二時間寝てたこともあったわね」
 やはりホットミルクを飲みつつ言う。
「そういえば」」
「寝過ぎよ」
 十二時間と聞いてだ、小雪はこう言った。
「幾ら何でも」
「あんたは六時間ね」
「それだけ寝てどうするのよ」
「それであんた子供の頃幼稚園の絵でお母さんって言って寝ている私描いたわね」
 その絵が幼稚園のクラスの壁に飾られたのだ。 
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