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子泣き爺

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第一章

                 子泣き爺
 大阪市城東区にいる逢坂愛美梨は大きな目と愛らしい唇が印象的な小学生だ、黒髪を左右で縦ロールのツインテールにして黄色いリボンで止めている。通っている小学校のブラウンの制服もいい。
 性格は明るく朗らかだ、だが困ったところがあって。
「おはよう!」
 今日も後ろからだ、同じクラスの三上知子を後ろから思いきりランドセルの上からはたいてこかせて挨拶をする。
 そして登校中は何だかんだで理由をつけて自分のランドセルを知子に持たせる。知子は黒髪をおかっぱにしている大人しい顔立ちの少女で性格も大人しい。それで愛美梨はその彼女にそうしたことをしているのだ。
 そのうえでだ、友人達にいつもこんなこともを言っていた。
「知子ってどん臭くて何も言わないからね」
「結構からかいがいがある?」
「そう言うのね」
「これ位ならいいわよね」
 後ろからはたいたりランドセルを持たせたりはというのだ。
「別に」
「まあこれ位ならね」
「冗談で済むわよね」
「いじめっていうかとね」
「そこまでいかないわよね」
「これ位ならいいからね」 
 だからとだ、愛美梨は明るく言ってだった。知子にそうした仕打ちを続けていた。特に悪いと思わずしていたが。
 ある日学校が終わって塾に行ってそこから帰ってだった、そのうえで。
 家に帰ると途中にだ、ふとだった。
 家にもうすぐで家がある住宅街の誰もいない道を歩いているとだ、後ろから声がした。
「待つんじゃ」
「何?」
 後ろを振り向くとだ、そこにだった。
 小さな、子供みたいな大きさの老人がいた。右手に杖を持っていて赤い前掛けを身に着けている。その老人を見てだ。
 愛美梨は首を傾げさせてだ、老人に問うた。
「お爺さん誰?」
「わしか」
「ご近所の人じゃないでしょ」
「うむ、そうじゃ」
「道を聞きたいの?」
「いやいや、あんたに用事があってな」
「私に?」
 そう聞いてまた首を傾げさせた愛美梨だった。
「どうして?」
「同じクラスの三上知子ちゃんのことじゃ」
「知子がどうかしたのよ」
「御前さんあの娘をよく後ろからはたいてこかしてるな」
「まあね」
 否定しないでだ、愛美梨は答えた。
「ランドセルの上からね、直接してないわ」
「そしてランドセルを持たせてるな」
「重いから」
 やはり隠さず答える愛美梨だった。
「そうしてるわよ」
「あの娘が大人しいからそうしてるか」
「ドン臭いから」
「大人しくてドン臭いとそうしたことをしていいのか」
「いじめてるっていうの?私が」
「そうではないのか」
「いじめってところまでいかないじゃない」
 愛美梨は眉を顰めさせて老人に言い返した。
「あれ位なら」
「御前さんがそう思っていてもあの娘が迷惑してるならいじめになる」
「何よ、お爺さん知子のお祖父ちゃん?知子に言われて来たの・」
「違う。あの娘は誰にも言ってない」
「じゃあ何で知ってるのよ」
「わし等はいつも人間と一緒にいるからな」
 こう愛美梨に言うのだった。
「知っておる」
「いつもって」
「わからんか、しかし御前さんのしていることもじゃ」
「知ってるっていうの」
「その行いをあらためるつもりはないか」
「別にいじめてないわよ」
 まだこう言う愛美梨だった、笑って右手を顔の横にやって横に振って。 
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