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魔女に乾杯!

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2部分:第一話


第一話

                第一話 華奈子登場
「只今ーーーーーっ!」
 ありきたりの一軒家に飛び込む一人の少女。赤いTシャツにベージュのホットパンツを身に着けている。その格好からかなり活動的な印象を受ける。
 この少女の名を菊地華奈子という。梅花小学校に通う六年生の女の子である。
 学校では二つのことで知られている。一つはスポーツ万能なこと。スポーツなら何をやらせても得意である。ただし勉強はあまり得意ではないがこれはご愛嬌といったところであった。
 そしてもう一つは魔法であった。彼女は魔女でもあったのだ。塾で魔女としての勉強をしている。こっちの方は学校の勉強よりはまだ得意であった。
「お帰り、華奈子」
 玄関のところにいた黒い犬が声をかけてきた。
「今日は早かったね」
「うん」
 華奈子はその犬に対して答えた。
「今日はね。ところで今家にいるのはタロだけ?」
「ええと」
 タロと呼ばれたその犬は華奈子に問われてあらためて辺りを見回した。
 それから匂いを嗅ぐ。そして華奈子に答えた。
「どうやらそうみたいだよ。ママさんの匂いもしないし」
「ふうん、そうなんだ」
 華奈子はそれを聞いて応えた。
「お買い物かなあ」
「そうじゃないかな。僕は今まで寝てたからよくわからないけど」
「また寝てたの?好きねえ」
「好きって言われてもそれしか趣味はないし」
 タロは華奈子に対して言った。
「じゃあ他に何するっていうんだよ」
「ライゾウみたいに色々やってみたら?」
「ライゾウみたいって」
 タロはそれを聞いて元々細長い口を尖らせた。
「僕は猫じゃないし」
「おいらだって犬じゃないぜ」
 ここで奥の廊下の方から声がした。
「ライゾウ」
 見ればそこにスコッティ=ホールドがいた。白地に黒と灰色の模様の猫であった。
「タロとはまた生き方が違うのさ」
 ライゾウはタロのところに来てそう言った。
「どっちがいいか悪いかは別だけれどな」
「別に僕だってライゾウの生き方にいちいち注文はしないさ」
 タロもそう返した。
「ただ違うってことだけは意識してるだけで」
「そうそう」
「ところで二匹共」
 華奈子が二人に声をかけてきた。
「今暇?」
「まあ寝てた位だから」
「丁度見たいビデオも観終わったし」
 二匹はそれぞれそう言葉を返した。
「それが何か?」
「じゃあさ」
 華奈子はそれを受けて言う。
「どっか行かない?魔法で」
「ていっても華奈子まだそんなに魔法使えないだろ?」
「精々箒に乗って空を飛ぶ位じゃないの」
「失礼しちゃうわね」
 華奈子はそれを聞いて頬を膨らませた。
「あたしだって最近色々と使えるようになってきたんだから」
「どんなの?」
 二匹は同時に彼女に尋ねた。
「まず手を使わずにものを動かすことでしょ」
「ふん」
「そしてちょと姿を消すこと」
「ふん」
「あとは・・・・・・」
「それだけ?」
「何だ、今迄とあまり変わらないんだ」
「変わるわよ」
 華奈子はそう反論した。
「他にも一つ覚えたんだから。見ててよ」
「見るからさ。何?」
「早く見せてよ」
「ええとね」
 そう言われてあらためて考え込む。
「それで・・・・・・」
「やっぱりできないんだ」
「やれやれ。本当に運動以外何もできないんだから」
「待ちなさいよ」
 そこで二匹を怖い目で睨みつけた。
「使い魔なのにあたしを馬鹿にするの?」
「だってできないじゃないか」
「嘘つきは泥棒鼠のはじまりだぜ」
「それを言うなら泥棒猫でしょ」
「まあまあ」
 だがライゾウは華奈子のそんな攻撃をかわした。
「それで何なの?新しい魔法って」
「思い出してよ」
「ええとね」
 だが容易には思い出せない。
「何だったっけ」
「そういう時は深呼吸」
 タロが言う。
「してみたら思い出せるよ」
「そうね。それじゃあ」
「うん」
 華奈子はそれを受けて深呼吸した。そして思い出したようである。
「あっ」
「思い出した?」
「うん。あれよ、服よ」
「服?」
「うん。自分で服を出せるようになたのよ。見ててね」
「見るよ」
「どうぞ」
「それじゃ」
 それを受けて魔法の詠唱をはじめる。詠唱しながら身体を動かす。素早く躍動的な動きだ。
「ここに出でよ、我が身を護りし者達よ」
 詠唱が続く。その間も身体を動かせている。
「そして我を護るのだ」
 そして赤い魔女の服で身を覆った。だがそれは何処かおかしかった。
「あれ?」
 それを見てまずライゾウが声をあげた。
「その服どっかおかしくない?」
「え、そうかなあ」
「うん。何か短い」
「足が丸見えだよ」
「うっ」
 見ればその通りであった。普通魔女の服は身体全体を覆うがそれは膝の少し上までであったのだ。
「それじゃあ魔女の服じゃないよ」
「そうそう」
「こ、これは自分でそうしたのよ」
 華奈子は言い訳をはじめた。
「ほら、こっちの方が動き易いじゃない。あたし運動得意だし」
「ホントかな」
 ライゾウが意地悪そうな目で見る。
「まあそうじゃないの」
 タロもそれに合わせる。
「華奈子が言うんだし」
「そ、そうそう」
 タロの言葉に乗っかる。
「だからね。気にすることないから」
「じゃあさ」
 ライゾウは質問を変える。
「さっきの服は何処へ行ったの?」
「そういえば」
「どこなのかなあ」
「そ、それは」
 それまで来ていた服が魔女の服になったのである。従ってもうない。
「ありません」
「あらあら」
「まだまだ魔女失格だな、こりゃ」
 二匹のきつい評価が下った。華奈子もまだまだこれからのようである。

第一話   完

               2005・5・26

 
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