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魔女に乾杯!

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17部分:第十六話


第十六話

                   第十六話  お弁当
 長い長い道のりを経てようやく頂上に辿り着いた五人。ようやく待ちに待った食事の時間である。
「ねえ美樹ちゃん」
 華奈子が身を乗り出して美樹にせがむ。
「早く出して、早く」
「ちょっと待ってよ」
 美樹はそんな華奈子を子供をあやすようにして止めながらリュックのお弁当を取り出す。
「お弁当は逃げたりしないから。いい?」
「う、うん」
 それでも物欲しそうな目であった。まるで獲物を狙うかのようであった。
「華奈子ちゃん」
 そんな彼女を梨花が止めた。
「とりあえずは落ち着こ。私はお茶を持って来たよ」
「私はお菓子」
 赤音が言った。
「わたしは果物」
「華奈子ちゃんは何?」
「あたしはおにぎり」
「おにぎり」
「うん。入れられるもの何でも入れてきたんだよ。ほら」
 そしてリュックから枕の様に巨大な五つのおにぎりを出してきた。それは海苔で真っ黒になっていた。
「それ・・・・・・おにぎり!?」
「うん、そだよ」
 唖然とする四人に対して素っ気無く返した。
「外見は凄いけどね、美味しいよ」
「美味しいの」
「食べてみたらわかるよ。どう?」
「ううん」
「人数分あるのよね」
「五つあるでしょ。昨日夜遅くまでかかって作ったんだ」
「遅くまで」
「うん。美味しいと思うよ。だから食べて」
「それじゃあ」
 サンドイッチと一緒にそのおにぎりも受け取った。そして一口食べる。
「どう?」
「ううん」
 まずは味わう。モグモグと食べてみる。
「美味しい?」
「そうね」
 四人は華奈子に対して答えた。
「結構ね」
「最初見た時は何かと思ったけれど」
「こうして食べると意外と美味しいね」
「そうでしょ。このおにぎりお母さんから教えてもらったんだ」
「お母さんから?」
「そうだよ。遠足の時にはこんなお弁当が美味しいって。それで昨日教えてもらったんだ」
「そうだったの」
「けれどそれ教えてもらったのは華奈子ちゃんだけ?」
「えっ!?」
「いえ、あのね、もしかして美奈子ちゃんもそうなのかなあ、って思ったんだけど。どうなの、そこんとこは」
「うん、美奈子もだよ」
 華奈子はそう答えた。
「美奈子も皆と一緒のもの食べてるよ。ほら」
 美奈子を指差した。見れば確かにこの枕のように巨大なおにぎりを食べていた。
「美奈子も一緒に作ったのよ。それで色々入れたんだ」
「確かに色々入ってるわね」
 美樹がおにぎりを食べながらそう言った。
「タラコにエビ天、梅干、ソーセージ」
「ツナに昆布も入ってるわね。あと鮭や若布も。ジャコまで」
「ね、だから美味しいでしょ?」
「そうね。案外こういうのもいいわね」
「私も今度はサンドイッチじゃなくておにぎり作ろうかな」
「ええ、それは止めてよ」
 だが華奈子は美樹のその言葉を聞いてあからさまに嫌そうな顔をした。
「どうして?」
「だってこのサンドイッチも凄く美味しいもん。美樹ちゃんのサンドイッチまた食べたいから」
「わかったわ」
 美樹はそれを聞いて微笑んでそう答えた。
「じゃあまたここに来ましょう。今度は五人でね」
「今度は魔法使ってね」
「春奈ちゃん、それじゃあ面白くないよ」
「赤音ちゃんだってこけなくてすむよ」
「それはそれ、これはこれよ」
 五人はそんなやりとりをしながら朗らかな雰囲気で食事を採っていた。空では青い空と白い雲、そして黄金色の太陽がそんな五人を見守っていた。

第十六話   完


                 2005・6・12
 

 
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