| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

外伝~演奏家の捜索~前篇

~クロスベル駅~



「…………………………」

サングラスをかけた黒服の大男は黙ってロイド達を見つめ

(おいロイド……なんだかすげえ雰囲気のヤツがいるみてえだが……)

大男を見たランディはロイドに耳打ちし

「フッ…………」

ヴァイスは静かな笑みを浮かべて何も語らず

「(もしかして、今回の依頼者って………)あの、すみません。特務支援課の者ですが…………」

耳打ちされたロイドは考え込んだ後大男に話しかけ

「……お待ちしていた。来てくれて感謝する。自分の名はミュラー……エレボニアで音楽マネージャーをしている者だ。短い間だがどうかお見知りおき願おう。」

話しかけられた大男―――ミュラーは口元に笑みを浮かべて名乗った。

「お、音楽マネージャー…………ですが。(全然そうは見えないけど……)」

ミュラーの自己紹介を聞いたロイドは疲れた表情で頷き

(どう見てもマネージャーには見えないよな?スーツで隠しているけど身体つきがいいし、あれは絶対何か武術をやっているよ………)

(どちらかというとSPって感じの雰囲気ですよね……)

(それに前にも似たような肩書きを聞いた事があるような……)

リィンとノエル、エリィは小声で相談し

(フッ……音楽マネージャーか。)

ヴァイスは口元に笑みを浮かべて呟き

(ヴァイス?)

(うふっ♪どうやら事情を知っていそうね♪それをあえて言わないって事は……ロイド達で遊ぶ気のようね♪)

ヴァイスの様子を見たアルは首を傾げ、エルファティシアは小悪魔な笑みを浮かべた。

「……どうかしたのかね?」

ロイド達の様子を見たミュラーは不思議そうな表情で尋ね、ミュラーに尋ねられたロイドは仲間達と共に焦りながら話を続けた。

「い、いえ……え、えっと……それでは依頼について詳しく説明をいただけますか?」

「確か『演奏家』が行方不明になったとかいう話だったね。察するに、あなたがマネジメントしている人なのかな?」

「ああ、その通り。自分達は、演奏旅行のためクロスベル入りしたのだが……少し目を離した隙に、その演奏家とはぐれてしまってな。勝手のわからない街で探すアテもなく、困っていたところだったんだ。」

ワジに尋ねられたミュラーは答え

「それは、確かに大変そうですね……クロスベル市は広いですし。」

ミュラーの答えにエリィは頷いた。

「ああ、それもあるが……厄介な問題もある。早速捜索を頼めるだろうか?」

「了解しました、お任せ下さい。それでは、捜索する『演奏家』について詳しくお聞かせ願えますか?」

ミュラーの確認に頷いたロイドはミュラーに言った。



「うむ、よかろう。演奏家の名は……『オリビエ・レンハイム』。20代の金髪の男で、白いコートを羽織り、リュートを携えている。」

「ふむ、楽器を持ってるとなるとなかなか目立ちそうだね。探すのはそこまで難しくなさそうな気がするけど。」

「そうだよな。特にリュートなんて大きな楽器、持ち歩いていたら絶対に目立つしな。」

ミュラーの話を聞いたワジとリィンは言い

「ああ、それだけなら探して連れ帰るのにはさほど問題はないのだが……オリビエは、少々性格に問題があってな。頼んでもいないのに自ら面倒事に首を突っ込み、更なる面倒事にしてしまう。正直言って、厄介な人物と言ってしまっていいだろう。」

「は、はあ……」

「おいおい。今日は厄介な捜索人物の依頼ばっかだよなあ……」

「アハハ……確かに。」

ミュラーの話を聞いたエリィは戸惑い、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、ランディの言葉にノエルは苦笑していた。

「演奏旅行に支障がないよう、速やかに探し出して欲しいが……まあ、そこまで高望みはすまい。せめて、悪目立ちする前にふん捕まえてくれると助かるが。」

「マ、マネージャーにしちゃ随分な物言いッスね。」

「と、とりあえずイメージはある程度つかめました。あとは、行きそうな場所に心当たりはないですか?」

「そうだな、強いていうなら……いかがわしい場所、あるいは賑やかな場所を好む傾向があるだろう。美食家ぶって、どこぞの食事処に居座っている可能性もあるが……」

「とにかくトラブルの火種がありそうな場所ってことですね。

「だとすると、旧市街や歓楽街、裏通り……そのあたりが考えられそうだね。」

ミュラーの説明を聞いたノエルとワジは呟いた。

「ああ、いい線だと言えるが……実は、歓楽街はすでに一通り探し終えていてな。探索範囲から外して構わないはずだ。おそらく俺が探しに来ると踏んでいかにもな場所は避けているのだろう。」

「な、なるほど……でも、賑やかな場所といったら今日は港湾区も入るかもしれませんね。確か、公演でみっしぃの出張イベントをやっているはずですし。」

「ふむ……まあ絞り込めそうなのはそんなところだろうか。すまない、もう少し大した情報を提供できればよかったのだが……」

「いえ、参考になりました。それでは、早速捜査に当たらせていただきます。」

「どうかよろしく頼む。連れてくるのに苦労するなら多少、痛い目にあわせても構わないからな。」

「りょ、了解しました……(ほんと、どんな関係なんだ?)」

そしてミュラーの助言を聞いたロイドは仲間達と共に冷や汗をかいて頷き

(な、なんだかさっきの光景―――エリゼさんとリフィア殿下のやり取りを思い出すわね……)

(た、確かに……)

(フフ、あんな変わった主従コンビはあの2人ぐらいだと思っていたけど、世の中似たような存在はいるもんだね。)

(ハハ……)

エリィとノエルは苦笑しながら小声で会話し、ワジは静かな笑みを浮かべ、リィンは苦笑していた。その後ロイド達は演奏家の捜索を開始し、捜索の最中にロイド達は旧市街にもよった。



~旧市街~



「……んだと、コラァ!」

「アア!?文句ばっか言ってんじゃねえよ!」

ロイド達が旧市街に入ると言い争いの声が聞こえてき

「この声は……」

「ロイド、あれ!」

声を聞いたロイド達が声を聞いた方向を見つめると、そこではサーベルバイパーの青年達が言い争いをしていた。

「てめえ、スラッシュ……マジメに考えてんのか!?あのままヴァルドさんが酒に溺れて体でも壊したらどうすんだ、ア!?」

「だから、オレはそうならないように色々とアイディアを考えてるだろうが!!何にも思いつかねえからってカリカリすんなっつーの!」

「さっき『タワーの上で景色でも見れば、キゲン直るんじゃねーの』とか、軽く抜かしてやがったあれの事か!?ヴァルドさんの機嫌が高い所に上るくらいで直るんだったら誰も苦労しねえんだよ!!お前みたいなバカと一緒にすんじゃねえ、バカ!このバカ!!」

「て、てめェ~~~~~~~ッ!!3回も言いやがったな、コラァ!!一つもいいアイデアをださねえお前なんかの百倍はマシなんだよ!」

「んだと………!やろうってのか、アア!?」

そして互いが武器を構えて戦闘を開始しようとしたその時

「やめろ、お前達!!」

ロイドが大声で制止の声を叫び、仲間達と共に2人に近づいた。

「て、てめえらは………」

ロイド達を見た青年達はロイド達を睨み

「おいおい、仲間同士で武器まで持ち出すなんて、らしくねえんじゃねえのか?」

「ハッ……てめえらには関係ねえだろ!元はといえば……ワジ!!てめえがハンパなマネをやらかしたせいで……!!」

「そうだ……!ヴァルドさんがあんなことになっちまったのはワジのせいだ!全部てめえが悪いんだよ、ワジィ!」

ランディの忠告を無視し、怒りの表情でワジを睨んだ。

「……………………」

睨まれたワジは目を伏せて何も語らず

「ちょ、ちょっと待って!ワジ君はそんな……」

ノエルは慌てた様子で制止しようとしたが

「とにかく、このままじゃ収まらねえ……まずはてめらをブチのめしてやる!!」

「ヒャハ、そうだなァ!ヒューイ、てめえをのしてやんのはその後だぜ!」

青年達はノエルの言葉を無視してロイド達に敵意を向け

(やれやれ……共通の敵を見つけた途端、手を組むとは……仲が良いのやら、悪いのやら………)

(というかこの戦力差で何故やり合おうとするのかが理解できません。)

(ま、こういう頭に血が上った連中にはそれがわからないのよ。)

青年達に敵意を向けられたヴァイスは溜息を吐き、アルは不思議そうな表情で呟き、エルファティシアは呆れた表情で呟いた。

(ど、どうするのロイド……?)

(完全に頭に血が上ってやがるぜ?)

(くっ、こうなったら俺達で制圧するしか……)

そしてエリィとランディに判断を迫られたロイドが唇を噛みしめて判断しようとしたその時、リュートを弾く音が聞こえてきた!



「フッ……哀しいことだね。」

そして声が聞こえた方向をロイド達が見つめるとそこには建物の屋上にある木箱にリュートを持ち、白いコートを羽織った金髪の青年がいた。

「争いは何も生み出さない……愚かな憎しみの連鎖を紡ぐだけさ。そんな君達に、歌を贈ろう。混沌とした心を解きほぐしやがて人々を結びつけるような、そんな優しくも切ない歌を……」

ロイド達を見下ろしている青年は口元に笑みを浮かべて言った後、リュートを鳴らして歌い始めた。

「流れ行く 星の 軌跡は…………道しるべ 君へ続く…………



焦がれれば 想い 胸を裂き……苦しさを 月が笑う……



叶うことなどない はかない望みなら………」



青年が歌っているといつの間にか交換屋の店番の女の子が青年の後ろに来て、青年を蹴って怒鳴った!

「……おい、うるせーぞキンパツ!!」

「むおっ……!?」

女の子に蹴られた青年は歌を中断をした後振り返り、焦りながら言った。

「ど、どうしたんだい、可愛い仔猫ちゃん。フッ、見ての通り演奏中でね。悪いがサインなら後でお願いするよ。というか、こんな所で蹴られたらさすがに危な――――」

「ゴチャゴチャいってんじゃねー!店の上でメーワクだから、さっさとおりろ!」

自分に話しかける青年を女の子は睨んだ後再び蹴り、蹴られた青年は慌てた様子で木箱から飛び降りた。

「わ、わかった。わかったからもう――――」

「おーりーろー!」

そして青年は女の子に追いやられながら逃げ

「わー……!?」

「あ、落ちた。生きてるかー、キンパツー。」

「きゅう。」

「……生きてるなー。」

声を上げた後、女の子の声が聞こえてきた。そしてその場にいた全員は黙り込み

「あー……その、なんだ。なんか白けちまったし、帰るわ。」

青年の一人はロイド達を見つめて言い

「ヒャハッ、なんだよあの金髪……もががっ。」

もう一人の青年は何かを言いかけたが青年に手で口を塞がれ

「……いいから、帰るぞ。」

青年に促されてロイド達から去って行った。

「に、逃げた……」

その様子を見ていたロイドは苦笑し

「……ふう、ある意味助けられちゃったかな。」

「そ、そうだな。お蔭で戦わなくて済んだし。」

ワジは安堵の溜息を吐き、リィンは苦笑しながら頷いた。

「フ、フッ……魔都に咲かんとする争いの芽を摘んでしまった。愛と真心で平和をもたらす我がリュートの調べ……自分の才能がときどき恐ろしくなるよ。」

するとその時金髪の青年がフラフラしながらロイド達に近づいてきた。



「あ、あの………大丈夫ですか?さっきはなんだか鈍い音が聞こえましたけど。」

その様子を見たエリィはロイド達と共に脱力した後戸惑った様子で声をかけ

「フッ、心配はいらないよ、マドモアゼル。あの程度の高さなど、今まさに大陸の空を駆けんとするボクには恐るるに足らずさ。」

「意味がわからねえ……」

声をかけられて答えた青年の話を聞いたランディは溜息を吐いた。

「少しばかりトラブルに見舞われてしまったが……気を取り直して、続きを披露させていただくとしよう。フッ、存分に楽しんでくれたまえ。」

そして青年はリュートを出して演奏しようとしたが

「け、結構です!」

ロイドは慌てて制止した。

(ロ、ロイドさん。もしかしてこの人って……)

「(ああ、金髪に白いコート……ミュラーさんは厄介な人物だって言ってたけど……正直、予想以上だな。)……コホン、あなたは、オリビエさんで間違いありませんね?」

ノエルの言葉に頷いたロイドは真剣な表情で青年―――オリビエを見つめて尋ねた。

「フッ……いかにも。愛を求めて旅をする不世出の天才にして漂泊の演奏家、オリビエ・レンハイムだ。フッ、君達は運がいい。この天才のゲリラ・リサイタルに遭遇する事ができたのだからね。どうか今日という日をその心に刻み、一生の思い出としてくれたまえ。」

「……は、はあ。」

胸を張って言ったオリビエの説明を聞いたロイドは脱力して溜息を吐いた。

「アレッ、そういえば……なんでその名を知っているんだい?クロスベル入りしてから名乗った覚えはないつもりだったが。……どこかでお会いしたかな?」

一方オリビエは黙り込んでロイド達を見つめた後尋ね

「俺達はクロスベル警察、特務支援課の者です。ミュラーさんという方の依頼であなたを探していました。」

「お知り合いに間違いありませんか?」

「ほう、君達が噂の……フッ……ミュラーの心配性も相変わらずだな。この程度の時を別々に過ごしたところで、僕らの愛は薄れはしないのに。」

ロイドとエリィの話を聞いて酔いしれった様子で答え

「ええっ!そ、そんな関係なんですか………?」

「男性と男性が付き合うなんて、生産性に欠けますからやめておいた方がいいですよ?」

オリビエの答えを聞いたノエルは驚き、アルは指摘し

「……いやいや、多分違うだろ。」

「うふっ♪本当にそうかもしれなわいよ♪」

ランディは疲れた表情で溜息を吐いて指摘し、エルファティシアは小悪魔な笑みを浮かべた。

「と、とにかく……ミュラーさんのもとへ戻っていただけますか?」

そしてロイドが疲れた表情で言ったその時

「………悪いが、その頼みを聞くわけにはいかないな。どうせ、明日には忙しくなる。今のうちにクロスベルを十分に堪能しておきたいしね。」

オリビエは口元に笑みを浮かべて答え

「忙しくなる……?」

オリビエの答えを聞いたエリィは不思議そうな表情でオリビエを見つめた。

「フッ、こちらの話さ。もし、キミたちがボクを見逃してくれないと言うのならば……どんな手を使っても見逃してもらうとしようか。」

「へえ……?一体どうするつもりなんだい?」

オリビエの話を聞いたワジが興味深そうな様子でオリビエを見つめたその時、オリビエはロイド達に背を向け

「ハッ……!あそこにいるのはユリア准佐ッ!?」

真剣な表情で大声で言い

「おい!あそこにはリフィア皇女がいるぞ!?」

さらにヴァイスもオリビエとは別の方向を見つめて叫び

「なっ!?」

「ええっ!?」

2人の言葉を聞いたロイドとエリィは驚き

「ど、どこですかっ!?」

「ま、また抜け出したのですか、殿下!?」

ノエルとリィンは真剣な表情で叫んでそれぞれオリビエやヴァイスが見つめる方向を見つめていたがそこには誰もいなかった。

「って、あ、あれ……誰もいませんけど……」

「こっちも……」

それを見たノエルとリィンは戸惑い

「……はっ!」

ある事に気付いたロイドは声を上げ、仲間達と共に旧市街の出入口を見つめるとそこにはオリビエとヴァイスがいた!

「フッ、また会える日を楽しみにしているよ!」

「ロイド!俺は少し休憩しているから、後はお前達に任せた!」

そして2人はロイド達に背を向けて走り去り

「ちょ、ちょっと……!」

「きょ、局長!?」

2人の行動を見たロイドとノエルは声を上げたが2人は走り去ってしまった。

「に、逃げられてしまったわね……」

「しかもヴァイスまで一緒に……」

それを見たエリィは溜息を吐き、アルは呆け

「あんな古典的な手にひっかかるなんて……あのユリア准佐がこんなところにいるわけないんですけど。」

「しかしリフィア殿下の場合はいてもおかしくないところが冗談になってないんだよな……」

ノエルは真剣な表情で呟いた後リィンと共に溜息を吐き

「やれやれ、レクターとは別の意味で厄介そうな兄さんだぜ。つーか、何で局長まで一緒になってんだよ!?」

「うふっ♪この様子だと何か面白い事を起こすんじゃないかしら♪」

ランディは疲れた表情で溜息を吐いた後叫び、エルファティシアは小悪魔な笑みを浮かべた。

「と、とにかく追いかけてみるか。と言ってもどこに行ったんだろう……」

「やっぱり、さっき言ってた場所を一通りあたってみるのがいいかもしれないね。旧市街で見つけたから、他に候補が挙げられるとしたら……裏通りか港湾区、かな?多分、局長もあの様子だと一緒じゃないかな?」

「とにかく、探してみましょう!」

その後ロイド達はヴァイスとオリビエの捜索を開始した………… 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧