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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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外伝~お嬢様の捜索~後篇

~月の僧院~



「ふう……」

「な、何とかなったわね……」

「ま、今の俺達ならなんとかなるってもんよ。」

「ラ、ランディ先輩~、強がりは止めましょうよ。セリカさん達がいたお蔭であんな数の悪魔達を退治できたのですよ?」

戦闘が終了するとロイドとエリィは安堵の溜息を吐き、ランディは口元に笑みを浮かべて頷き、ランディの発言を聞いたノエルは苦笑し

「うむ!兄妹揃って中々の働きだ!特にリィンよ!お主の働きも中々のものだったぞ!」

「ハッ!殿下をご満足させる戦いができ、光栄です!」

リフィアは胸を張ってリィンとエリゼを見つめて言い、リフィアの言葉を聞いたリィンは姿勢をただして言い

「フウ……すぐにそうやって調子の乗るんだから……」

エリゼは溜息を吐いてジト目でリフィアを見つめた。

「―――仕上げです。」

するとその時リースは静かに言った後詠唱をし、リースが詠唱を終えると悪魔達の死骸は足元に発生した魔法陣が放つ光と共に消え始め

「へえ……」

「浄化されていく……」

その様子を見ていたワジは感心した様子で呟き、エリィは驚きの表情で呟き

「あら、結構やるじゃない。」

「私達の世界の光の神殿の一般の神官や神官騎士ならこんな事、できないでしょうね。」

エルファティシアは感心し、アルは真剣な表情で言った。そして魔法陣が消えると悪魔達の死骸は光と共に消滅した。

「ロ、ロイドさん、今の魔法陣は、確か……」

魔法陣が消えるとノエルは真剣な表情でロイドを見つめ

「ああ……これはアルタイルロッジでケビンさんが使っていた……リースさん、やはりあなたは……」

見つめられたロイドは頷いた後真剣な表情でリースを見つめ

「……エリィさん、ヴァイスさん。私の身分については黙っていてくれたみたいですね?」

見つめられたリースは口元に笑みを浮かべてエリィとヴァイスに視線を向けて言い

「ええ……あまり言い回るのもどうかと思いまして。」

「戦友の秘密をそう簡単に言いふらさんさ。」

リースの言葉にエリィは目を伏せて頷き、ヴァイスは静かな笑みを浮かべて答えた。

「ふふ……感謝します。……もう大司教には薄々、感付かれているようですが……私は教会内でも特殊な組織に所属しています。――――『星杯騎士団』。封聖省という機関に所属する古代遺物(アーティファクト)を回収する組織です。」

2人の言葉に静かな笑みを浮かべて感謝したリースはロイド達に振り向いて答えた。

「星杯騎士!?七耀教会の中でも極秘扱いされているという神官騎士……!」

「まさかこんな所で出会うなんて……リフィアの知り合いからして只者ではないと思っていましたが……」

リースの説明を聞いてリィンとエリゼは驚き

「うむ!わかっているではないか、エリゼ!」

エリゼの言葉にリフィアは頷いた。

「やはり星杯騎士団の方でしたか……!」

「アルタイル・ロッジで手を貸してくれた……!?」

一方ロイドとノエルは驚きの表情でリースを見つめ

「手を貸したというのは……ケビン・グラハムのことですね?私は、彼をサポートする『従騎士』の位階にあたります。本来ならば、様々な調査のため彼自身がクロスベル入りするのが筋ではあったのですが……大司教の目があったので代わりに私が情報収集役として派遣されたというわけです。ちなみにセリカさん達はある事件で知り合いまして、今回の件に手を貸して頂いたのです。」

見つめられたリースは答えた。

「な、なるほど……」

「そうだったんですか……」

「星杯騎士団を毛嫌いしているエラルダ大司教にとってケビンは一番嫌う対象だろうしな。」

リースの答えを聞いたロイドとノエルは真剣な表情で頷き、ヴァイスは苦笑しながら言い

「今回の件も、その調査の一環ってわけだ。」

「なんつーか、教会ってのも色々しがらみがあるみてぇだな?」

ワジは口元に笑みを浮かべて言い、ランディは溜息を吐いて言い

「ま、それはどの世界のどんな組織にもあるものよ。」

「そうですね。国を守る将でさえ一丸となって戦えないのですから……」

エルファティシアとアルは納得した様子で頷いた。

「ええ、お恥ずかしながら。……私達はこのまま屋上まで調べに行くつもりです。できればあなた方の見解も聞きたいので、ご同行をお願いしたいのですが。」

「ええ、もちろん。」

「それでは早速鐘楼の下に行きましょう。」

その後リース達と共にロイド達は鐘楼の下に向かった。



「これは……報告にあった”鐘”ですね。中央広場にある鐘とほぼ同じ物ですか……」

鐘楼に到着したリースは妖しげな気配を纏わせる鐘を見つめて言い

「その鐘を鳴らす事で発生する事によってここを中心として遺跡全体を冥界か、異界に変えているようなんです。そのせいで幽霊達や影の国で現れた魔物達が出ていたと思うのですが。」

リタがリースに説明した。

「以前はエルファティシアさんとルファ姉の封印魔術によって共鳴を止めたんだよな。そうする事で鐘の音が止めたんだけど……」

「こんな大きな鐘が勝手に鳴るなんてことあるわけないですよね………本当に誰が鳴らしたんでしょう……」

「しかも私達が封印したのに鳴っているという事は確実に誰かが封印を解いたのでしょうね。」

ロイドとノエルは考え込み、エルファティシアは真剣な表情で鐘を見つめていた。

「ふむ……」

リタ達の話を聞いたリースは考え込んでいた。

「……何はともあれ、ひとまずこの鐘を止めるとしよう。落ち着いて話をするためにも、とりあえず魔物の脅威は取り除いたほうがよさそうだ。エルファティシアさん、お手数ですがもう一度お願いしてもいいですか?」

「ええ、いいわよ。アル、手伝ってもらえるかしら。」

「わかりました。」

そしてロイドに頼まれたエルファティシアがアルと共に行動を開始しようとしたその時

「いえ……先程の戦闘まで手伝って頂いたのですからここは私がやっておきます。少し下がっていてください。」

「え………」

リースが申し出、リースの申し出を聞いたロイドが呆けたその時、リースは詠唱をして鐘の共鳴を止めた。

「……こんなところですね。」

「リースさん、今のは……」

「ええ、教会に伝わる魔の力を封じ込める法術です。」

驚いているエリィにリースは説明し

「なるほど、確かに先程まで感じていた気配が消えたようじゃな。」

「……上位三属性が働く”気配”か。」

「ほう!やるではないか!」

「凄いな……」

「まさか七耀教会にそんな凄い術が伝わっているなんて……」

リースの説明を聞いたレシェンテとセリカは頷き、リフィアは感心し、リィンとエリゼは驚いていた。

「フフ……さまざまな所でいいところをとられちゃったね。」

「いえ……皆さんの力あってのことです。みなさん、どうもありがとうございました。これで”魔物”に関する一通りの調査を終える事ができました。」

静かな笑みを浮かべて言ったワジの言葉にリースは否定した後ロイド達に微笑み

「いえ、俺達も俺達で目的がありましたし、クロスベルの為にもその鐘の音を止める必要はありましたし。」

「ま、そういうことだな。カワイコちゃんのためならたとえ火の中水の中ってやつさ。」

リースの言葉にロイドは頷き、ランディは嬉しそうな表情でリースを見つめて言ったが

「はあ……」

「ありゃりゃ、反応薄っ。」

戸惑った表情のリースの反応を見て溜息を吐いた。



「あ、あはは……」

「フッ。まだまだ修行が足りんな。」

ランディの様子を見たノエルは苦笑し、ヴァイスは口元に笑みを浮かべた。

「と、とりあえず。一旦、リースさん達をクロスベル市まで送ってあげましょう。」

「いいかもしれませんね。導力車も近くに停めていますし。」

「ああ、そうだな。……どうでしょう、リースさん?」

「では、お言葉に甘える事にします。お腹もすきましたし、一刻も早くシスター・ジュジュのクッキーでも頂きたい気分です。」

エリィとノエルの提案に頷いたロイドに尋ねられたリースは頷き

「はは……それじゃあ行きましょうか。」

リースの反応を見たロイドは苦笑し

「勿論、貴女も一緒に帰ってもらうわよ、リフィア?もう、逃がさないからね。」

エリゼはリフィアの片手をしっかりと握ってジト目でリフィアを見つめて言い

「言われなくてもわかっておるわ。さすがに余とて今回の会議の件の重要度はわかっておる!」

エリゼに見つめれたリフィアは答えたが

「それがわかっているなら、勝手に外出しないで。しかも警備隊が創ったバリケードまで破壊して…………そんな非常識な事をする事が皇位継承者がする事?」

「ぬぐっ……!」

ジト目のエリゼに突っ込まれて押し黙り

「エ、エリゼ!さっきから思っていたけどその態度は殿下に無礼すぎだぞ!?」

その様子を見たリィンは慌てて言ったが

「大丈夫ですよ、兄様。リウイ陛下達からリフィアに対して私的な場だったら無礼な態度や口調で接する事は許されていますし、リフィア自身もそれを望んでいますから。」

「うむ。エリゼは余の優秀なる下僕にして親友。お前が気にする事はないぞ。」

「は、はあ……?わ、わかりました。」

エリゼとリフィアの答えを聞いて戸惑った後頷いた。

「はは……それじゃあ戻りましょう。」

その様子を見ていたロイドは苦笑した後促し、仲間達と共にその場を去って行き

「………………」

ロイド達が去って行く中セリカは鐘楼を見つめていたが

「セリカ、どうしたのじゃ?」

「いや……何でもない。」

セリカの様子に気付いたレシェンテに声をかけられて答えた後ロイド達の後を追った。そしてロイド達が去って行くといつの間にか鐘楼の前に片腕の少年がいた!

「”星杯騎士”のお嬢さんにメンフィル帝国のお姫様とその従者……それに特務支援課と遊撃士協会か。なかなかやってくれるじゃない。今回の『計画』………やっぱり彼らがキーパーソンになったりするのかな?ウフフ……なんだか改めて、愉しみになってきちゃったよ。……それにしても僕の気配に気付くなんてねぇ……下手をしたら”剣帝”や”剣聖”以上かもね、彼……いや、彼女かな?フフ、まあどっちでもいいや。」

少年は妖しげな笑みを浮かべて呟いた後指を鳴らし、炎に包まれてその場から消えた!


その後、ロイド達はリース達を導力車に乗せ、クロスベル大聖堂の前まで送り届けた。



~マインツ山道~



「皆さん、わざわざ送っていただいてありがとうございました。皆さんの導力車……大変乗り心地がよかったです。」

「ふふっ、喜んでいただけてあたしも嬉しいです。」

リースのお礼の言葉にノエルは微笑み

「セリカさんやリフィア殿下達も今日は手伝って頂き、ありがとうございました。」

「フフ、お役に立てて幸いです。」

「……ケビンからお前の事は頼まれていたからな。」

「セリカが力を貸すなら当然セリカの使徒であるわらわも力を貸すに決まっているだろう!」

同じようにリースにお礼を言われたリタは微笑み、セリカは静かな笑みを浮かべ、レシェンテは胸を張っていい

「こちらこそ、リフィアの面倒を見て頂きありがとうございました。」

「何が面倒じゃ!余は民を守る為にセリカ達と共に遺跡に巣食う魔物達を退治していたんじゃぞ!?」

エリゼが言った言葉を聞いたリフィアはエリゼを睨んで言ったが

「嘘を言っても無駄だから。遺跡の魔物退治はリースさん達に会いに行く”ついで”でしょう?」

「ぬぐっ…………!」

ジト目のエリゼの指摘に唸った。

「ところで……”星杯騎士”の事は、大聖堂の人には?」

そしてロイドは真剣な表情でリースを見つめて尋ね

「ええ、誰にも言っていません。さすがにエラルダ大司教は薄々感づいている様子ですが……まあ、下手を打たなければ問題ないかと思います。」

尋ねられたリースは答えた後静かな笑みを浮かべた。

「うーむ、教会の中も色々と大変そうだな。」

「リースさん、くれぐれも無茶はしないでください。」

「フフ、それとあまり神経をすり減らさないように。美容にも悪そうだしね。」

「ええ……ご心配なく。では、また何かあったらよろしくお願いします。」

「ええ、こちらこそ。」

ロイド達に言ったリースは大聖堂に向かい

「それじゃあ俺達もここで失礼する。」

「またの!」

「ここまで送って頂きありがとうございました。」

「リフィアを守って頂き、ありがとうございました。」

セリカ達もロイド達に別れの言葉を言った後クロスベル市内に向かっていった。

「それにしても”神殺し”と”古神”、挙句の果てには幽霊が聖職者と共に行動するとはねぇ……」

「私達の世界では考えられない組み合わせですね。」

セリカ達が去った後エルファティシアとアルは苦笑し

「……まあ、それが可能になったのも全て”影の国”のおかげだがな。」

ヴァイスは静かな笑みを浮かべて言った。



「リフィア。私達もそろそろ。」

「うむ!エリィ、そして特務支援課とやらよ!エリゼが世話になったな!エリゼの主として感謝する!」

そしてエリゼに促されたリフィアは頷いた後ロイド達に口元に笑みを浮かべて言い

「い、いえ。私達としても殿下の身の安全は心から望むものですし。」

リフィアの言葉にエリィは戸惑いながら答えたが

「……私がロイドさんや兄様達のお世話になったのはだ・れ・の!せいだと思っているの?」

「むう…………」

威圧を纏ったエリゼの笑顔に微笑まれて唸った後黙り込んだ。

「エ、エリゼ……お、俺の知らない間にい、色々とたくましくなったようだな、ハハ……(父さん達が今のエリゼを見て卒倒しなければいいけど…………)」

その様子を見ていたリィンは大量の冷や汗をかきながら苦笑し

「フフ、完全に主従が逆転しているね。」

「フッ……エリゼにとってはリフィア皇女は手のかかる妹のような存在みたいなものか?」

ワジは静かな笑みを浮かべ、ヴァイスは口元に笑みを浮かべてエリゼを見つめて言い

「フフ……確かにリフィアは本当に手のかかる娘ですけど、常に民や国の事を考え、仕える者達を大切にしている人の上に立つ者として……皇位継承者として相応しい娘です。私もこの娘が創る新たなメンフィルにリフィアに仕える侍女として……そしてリフィアを支える”親友”として楽しみですから、手はかかっても決してリフィアから離れる気はありません。」

「エリゼ…………」

「全く……余計な一言が無ければ、綺麗に収まるというのに……」

「………どうやらリフィア皇女も”真の忠臣”を手に入れたようだな……」

見つめられたエリゼは微笑み、エリゼの答えを聞いたリィンは驚き、リフィアは溜息を吐いた後口元に笑みを浮かべ、ヴァイスは静かな笑みを浮かべていた。

「―――さてと。皆さん、今日は本当にお世話になりました。私達も失礼します。」

「さらばだ、特務支援課よ!」

そしてエリゼとリフィアが去ろうとしたその時

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「む?」

「え?」

ロイドが慌てた様子で制止し、ロイドの制止の声に2人は不思議そうな表情で振り返ってロイドを見つめた。

「実はリフィア殿下にお願いしたい事がありまして……」

「余にか?一体何なのじゃ??」

ロイド達はリフィア達にヘイワース夫妻の依頼の件を説明した。



「ええっ!?レン姫の本当のご両親がレン姫に面会を!?」

「………………………………」

説明を聞いたエリゼは驚き、リフィアは真剣な表情で黙り込んでいた。

「それで、大変お手数なのですがどうかレンとヘイワース夫妻を一度合わせて欲しいのです。」

「………………少し待っていろ。」

ロイドの話を聞いたリフィアは考え込んだ後エニグマを手に取って通信を始めた。

「―――はい。どなたかしら?」

「―――余だ。」

「リフィアお姉様?どうしたの?神殺しさん達に会いに行ったんじゃないの?それとももう、エリゼに連れ戻されちゃったの?」

「ああ。セリカ達にも会ったし、今エリゼと合流した所だ。」

「やっぱり♪それでどうしてレンに連絡を?」

「ああ、その件だが――――」

そしてリフィアは通信相手―――レンにロイド達の依頼の件を話し

「…………そう。あの人達が。」

「今から”グロリアス”に連れて行くが、いいな?」

「…………ええ。」

レンの返事を聞いた後通信を終えた。

「レンにも確認した。ヘイワース夫妻と会うように言っておいた。今すぐヘイワース夫妻を空港に連れて来い。余の権限でヘイワース夫妻やお前達を”グロリアス”に一時的に入船する事を許可する。」

「あ、ありがとうございます!」

「ありがとうございます、リフィア殿下。」

リフィアの言った言葉を聞いたロイドは明るい表情でお礼を言い、エリィは会釈をし

「……いつかは越えねばならんことだしな……余達は空港で待っている。」

リフィアは静かな笑みを浮かべてエリゼと共にロイド達から去って行った。

「よし……急いでハロルドさん達を連れて来よう。」

「ええ!」

その後ロイド達はハロルド達に事情を話し、丁度帰っていたコリンも連れて空港に向かい、リフィア達と合流した後”グロリアス”に入船し、広い客室の中に通され、待っているとリフィアとエリゼと共にレンが姿を現した………………… 
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