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魔女に乾杯!

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110部分:第百九話


第百九話

                          第百九話   視線の先
 暫く鳴りを潜めていた紫の魔女であったがまた姿を現わすようになっていた。
 最近ではしきりに夜の街に現われ、不思議な魔法を使っている。そして華奈子達を挑発していた。
「この街にしっかりした魔女はいないみたいね」
 しきりにこう言っているのだ。
「私の相手になるのは。やっぱりいないのかしら」
「あいつまた出て来たのね」
 そしてそれが華奈子達の耳に入らない筈がなかった。五人は塾の教室で相談していた。
「今度こそ。やっつけてやる」
「いえ、こっちから動くのはまずいわ」
 そんな華奈子をリーダーである梨花が制止する。
「何で?こっちから先に仕掛けてギャフンと言わせちゃおうよ」
「相手は紫の魔女よ」
 梨花はそう言って彼女をまた制止した。
「罠だったらどうするのよ」
「それもそっか」
「かなり頭が切れるから。挑発に乗っちゃ駄目よ」
「そうね」
 それに美樹が頷く。
「ここは。慎重にいきましょ」
「それじゃあこっちからは動かないのね」
「ええ」
 梨花は赤音に答えた。
「今はね。皆ここはじっとしてましょ」
「うん」
「あたしの性に合わないけれどね」
 春奈は素直に、華奈子は不満を抑えて頷いた。
 そして他の二人も。とりあえず五人はここは抑えた。
 それからまた暫く経った。華奈子はイライラしながらも耐えていた。
 イライラした様子は傍目からもよくわかった。そんな彼女に美奈子が声をかけた。
「最近イライラしてるわよね」
「わかる?」
「ええ。何があったの」
「魔法のことでね」
 双子の姉妹ということもあり安心して話した。
「紫の魔女の奴がね。また出て来ているのよ」
「あの最近噂の魔女ね」
「そうなのよ。それであたし達を挑発してきてて。もう腹が立って」
「それでその魔女をどうしたいのよ」
「決まってるでしょ。負かすの」
 華奈子は言った。
「向こうから喧嘩売ってきてるし。今度やるってなったら徹底的にやってやるんだから」
「徹底的ね」
「美奈子には関係ない話だけどね」
 笑って姉妹にそう言った。
「今度こそ。決着を着けてあげるわ」
「そうね」
 美奈子はそれを聞いて静かに頷いた。
「今度こそ。つけるといいわ」
「ええ、そうしてやるわ」
 華奈子は美奈子のその言葉に元気に頷いた。だがこの時彼女は気付いていなかった。美奈子の目が一直線に彼女を見据えていたことに。

第百九話   完


                   2006・4・25



 
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