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英雄伝説~菫の軌跡~(閃篇)

作者:sorano
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第1話

~グラウンド~



「は~……どうなるかと思ったけど。」

「まったく、これだから貴族というのは……」

パトリック達が去るとエリオットは安堵の溜息を吐き、マキアスは呆れ

「フン、あれと一緒にするな。」

マキアスの言葉を聞いたユーシスは鼻を鳴らした。

「ありがとう、ガイウス。何というか……色々と助けられたよ。」

「……?礼を言われることか?まあ、お前の役に立ったとしたら何よりだ。」

リィンにお礼を言われたガイウスが不思議そうな表情をした後頷いたその時サラ教官が手を叩いて自分に注目させた。



「今回の実技テストはレン以外は以上で終わり。」

「あら?レン以外は終わりという事はレンはあるのかしら?」

サラ教官の話を聞いたレンは不思議そうな表情で首を傾げて訊ね

「あからさまな嘘をついて遅刻したのだから、罰としてこれからクラスメイトになる子達にあんたの本来の戦闘スタイルを見せるくらいはしなさい。」

訊ねられたサラ教官はジト目で答えた後指を鳴らした。すると先程消えた人形兵器が4体現れた。

「ええっ!?よ、4体!?」

「一体でも強いのにそれが4体も相手しなければいけないなんて、僕達には無理だね……」

「えっと……教官。この流れですとまさかとは思いますけど、俺が彼女と組んで戦わないといけないんですか……?」

現れた人形兵器が4体である事にアリサは驚き、エリオットは不安そうな表情をし、かつての実技テストで”特別実習”の場所でユーシスとマキアスが文句を言った時サラ教官が二人を相手する事になり、その時になぜか自分も加わるように言われてサラ教官と戦う羽目になった事を思い出したリィンは表情を引き攣らせながら訊ねた。



「ふふっ、それはそれで面白そうだけど、今回はいいわ。この模擬戦は遅刻したレンへのペナルティーだし。」

「サラお姉さんったら、細かい事を気にしすぎよ。そんなんだからせっかくスタイルが良い美人さんなのに『残念美人』とか、『婚期が遅い』とか『売れ残り』とかみんなに影で言われているのよ。」

「遅刻した本人が偉そうにしてんじゃないわよ!それと後であたしの婚期がどうのこうのって言った連中の名前を全員教えなさい!影でコソコソとあたしの事をそんな風に言っていた連中を全員シメる必要があるしね………!」

呆れた表情で指摘したレンをサラ教官は睨んで怒鳴り、その様子にリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「コホン。ほら、さっさと配置について得物を構えなさい。」

「はーい。」

咳ばらいをして気を取り直したサラ教官の指示に答えたレンは人形兵器達と対峙して両足につけているホルダーから双銃を抜いて構えた。

「へ………二丁の銃………?」

「一体どこのメーカーの銃かしら……?少なくてもラインフォルトが販売している銃じゃないし………出身がリベールだからZCF(ツァイス中央工房)が開発した銃かしら……?」

「…………?(どういう事だ……?彼女のさっきの戦いや腰につけている刀らしき剣が収めてある二本の鞘を考えれば間違いなく彼女は”剣術を扱える”はずなのに………)」

レンが持つ双銃を見たエリオットは呆け、アリサは興味ありげな表情で双銃を見つめ、リィンは不思議そうな表情でレンを見つめていた。

「―――始め!」

そしてサラ教官の号令を合図にレンは人形兵器達との戦闘を開始した!



「「「「……………」」」」

人形兵器達はそれぞれ移動してレンを包囲して一斉に腕からレーザーを出して攻撃したが

「アクロバレット!!」

レンは空へと跳躍して退避した後空から銃撃を放って反撃を人形兵器達に叩き込んだ後一体の人形兵器の背後に着地し

「ミスティアーク!ブラッディブレイズ!!」

広範囲に連射するクラフトから華麗に連射してバラを刻み込むクラフトへと連携して周りの人形兵器達を巻き込んだ後背後に回った人形兵器に集中攻撃をした。

「―――――――」

レンに集中攻撃をされた人形兵器はアーツを放つ為に導力を溜め始めたが

「ヴァリアブルトリガー!!」

「!?」

レンの狙撃によってアーツの発動が中断させられた。そしてレンは素早く双銃をホルダーに収めて無手の構えになり

「フゥゥゥゥ………ハッ!!」

「――――!!??」

クラフト―――零頸を叩き込み、零距離での凄まじい一撃を受けた人形兵器はダメージに耐えきれず光を放って消滅した!

「なっ!?もう、一体倒したぞ!?」

「フム………銃による攻撃で相手が怯んだ隙に懐に飛び込んで無手による格闘技か。遠近両方をこなすとはまさに死角がない戦闘スタイルだな。」

自分達が協力してようやく1体倒せる人形兵器をたった1人であまりにも早く倒したレンの様子にマキアスは驚き、ラウラは興味ありげな表情でレンを見つめていた。

「!?待ってください!レンちゃんが扱う武器は銃だけじゃないようです………!」

「何だと……?」

「!あれは………」

その時レンと人形兵器達との戦いを見て何かに気づいて声を上げたエマの言葉を聞いたユーシスは眉を顰め、戦いを見守っていたガイウスは目を丸くした。



「「「……………」」」

「!っと!うふふ、自己紹介代わりにちょっとだけ”サービス”してあげるわ♪」

それぞれ電撃のフィールドを展開して攻撃してきた人形兵器達の攻撃を再び空へと跳躍して回避したレンはリィン達に視線を向けて小悪魔な笑みを浮かべた後魔導杖を構えた。

「誘惑の罠張り巡らし、我が懐中へ――――トラクタービーム!!」

「「「!?」」」

武器を魔導杖へと変更したレンは魔導杖に登録されている特殊魔法(アーツ)―――トラクタービームを発動して人形兵器達を空中へと持ち上げ、重力をかけて叩き落として怯ませ

「エニグマ並びにアークス駆動―――ダブルダークマター!!」

更に人形兵器達が怯んでいる間に二つの戦術オーブメントを駆動させて同じアーツを発動して人形兵器達を一か所に固めて動きを封じ込めた。

「気のせいかしら………?今、二つのアーツが同時に発動したような気がしたのだけど………」

「ん。”ダークマター”が2回同時に発動したね。」

「そ、その事も驚いたがまさかエリオットやエマ君が使っている魔導杖まで扱える事ができるなんて驚いたな……」

「う、うん………でも、彼女の魔導杖は僕や委員長が使っているタイプとは全く別のタイプだと思うよ……?」

戦いの様子を見守っていて不思議そうな表情で首を傾げているアリサの指摘にフィーは頷いて答え、信じられない表情をしているマキアスの意見に頷いたエリオットは戸惑いの表情でレンが持つ魔導杖を見つめていた。



「―――裂甲断。ヤアッ!」

アーツで人形兵器達を一か所に固めたレンは魔導杖を地面に叩き付ける事で直線状に広範囲の凄まじい衝撃波を発生させて追撃すると共に怯ませ

「秘技――――裏疾風!斬!!」

魔導杖の鞘を抜いて仕込み刀をあらわにして電光石火の速さで斬撃を叩き込んだ後凄まじい斬撃波を放った。すると人形兵器達の腕の一部は斬撃を受けた事によって斬られた。

「ええっ!?オ、魔導杖(オーバルスタッフ)で”斬った”……!?」

「!あれは……”仕込み刀”か……!それにやっぱりレンは”八葉一刀流”の剣技を使えたのか……!しかも”裏疾風(うらはやて)”まで習得しているなんて……!」

魔導杖で”斬る”という信じられない出来事にエリオットが驚いている中リィンは目を見開いてレンを見つめて声を上げた。

「”仕込み刀”とは何なのだ?」

「”仕込み刀”は外見からは刀と分からないように偽装されている刀の事だ。何らかの理由で刀剣を剥き出しで携行できない場合に護身用として杖や傘のような長物に仕込む武具だ。」

「そ、そんな武器があるのね………って、リィン今レンがリィンが扱っている剣術も使える事がわかっていたみたいな事を言っていたわよね……?あれってどういう事なのかしら?」

ガイウスの疑問に答えたリィンの説明を聞いて目を丸くしていたアリサだったがある事に気づくと不思議そうな表情でリィンに訊ねた。



「さっきのパトリック達との戦いで見せた無手の構え……あれは剣を無くした時の対策としてユン老師から教えてもらった剣を失くした時に使う”第八の型”――――”無の型”の構えだったんだ。しかもパトリック達との模擬戦の時も”無の型”の技――――”破甲拳”や”落葉”も使っていたから、最初彼女が銃で戦おうとした時不思議に思ったんだ。」

「そ、そうだったのか!?」

「ちなみにレンがさっき放った剣技(クラフト)にリィンは驚いていたようだけど、何で?リィンも似たような剣技(クラフト)を使っているよね?」

リィンの説明を聞いたマキアスが驚いている中ある事が気になったフィーはリィンに訊ねた。

「”疾風(はやて)”は”初伝”の剣技だけど、”疾風”の上位技にあたる秘技――――”裏疾風”は”中伝”以降の伝位を認められた者に伝えられている剣技なんだ。」

「ええっ!?そ、それじゃあレンさんは………」

「”八葉一刀流”の剣士としての実力もリィンよりも上……と言う事になるな。」

「フン……あの小物共も憐れだな。あんな無様過ぎる敗北をあのガキに思い知らされた模擬戦すら、あのガキは相当手を抜いていたという事になるからな。」

リィンの答えを聞き、レンが”八葉一刀流”の剣士としての実力もリィンより上である事を察したエマは驚き、ラウラは真剣な表情で呟いてレンを見つめ、ユーシスは呆れた表情で呟いてこの場にはいないパトリック達を憐れんでいた。



「クスクス、そろそろフィナーレにしてあげるわ♪」

するとその時レンは仕込み刀に膨大な闘気を纏わせて光の大剣と化させ

「!?な――――――」

レンが放とうとしている大技の正体を瞬時に察したラウラは驚きのあまり絶句した。

「煌めけ――――洸凰剣!!」

そしてレンは残像を残しながら一瞬で人形兵器達に詰め寄って光の大剣と化させた仕込み刀を叩き込んだ!レンのSクラフト―――洸凰剣によるダメージに耐えきれなくなった人形兵器達は全て光となり、消滅した!



「うふふっ、殲滅完了ね。……って、この台詞はユウナの台詞だったわね。いけない、いけない♪」

人形兵器達の消滅を確認したレンは小悪魔な笑みを浮かべて魔導杖をしまった。

「―――レン!先程の絶技……何故そなたが扱えるのだ……!?」

するとその時ラウラが血相を変えてレンに訊ねた。

「ラ、ラウラ?どうしたの?そんなに血相を変えて……」

「レンが最後に放った絶技――――”洸凰剣”は”アルゼイド流”の”免許皆伝”を認められた者達が扱える絶技だ………!」

「何だと!?」

「リ、リィンの”八葉一刀流”に加えてラウラの”アルゼイド流”まで扱えて、しかも銃や魔導杖も扱えるって、普通に考えたらありえなくない!?」

「そ、それにアーツを一度に2回も放っていましたけど、あれは一体どういう事なんですか……?」

血相を変えている様子の自分に戸惑っているアリサの質問に答えたラウラの話を聞いたユーシスとエリオットは驚き、エマは信じられない表情でレンを見つめた。



「もしかして”ダブルアーツ”の事かしら?別にそんなに大した事じゃないわよ。単にレンは戦術オーブメントを二つ持っていて、二つ同時に駆動させて同時にアーツを放っただけだもの。」

「戦術オーブメントを二つ持っているだって!?」

「確か戦術オーブメントは一人一つだと聞いているが……二つも持っていていいのか?」

「戦術オーブメントは基本一人一つだけど保有する数の制限は特に決められていないから、二つ以上持っていても問題はないのだけど……」

「普通は戦術オーブメントを二つも使うなんて考えないもんね。戦術オーブメント自体が1個でも滅茶苦茶高いし。」

レンの説明を聞いたマキアスは驚き、ガイウスの疑問にアリサは戸惑いの表情で答え、フィーは静かな表情で呟いた。

「うふふ、ちなみにレンの戦術オーブメントの個体属性は『無属性』でライン構成は全連結よ♪」

「ええっ!?と言う事はレンちゃんはアーツも得意なんですか……!?」

「個体属性が『無属性』である事自体も珍しいのに、ライン構成が全連結なんて凄過ぎよ……!」

レンの戦術オーブメントの個体属性とライン構成の凄まじいを知ったエマとアリサはそれぞれ驚いた。



「うふふ、レンは”真の天才”なんだからそのくらいは当たり前よ♪」

「なにその意味不明な理由……」

「というか”真の天才”って、さっきの”天才”より更に自画自賛しているね。」

「フン……あの小者達と違い、大口を叩くだけの実力は備えているという事か。」

そして笑顔を浮かべて答えたレンの答えにリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサとフィーはジト目でレンを見つめ、ユーシスは鼻を鳴らして真剣な表情でレンを見つめた。

「……………レン、俺も一つ聞いていいか?」

するとその時黙って考え込んでいたリィンは静かな表情でレンに訊ねた。

「あら、なにかしら?」

「さっきの傀儡との戦闘でも何でその腰につけている刀らしき剣を使わなかったんだ……?」

「へ………?あ―――――」

「フム……確かによく見てみれば腰に剣らしき武器を収めた鞘が2本あるな。」

「あの形状はリィンが扱っている”太刀”に僅かに似ているな………?」

リィンの指摘を聞いて呆けたエリオットはレンが腰につけている2本の鞘に気づき、ラウラは真剣な表情で鞘を見つめ、ガイウスは不思議そうな表情でリィンの腰につけている”太刀”が収められている鞘とレンの鞘を見比べていた。



「……あたしもその事について聞きたいわ。レン、さっきあたしは模擬戦であんたの”本来の戦闘スタイル”を見せなさいって言ったわよね?確かにあんたの本来の戦闘スタイルは様々な武器を瞬時に切り替えて変幻自在に戦うスタイルだけど、肝心の”数ある戦闘スタイルの中でも一番得意な戦闘スタイルである二刀流剣術での戦闘スタイル”を何で見せなかったのかしら……?」

「え?まさかレンが二刀流剣術を使うと本気で思っていたの??レン、学生の間はよほどの事がない限りは二刀流剣術での戦闘スタイルで戦う気なんて全然ないわよ。」

真剣な表情をしているサラ教官の指摘を聞いたレンは心底不思議そうな表情で答え

「二刀流……だから鞘が二本あるのか。」

「………レン、サラ教官の話によればそなたはその2本の刀らしき剣を扱った戦闘スタイルが一番得意との事だが、何故そなたは”本気”を出さないのだ?」

レンの答えを聞いたガイウスは考え込み、ラウラは真剣な表情でレンに問いかけた。

「うふふ、それに関してはフィーと”同じ”って事よ♪」

「フィーと同じって事は………」

「………俺達の実力に合わせて意図的に戦闘力をセーブしているという事か。」

「そこでわたしに振るとかやめてくれない?滅茶苦茶迷惑。」

「!……………」

レンの答えを聞いてクラスメイト達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたエリオットとリィンはフィーに視線を向け、視線を向けられたフィーはジト目でレンを見つめて指摘し、ラウラは厳しい表情でレンを睨んでいた。



「クスクス、もしレンの二刀流剣術を見たいのだったら、レンに”剣を抜かせると判断させるくらいの実力”で抜かせる事ね♪ま、お兄さん達は当然無理として、サラお姉さんでギリギリできるかどうかだと思うけどね♪」

(うわ……っ!幾ら何でも命知らず過ぎる発言だろう、最後の発言は……!?)

(フン、終わったな、あのガキ。)

そして小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの話を聞き、何が起こるか察したマキアスは小声で驚いてサラ教官を見つめ、ユーシスは嘲笑してレンを見つめた。

「へぇ……?どうやら周りから”天才少女”ってもてはやされて来た影響で、このあたし相手にそんな舐めた事を口にできるなんて随分と度胸があるじゃない。どうやら編入早々に”教育”としてあんたがパトリック達に教えたように、”上には上がいる”事をあんたに教える為にその天狗になった鼻を根元からへし折る必要があるみたいね……?」

一方サラ教官は不敵な笑みを浮かべて自身の得物である強化ブレードと銃を構え

「うふふ、頑張ってレンに二刀流剣術を使わせる事ね♪そしたら、レンの”本気”をちょっとだけお兄さん達にも見せてあげるわ♪」

サラ教官の行動を見てサラ教官と模擬戦をする事になると察したレンは魔導杖を構えてサラ教官と対峙した。

「レ、レンちゃん……!今ならまだ間に合いますからサラ教官に謝った方がいいですよ……?」

「そ、そうだよ……!サラ教官って、滅茶苦茶強いんだよ……!?」

一方その様子を見たエマとエリオットはレンを止める為にそれぞれ心配そうな表情でレンに声をかけた。



「うふふ、心配無用よ♪それにレンにとっても噂でしか知らないサラお姉さんの実力を知るちょうどいい機会だもの♪」

「フフ、そんな上から目線な事を言っていられるのも今の内よ。」

二人の心配を笑顔で返したレンの様子に不敵な笑みを浮かべたサラ教官は凄まじい闘気をさらけ出し

「クスクス、この様子なら二刀流剣術を使う事になりそうで、期待できるわね♪」

レンも小悪魔な笑みを浮かべながらもサラ教官に負けないかのように凄まじい闘気をさらけ出した。

「……二人とも何と言う気当たりだ。」

「これは………間違いなく凄まじい”風”が吹き荒れる戦いになるだろうな……」

二人がそれぞれさらけ出している凄まじい闘気を肌で感じたラウラは驚き、ガイウスは真剣な表情で二人を見つめていた。

「それじゃあ”実技テスト”の補習と行きましょうか………トールズ士官学院・戦術教官、サラ・バレスタイン―――参る!」

そしてレンはサラ教官との模擬戦を開始した――――――!


 
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