| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔女に乾杯!

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

10部分:第九話


第九話

                  第九話 笛の音
 五人と紫の魔女は対峙していた。木の上と下で互いに見合っている。
「紫の魔女っていったわね」
「ええ」
「一体何であたし達の学校の旗を盗もうっていうのよ」
「貴女達への挑戦状よ」
「挑戦状」
「そう」
 華奈子に対して答えた。
「貴女達はこの学校の魔女よね。だから挑戦したいのよ」
「何で!?」
「簡単よ。どっちが魔女として凄いのか」  
 今度は梨花の問いに答える。
「試してみたいのよ。どう?」
「その為に校旗をとるっていうの?」
「そうよ。そうでないと貴女達も来ないでしょ」
「確かに」
 春奈の問いに答えると赤音が同意した。それを美樹が嗜める。
「こら」
「御免」
「さて、準備はいいかしら。こっちはもうできてるわよ」
「やって御覧なさいよ」
 売り言葉に買い言葉だ。華奈子が受けて立った。
「あんたの魔法がどんなのか知らないけどね、あたし達だって意地があるんだから」
「意地」
「そうよ。見てらっしゃい」
 赤い小さなステッキを取り出した。
「あんたなんかこれでやっつけちゃうんだから」
「できるの?」
「馬鹿にしていられるのも今のうちよ」
 そこから火の玉を出した。小さいがはっきりとしたものであった。
「これ、よけられるかしら」
 それを放ってきた。火の玉は一直線に紫の魔女へ向かって行く。
 魔女はよけようともしない。ただ木の上に立っているだけである。
「うふふ」
 魔女は笑っていた。そして笛をまた吹きはじめた。
「また笛を」
「待って」
 見れば火の玉が掻き消された。そして後には何も残ってはいなかった。煙の様に消えてしまっていた。
「あたしの火の玉が」
「それが貴女の魔法ね」
「ええ」
 五人に対して答えた。
「私の魔法は貴女達のそれとは少し違うの。笛とかを使うのよ」
「笛を」
「そうよ。例えばこうやって」
 再び笛を吹きはじめた。それは何処かで聴いた曲だった。
「この曲・・・・・・」
「音楽の授業で習ったわ」
 五人は口々に言う。そして最後に梨花が言った。
「ブラームスの子守唄ね」
「そうよ」
 紫の魔女は頷いた。
「この曲を聴くとどうなるか、わかるわよね」
「そんな・・・・・・あっ」
 五人も使い魔達も崩れ落ちた。眠気が彼女達を襲ったのである。

第九話   完

                                2005・6・4

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧