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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第一章 WORLD LINK ~Grand Prologue~
  なのはA's ~やっとお話しができるの~


(クソッ!なんつーバカ魔力・・・それにこの精密制御・・・やっぱつええ!!!)

大空の世界でヴィータがなのはと交戦を初めて五分。
ここにきてのなのはに抱いた感想はそれだった。

強い

ただそれだけの事実が、ヴィータをこの世界に捉えて離さない。


「さあ!!お話、聞かせてもらうからね!!!」

「まだ負けてねーよ!!」

そのヴィータだが、すでに疲れが現れてきている。
無理もない。

なのははあくまで「ヴィータを疲れさせてから話を聞く」が達成できればそれで勝ち。
だがヴィータは勝ったうえに逃走、下手をすると他の仲間も助けにいかねばならない。
しかしこのどこまでも広がる青い空では、どう逃げようともなのはの視界に映ってしまう。

(こいつは明らかに砲撃タイプの魔導師だ。無理に逃げようとして離れたらその瞬間に撃ち抜かれちまう・・・)

故にヴィータは勝つしかないのだ。
ここから逃げ出すためにはそれしかない。
だが、それは容易ではない。

ヴィータは距離をとっての戦闘が不得意だ。
大抵の魔導師相手なら砲撃ごとぶっ叩いて粉砕するだけだが、なのはクラスだとそうもいかない。

だからヴィータは考えを改めた。
そしてヴィータはなのはに声を飛ばした。

「おい!!高町なんとか!!」

「なのはだよ!!」

「なのんは!!」

「な・の・は!!!」

「うっせえ!!・・・確かにオメーは強い。それだけは認めてやる!だけど!!お前がどんなに強くても、あたし達にはやらなきゃならないことがあるんだよ!!!!」
(あたしたちは闇の書を完成させなきゃならねえんだ・・・・・つっても、最近なんか変な感じしてんだけどな・・・)

「だから!!それを話してって言ってるの!!」


ドウッ!!!

なのはが再びアクセルシューターを放つ。
ヴィータがそれを横に避けるが、大きくカーブしてヴィータに再度迫ってくる。

前にしたように、後ろにスフィアを連れてなのはに飛んでいくヴィータ。
だが、今回とった行動は違った。

なのはすれすれに通過し、素通りしてそのまま逃走を図ったのだ。
このままではジリ貧になる。
ならば、とヴィータは多少のダメージは無視しでもここから離脱することを選択した。


「ッ!?」

なのははその行為に驚きながらも、自分にスフィアが当たらぬように制御する。
だがそうなることはすでに知っているヴィータは、振り返らずに飛び去ってゆく。


だが、いかんせんスフィアの方が早い。
一発、二発と当たっていくと、スピードは落ちたが、確実に距離は稼いでいった。


(制御できるからって、そのまま戦えるわけがねえ・・・だったらその間に逃げてやる!!)


最後に三発同時にヴィータに命中し爆発したが、まだ落ちてはいない。
片腕を抱えてはいるが、まだ戦闘自体は続行可能だ。

(よっしゃ!!勝った!!あとはこのまま・・・・)

逃げよう、というヴィータの思考が固まる。
なぜならば、感じとったからだ。


(なんだ・・・これ・・・いや、知ってる・・・これは砲撃魔導師に狙われた感覚!!だけどっ!!)

バッ!!とヴィータが後ろの方に振り替える。
そこには自分にデバイスを向け、その鋭い眼光ですでに自分を捉えたなのはがいた。
だが距離はかなり離れている。


もし撃てるのならば、長距離なんてもんじゃない・・・それは、超々度距離砲!!!!


「な・・・こんな距離であたしを捉えて命中させるなんてそんなこと・・・・」

そこでヴィータがハッ!!と気付いた。
たしかこの少女は、まさかと思うようなことをやってのける。
まさか・・・・まさか、まさか!!!!

そのヴィータの知りようもないレイジングハートが、なのはの手の中でつぶやいた。

《ですから言ったでしょう。私のマスターなら、できると》


「いくよ!!レイジングハート!!!」

《OK、マスター。カートリッジロード。ディバイン》

「ディバイーーーーーン!!!!!」

《バスター》

「バスターーーーーーーーーー!!!!!!」


ヒィィィイイイイイイイ・・・・・・ドバウ!!!!!


桜色の砲撃が、音速を越えてヴィータに迫る。


ドッパン!!パァン!!パァン、パァン!!!!

あまりの威力とスピードに、途中の大気がはじけ飛び、いくつもの空気の壁をぶち抜いていく音が聞こえた。


「う・・・うをおおおおおああああああああああああああ!!!!!!!」

その砲撃の衝撃波にさらされながらも、ヴィータは必死になってその砲撃を身体を捻り、回転し、地面を転がるかのように避けることに成功した。


ドゴオオオオオオオオ!!!!!

後方で砲撃が爆発し、その爆風でヴィータはなのはの方に近づいていって、戻ってしまう。
なのはとの距離は目測で百メートルくらいか。

「チッ!!なんてやろーだ・・・・」

「お話、聞かせてもらうよ!!」

なのはがデバイスを向け、ヴィータに宣告する。
それにしてもこの少女、なんとも恐ろしい「お話」をするものである。


(どーする・・・このままじゃ捕まっちまう・・・・・・・あれ?)


と、そこでヴィータがふと気付き、後ろの方を振り向いた。
そこはディバインバスターが爆発した地点で、もうすでにそこに爆炎はなかったが、ヴィータはそこを見つめて思った。


(確かあの砲撃は直線型・・・はずれたらエネルギーが切れるまでどこまでも飛んでいくはずだ・・・だったら・・・・あれはいったい何にぶつかって爆発したんだ?)



その考えに至ったヴィータは、すぐさまに思いついたことを実行した。
その手に魔力を込めた、バスケットボールくらいの大きさの球を作り出す。

なのはが身構えるが、ヴィータはそれを撃ってくることはしなかった。
だから、なのはは急なその攻撃に対処することはできない。


その行動とはまさしく、ヴィータがその球を、ハンマーで打ち砕いたことである!!


球が割れ、中から膨大な光と音が噴出される。
衝撃はないが、そのあまりの光と音の暴力に、なのはが若干落ちる。

だが術者であるヴィータには何の影響もない。
その隙にヴィータがとった行動はまさしくこの世界、否、この空間からの脱出の手がかりを見つけることだ。


そして、見つけた。

空間の一部。
雲の漂うそこが、ほんのわずかだが歪むのを視認したのだ。



「アイゼン!!!」


ヴィータが特別でかい鉄球をそこに叩きこむ。
相手のバリアや砲撃をぶち壊すことに特化したヴィータの攻撃に


その空間が割れた。


青空は消え、元の夜の闇が戻ってきた。
後ろのビルの屋上に、なのはのディバインバスターが当たった跡がしっかりと残っていた。

「よっしゃあああああ!!!!」

「あぁっ!!」

ヴィータがガッツポーズをとり、なのはが項垂れる。


そう、彼女たちはいたのは幻影の中だった。
だが、幻影と言ってもただそんじょそこらにあるものではない。

説明すると、実際の幻影は武装局員たちの物だ。
だが、それだけでは飛び回られると抜け出られてしまうし、足場が急になくなったり、あったりするところが出てしまう。

そこで蒔風が補助をしていたのだ。
結界の中には四角形になるように各「龍虎雀武」が、三角形になるように各「獅子天麟」が突き立てられている。

蒔風がしたのは陣を敷き、幻影をある特定化に固定すること。
言ってしまえば、幻影の中の人物を中心に幻影の範囲が移動する、というものだ。
だからどこまで飛んでも幻影を突き抜けることはないし、足場もあるところにしかない。

だが、強度自体は武装局員のみの物だ。
蒔風は幻影などのそういった類は使用しない。

出来ないわけではないし、むしろ得意な分野だが、今まで使ったことがないのだからしょうがない。
それに、そういったことを真に得意とするのは「賢者」や「聖人」のタイプの人間だ。





ヴィータの幻影が破られたことで、他の幻影も解除されていってしまう。
地上にはアルフと取っ組みあうザフィーラの姿が確認された。


そして

「ぐああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


幻影が解かれ、シグナムの叫びが聞こえてきた。


「シグナムッ!?」

ヴィータとザフィーラが声のした空を見る。

そこにはシグナムと、片手でシグナムの頭を前から鷲掴みにしている蒔風がいた。
アイアンクローをする蒔風の腕を、シグナムが両手でつかみ、足をばたつかせて抵抗しているが、蒔風は一切動かない。
片手をポケットに入れ、ただシグナムの顔を掴んでいる。
レヴァンティンはビルの屋上に落ちている。


「な・・・なんだよあれ・・・おい!!あいつ、あんな奴なのか!?前と全然違えぞ!!」

確か前に一緒に戦って巨大ガメを撃退した時はあんなふうな奴じゃなかった。
何かがおかしくなってる。

ヴィータがなのはに問うが、その光景に驚いているのはなのはも同じだ。
だが、すぐに合点がいった。

ビルの屋上に倒れているフェイトを見つけたからだ。
だが、フェイトが負けたくらいじゃあそこまで怒る蒔風ではないというのも知っている。

おそらく・・・・

「誰かが・・・戦いに乱入したんだと思う」

「だれかって・・・だれだよ!!!」

『仮面の男だ』

そこにクロノの念話が入る。

『クロノ君!!』

『いきなり現れたこいつが、フェイトのリンカーコアを非道なやり口で奪ったんだ!!!』

「そん・・な・・・」

「おい!!何があったんだよ!!!」

ヴィータがなのはに説明を求めるが、それよりも早く結界外のシャマルから念話が入った。


『みんな!!今から結界を壊すから、その隙ににげて!!!』

結界の外でシャマルが叫ぶ。
傍らには仮面の男、そして少し離れてバインドされているクロノがいる。

「闇の書よ・・・守護者、シャマルが命じます。眼下の敵を打ち砕く力を・・・今、ここに!!」

闇の書のページが次々と消失していく。
それに伴い、その中心にとんでもない量の魔力が蓄積される。

そしてそれは稲妻のように天空へ昇り、周囲の雲を巻きこんでいく。


「やめろ!!ここら辺一体を吹き飛ばす気か!!!」

「大丈夫です・・・街は壊しません。中の魔導師も、適切な方法をとれば回避できます」

シャマルが弁解する。
彼女自身だって、これが言い訳にすぎないことはわかっている。
だが、今の彼女にはこれしか方法がないのだ。

「それでいい」

そう言い残して男は消えた。
だが、クロノのバインドは解かれることがない。


「結界だけ破壊して・・・撃って、破壊の雷!!!!」

《ゲシュリーベン》

闇の書がその命に呼応する。
漆黒の雷が天空に溜まり、一気に結界を破壊しようと迫ってきた。





「?・・・・ああ・・・面白そうなケンカ相手じゃねえかよ」

そういったのは結界内の蒔風である。
すでに気絶してしまったシグナムをフェイトの隣に丁寧に置き、上空でバリアを破壊しようとしている雷を見る。


「おお゛い!!てめえらぁ、行くぞゴラァ!!!!!」

蒔風の号令に、各地点に突き刺さった計七本の剣が呼応する。

結界内に巨大な四角形の陣、そして三角形の陣が現れる。
さらにその中心地に、「林」を突き立てる。



「あはははははははははは!!!!これでやぁっとスッキリできそうだ!!!!」



バガァ!!!!

結界が破壊され、雷が地面に向かって突き進む。
だが、それが地面に到達することはない。

蒔風の二つの陣と、剣による防壁に阻まれているからだ。
地面からドーム状に展開されたバリアが雷の進行を拒む。
四神、三獣の力はもちろんのこと、防御に特化した「林」の力は、闇の書のページを半分埋めた魔力をもってしても破られることはない!!!


「ぎいいいっ!!!!いいねえいいねえ、サイコォだねえ!!!やりがいのあるケンカ相手だクソッタレぇ!!!」


それに驚愕したのはシャマルはもちろんのこと、ザフィーラとヴィータ、さらにはなのはたちである。

あの雷がどれほどの魔力量で生成されているかは一瞬で分かる。
ヴォルケンズなどは闇の書のその威力は知っている。
だからこそ驚愕した。

あれを受け止められる人間が、存在していたのだろうか、と
事実、蒔風は人間の域を越えた存在なのだが。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」




「そ、そんな・・・・これでも破れないだなんて!!!!」

シャマルの顔が青くなる。
仮面の男が差し出したフェイトのリンカーコアは、もうすでに使ってしまっている。
それでも、蒔風のバリアは破られない。

「こ、このままじゃ・・・ページが!!!」

次々と消失していく闇の書のページ。
そしてついに最後のページまで消えてしまった。

雷が消える。
蒔風のバリアは黒く焦げながらも、依然としてそこに存在し続けている。




パキン

そこでクロノがついにバインドを崩した。
だがシャマルはそれには意を示さない。
目の前の光景に、衝撃を受けるばかりだ。

「な・・・なんで・・・」

そんなシャマルにデバイスを向けることなく、クロノが言った。

「いいから、大人しく投降するんだ。あれを見ただろう?あれからは逃げられないよ」

「・・・・わかり・・・ました」

そう言って闇の書をしまい、投降するシャマル。
そこに通信が入る。

どうやら、結界内でも各騎士は投降したようだ。
無理もない。

彼らのリーダー「烈火の将」シグナムが敗れ、さらにあれだけの力を見せつけられては、抵抗するだけ無駄という結論に至った。


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「おいっす!!俺、スッキリ!!!」

ツルン、とした顔をして、蒔風がみんなの前に来た。


ちなみにここはフェイトの自宅、現地本部のリビングだ。
シグナム達は特に大きな枷はさせられておらず、簡単な手錠をかけられただけだ。


「でもまあ、ごめんなさい。まだ痛いとこないか?あったら言ってくれ。本当にごめん。あんなんにつきあわせちまって・・・・」

そう言ってシグナムに頭を下げる蒔風。

「あれは・・・仕方のないことだ・・・・」

「そう言ってもらえると助かるけど・・・・」

蒔風がシグナムにもう一度頭を下げ、着席した。


「さて、君たちの話を聞きたい。まず・・・一応名前を」

クロノに促され、皆自己紹介をしていく。

「烈火の将・シグナム」

「紅の鉄騎・ヴィータだ」

「蒼き狼・ザフィーラ」

「風の癒し手・シャマルです」


「よろしく」

「あ、ああ・・・」

握手を求めるなのは達に困惑しながらも、自己紹介を終えた。


「やっと名前が知れたよ~・・・え?シャマル?」

シャマルの自己紹介に、蒔風が反応した。



シャ○先生監修料理教室

シャ○(ポーン)

シャマル?(ピーン)

シャマル!!(ピンポーン)




「あんたかあああああああああ!!!!!!!!」

「きゃあ!?な、何がですか!?」

「なあ・・・この人の料理、どんなだ?」

そう残りの三人に蒔風が訊くと、三人はそろって視線を逸らし、何も言わなくなった。

「なんで!?なんでみんな何も言わないの!?何か言ってよ~!!」

「やっぱりか・・・・」

「ち、違いますもん!!私、料理下手じゃないもん!!!」

(((((下手なんだな)))))

この瞬間、皆の想いが一つになった。




「ま・・・まあ、それは置いといて」(置いとかないで~~)

「闇の書を完成させようとした理由、教えてもらいたい」

「・・・・わかった。話そう・・・・」

シグナムが口を開いて話し始めた。




それは幸せな、そして残酷な話だった。

彼らの主は、まだ小さな少女だ。
彼女の誕生日に闇の書が反応し、ヴォルケンリッターは彼女の前に姿を現した。

この魔法文化のない世界の住人の少女は、シグナムからの説明に戸惑いながらも、最後にはこう言ってくれた。


「じゃあ、今からみんなうちの家族や!!」


これには騎士たちも驚いた。
自分たちはプログラムだ。闇の書と主を守るためにだけ存在している、言わば道具。

今までも多くの主に仕えてきた。
そのどれも力におぼれ、強欲で、彼らの事など一切考えもしないような人間たちだった。

だが、そんな彼らに彼女は「家族」だと言ってくれた。
自分たちのために服を買ってくれた。
自分たちのために生活用具をそろえてくれた。

そして何より、自分たちのために笑ってくれた。

自分たちを意志ある「ヒト」だと認めてくれた。
初めての経験だった。
そして、それは騎士たちの欠けていた何かを埋めていった。



闇の書の蒐集に関しても主は

「それは人様の迷惑になるからダメ。このままのんびりみんなで暮らしていこな?」

と、言ってそれを許すことはなかった。


シグナムはある日聞いた。
貴女に望む物はないのですか?と。

それに少女はこう答えたのだ。

「望むもんはもう手に入ってもうた。こんな素敵な家族がおるのに、これ以上何を望むんや?」


少女には家族がいなかった。
両親は早くして他界。
今は父親の知り合いという親切な「おじさん」が、財産管理や資金援助をしてくれているだけなのだそうだ。

故に、彼女が望むものは「家族」だった。
そんな当たり前の風景を、少女は何よりも求め、そして手に入れることができた。
これ以上望むものなんて、あるのだろうか。

もう一人でご飯を食べなくてもいい。
もう一人で寝なくてもいい。
もう一人で買い物に行かなくてもいい。

それは幸せだった。

今はみんなでお話ししながらご飯を食べれる。
今は一緒に寝てくれる人がいる。
今は今晩の料理を話し合いながら買い物ができる。

そしてその幸せな生活に、騎士たちも確実に変わっていった。

すさんだ想いは穏やかに
乾いた心は潤い
つり上がり、いつもキツイ表情だった顔はいつの間にか笑顔になっていた。

帰れば幸せになれる場所がある。
笑顔でお帰りと言ってくれる人がいる。
いつでも主の笑顔が出迎えてくれる。

ああ・・・自分たちはもうあんな戦いの日々には戻らなくてもいい・・・・
今のこの幸せを守っていこう。
この主こそ、我らの求めた・・・・・・





だが、この世界はかくも残酷なものなのか。
少女の身体は蝕まれていた。

未完成である闇の書の膨大な力に、少女の身体が耐えられないのだ。
少女の健康どころか、まともな生命活動すらをも阻害する、呪いのプログラム。
このままではいずれ少女の全身を浸食し、死に至らしめてしまう。
これを防ぐにはたった一つしか方法はなかった。


闇の書を完成・安定させ、主に流れ込む負の魔力を浄化する。


そのために騎士たちは決意した。
今この幸せを守るために、一体何を惜しむことがあろうか。

そう
いままでの主の中では最も小さな、ありふれた願いを抱き
そして何よりも貴い願いを持った、彼女の幸せを


あの主のために、自分たちはいくらでも、どんなことでもして見せよう。
そのためには主の命にも逆らおう。
だが、その罪は我らだけのもの。決して主に知られてはならぬ。
その名を穢さぬために、決してに命を奪ってはならぬ。

彼らは本物の騎士だった。
闇の書に選定されし王に使える、荘厳たる騎士たちだった。


そうして今日に至る。




その話を聞き、クロノが次の質問をした。


「その子の・・・名前は?」

「・・・・・・・」

シグナムをはじめ、四人の口が閉ざされる。

「大丈夫だよ。絶対に変なことはしない。なに、闇の書を調べて、その欠陥をどうにかすればいいんだろ?」

「・・・・そうだが・・・信じていいのか?」

シグナムが疑いの目をクロノに向ける。
それは仕方のないことだ。
クロノもそれを理解しているが、それを打ち破る言葉を持っていない。

と、そこで蒔風が口を出した。

「あなた達の願い・・・それはすばらしい物だ。一つ聞こう。どんな罰でも受ける覚悟が?」

「ある」

その返答はシグナム一人からのものだったが、それは四人の意志だった。

「では、主が事実を知ったとき、主にすべての事を任せられるか?」

「それは・・・・」

「自分にも罪があると言ったとき、共に贖罪する覚悟はあるか?」

「・・・・・・だが、この事件の主犯は」

「確かにあなた達だ。だけどそれで、はいそうですかと見捨てるような主じゃないんだろう?」

シグナムたちは考えた。
そうだ。
主はそのような人物ではない。
むしろ、自分が罰を受けるから、私たちを見逃してくれというようなお方だ。

もしそれを拒んだら、それは主の誇りを穢すことになる。
それならば、主と共にその罪を清算していこう。
王と共に、歩き続けよう・・・・

「わかった・・・言おう」

「そうか・・・ありがとう」

「だが、あとでお前の話も聞かせてもらう」

「俺の?・・・・ああ・・・わかった」

「・・・・われらの主、その名は・・・・「八神はやて」」




「なに?」

「え?はやてちゃん!?」

「その名前って・・・・」

なのはとフェイト、蒔風が驚きの声を出す。
それにクロノも驚き、聞いた。

「二人とも、知ってるのかい?」

「俺はこないだ図書館で会った」

「私はすずかちゃんのお友達ってことで・・・写真でしか見たことないけど・・・」

「うん。私も聞いたよ。すずかのお友達で、八神はやてって子がいるって・・・」


「二人とも、すずかちゃんの友達だったんですか・・・」

「シャマル、お前知ってるのか?」

「もう、忘れちゃったんですか?はやてちゃんのお友達の、月村すずかちゃん!」

「おー、いたなそんなの。はやての友達の友達だったのか」


ヴォルケン組はヴォルケン組で驚いていた。

世間は狭いものである。



「んじゃ、行こうか」

「え?どこに?」

「はやての家にさ。善は急げだ。今はいるよな?」

「ええ・・・あ、闇の書どうしよう・・・」

「あなたが持っていてもかまわないよ」

「クロノ?いいのか?」

闇の書を持つシャマルに、クロノが許可し、蒔風が訊いた。

「ああいいんだ。彼女たちにもう戦闘の意志はない。だったら、持っていてもかまわないだろう?」

「おまえ・・・ほんっとーに、丸くなったなぁ・・・」

「誰の影響だと思ってんのさ。さ、いこう」


そうしてヴォルケンズ、なのは、フェイト、クロノに蒔風の八人が八神家へと向かう。

そこで何が待ち受けているのか・・・



この物語はレールを外れた。
だが、向かう先は同じであることを、まだ誰も知らない。







to be continued

 
 

 
後書き

アリス
「オリジナル展開ですね。もう捕まっちゃったんですか!?」

ええ
だってあの結界で蒔風がいるんですよ?
逃げられるわけないじゃないですか

アリス
「それはそうですけど・・・・どうするんですか?」

大丈夫です
なんとか最後までつなげましたから

ああ、あとヴィータがなのはに砲撃撃たれたとき
あれ別バージョン考えてました

アリス
「どんなですか?」

えっと・・・・


前略

「な・・・こんな距離であたしを捉えて命中させるなんてそんなこと・・・・」

そこでヴィータがハッ!!と気付いた
この考え方・・・・まるで漫画のやられキャラ!!!

そして迫るディバインバスター

「ちくしょおおおおおおおおおおお!!!!!!」

ドカーーン


でした

アリス
「ヴィータやられてるじゃないですか・・・」

だからやめました。
なんか雰囲気にも合わなかったし。





アリス
「次回、王、誘拐」

ではまた次回











我ら守護騎士、あなたとの誓いを、一度だけ破ります
我らの不義理、お許しください! 
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