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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第10話

~ジオフロントA区画~



「ここが”ジオフロント”か……話には聞いていたがかなり広いな……」

「他にもB、C、Dとあるのですから、全て合わせたら一体どれほどの広さになるんでしょうね?」

「へえ~……そんなにも多くの区画があったんだ。」

ジオフロント内を進んでいるヴァイスとアルは興味深そうな表情で周囲を見回し、アルの言葉を聞いたエルファティシアは意外そうな表情で言い

「ああ。……フム…………しかしこれほどの広さなら撤退にも奇襲にも使えるな…………」

エルファティシアの言葉に頷いたヴァイスは考え込み

「全くもう、すぐに”戦”に結び付けるんだから…………そう言えば、ヴァイスハイト。あの、リィンだっけ?あの子、何の為に特務支援課に来たのよ?どう考えても、ただの留学の為に来たわけじゃないでしょう?」

ヴァイスの話を聞いたエルファティシアは呆れた後、ある事を思い出して尋ねた。

「……何でそう思ったんだ?」

「あのね。私は何百年、”エレン・ダ・メイル”を守る”王”をやってたと思うの?”王”としての目で見ればあのリィンって子がメンフィルの何らかの思惑による派遣だってぐらい、最初っから気付いているわよ。ただの留学なんて、どう考えてもありえないし、メンフィルにとってもメリットがないわ。それにどう考えても貴方自身が今のクロスベルの状況で干渉し始めたメンフィルの出身者を自分の懐に何の考えもなしに入れるとは思わなかったもの。」

「しかもヴァイスを暗殺しようと目論んでいたフェルアノと違って”男”ですしね。」

そしてヴァイスに尋ねられたエルファティシアは呆れた表情で答えた後真剣な表情で言い、アルは話を続けた。

「……さすがだな、エルファティシア。それとアル。有能な者なら男でも普通に採用するぞ?俺は。」

2人の話を聞いたヴァイスは静かな笑みを浮かべた後、苦笑しながらアルを見つめて言い

「しかし私の記憶ではセンタクス軍の有能な将の約8割は女性だったと記憶していますが。」

「……たまたま敵対した有能な将で女性が多かっただけの話だ。」

「よく言うわよ……貴方、結局味方にした将全員と肉体関係の間柄だったじゃない。」

アルの言葉に答えたヴァイスの話を聞いたエルファティシアは溜息を吐いた後からかいの表情でヴァイスを見つめ

「フッ……そう言われると反論の余地もないな。―――話を戻すがあのリィンが警察の支援課に来た理由だが……――――いずれ始まるクロイス家との戦いに向け、クロスベル中を調べる諜報員のような役割だ。」

「ハアッ!?クロイス家って…………新市長の!?一体どういう理由で……」

ヴァイスの話を聞いたエルファティシアは驚いた後真剣な表情でヴァイス達を見つめた。



「その前に一つ確認しておくが……確かエルファティシアはレンに会った事があるんだったな?」

「?ええ。ミシュラムでルバーチェと戦った時だけどね。あの娘がどうかしたのかしら?」

「……ヨアヒムによるクロスベル襲撃や薬物事件が終わった後、レンは”星見の塔”にある膨大な数の本を自分を守る為に所属している親衛隊員達と共に本の中身を全て写し、写した書やデータを本国に持ち帰って、学者や魔術師達と共に調べたらしいんだが……そこでとんでもない事がわかった。」

「……一体何がわかったのかしら?」

ヴァイスの説明を聞いたエルファティシアは目を細めて尋ね

「”幻の至宝”――――”虚ろなる(デミウルゴス)”がこのクロスベルの地にかつて存在していたのです。」

「”至宝”……確かそれって”空の女神(エイドス)”が残したとか言われている古代遺物(アーティファクト)だってロイド達から聞いた事があるけど……」

アルの話を聞いたエルファティシアは真剣な表情で呟き

「ああ、そうだ。それでその”幻の至宝”とやらが持っている力だが……これがまたとんでもない力でな。最初にリウイ達から話を聞いた時、冗談かと思ったぞ?」

「……一体どんな力なのかしら?ロイドやエステル達から聞いたけど、”輝く環”とかいう”至宝”は人の願いを叶え続けるというとてつもない力だったらしいけど……」

ヴァイスの説明を聞いたエルファティシアは目を細めて尋ね

「……因果律の操作です。」

「何ですって!?それって下手をすれば”時”をも操れるじゃない!?」

重々しい様子を纏って答えたアルの言葉を聞いたエルファティシアは驚きの表情で言った。

「……話を続けるぞ。その”幻の至宝”とやらはどうやら高位な人格が与えられていたようでな……しばらくは因果律を操作して”人”という存在を正しい道へと導いてきたらしいが……ある問題が起きた。」

「……”心”に限界に来たのね。人格が与えられたという事は”人”が持つ”心”を与えられたも同じ事。因果を操る上で人が持つ”(さが)”や”業”、世界の不条理を知って行けばいずれ”心”が破壊されるのは時間の問題よ……」

そしてヴァイスの説明を続けるようにエルファティシアは重々しい様子を纏って呟き

「ええ。そして心が破壊されて行った”虚ろなる(デミウルゴス)”は暴走して守るべき人々を傷つけるのを恐れてある判断をしました。」

「……大体予想できているけど、一応聞いておくわ。一体どんな判断をしたのかしら?」

「……”自分という存在”の”因果を世界から消滅させる”という事をしたんです。」

「……そう………やっぱり……………それでその話に何故、あの新市長の家系が関係しているのかしら?」

アルの説明を聞いて頷いたエルファティシアは真剣な表情で尋ね

「……失われた”至宝”と同等の存在(もの)を生み出す為に生み出された技術――――”錬金術”という魔導技術を生み出した集団がクロイス家という一派の集団だったらしい。」

「”錬金術”………………!?待って……!確かロイド達が聞いたヨアヒムの話で500年前、アーティファクトを研究していた錬金術師がいたと言っていたけど……まさか!?」

ヴァイスの話を聞いたエルファティシアは考え込んだ後ある事に気付いて血相を変え

「ああ。その錬金術師――――クロイス家が”幻の至宝”の代わりとなる”核”を生み出し……それを”教団”という傀儡を用意し、その者達に委ねて育てさせ……さらに『錬成』という概念を応用した巨大な魔法陣を用意し出したらしい。」

「”教団”!?まさかそれが……!」

「そうだ。……”D∴G教団”……空の女神(エイドス)の存在を否定し、真なる神を生み出す為に多くの子供達を犠牲にした外道の連中共に資金を提供する為にクロイス家……”銀行家”という表の仮面を被った錬金術師が繋がっていたんだ。」

「………………………………なるほどね。じゃあ、あのキーアって娘は…………」

「ええ…………クロイス家が生みだした”幻の至宝”の代わりになる”核”だと古文書に書かれた絵にあったそうです。」

「そう………………そしてそのクロイス家がクロスベル市長というクロスベルの支配者として出てきたことで”何か”が起こるとメンフィルは警戒している訳ね?」

ヴァイスとアルの話を聞いたエルファティシアは頷いた後尋ね

「ああ。そんなとんでもない力を手に入れてする事と言ったら大体予想できるだろう?」

「…………世界中の支配ね。そうなって来ると当然メンフィル帝国の敵にもなる…………だからいずれ起こるクロスベル――――クロイス家との戦いに向けての先兵があのリィンって子な訳ね………」

自分の言葉に答えた後尋ねられたヴァイスに静かな表情で答えた。



「そうだ。……だからこそリィンにはこの魔都で何があっても生き残ってもらう必要があるからリウイがリィンと同じ流派の剣士であり、”剣聖”の異名を持つエステルの父親に誰にも話さないという条件で事情を話した後リィンを鍛えるように依頼して、その依頼を受けたエステルの父親がリィンを鍛えたらしい。まあ、さすがにリィン本人には詳しい事は教えられていないがな…………」

「それはそうでしょう。どう考えても訓練兵が知っていいような話ではないわ。…………で?それを聞いた貴方達はどうするつもりなのかしら?」

「当然、戦うさ。そして俺達はその戦いのどさくさに紛れてクロスベルを奪い取り……そこからギュランドロスが語った夢が始まるという訳だ。勿論、あんな外道な連中と繋がっていたクロイス家の者達―――ディーターとマリアベルは殺す。あんな外道共に資金を提供していた事はさすがに許せんし、生かしていても害にしかならん。……その為にも俺とアルは市民に慕われる為に…………ギュランドロス達は後に自分達の兵とする警備隊員達に慕ってもらう為に、それぞれの人気取りに奔走しているという訳だ。」

「なるほどね…………………………一つだけ聞いていいかしら?」

「何だ?」

「貴方達はキーアって娘をどうするつもりなの?下手をすれば時すらも操れるような”魔導功殻”よりも危険な存在を…………」

「フッ…………それは俺達ではなくあの娘を育てている”親達”が決めるべきだろう?」

目を細めて尋ねてきたエルファティシアにヴァイスは静かな笑みを浮かべて答え

「あら、意外。戦争を有利にできるとてつもない力を手に入れるチャンスがありながら、ロイド達にあの娘の事を委ねるつもりなのかしら。」

ヴァイスの答えを聞いたエルファティシアは目を丸くして言った。

「逆に聞くが俺やギュランドロスがあんな小さな子供を利用してまで戦争に勝ちたいと思うような非道な者だと思っているのか?」

「フフ、確かにそうね。民を大切にしている貴方達2人が一番嫌うやり方ね。」

そして苦笑しながら尋ねたヴァイスにエルファティシアは微笑み

「後はキーアが女の子だからでしょうね。」

「あ、それもありえそうね♪何せヴァイスハイトだもんね♪」

アルの言葉を聞いて微笑みながら頷き

「そこで納得されるのもどうかと思うがな…………まあ、あんな可愛い女の子が悲しみで涙を流す所は見たくない事も事実だが。――――それでエルファティシア。改めて聞くが俺達の”覇道”を共に歩んでくれるか?」

2人の様子を見たヴァイスは苦笑した後静かな笑みを浮かべて呟き、そして真剣な表情になってエルファティシアを見つめて尋ね

「…………IBCで言ったでしょ。私は貴方達がどんな道に進もうと一緒に生きて行くって。ん…………!ちゅ……」

尋ねられたエルファティシアはヴァイスに微笑んだ後ヴァイスと深い口付を交わした。

「…………そうだったな………………フム……なら、改めて互いの思いを確かめるという意味でアルと一緒にここで”する”か?」

エルファティシアとの口付けを終えたヴァイスは口元に笑みを浮かべて片手でエルファティシアの胸を軽く何度か揉み

「あん!?全くもう…………少しは時と場所を考えなさい。今夜アルと一緒にたくさん相手してあげるからそれまで我慢しなさい。…………ね?」

「いつの間にやら私も参加する事が決定している事に…………まあ、別にいいのですが……」

胸を揉まれたエルファティシアは声を上げた後呆れた表情でヴァイスを見つめた後魅惑的な笑みを浮かべ、アルは苦笑していた。

「フッ…………なら今夜を楽しみにしておこう。行くぞ、2人とも。」

「はい。」

「ええ。」

その後3人は手配魔獣を倒した後ロイド達と合流する為に合流場所である警察本部に向かった……………… 
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