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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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1章~予兆~新たなる日々~ 第9話

アルタイル・ロッジにおける逮捕劇から2日後―――



~特務支援課~



ロイド達は端末に来ている支援要請を確認した後会議を始めた。

「緊急2件に、手配魔獣が3件ですか……エニグマⅡの件はともかく、もう一件はかなり特殊ですね。」

「ええ、あのレクターって人がまたクロスベルに来ているなんて……」

ノエルの言葉にエリィは疲れた表情で頷き

「”黒の競売会(シュバルツオークション)”の時にいたあのトボけたお兄さんだね。どう考えてもタダ者じゃないとは思ったけど。」

「あの時、マフィア達に”様”づけで呼ばれていたから、それなりに身分が高い人だと私も思っていたわ。」

ワジとエルファティシアが呟き

「……捜査一課で研修した時に彼についてのファイルを閲覧した。帝国軍情報局所属、レクター・アランドール特務大尉。帝国政府の二等書記官としての肩書きも持っているらしい。」

「諜報畑の人間ですか…………」

ロイドの言葉を聞いたノエルは複雑そうな表情をし

「早速、エレボニアが仕掛けてきましたか……」

「さて……エレボニアが来ているなら、当然カルバードも来ている可能性は高いな…………」

「一体どのような者が来ているのでしょうね……」

アルは真剣な表情で呟き、ヴァイスとリィンは考え込んでいた。

「政治的な工作も出来るような情報将校みたいね。捉えどころがないのも高度なとうひいの技術なのかしら。」

「半分以上、素な気もするけど。しかし帝国政府の書記官で軍情報局の所属ってことは……あの有名な”鉄血宰相”の腹心ってところなのかな?」

真剣な表情で言ったエリィの言葉にワジは静かな笑みを浮かべて話を続け

「(どうしてそんな背景までしれっと通じてるんだか……)―――ああ、一課の情報によるとオズボーン宰相の懐刀の一人らしい。昨年、宰相と共にクロスベルを訪問して非公式にハルトマン議長と会談したことが確認されている。

ワジの話を聞いたロイドは呆れた後真剣な表情で答えた。

「それは本人も言ってたわね。冗談みたいな口ぶりだったけどまさか本当だったなんて…………」

「どう考えても一筋縄では行かなさそうな人ですね……」

エリィとノエルは疲れた表情で呟き

「フフ、面白そうじゃないか。となるとまずは市内での支援活動が優先ってわけかな?」

ワジは静かな笑みを浮かべてロイドに尋ねた。

「ああ、手配魔獣が1件、街道に手配されているけどそちらは後回しにしておこう。…………ルバーチェの消滅から数ヵ月。そろそろ裏社会で新たな動きが起こっているのは確かみたいだ。」

「”黒月(ヘイユエ)”の動き……それから帝国政府やメンフィル帝国の動きね。月末に開かれる『通商会議』もかなり影響していそうだわ。」

「『通商会議』というと…………」

「新市長が呼びかけた首脳クラスが集まる国際会議だね。」

エリィが呟きた言葉を聞いたノエルはある事を思い出し、ワジが確認した。



「ええ―――ディーター・クロイス新市長。彼が主催する、エレボニア、カルバード、メンフィル、リベール、レミフェリアの首脳が一堂に会する経済関連の国際会議。『西ゼムリア通商会議』というのが正式名称ね。」

「まさか就任直後にあんな大規模な国際会議の開催を呼びかけるなんてな…………さすがIBCの総裁を兼ねているだけのことはあるか。」

「直接お会いした事はないですけど物凄いやり手って話ですよね。そういえば、ワジ君は新市長にお会いしたことがあるんだっけ?」

「ああ、推薦状をもらった時にね。いくら独立愚連隊とはいえ警察の部署への推薦状を不良少年にくれるなんてねぇ。フフ、僕が言うのもなんだけど、今の局長みたいに気前がよく、変わったオジサンだよね。」

「いや、笑いごとじゃないんだが。」

「おじさまはおじさまで『ハッハッハッ、面白い子だね』とか言ってたし…………」

笑顔で言うワジの言葉を聞いたロイドは呆れ、エリィはジト目でワジを見つめ

「ちなみに何でヴァイスハイトまでその子を推薦したのかしら?」

ある事が気になったエルファティシアはヴァイスに尋ね

「IBCビル付近での奮戦は聞いていたし、戦っている所もある程度見た事があるからな。戦闘能力に関しては一般の警官や刑事より明らかに高いと判断したから推薦したんだ。有能な者は犯罪者を除けば俺はどんな出身の者であろうと採用する。」

「フフ、局長みたいなとてつもない強さを持つ人に言われると光栄だね。」

「ヴァイスは敵国の者すらも起用していましたしね…………」

尋ねられて答えたヴァイスの話を聞いたワジとアルは口元に笑みを浮かべ

「きょ、局長…………」

「局長が警察自身を弱いみたいな事を言ったら駄目なんじゃないですか……?」

ロイドとエリィは冷や汗をかいた。

「俺は事実を言ったまでだ。実際、あの悪魔相手に警官や刑事たちは苦戦していたがワジは互角以上に戦っていただろう?」

「それはそうですが…………」

「ですが、あの時は確かメンフィル帝国の将―――あのプリネ姫の親衛隊副隊長と一緒でしたから、彼のお蔭で互角以上に戦えたのでは……?」

そしてヴァイスに尋ねられたロイドは複雑そうな表情をし、エリィはある事を思い出して尋ね

「まあ、確かにそれは言えてるね。なんせ、彼―――レオン=ハルトは”結社”の元”執行者”だしねぇ。」

「へ!?」

「それってリベールの”異変”で暗躍したっていう組織の幹部……!」

「というか何でワジ君がそんな事まで知っているの……!?」

ワジの答えを聞いたロイドとエリィは驚き、ノエルは信じられない表情で尋ね

「ま、これも僕が持つ情報網の一つさ。」

(一体どんな情報網だよ……)

尋ねられたワジは静かな笑みを浮かべて答え、それを聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。



「……まさかあのレオン殿の出身があの”結社”の幹部だったとは…………実力はあると聞いていたけど、まさかそんな過去があったとは……」

一方リィンは驚きの表情で呟き

「あれ?リィンは知らないのかい?そのレオン=ハルトって人の事。同じメンフィル軍の人なんだろ?」

リィンの様子を見たロイドは意外そうな表情で尋ね

「確かに同じ軍だけど、所属も違うし、立場も違うから噂程度しか知らないよ。俺は唯の訓練兵でレオン殿はプリネ姫の親衛隊副隊長なんだから。メンフィル軍は他の国の軍とは比べものにならないくらい、多くの軍団や部隊にわかれているしね。」

尋ねられたリィンは苦笑しながら答えた。

「そうなんですか…………」

「ちなみにどんな話なの?」

リィンの話を聞いたノエルは意外そうな表情をし、エリィは尋ねた。

「確か………プリネ姫の親衛隊副隊長になる為にリウイ陛下に直々に相手をしてもらって腕を確かめてもらって、その時に陛下に腕を認められたから副隊長になれた話や…………後はプリネ姫がルクセンベール卿と同じくらい信頼していて、さらにプリネ姫と恋仲の関係で皇家も黙認しているって言う話を聞いた事があるな…………」

「ええっ!?プ、プリネ姫の!?」

そしてリィンの話を聞いたエリィは驚き

「へえ…………まさか犯罪組織の元幹部があの”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”の心を動かした上、皇家も2人の仲を反対する事もなく、黙認しているとはねぇ。実際の所はどうなんだい?確か局長は”影の国”とかいう場所で2人と出会っているんだよね?」

ワジは興味深そうな表情で呟いた後ヴァイスに尋ね

「ワ、ワジ……!もう少し言葉遣いを……!」

ワジの言葉遣いにロイドは慌てたが

「そんなに怒るな、ロイド。俺は気にしていないし、気軽な態度で接してもらって全然構わん。」

「は、はあ…………」

ヴァイスに制され、戸惑いながら頷いた。

「話を戻すがプリネ姫とレーヴェの仲だったな?確かにあの2人は俺が出会った時点で恋仲だったぞ。詳しい経緯までは知らないがな。」

「じ、事実だったんですか……俺は唯の噂だと思っていたんですが……」

ヴァイスの話を聞いたリィンは驚きの表情で呟き

「本当に一体どんな経緯で恋仲になり、さらに何故皇家も黙認しているのでしょうね……?……―――そうだ。リィンは『西ゼムリア通商会議』に参加するメンフィルの参加者の方が誰か知っているのかしら?おじさまの話では皇家の方が来るとはおっしゃっていたけど、誰が来るかはまだ教えてもらってないらしいのよ。」

リィンの言葉に頷いて考え込んだエリィはある事を思い出してリィンに尋ねた。

「ああ、それは知っているよ。参加者はリフィア殿下とレン姫だ。」

「なっ!?あ、あのメンフィル帝国の次期皇帝と言われている”聖魔皇女”に加えてレンまで参加するのか!?」

「そんな…………あの会議にあの娘が姿を現したらどう考えてもハロルドさん達、あの娘の事を知ってしまうじゃない…………その事をあの娘もちゃんとわかっているはずなのに……」

リィンの話を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情をした後複雑そうな表情になった。

「レンというと……ミシュラムで僕達の手助けをしたあの菫色の髪の女の子―――”殲滅天使”か。見た感じ、君達とは知り合い同士だったようだけど………何か問題があるのかい?」

「ああ―――――」

ワジの疑問を聞いたロイドは重々しい様子を纏って頷いた後レンの事情を説明した。

「それは………………」

「色々と難しい問題だね。唯その娘、メンフィルの皇女なんだろう?皇族専用の飛行船とかで来るだろうから、そのヘイワース夫妻だっけ?その娘とは接触しようと思っても兵士達に止められてできないとわかっているだろうから、そんなに心配しなくてもいいんじゃないか?」

レンの事情を聞いたノエルは複雑そうな表情で考え込み、ワジは真剣な表情で言った後尋ね

「正直、わからない。あれだけコリン君の事を大切にしている人達だからな…………」

「亡くなったはずの愛娘が姿を現したら、何が何でも接触しようとする可能性はあるでしょうね。」

尋ねられたロイドは答えた後考え込み、エルファティシアは真剣な表情で答え

「ヴァイス、親とはそういうものなのですか?リセルとオルファンの仲を考えればとてもそうには思えないのですが……」

ある事が気になったアルはヴァイスに尋ね

「……オルファン様はああ見えて、リセルの事を大切に思っていたよ。俺と会うごとにいつもリセルの近況を聞いてきたし、奥方が亡くなって悲しんだリセルを2度と悲しませない為にあえて嫌われ、憎まれるような行動をとっていたしな。」

「なるほど、なるほど…………”人”の事を知ったつもりではいましたけど、まだまだ勉強が足りませんね……」

真剣な表情で答えたヴァイスの話を聞いて、頷いていた。

「その…………エリィさんでしたら、さっきの話に出ていたヘイワース夫妻にレン姫と会わせる事はできないんですか……?エリィさんはあの”聖皇妃”のご家族なのですし。」

一方ある事を考えたノエルはエリィに尋ね

「多分、無理だと思うわ。兵士全員に私とお姉様の関係が知れ渡っているとはとても思えないし……………………リィンの方がまだ可能性はあるんじゃないかしら?」

尋ねられたエリィは疲れた表情で答えた後リィンに話を振り

「あのな……唯の訓練兵が皇族と会えるように取計らえるなんて、普通に考えて無理だろ?………まあ、妹がリフィア殿下と一緒に来ていたら話は別かもしれないけど…………」

話を振られたリィンは溜息を吐いて答えた後、考え込みながら言った。

「そういえば……確かリィンには妹さんがいるんだったな?一体何の仕事をしている人なんだい?」

「リフィア殿下付きの侍女だよ。」

そしてロイドに尋ねられたリィンは答え

「ええっ!?リ、リフィア殿下の!?で、でも私、メンフィルに留学していた頃何度かリフィア殿下と会った事があるけど、侍女を連れている所なんて見た事ないけど……?」

リィンの話を聞いたエリィは驚いた後尋ねた。

「妹―――エリゼは俺が支援課に来る直前で殿下お付きの侍女に任命されたからね。知らないのも無理はないよ。」

「そうだったの…………」

「それなら可能性は出てきたな――――」

リィンの説明を聞いたエリィは意外そうな表情で呟き、ロイドが口元に笑みを浮かべて言ったその時



「おー、やってるみたいだな。」

セルゲイが課長室から出てきた。

「セルゲイ課長……」

セルゲイがロイド達の正面に来るとノエルは立ち上がって敬礼した。

「お早うございます!」

「ああ、そのままでいい。基本的に支援課(ウチ)は放任主義でな。余程のことがないかぎり俺の方からは口出ししないから適当にやっていくといい。」

「は、はあ……」

セルゲイの言葉を聞いたノエルは戸惑った表情で答えた後椅子に座り直し

「あはは。理解のある上司ってわけだね。」

「……うーん……そう言えなくもないんだけど。」

「課長の場合、理由の半分は面倒くさいからですよね……?」

笑いながら言ったワジの言葉を聞いたロイドは苦笑し、エリィはジト目で尋ねた。

「クク、わかってんじゃねえか。ただまあ、今日は例外的に俺の方から指令がある。」

「へ…………」

「か、課長からですか?」

「ああ、一通り支援要請を片付けてからでいい。警察学校に行ってもらう。」

「警察学校に……」

「西クロスベル街道の途中にある演習場もある場所ですよね?」

セルゲイの話を聞いたロイドは意外そうな表情をし、ノエルは尋ねた。

「ロイドとノエルにとってはお馴染みの場所だったな。こちらの準備が整ったらエニグマで連絡する。それまでは市内を回りつつ支援要請をこなしていくがいい。」

「えっと…………了解しました。」

「ですが、一体どういう用件で?」

「クク、それは行ってからのお楽しみってヤツだ。」

「ま、ロイド達にとってはいい話なのは違いないな。」

エリィに尋ねられたセルゲイは口元に笑みを浮かべ、ヴァイスは頷いていた。

「あー……局長。いきなりネタバレは勘弁してくれませんかね?こいつらの驚く表情が見れないですし。」

ヴァイスの言葉を聞いたセルゲイは溜息を吐いた後指摘し

「フッ……それはすまなかったな。という訳でだ、アル。お前も黙っておけよ?」

「わかりました。」

指摘されたヴァイスは静かな笑みを浮かべて頷いた後、アルに指示した。

「そんじゃーな。また後で連絡する。それと局長…………頼みますから昼にある会議にはちゃんと出て下さいよ?参加する上層部や各課の課長やその代理達全員から局長に参加する事を頼むようにと朝からこっちに連絡が来まくっているんですからね…………」

「わかった、わかった。ちゃんと参加するから安心しておけ。」

「ハア……頼みますよ…………」

ヴァイスの返事を聞いたセルゲイは溜息を吐いた後去って行った。

「えーっと……」

セルゲイが去った後ノエルは戸惑い

「ノエルさん……非常に申し訳ないんだけどこれが支援課のスタイルなの。」

「まあ、好意的に考えれば俺達の自主性と判断力を育ててくれているんだろうけど……」

戸惑っているノエルにエリィとロイドは疲れた表情で説明した。

「な、なるほど!さすがはセルゲイ課長ですね!」

2人の様子を見たノエルは無理やり笑顔で言い

「そうだな……フム…………今後入って来る新人の警官達は皆、そのような教育方針にするべきか……?」

ヴァイスは考え込みながら呟き

「頼みますから、止めて下さい……局長が言うと冗談にならないんですから……」

ヴァイスの言葉を聞いたロイドは疲れた表情で指摘した。

「フフ、本当に面白い局長だね―――で?さっそく街に出るのかい?」

「ああ、そうしよう……そういえば、キーアが日曜学校に行くって言ってたな。課長も出かけたことだし、一緒に出た方がいいかもしれない。」

「そうね、3階に上がってキーアちゃんに声をかけましょう。」

その後ロイド達はキーアと共に外に出て、日曜学校に行くキーアと別れた後手分けして支援要請を片付ける事にし、ジオフロントにいる手配魔獣を片付けるヴァイス達と別れたロイド達は支援要請『エニグマⅡの講習』を受ける為にオーバルストアに向かった……………… 
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