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もう一人の八神

作者:リリック
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新暦77年
  memory:15 買い物

-side 悠莉-

「ゆーりちゃん、こっちは終わったですよ」

「リインありがと。こっちも終わったから休憩しようか」

仕事が休みだったリインに手伝ってもらい少し大がかりな部屋の掃除が終わった。

「いや~、リインが手伝ってくれたおかげで助かったよ。ありがとね」

「いえいえ、別にこれくらいどうってことないですよ♪ それにゆーりちゃんには私もいろいろとしてもらってますから」

掃除したての部屋でくつろぐ私たち。

「そういえばさ、リイン…って言うより八神家全員、何かと家にいる時間とか増えてるよね」

「海も陸もあの事件以降は少しずつですけど平和になって来てますからね~」

「平和ね~、そりゃいいことだ」

「ですぅ~」

気づけばだらけ気味に日向ごっこになっていてフローリングにゴロンと寝転がりながら会話を弾ませる。

「あ、そうでした」

何かを思い出したリインは掃除前には見られなかった机の上の箱を手に取ってきた。

「お掃除の最中にこれを見つけんですけど……一体なんなのです?」

差し出されたそれを見て、「ああ……」と声を漏らす。
それは少し前まで自分の相棒を勤めてくれていた存在。

「ルーが作ったデバイス。少し前にデバイスを使うことがあったから借りてたんだ」

「それって何なんです?」

うーん、別に言っちゃってもいいのか? 一応道場のみんなや他にも内緒にしてもらっていれば大丈夫か。

「数か月前にインターミドルがあっただろ? それに出た時に使ったんだよ」

「インターミドル…って、ゆーりちゃん大会に出てたんですか!? なんで言ってくれなかったんです!」

「半分は黙ってた方が面白そうだったからね。残りはあんまり目立ちたくなかったから。ちなみにこのことは姉さんとザフィーラの二人は知ってるよ」

「はやてちゃんもザフィーラもずるいです……」

頬を膨らませるリイン。

「そう言わないでやってよ。黙っててもらうように頼んだのは私だし、二人は大会に変装までして出たいって言うわがままを聞いてくれてたんだから」

困ったように笑いながら二人を弁護すると「……仕方ないですぅ」と不満げながらもそう言ってくれた。

「ゆーりちゃん、ちなみに大会の結果はどうだったんです?」

「結果聞いてもおもしろくないと思うんだけど……世界代表戦優勝」

「……へ?」

「だから世界代表戦優勝だってば」

「え…ええぇぇぇぇーーーーーっ!?」

「……リインうるさい」

耳を塞ぎながらジト目を向ける。

「ご、ごめんなさいですぅ。でもゆーりちゃんが世界一ですよ! びっくりしちゃうです!」

「姉さんとザフィーラも言ってた。それに大会でできた友達に聞いたんだけど、初参加で世界代表戦優勝っていうのは私が初めてらしいからね。変身魔法とかで自分を偽っていたのは正解だったよ。そうじゃなければマスコミや管理局、格闘家のスポンサーとかがいついかなる時も湧いて出てきてただろうし」

「湧くって…虫じゃないんですから……」

「言い得て妙だと思うんだけどね」

特に管理局とか管理局とか管理局とか。
必死になって私のことを探してるみたいだし、そんなに戦力が欲しいのかね……?
まあ、わからなくはないけど、さすがに私は管理局の犬にはなりたくはないな。
どうせ上の方には未だに醜い思想の大人が蔓延ってるだろうし、そこら辺が躍起になってるんだろう。

「ゆーりちゃん?」

リインの声で意識を思考の中から戻す。

「ま、それはともかくとしてデバイスをルーに返さないと」

「それなら送るですか?」

パネルを開いて郵送の申し込み手続きをやろうとするリイン。

「あー…ちょっと待って。どうせ明日から休みだし自分で届けるよ」

「でもすぐには船のチケット取れないはずですけど」

「それなら問題ないよ。私には長距離もできる転移魔法があるし」

「ダメですよ、そんなことしちゃ! 街中での魔法は禁止されてるですよ!」

「それは飛行や砲撃とかの危険度の高い魔法でしょ? それにバレなきゃいいんだから」

「それでもです! ゆーりちゃんいいですか? そもそも市街での魔法の使用は―――」

あーあ、始まったよ、リインの説教のようなもの。
左手を腰にあて、右人差し指を付だすポーズでいかにも説教してるはずなんだけど、リインがやるとなんというか全然恐くないんだよな、むしろ可愛いが真っ先に出てくる。

「―――って、聞いてるですか!」

「ん? うん。リインが可愛いってことでしょ?」

「かわ…っ!? ゆ、ゆーりちゃん! なななな何言ってるんですか!? 私がその…可愛い、なんて……」

あ~、なんだか癒される~。
顔真っ赤にしてあたふたしてる姿見るとなんかこう…グッとくるものがあるかも。
それに、話もいい感じにずれ出してるからこのまま楽しむか。

「リイン顔真っ赤」

「これはゆーりちゃんのせいです!」

さらに赤くなる顔を隠すように顔を逸らしたリイン。
よく見ると頬を膨らませているようだ。
そんな様子にたまらずリインを抱き寄せた。

「ゆゆゆゆーりちゃん!?」

リインには予想外だったようでムスッとした表情が一瞬にして変わった。

「ゴメンなリイン。もしかしていや、だった?」

「そそそそそんなことないですよ! 私はゆーりちゃんに好きだって言ってもらえるのは嬉しいですぅ。さっきのはただの照れ隠しで、えっと、だから、そのぅ……」

「わかっからそんなに必死にならなくても大丈夫。それにしてもやっぱりリインって可愛いよね」

「ぁ…ぅ……。ゆーりちゃん恥ずかしいから止めてくださいよぅ。それにしてもどうして可愛いとか、恥ずかしいセリフを言えるんです」

「可愛いって思ったから可愛いって言ってるだけだし……それにそんなに恥ずかしいセリフかな?」

「(やっぱり自覚なかったんですね。ゆーりちゃんらしいといえばらしいんですけど、急に言われるとドキッてするから少し困ったりするです。でも恥ずかしいけれど嬉しいので止めてなんて言えないですぅ)」

? 静かになったと思えばため息ついたり、赤くなったり、悶えたりとか…どゆこと? よくわからないよ。

「まあいいや。リイン、二人で買い物行かない? 夕飯の材料とか買いたいし」

「!? 行くです!絶対に行くです!」

「そ、そう? だったら準備してきな。でき次第に行くから」

「はいです」

リインは「デート♪ デート♪」と嬉しそうに口ずさみながら準備しだした。
デートって言ってるけどただの買い物なんだけどね、街中をぶらぶら歩くけど。

これで……と思っていたけどデバイスのことを覚えていたようで、結局は郵送することになった。
残念。



リイン曰くデートを終えて帰ってきて、道場に顔を出したり、いろいろと家事をして、仕事帰りのみんなを待って夕飯を食べた。

そして就寝までの時間をぐで〜っとリビングでヴィータとテレビを見ているとパタパタと誰かが走ってきた。

「ユーリ! いったいどういうことだよ!」

音の主はアギトのようで、その声はよくわからないが怒っている…というか嫉妬しているように聞こえた。
けれど原因がわからずに首を傾げる。

「おいアギト、いきなり叫んだりしてどうしたんだよ」

「あ、姉御ぉ聞いてくれよ! リインのやつがユーリとデートしたって自慢してきたんだよ!」

「で、デートだぁ?」

……はぁ。

「ただの買い物だよ。二人で街中を歩きながら夕飯の買い出ししてただけだからデートじゃないよ」

「それをデートって言うんだよ! それに一緒にアイス食ったんだろ!?」

「美味しそうだったからな。アイス好きのヴィータは知ってるでしょ? 最近できたって話題になってるやつ」

「なっ!? ユーリ、あそこに行ってきて食べれたのか!? 開店数時間で完売するほどの人気でなかなか手に入らないんだぞ!」

「あそこの店長さんとパティシエさんとは知り合いだったからね。食べたいって言ったら特別に作ってくれたんだよ。あ、冷凍庫にお土産としてもらったやつが入ってるから食べていいよ。何でも今度店頭に並べる新作らしいけど」

「何だって!?」

それを聞くなりヴィータは冷凍庫へと猛ダッシュした。

「さて、話がずれたけどアギトは結局のところどうしたいの?」

「あ、あたしか!? えっと、それはそのぅ……あたしもユーリと、したい…です」

「そんじゃ今度アギトが休みの時にでも出かけようか」

「いいのかっ!」

首を縦に振って肯定する。
するとアギトは顔を輝かせた。

「んじゃ、私たちもアイスを食べようか。下手すればヴィータが食べ尽くしてたりするかもしれないし」

「おうっ!」

アギトは私の手を引っ張ってヴィータを追った。



余談だが、リビングに入るとそこにはアイスが入っているボックスを抱えながら幸せそうにアイスを頬張るヴィータがいた。
それを見てさすがに私たちは苦笑いするしかなかった。

-side end- 
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