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英雄伝説~光と闇の軌跡~(碧篇)

作者:sorano
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第7話

その後駅の中に入って行ったロイドとノエルは切符を買って、鉄道に乗り込んだ。



~タングラム門・クロスベル市間~



「ふう……でも無事に任務が片付いてよかったです。正直、足を引っ張ってしまうんじゃないないかとヒヤヒヤしました。」

「はは、心配性だなぁ。ギュランドロス司令だって曹長に見込みがあると思ったから推薦したんだろうし。とにかく、これからは改めてよろしくお願いするよ。」

安堵の溜息を吐いたノエルの言葉を聞いたロイドは苦笑した後、口元に笑みを浮かべてノエルを見つめ

「はい、こちらこそ!……あ、でも、ロイドさん。ちょっとよろしいでしょうか?」

「ん?」

「一応、これからしばらくの間、正式にお世話になるわけですし……軍服も着てないわけですからその”曹長”というのはちょっと……」

「あ、ああ、それもうそうか。でもどうしよう?呼び捨てでも構わないかな?」

「ええ、それでお願いします。」

「それじゃあノエル―――改めてよろしくお願いするよ。そうだ、そっちもよかったらもっとフランクに行ってくれ。同い年だし、同僚なんだから気を使わないで欲しいんだ。」

(お?この女にも手を出すのか?さすがだな、ロイド!くかかかかっ!)

ロイドの提案を聞いたギレゼルは興味深そうな表情をした後笑い

「ええっ!?あたしがロイドさんのことを!?……………………無理無理、そんなの無理ですよ!あくまで警察官としては新米ですし、勉強させてもらう身分なんですから!」

ノエルは驚いた後考え込み、必死の様子で否定し、真剣な表情で答えた。

「いや、そんなに堅苦しく考えることないと思うけど……エリィとランディだって歳の差関係なくタメ口だしさ。」

「いや、その……何というか性分みたいで…………一度そう思いこんじゃうとなかなか変えられないというか……でも、ロイドさんがそう仰るなら何とか努力してタメ口を―――!」

「い、いや。別に無理はしなくていいから。はは……根っからの体育会気質なんだな。」

「あはは……父の影響かもしれませんね。厳しい人で、あたしやフランも小さい頃に躾けられましたから。」

「へえ、お父さんの。……あれ、君達のお母さんには何度か会ったことがあるけど……?」

ノエルの話を聞いたロイドは意外そうな表情をした後、ある事に気付いて不思議そうな表情で尋ね

「父は……10年ほど前に亡くなりました。クロスベル警備隊に所属していて、その、任務中の事故で。」

尋ねられたノエルは静かな表情で答えた。



「……そっか。悪いことを聞いちゃったな。ひょっとして……君が警備隊に入ったのも?」

「どうでしょう……?あまり自覚した事は無いですけど。でも、父と同じようにクロスベルという地を守りたかったのは確かかもしれません。その意味では、所属は違ってもフランも同じなのかもしれませんね。」

「そっか………………………………」

ノエルの話に頷いたロイドはガイが生きてた頃の様子を思い出した。

「ロイドさん?」

「ごめん、何でもない。―――でも、君が来てくれてこちらは本当に助かったよ。人手が足りないってのもあるけど…………この先、何が起きるのか正直予想できないくらいだからさ。」

「あはは、そう言ってもらえると光栄ですけど…………でも、マフィアがいなくなって市内の治安も改善されたんですよね?『黒月(ヘイユエ)』と『ラギール商会』は残っていますけど目立った動きは無いみたいですし。」

「……表面的にはね。ただ、一つ言えるのは”ルバーチェ”という組織が一定の役割を果たしていた事だ。クロスベルの治安を守る意味でね。」

「マフィアがクロスベルの治安を守っていた……?」

ロイドの口から出た意外な言葉を聞いたノエルは不思議そうな表情で聞き返した。

「まあ、結果的にだけどね。………クロスベルの置かれている特殊な状況を考えてみてくれ。自治権はあっても国家としては独立しておらず、2大国の干渉を常に受けているし、ヨアヒムが起こした事件でリウイ陛下達が直々に戦った件やクロスベル復興に関わった件ででメンフィル帝国まで両大国から強引に許可を取り付けて介入を始めた。犯罪を取り締まる法律は穴だらけで入国規制もほとんどない…………本来なら、黒月とラギール商会どころか他の犯罪組織やテロリストなんかが跋扈(ばっこ)してもおかしくない場所なんだ。」

「あ……………それじゃあ今まではルバーチェがそれを抑える役割を?」

「認めたくはないけど……結果的に一定の秩序を裏社会にもたらしていたのは否定できない。……それが何の前触れもなく”教団”という災厄に巻き込まれる形で消滅してしまった…………」

「パワーバランスの崩壊、ですか。」

「ああ……帝国派と共和国派の議員達が失脚したのも同じことが言える。代弁者がいなくなったことで逆に両国に加えてメンフィルからの圧力や干渉が今まで以上に露骨になる可能性は高いだろう。――――だからこそ新市長は支援課(オレたち)に期待してるんだと思う。」

「なるほど………ようやく納得しました。エリィさんやランディ先輩、ティオちゃんやセティちゃん達が一時的に離れたのもそれが理由だったんですね?」

「ああ、新たな局面を前に可能な限り各方面と連携してより高度な活動が出来るようにする。俺も一課で研修させてもらって色々なことを叩き込まれたし……更に、人手が足りなかったから新たな戦力も要請したってわけさ。」

「ふふっ……呼んでいただけて光栄です。でも、そういえば……」

「ん、どうしたんだ?」」

「新メンバーの一人って前に会った”彼”ですよね?正直、意外だったんですけどどういう経緯なんですか?」

「ああ―――”彼”ね。いや、新しい人手を俺達が探し始めた矢先にこちらを訪ねて来てさ。新市長とヴァイスハイト局長からの推薦なんかも取り付けてきたから断るに断れなかったんだ。」

ノエルに尋ねられたロイドは冷や汗をかいた後疲れた表情で答えた。



「し、市長とヴァイスハイト局長の推薦ですか?」

ロイドの答えを聞いたノエルは信じられない表情で尋ね

「ああ、IBCビルやクロスベルの危機に力を貸した謝礼と引き換えにそれぞれから推薦状を貰ったらしい。…………そもそも特務支援課が新規メンバーを探してるなんてどこで聞きつけたのやら。本人は『面白そうだから』とかしれっと言ってたけど……」

「えっと……それって大丈夫なんですか?」

「ま、まあ……悪いヤツじゃないのは確かだよ。そりゃあ、経歴不詳だったり、裏社会にやたらと詳しかったり、ホストなんかもやってるけど。……何だか言っててだんだん不安になってきたな。」

ノエルに尋ねられたロイドは笑顔で答えた後、溜息を吐いた。

「だ、大丈夫ですよ。確かに皮肉屋で口は悪いけど悪い子じゃなさそうでしたし…………」

「はは……そう言ってくれると助かるよ。正直、君とはソリが合わないかと思ったからさ。」

「う、うーん………確かにあたしもからかわれたりしましたけど…………どちらかというとロイドさんをいじる方が彼には楽しいみたいですし。」

「うぐっ……勘弁して欲しいんだけど。」

「あはは……(フランが騒いでたとか言わない方がいいのかな?)…………あ、そうだ。あたしは知らないんですけど、”彼”以外の増員についてはロイドさんは知っているんですか?」

溜息を吐いたロイドを苦笑しながら見つめていたノエルはある事を思い出してロイドに尋ね

「ああ…………他に後3名入ると聞いていて、1人はどんな人かは聞いたよ……俺と同い年ぐらいの男性らしいんだけど………その人の所属がちょっと……」

尋ねられたロイドは複雑そうな表情で答え

「?一体どこに所属しているんでしょうか?」

ロイドの言葉を聞いたノエルは不思議そうな表情で尋ね

「…………メンフィル帝国軍に所属している訓練兵だそうだよ。」

「なっ!?まさかメンフィル帝国がクロスベルを諜報する為に……!」

ロイドの答えを聞いたノエルは驚いた後真剣な表情になった。

「……わからない。何でも局長の話によればその人はリウイ陛下直々の推薦らしいんだ。若いながらも見所がある兵で、視野を広げさせる事によってその人を成長させるために特務支援課(ウチ)にしばらく預かってほしいって事で来るらしいんだけど…………正直、それだけが理由とは思えないんだよなぁ……」

「……メンフィル帝国はエレボニアやカルバードと違ってクロスベルを助ける存在なのか苦しめる存在なのか、よくわからないですよね…………」

「そうだな…………唯ラギール商会に関してはある程度、信用してもいいと思う。」

「?どういう事ですか?ラギール商会も黒月と同じ裏組織なんですよね?」

口元に笑みを浮かべて言ったロイドの言葉を聞いたノエルは不思議そうな表情で尋ねた。

「……リウイ陛下達がクロスベルに滞在していた時、エリィが思い切ってイリーナ皇妃に聞いたらしいんだ。何故、”ラギール商会”をクロスベルに来させたのかと。」

「それで…………どういう理由だったんですか?」

「……ラギール商会がクロスベルの裏社会を把握する事で裏社会の人達の犯罪を無くさせる事が理由だそうだよ。」

「ええっ!?そ、そんな事ってできるんですか………!?いくらあのメンフィル帝国と懇意にしている裏組織とはいえ、そんな理由で異世界を渡ってまで店舗を展開するなんて…………」

「……店主のチキさんはリウイ陛下に奴隷として買われているから、実質リウイ陛下の家臣なんだ。だから彼女がラギール商会を代表して、多くの”店員”――――メンフィル兵達と共にこのクロスベルに来たらしい……当然人身売買等違法な商売は一切しないという条件で。ラギール商会としても元々俺達の世界独特の技術のオーブメントを主にした商品を手に入れたく、メンフィル帝国の提案に乗って、このクロスベルに店舗を置いたんだって。」

「そうだったんですか…………それにしてもイリーナ皇妃って噂通り、本当に優しい方ですね…………故郷や家族を助ける為に裏組織に制約を付けさせるなんて…………」

「ま、まあ確かに”聖皇妃”の異名通り本当に立派な人だと思うよ。」

ノエルの言葉を聞いたロイドはIBCビルで見せたイリーナのすざましい威圧を纏った笑顔や自分に言った忠告を思い出した後冷や汗をかいて答え

「??」

(くかかかっ!IBCビルで忠告された事がトラウマになっているのか~?)

ロイドの様子をノエルは不思議そうな表情で見つめ、ギレゼルは陽気に笑っていた。するとその時、アナウンスが聞こえてきた。



―――乗客の皆様にお伝えします。まもなく、クロスベル自治州、クロスベル市に到着いたします。リベール、レミフェリア、メンフィル各方面への定期飛行船をご利用のお客様はお乗り換え下さい。なお、大陸鉄道公社規約に基づき、当列車はクロスベル駅にて30分ほど停車させていただきます。エレボニア方面に向かわれる方は入国申請書をご記入の上、臨検官への提出をお願いいたします。



「はは、一駅だけだからあっという間だったな。」

「ええ……それでも数日、留守にしていると何だか懐かしい感じがしますね。」

「そうだな………」

ノエルの言葉に頷いたロイドは懐から支援課のビルの前に撮ったキーアを含めた支援課のメンバーが全員写っている写真を見つめ

(……全員が揃うのはもうちょっとしてからか…………キーア……寂しがっていないといいけど。それに…………)



………その………さっきの続きは全部解決した時にでも……



IBCビルでエリィと恋人同士になり、去り際に顔を真っ赤にして言ったエリィの言葉を思い出し

(……あれからお互い忙しくてデートをする暇もなく、進展していないけど……エリィが戻ってきたら何とかしてあの時の続きを―――いやいや、続きじゃないだろ!もっと真面目に付き合っていかないと………!)

心の中で自分を突っ込んだ。

「……ロイドさん?」

ロイドの様子を見たノエルは不思議そうな表情で尋ね

「いやその、何でもないんだ!それにしても疲れたなぁ!早く支援課のソファで休みたいよ!」

尋ねられたロイドは慌てた様子で答えた。

(ロイドさんの反応が怪しい……)

そしてロイドの様子を見たノエルは不思議そうな表情で見つめていた。



その後ロイド達を乗せた列車はクロスベル市に到着した………… 
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