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μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜

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第27話 二つの存在(前編)




「申し訳ありませんでした!」




先立って絵里が頭を下げる。後に続いて俺、希、にこ、海未、ことりが頭を下げる




頭を下げる先には穂乃果の母さんがきょとんとした顔つきで首を傾げる




「あなたたち.....何言ってるの?」




だけどすぐにふふっと笑う穂乃果の母さん

今の流れのどこに笑う要素があるのだろうか




「あの子がどうせできるできるって背負い込んだんでしょ?昔からず〜っとそうなんだから〜」




穂乃果のあの暴走はいつものことよ、とでも言いたげな感じで俺たちの事を気遣う




「で、ですが......」




「大丈夫よ、それより退屈してるみたいだから上がってって」




病人なのに退屈してるとか......




「穂乃果ちゃん....ずっと熱が出たままだって」




「一昨日辺りから下がってきて今朝はもうすっかり元気よ」




そうか....安心した

ほっと胸をなで下ろす




心配させやがって....バカ穂乃果




「わかりました....上に上がるのは.....私と希とにこ...ことりと海未と...大地でいいわね?」




「問題ない、真姫たちは外で待ってて」




あまり大人数でぞろぞろ行くわけにもいかないので6人で部屋にお邪魔することにした




























「穂乃果!」




「あ!海未ちゃんことりちゃん!やっほ〜!!」




ドアを開けた先にプリンを頬張っている穂乃果がいた

マスクを顎まで下げ、額には冷えピタを貼っている姿がなんとも可哀想だ




でも確かに穂乃果母の言う通り元気みたいでなによりだ




「よかったぁ〜、起きられるようになったんだ」




「風邪だからプリン3個食べてもいいって!」




え?と思いテーブルに目を遣ると、空のプリンが2つほど.....

食い過ぎじゃないだろうか.....




そして3つ目のプリンの空をテーブルに置く




「心配して損したわ」




「嘘つけ、穂乃果が倒れたとき泣いてたくせして」




「そっちの方が嘘よ!にこは泣いてない!」




「お母さんの言う通りやね」




希とにこがバッグを脇に寄せて穂乃果の近くに座り込む




「それで、足の方はどうなの?」




にこは穂乃果に足を見せなさいとちょいちょいと指を動かす




「うん、大丈夫だよ。軽く抉いただけだから」




布団から足を出し、その様子は包帯で固定され見るからに痛々しい










この怪我は

あの時....ライブで穂乃果が倒れた時に抉いたものらしく、軽傷で、

日常生活に支障が出る程では無いらしい







「.......本当に今回はごめんね」




一度付け直したマスクを外し謝罪する




「せっかく最高のライブになりそうだったのに....」




「穂乃果のせいじゃないわ....私達のせいよ」




「とう!」




「痛いっ!も〜大くんなにするの?」




俺は頭を下げる穂乃果にチョップをかました

うん、スッキリ〜♪




「お前だけのせいじゃないけど....とりあえずチョップ一発で許してやるよ」







「....ありがとう大くん。でも....」




「穂乃果は頑張りすぎたんです。オーバーワークしている穂乃果に気がつかなかったわたし達の責任でもあるんです。だから自分ばかり責めないでください」




「......うん」




やはり、ライブの失敗は自分にあると強く思ってしまっている

穂乃果の言う通り実際倒れたのは穂乃果なわけで自己管理できなかったのも穂乃果




だけど、練習しすぎであるにも関わらず気付くことなく放置してしまった俺達にも責任はある




しかもライブの前日雨が降っていたのにランニングしていたという情報も雪穂ちゃんから聞いている




穂乃果の暴走......世話のかかる奴だよ







「学校はいつ来れそうなの?」




「心配しなくても大丈夫だよ絵里ちゃん。明日には学校行けると思うんだ」




「そう、ならよかったわ」




「うん。だからね、短いのでいいからもう一度《ライブ》できないかな?って思うの」







「「「「「「っ!!!!」」」」」」










《ライブ》の一言に穂乃果以外のみんなの表情が固まる

まだ状況を理解していない穂乃果は話を続ける




「ほら!ラブライブ出場のグループ決定まであと少しあるでしょ?なんていうか...埋め合わせっていうか。なにかできないかな?って」




穂乃果なりの気遣いだったのだろう

穂乃果の気持ちもわかる

まだチャンスはある




だけど.......そのチャンスどころか....







「穂乃果、落ち着いて話を聞いてくれ」







μ'sは.......




「なに?」










ラブライブ出場を.........





































「辞退することにした」


































その時の穂乃果の表情は驚愕そのものだった

だけど即座に言葉が理解できないのかみんなの顔を見てやっと、俺の言ったことが本当なんだと思ったようだ




「辞退って.......」







「ラブライブには出場しません」




「....どうして」




「昨日理事長に言われたの」




俺の代わりに絵里が説明し始める




「無理しすぎたんじゃないかって。こういう結果を招くためにアイドル活動をしていたのかって....」




絵里の隣で理事長の言葉を聞いた

だからこそ、その重みがわかる




「それでね、みんなで話し合って決めたの。エントリーするのを辞めるって」




穂乃果はただ一点を見つめてカタカタと震えるばかり



















「もうランキングに......μ'sの名前は........無いわ」
















19位

あと少しはこの順位を維持すればラブライブ出場を夢じゃなく現実に出来た




それが無くなった....夢が目の前で消えた

目指していたものが目の前で崩れ落ちた




穂乃果はこの時何を思ったのだろうか




「そん、な......」




「仕方の無い事だったんだよ.....」




「穂乃果のせいだね....穂乃果が調子に乗って.....」




「穂乃果ちゃん....」




穂乃果は肩を震わせるその姿はあまりにもちっぽけな存在に見えた




「誰が悪いなんて話をしていてもしょうがないでしょ、穂乃果」




重たい雰囲気が穂乃果の部屋を支配する




「えりちの言う通りやね」




終わったことをあーだこーだ言ったって時間が戻ってくるわけじゃない

今回の過ちを認めて次の糧にすればいい......



俺はそう思った




だから、ここで立ち止まってる場合じゃないんだぞ.....










お前にとってもう1つ重大な問題が待ち構えているんだから.....













穂乃果から目を外し、彼女の様子を伺うことりに視線を移す







ことりはいつになったら穂乃果に話をするんだろうか....




気が気で仕方がなかった
















----------------------------

穂乃果side










その日の夜
















「....ダメだね....穂乃果ったら....昔から何も変わってない」




夢中になり過ぎて周りが見えなくなるなんていつものことだった

それで海未ちゃんやことりちゃんに迷惑かけて

挙句の果てに大くんの一生を壊してしまった




手元にあるPC画面にはついさっき出場決定を決めたアイドルグループの20位までのランキング画面




トップにはもちろんA-RISE

19位のところには島根県代表《Rainbow ハピネス♡ 》というアイドルグループが表示されていた




数日後に開かれるラブライブにはμ'sも出場できたのかもしれない。




でもそれをできなくしたのは自分の責任




絵里ちゃんや海未ちゃんはみんなの責任とは言うけど....自分をコントロールできなかった穂乃果に一番の責任はある




だからこそ申し訳なく思い、みんなに合わせる顔が無かった




「うっ........うっ........」




悔しくて申し訳なくて涙が止まらない

変わりたいって思ったのに.....




周りが見えなくなるのが嫌で嫌で変わりたいって思ってたのに...







「うっ......ダメだね......ひくっ.....穂乃果、全然変われてないよ....ひっく」







6年前、あんな事件を起こしてもう絶対にしないって思ってたのに....またこんな........










コンコン







「おね〜ちゃ〜ん?ご飯〜........」




ドアの隙間から雪穂が目をのぞかせる




そして、空気を読んで一階へ降りていった










「ごめんね....みんな、ごめんね.....大くん」










変わりたいよ........穂乃果はどうしたらいいの?










PCのキーボード上に涙がこぼれ落ちる







----------------------------













翌日、穂乃果は無事に学校に登校してきた

授業こそ真面目に受けていたものの、やはり落ち込み具合はハンパない

海未やことりが話しかけても心ここにあらずって感じだった




海未曰く、暴走はいつもの事らしいがここまで落ち込むのは初めてときた




よほど、ラブライブ出場出来なかったことに悲しみがあるのだろう




昼休みに入るまで俺は彼女に話しかけることができなかった






















「穂乃果、今日は飯ないから購買いくぞ」




午前の授業が終わり、ここで初めて話しかけることができた




「え?あ、うん.....」




俺は無理やり穂乃果の手を握って連れていく

後に続いて海未とことりも俺たちについてくる
















「大地、あの人だまりは一体.....」




途中、掲示板前に女子生徒がぞろぞろ集まっていた

貼りだされた紙を見て生徒は喜んだり、嬉し泣きする生徒もいた




とてもいい内容の連絡なのだろうか....




「ちょっと見てみるか」




4人は人混みの中に混じって中心部へと体をねじ込む




甘い香りとやわらかい胸の感触を堪能しながらプリントを眺める




「大くん.....何考えてるの?」




穂乃果にジト目&思考を読んで俺に詰め寄る




「な、なんでもない...とにかくほら、見よう」




話を戻してもう一度プリントを見る
















『来年度入学者受付のお知らせ』

























「..............あ?」







でかでかとタイトルにそう書かれていた




来年度入学者.......つまり?







「「「「ええええええっ!?!?」」」」







「嘘......廃校が阻止できたの.....?」




穂乃果は目から涙を流しながら口元を抑えて喜ぶ




「やりましたね穂乃果!嬉しいです」




「穂乃果ちゃん....海未ちゃん.....大地くん!」




「やったぜ〜〜っ!!」




3人をギュッと抱きしめて喜びを分かち合う




彼女たちがスクールアイドルを初めて早数ヶ月。

遂に当初の目標を達成することができた




「ちょっと大地....人前で破廉恥ですよ///」




「とか言いつつ拒否してねぇじゃんか」




「大くん〜♪穂乃果のこと褒めて〜♪」




「私も私も〜♪」




穂乃果とことりは俺に頬擦りをしてくる

やばい鼻血もんだぞこれ!可愛すぎる!




「しょうがねぇ!今日は特別だ!パーってパーティでもするか!」




「「「賛成(です)〜〜!!」」」







海未の言う通り人前でいちゃいちゃしていたため周りの生徒から好奇な会話が聞こえる




でも、そんなことを気にする事無く喜びまくった!




だって嬉しいんだ

この喜びを分かち合うって.....最高じゃないか










ピンポンパンポーン




そんな中、呼び出しの放送が聞こえる










『2年の笹倉大地さん、至急理事長室にお越しください。繰り返します。2年の----』










「あ?俺?」




なぜ呼ばれたのか疑問に思った




なにか悪いことしたっけ?

廃校阻止......理事長....あ....そうか

そういえばすっかり忘れていたよ




「大地、行かないのですか?」




「行くよ、さっくり終わらせてくる。だから放課後、みんなで盛り上がろうぜ」




俺はグッと親指を立てて理事長室に向けて歩き出す













「あ!花陽ちゃん、凛ちゃん真姫ちゃん!」




後方から穂乃果の1年生組を呼ぶ声が聞こえる








































コンコン










「どうぞ」







「失礼します」







予想通り、理事長は真剣な顔つきで来客用のソファに座っていた

ここに呼ばれた理由もわかる




だからこそ、ここだけじめを付けるべきだと思った




「こちらに腰掛けてください」




「ありがとうございます」




理事長に促され、反対側のソファに静かに座り込む

そしてすぐに理事長からお茶を出され、「ありがとうございます」と言って一口いただく




俺の好きな煎茶だったのは言うまでもない




しばしの静寂後、ゆっくりと理事長は口を開く




「掲示板はご覧になりましたか?」




「.....はい。無事、廃校にならなくてよかったです」




理事長は俺の目を逸らすことなく見つめる




「改めて......笹倉くん。音乃木坂学院を守ってくれてありがとう」




深々と頭を下げるので少しばかり困惑してしまう




「...俺は何もしてないです。彼女たちの.....μ'sのおかげです。俺はただμ'sのサポートをしただけですよ」




謙遜しながらも正直なことを述べる




「もし俺だけだったら.....存続なんてできませんでしたよ。彼女たちがいてくれたからこそ、存続できたんだと思います.....俺の任務を彼女たちが全うしてくれたんです」




「そう......」




これから何の話をするのかわかるため、重い空気が二人の会話をつまらせる。




理事長はゆっくりと立ち上がり、自分の席の引き出しから1枚の茶封筒を寄越す。




なにも記されていないただの茶封筒

その中身はきっと........




「ここに呼ばれた理由はわかりますね?」




「.......承知のつもりでやってきました」







チッチッチッと時計の針の動く音だけが響く




「その封筒の中身をお母さんに渡してください....」




俺はただ封筒を握り締め、やるせない思いを誰かにぶつけたくて仕方がなかった




封筒を開けて、中に入っている3枚の紙を取り出す




1枚は母さんへの連絡

残りの2枚は転学手続書、及び学校案内の紙だった




「前の学校での貴方の立場は十分理解してたつもりです。ですので、今回は別の高校への手続きを準備しました」




案内された高校は前の高校より少しレベルの低い京都にある私立高校




中学受験の第二志望校がそこだったので問題ない....

でも今となっては行きたくない.....

この学校で高校生として過ごしたかった




ふと、何故か穂乃果の顔が浮かぶ

その表情は笑っているわけではく怒っているわけでもなく、ただ俺の事をじぃっと見つめていた

それこそ、俺の心理を確認するかのように......




あぁ.....わかってるよ穂乃果




俺もさんざんみんなに言ってきたのに.....人の事言えないよな.....

絵里や真姫、花陽にあんなに言ったのに....

言った本人である俺が素直になれないなんてな.....

俺自身もめんどくさい人間だよ




俺は気持ちを落ち着けるべく、煎茶を口の中に流し込む

煎茶独特の香りが口いっぱいに広がる










「私も本当は笹倉くんに行って欲しくないのです」




理事長は目を瞑り、呟く




「共学化は笹倉くんが初めてここに訪れたとき言った通り、最後の策だったのです。精一杯考えた結果だったのです......」




「........俺がここに来て意味はあったのでしょうか......」




「ありましたよ.....μ'sにとっても音乃木坂にとっても.....」




「そう......ですか」




「ことりも嬉しそうでした」




ことりの名前が出た瞬間、理事長からことりの母へ雰囲気が変わった




「昔、穂乃果ちゃんと仲良くしてた男の子に会えて嬉しいって言ってました。帰ってからも笹倉くんの話ばかり。」




ことりがそんなことを......

家に帰っても俺の話をしていると聞いて、胸のあたりがこそばゆいな




「たまに穂乃果ちゃんや海未ちゃんも家に遊びに来るのだけど....やっぱりそこでも貴方の話ばかり。ふふっ.....モテモテね」




「いやいや...そんなことは....」




「それにね、男子がいることで女子生徒も変わってきているのですよ?」




「そうなんですか?」




「身だしなみが良くなりました。やっぱり男子の目があることは女子たちにも良い影響を与えているのですよ」




確かに男子の前で色気のある格好されちゃ、理性が持たないからな

俺としてはありがたいのだけど




「だから笹倉くんには感謝しているわ。本当にありがとう....」




再度理事長は頭を下げる




悔しいけど......離れるのは辛いけど.....音乃木坂の為に何かができたんだと思うとここを離れることに納得した




もともと試験生でもあったし.....




「こちらこそ、貴重な体験をさせていただきました。俺はもう....悔いはありません」










茶封筒を片手にすっと立ち上がる




「転学するまでは笹倉くんはここの生徒です。残りの生活を楽しんでください」







理事長の言葉を受け止め、理事長室を離れる
















これで本当によかったのかな......?




後悔......してないよな?




この話...みんなに伝えたらどう反応くるかな?




とか思いつつ、教室に戻る





































----------------------------




「にっこにっこに〜♪みんな〜!グラスは持ったかな〜?」




放課後、部室でちょっとしたパーティを開くことにした

急だったのですぐさまお菓子やジュースを買い込み、

飾り付けやらしているいつに準備が終わったのは5時半




長い時間できないけど、それでもすぐに祝いたかった




「学校存続が決まったということで部長である矢澤にこに〜から一言挨拶をしたいと思いま〜す!!」




「「「「いえ〜いっ!!」」」」




マラカスだのタンバリンだの持って盛大に盛り上げる




床に敷いたシートの上に1年生組と俺と穂乃果が座り

窓際の長椅子にことりと海未が

廊下側のパイプに椅子に絵里さんと希が座って




にこの長い長い挨拶が始まろうとしていた




ことりの落ち込みは敢えて見ないことにした

まだ話しちゃダメ....今はダメとどうせ心の中で思っているのだろう




「思えばこのμ'sが結成され、私が部長に選ばれてからどのくらいの月日が流れたであろうか!」




いやにこさん?....そんな大袈裟な月日は経ってませんよ?

せいぜい3,4ヶ月じゃないか?

というツッコミを喉元で抑える




「たった1人のアイドル研究部で耐えに耐え抜き、今こうしてメンバーの前で想いを語れて----「かんぱ〜〜〜〜〜〜〜いっ!!!!」




やはり長くなりそうなので挨拶をスルーして乾杯を始めた




「ちょっと待ちなさ〜い!!」




紙コップなため、グラスでやるあの乾杯のような音は鳴らないが雰囲気だけで十分だった







にこも遅れて乾杯に混ざる




「さぁ!パーチーの始まりだ!凛!菓子の袋を思いっきりぶち開けろ!花陽!ご飯はまだか!今日は食うぞ〜!!」




「任せろにゃ!!」




「あと1分だよ!!!!(♢ω♢)」







テーブルの上にどさどさとお菓子が準備され

にこの作った簡単な手料理が並べられる




「おお〜っ!!すっげぇ〜っ!!」



















「よし!お肉いただくにゃ!!」




「あ!凛、肉ばっかり持っていくな!」




「にっこにっこに〜♪真姫ちゃんもはい!」




「ゔぇえ!?やらないわよ!」




「今日くらいやりなさいよ!にこのスペシャルにこに〜見せてあげるから」




「なによそれ!」




「みんなーーーーーーっ!!ご飯炊けたよーーーーーーーー!」




「はなよひゃん!よひゃれ、よひゃれひゃれへるよ!」




「そういう穂乃果も口にモノ詰め込みすぎだ!あと、食いながら喋るな」




「....ごくん、大くん今何言ったのかわかるの?」




「『花陽ちゃん!ヨダレ、ヨダレ垂れてるよ!』だろ?」




「すごい!大くん天才!」




「まて!イミワカンナイッ!」




「ちょっと大地!私の真似やめてよね!」










「ホッとした様子ね、えりちも」




「まぁね....肩の荷が降りたっていうか」




「μ's、やってよかったでしょ?」




「どうかしらね。正直、私が入らなくても同じ結果だった気もするけど...」




「そんなことないで?μ'sは9人....まぁ大地くんも含めると10人やけど。それ以上でもそれ以下でもダメやってカードが言うてるよ」




「大地くんは....そうね...そうかな」













「もぐもぐ....うん、こうやって廃校も無くなったんだ気を取り直して頑張ろう!」







各々が楽しいひとときを過ごした

相変わらず花陽の山盛りご飯には驚いたけど....

つか、意外とにこも食うんだな....

あれだけ食うのに何故花陽や希みないに成長しないのだろうか




「大地.....」




「な、なに....にこ...」




じりじりと接近してくるにこ

なにか起こっているようなオーラを帯びて




ぐさっ







「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」







あろうことか目潰ししてきやがったぞ!

目が燃えるように痛い!

痛いってレベルじゃないぞこれ!




知ってた?目潰しされると失明する恐れだってあるんだぜ?




「ふん!失礼な事を考えてるからよ!」




「痛い!目が〜っ!!あぁぁぁぁぁ!焼けるように痛い!!目が〜っ!!」




ごろごろとのたうち回る俺に見かねたのか今度は真姫が




「ちょっと大地うるさい!暴れ回るなら外でして頂戴」




と、注意する







「俺だって....好きで.....暴れているんじゃねぇぞ」




























まだまだパーティーは続く.....と思っていた




目の痛みも治まり、さぁ食うぞってところで海未が立ち上がって

俺らをゆっくり見渡して口を開いた







「ごめんなさい。みんなにちょっと話があるんです」




え?なに?と食べたり話をするのを辞めて海未に注目する

隣でことりは俯いたまま目を合わせようとしない




「えりち聞いてる?」




「ううん、なにも」








































「実は............突然ですが、ことりが留学することになりました」

















































しん...........と静まり返る

さっきまでの賑やかな部室は一変して冷たいたく重苦しい部室になった













この時が来た、と思った




「2週間後に日本を離れます」







2週間.....昼休みもらった茶封筒の転学する日も2週間後だった気がする







「......なに?」 「嘘......」




「ちょっと....どういう事?」




困惑するのは当然だろう

あまりにも唐突すぎる展開なのだから




「前から.....」




やっとことりは自分の口で語り始める




「前から服飾の勉強がしたいって思ってて....そしたらお母さんの知り合いの学校の人が来てみないか?って.......」




そんなことはない

ことりの判断は正しかった。あの場で言える状況じゃなかった




と、フォローしたい。だけど....それこそ言える状況じゃなかった




開いた口が塞がらないとはまさにこの事




「ごめんね....もっと早く話そうって思ってたんだけど.....」




バツが悪そうにことりはポツリポツリと語る




誰も話しかけることができない




「学園祭でまとまっているなか言うのは良くないとことりは気をつかっていたんです」




「....行ったきり、戻ってこないのね?」




絵里さんが確認し、ことりが首を縦に降って返答する




「高校を卒業するまでは.....」







誰もが視線を合わせようとしない




「.........」




あまりにも空気が悪いなか、穂乃果がゆっくりと立ち上がってことりに歩み寄る




「どうして......」




「穂乃果......ことりを攻めるな」




「大くんは黙ってて」




うっ....と言葉を留める。今は穂乃果を止めても無駄だと察知した




「どうして......言ってくれなかったの?」




「だから、学園祭があったから---「海未ちゃんは知ってたのね?」




「そ、それは.....」




「大くんも.....知ってたの?」




穂乃果は目の端だけで俺を見る




「......海未から聞いた」




「そう......ねぇことりちゃん、どうして穂乃果に言ってくれなかったの?」




ことりの足元でしゃがみこみ、その手を握って問いかける




「ライブがあったからっていうのもわかるよ。でも、穂乃果と海未ちゃんとことりちゃんはずっと......一緒なんだよ?」




「穂乃果ちゃん....」




「ことりちゃんの気持ちわかってあげなよ------「うるさい!わからないよ!!」







「「っ!!」」










「だって居なくなっちゃうんだよ!!ずっと一緒だったのに離れ離れになっちゃうんだよ!!!なのに!なのに......」




穂乃果は声を荒らげるもだんだん語気が弱くなり、遂には肩を上下に動かして涙をこぼす




「......何度も言おうとしたよ?」




「え?」




「でも、穂乃果ちゃんライブやるのに夢中で、ラブライブに夢中で.....だからライブが終わったらすぐに話そうって思ってた!相談にのってもらおうって思ってた!」







ここで初めて....穂乃果は自分のやってきた行いがとんでもない方向に進んでいることに気が付いた




いつもこんな感じとはいってもここまで話が大きくなっているとは予想外だったのだろう....




「でも、すぐに穂乃果ちゃんがあんなことになって.....時間がなくなって....聞いて欲しかったよ!穂乃果ちゃんには1番に相談したかった!!」




ことりも涙を流して穂乃果に言葉をぶつける




「だって....穂乃果ちゃんは初めてできた友達なんだよ!!そんなの......そんなの当たり前だよ!!!」










ことりは最後にそう告げ、部室から飛び出していった




「ことり......」




誰も追いかけることができなかった

ただただ....こんな悪夢から覚めて欲しいという思いがみんなから感じてきた







「.......穂乃果......は......なにを.......してきた.....」




穂乃果は唖然としてことりが出ていった扉を見つめる







「ずっと...行くかどうか迷っていたみたいです。いえむしろ行きたがってはいるようには見えませんでした。ずっと穂乃果を気にしてて......穂乃果に相談したなんて言うかって.....黙っているつもりはなかったんです」



















海未は最後に穂乃果にそう言って頭を抱えながら椅子に座る













1人......悩みに悩んだ少女が俺たちの前からいなくなることを意味していた




そしてここにもう1人隠していた事を言わなきゃならない人がいた
















「本当はこんな状況で話したくなんてないんだけどな.....」










俺は....だいぶ最低な人間だ。

ことりが離れることになるとわかったばかりなのに....俺まで離れることになることを告げなきゃいけないのだから....







「穂乃果だけじゃない....ここにいるみんなも聞いて欲しい」







きっと何人かは察しただろう。俺から告げられる話は良くない内容だってことを



















「ことりの後で...とても言い難いんだけどさ.....俺、転学が決まったんだ」

























「え.......?」




真っ先に反応したのは花陽




それぞれ驚いた顔をしているがなによりも穂乃果が....床を見つめて呆然と立ち尽くしている




「前から理事長に言われていたんだけどさ、その時はまだ確定じゃなかったんだ。でも今日の昼休み、音乃木坂の存続が決まって.....共学化する意味が無くなって.....俺がここにいる意味も無くなったんだ」




「大地くんまで....ここからいなくなるの?」




希が目をウルウルさせて俺の手を取る







「......決まったことなんだ.....俺には.....どうしようもできない」










「ま.....まさか...冗談...よね?そんなわけ.....」




にこは現実を受け止められずに頭を横に振り、拒否する




「......大地は....いつなのですか?」




「ことりと同じく...2週間後だ」




ここまでくると本当に嘘のように聞こえる

だけどここで嘘を言えるような人間じゃないのはみんなもわかっているはずだ




「やめてよ大くん.....嘘だよね?そんなの....嘘だよね?」




「穂乃果....本当のことだ....すまな--「嘘!!!!」







穂乃果の怒声に窓ガラスが揺れ、俺は目を見開いく




「どうして!!!どうしてことりちゃんも大くんも穂乃果にもっと早く教えてくれなかったの!!」




「穂乃果やみんなに心配して欲しくなかったから......俺のことは気にせず、アイドル活動頑張って欲しかったから.....」




「大くんは.....μ'sの一員なんだよ?どうして自分を後回しにするの!?」













「俺はそういう人間なんだよ.....」




ぐしゃぐしゃになった穂乃果の顔を見ることができず、俺も部室から出ていこうとする






















「ごめんな......みんな.....」





































----------------------------

海未side










翌日の昼休み、ことり以外のみんなで屋上に集まりこれからどうするかについて話し合うことにしました




「ライブ?」




「ええそうよ、ことりがいなくなる前に全員でライブやろうって...」




絵里が言いたいことはつまりそういうことです




μ's.....ラストライブについて




「あとでことりちゃんにも言うつもりよ?」




「思いっきり賑やかなライブにして、ことりちゃんと大地くんの門出を祝うにゃ!」




ビシッとにこにチョップを入れられる




「にゃっ!?痛いにゃ〜」




「はしゃぎ過ぎないの!」




「つ〜か俺は転学だっての!会えなるなるわけじゃねぇんだぞ」




私も絵里の意見に賛成です

ことりと幼い頃からずっと一緒だった私や穂乃果は本当は行って欲しくないのです




わたし達だけではありません。全員が本心ではそう思ってる筈です




ですが、ことりの夢をみんなで応援したいです




「穂乃果.....?」




にこと凛と大地のやり取りを見てくすくすと笑うことなく穂乃果は何を考えているのか黙ったまま動こうとしません.....




「まだ落ち込んでいるのですか?」




「明るくいきましょ!これが10人でやる最後のライブになるんだから」




絵里の前向きな考えとは逆に穂乃果はどんどん気が滅入ってるようです




「.....穂乃果がちゃんと周りのことを見ていればこんなことにはならなかった...」




「そ、そんなに自分を責めなくても--「自分が何もしなければこんな事にはならなかった!!」




ビクッと花陽が怯え、凛の後ろに隠れる




穂乃果....本気でそんなことを思ってるのですか?




「あんたね!」




「そうやって全部自分のせいにするのは傲慢よ!」




「でも!--「それを今ここで言って何になるの?」




絵里もさすがに苛立ちを見せます




「何も始まらないし、誰もいい思いをしない」




「ラブライブだってまだ次があるわ」




真姫も珍しくフォローします

それだけ今の穂乃果はダメなことを言っているのがわかるのです




「そうよ!今度こそ出場するんだから!落ち込んでいる暇なんてないのよ!」



















「出場してどうするの?」







「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」




「もう学校は存続できたんだから出たってしょうがないよ」










そんな事を言う穂乃果はらしくありません

ちょっと躓いたからって捻くれるなんて.....




私は、穂乃果は自分の気持ちに嘘をついていると考えました




それと同時に怒りを覚えました




「それに無理だよ....A-RISEみたいに踊るなんて、いくら練習したってできるわけがないよ....」




練習したってできない....




やりもしないのに諦める

穂乃果はそんなことを言う人ではありません!




言葉より先に行動で示す穂乃果がそんな事を言ってはいけません!!




「アンタそれ....本気で言ってる?」




にこが拳に力を入れて穂乃果を睨みつける




「本気だったら許さないわよ....」




「.......」




「許さないって言ってるでしょ!!!!!」




「ダメーー!「ダメだーー!」」




穂乃果に飛び掛ろうとするにこを真姫と大地が取り押さえます
















「離しなさいよ!真姫ちゃん!大地!!にこはね!アンタが本気だと思ったから!本気でアイドルやりたいんだって思ったからμ'sに入ったのよ!!ここに賭けようって思ったのよ!!それを!こんなところで諦めるの!諦められるの!?答えなさいよ高坂穂乃果ぁ!!!」




「にこちゃん、やめて....もうやめて....」




「落ち着くんだにこ...ここで争ったって誰も得しない」




「アンタ達も悔しくないの!?ここまで来て!あと一歩ってところまで来て!それなのにここで挫けて!にこは嫌なの!そんなの....そんなの許せないわ!!」







にこの想いをぶつけられても尚、穂乃果の心は揺らぐ様子がありません




「じゃあ穂乃果はどうしたらいいと思うの?どうしたいの?」




絵里が冷静に穂乃果に問いかける

穂乃果は目を瞑り.....そして


































「...........辞めます」

























辞める....この状況でこの言葉が意味するものはつまり







「穂乃果......スクールアイドル、辞めます」







「「「「「「「えっ.......」」」」」」」







穂乃果が辞めるなんて嘘に決まってます!

あんなにアイドルに魅了された彼女がそうそう簡単にやる気を無くすわけ.....







みんな口を開けて穂乃果が屋上を出る様子を見送る




あの希でさえも驚きを隠していません










ゆっくり....ゆっくりと、ドアノブに手を掛ける


































『こんなに可愛くてキラキラしてて楽しそうなんだよ!』










あの時の穂乃果に戻って欲しかったのです

アイドルやりたいと言い出して、観客を集められなくても最後までやり遂げようと私やことりを導いてくれた穂乃果に......




だから私は......

























だから私は!!
















ガシッ
















「え?」































パンっ!!!!!































穂乃果の頬を叩きました




許せません。今の穂乃果は最低です













「あなたがそんな人だとは思いませんでした」



















「海未.....ちゃん......」
















「あなたは......あなたは最低です!!!!!」


 
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