| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦姫絶唱シンフォギア~海神の槍~

作者:紡ぐ風
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

EPISODE8.黒を纏う

「明日、あいつ等は完全聖遺物のデュランダルを運ぶわ。それを襲撃して奪いなさい。」
「解ったよ、フィーネ。」
クリスはそう呟いた。

「へえ、こっちの世界ではデュランダルも完全聖遺物で残っているのか。」
「凄いよね~。ネフシュタンの鎧にソロモンの杖、さらにはデュランダルでしょ。まだ他にも見つかっていないだけで沢山あるんじゃないの?」
「キョウヤ君達の世界では、完全聖遺物は珍しいのかい?」
「そりゃあな、俺達の世界で見つかった完全聖遺物なんてアイギスの盾ぐらいなもんだぜ。」
「それに、発掘された完全聖遺物はフィーネが統括している研究班が対ノイズ用の兵器の研究にといって持っていってしまうんですよ。」
「そうなのか。着いたぞ。あれが我々の所有している完全聖遺物、デュランダルだ。」
弦十郎の言葉を聞きキョウヤ、美冷、響は前を見る。そこには機械によって厳重に保管されている錆びた剣が一振あった。
「あれが完全聖遺物、デュランダル……」
キョウヤは驚く。
「ああ、その通りだ。それで、響君達には移送の際の護衛を頼みたい。」
「なるほど。大丈夫か、響ちゃん。」
「うん。平気、へっちゃらだよ。それに、クリスちゃんに会えるかもしれないし。」
「響ちゃん、それは難しいぞ。響ちゃんに戦う意識が無いのは解る。でもあいつはこちらを敵としか認識していない。その固定概念を払うのは極めて難しい。出来るのか?」
「やってみます。私の胸のガングニールは、その為にあるんですから。」
「そうか。ところでオッサン、移送は何時やるの?」
「ああ。明日の8時、それが作戦の開始時間だ。」
「了解。美冷、久し振りに二人で遊びに行こうぜ。初めての東京観光だ。」
「いいの、キョウヤ?」
「ああ、勿論。仕事以外ではフリーなのがここのルールだ。」
「へえ~。それじゃあ弦十郎さん、キョウヤの面倒は任せて下さい。」
「おいおい、美冷は何時から俺の保護者になったんだ。」
「キョウヤと初めて遭ってからずっとでぇ~す。」
「そうかそうか。さて、そうと決まればさっさと動くぞ。たまには、二人で食事もいいだろう。」
「本当ッ!?ありがとうキョウヤ!」
「さっ、行こう。」
キョウヤは、既に夕刻になっているにも関わらず美冷を連れて外に出る。
「あの、師匠。私も、一度帰っても大丈夫ですか?」
「ああ、勿論。だが、くれぐれも作戦に支障をきたさないように頼む。」
「解りました。」
響も、外に出る。
「さあ、我々も準備と行こう。」
弦十郎は動きだす。
「そうね、弦十郎さん。」
その後ろ姿を見ながら、了子は不適な笑みを浮かべた。

「オラッ、食らえー!」
キョウヤは美冷と一緒にゲームセンターに設置されているシューティングゲームで遊んでいた。
「美冷、こうしていると、昔を思い出すな。」
「昔って?」
「俺達の世界にノイズがやってきたばかりの頃。まだ、ノイズへの対抗策がなかった頃。」
「私は、キョウヤよりも年下だから、そこらへんの記憶が曖昧だよ。」
二人はあっさりゲームをノーコンティニューでクリアしてしまう。
「そうだったな。さ、次行くか。」
「うん!」
キョウヤと美冷はゲームのハイランカー記入部分に『トライデント&エンゲツ』と記入し出て行った。

「ごめん、未来。でも私、未来ともう一度しっかり話したい!」
自分の部屋に戻った響は未来にそう言った。
「解っている!私が怒っているのは嘘をついていた事じゃないの!」
「どうして?私、未来のこと騙していたのに……」
「響が無茶をする性格なのは解っている。だけど、響が私の前からいなくなるのは嫌!響がいなかったら私、生きていけない!だから、あの人達の事について黙っていてもいい。……だから、私を一人にさせないで!」
未来は響に抱き付く。
「解ってるよ未来。私も、未来がいないと駄目。未来は、私にとって最高のひだまり。私の帰る所だもん。」
響も、抱き付く未来を抱きしめた。

「ここなら、静かかつ誰の目も気にする必要はないな。」
キョウヤ達は場所を変え、レストランに居た。
「キョウヤ、ここいかにも高そうだよ。」 
「大丈夫だ。オッサン達の所から謝礼金が出ているから平気だ。まあ、今日はしっかり食おうよ。」
「それよりも、私にお話があるんでしょ、キョウヤ。」
「…まあな。けど、その前にこの場に櫻井了子と関係者がいないことを確認したい。」
「話の内容って─」
「ああ、今回の事件の事だ。」
「やっぱり、私達の世界を救うには、こっちの事件の解決が必要かぁ。」
「まあな。これは俺の推測の域を越えないが、了子さんは黒の可能性が限りなく高い。」
「やっぱり、昨日図書館に行った理由って、こっちの事件の為だったんだ。」
「ああ。俺はフィーネと直接話した数少ないメンバーの一人だ。俺はフィーネから教えてもらった先史文明期の情報を元にこっちの神話との整合性を調べてフィーネの正体を調べるところから始めた。結果、フィーネの証言と完全に一致する条件の科学者が一人いたんだ。その科学者はフィーネの理論を一言一句違わず説明していた。それがこの本に記されていた。」
キョウヤは昨日借りた『ノイズ発生学』を美冷に見せる。
「キョウヤ、これって……」
「地球で売られている民間人向けのノイズ対策用の書籍だ。著者を見てみろ。」
「これって!」
美冷は驚く。そこには、『出来る女34歳 櫻井了子』と書かれていたからだ。
「でも、これだけで決めちゃ駄目だよ。たまたま発見しただけかもしれないし。」
「美冷が知らないのも無理は無い。人間の魂は輪廻転生するのを知っているか?」
「輪廻転生って、その人の魂は肉体の死後記憶をリセットして別の人に移るってあれのこと?」
「ああ。フィーネの魂は輪廻転生のサイクルから外れているんだ。そして、別の人の生後に入り込み、その人の人格を塗りつぶして魂が再誕する。とフィーネ本人はそう言っているし、俺達が良く知っている事だ。」
「それは、そうだけど。」
「何にしても、明日の作戦が正念場だ。これでネフシュタンの使用者、雪音クリスが現れれば黒だと俺は判断する。」
「キョウヤは、何時から了子さんを疑っていたの?」
「ほぼ最初からと言ってもいい。彼女は、最初から何か隠しているみたいだった。さぁ、そろそろ食べよう。作ってくれたシェフに失礼だ。」
キョウヤは運ばれて来た料理を食べ始める。
「それなら私も、いただきます。」
それからキョウヤ達は、普通に恋人同士でする他愛もない話を延々として、食事を終わらせる。
「合計で1万6700円となります。」
「ではこちらで。」
キョウヤはキャッシュカードを渡す。
「こちら、お返しいたします。」
カードを受け取り、キョウヤ達は出る。すると、ノイズを引き連れたクリスがいた。
「どうした。また遊んでもらいたいのか?」
「そうつれないこと言うなよ。私はちょいと頼みがあって来たのさ。」
「頼み?俺に何の。」
「あんた達、異世界から来たんだってな。なら、さっさと帰ってくれねぇか?」
「理由は?」
「あんた達が居れば、居るだけで戦渦の火種はばらまかれる。だからさっさと帰って欲しいんだよ!」
「それは、お前の本心か?それともフィーネの請け売りか?どっちだ?」
「なんでお前らがフィーネの事を!」
「何故って、俺達の世界にも居るからだ。フィーネがなっ。そして、俺達はフィーネに頼まれて地球に来た。全ては、フィーネの過ちを止める為に。」
「へっ!そうかいそうかい。まあ、明日は平和だといいな。」
クリスはそう言って去ってしまう。
「美冷、食後の運動だ。」
キョウヤと美冷は迫り来るノイズを蹴散らし、二課に戻った。

「オッサン、俺達の作戦、雪音クリスに筒抜けみたいだぜ。」
「なんだと!」
キョウヤの言葉に弦十郎達は驚き、了子は眉をしかめる。
「これは輸送計画は中止にした方がいいんじゃない?」
「いや、むしろ好都合だ。デュランダルを餌にネフシュタンの鎧を回収出来るかもしれん。それに…」
「それに?」
「いや、何でも無い。とにかく、キョウヤ君達は身体を休めたまえ。」
「それじゃあ、お言葉に甘えて、おやすみなさい。」
キョウヤ達は去ってしまう。

翌日、了子の車にデュランダルと響を乗せ、護衛用の車を4方向に配置してその後ろを追うようにキョウヤと美冷がバイクに乗って移動を行う。
「上手く成功するといいですね。」
「響ちゃん、こういう時は絶対成功させるものなのよ。」
移動中の車の中で了子と響は会話している。すると、橋の一部が爆撃を受け、左を走っていた護衛用の車は落下してしまう。
「やはり来たか!-♪I have needful Trident to now-」
「オッケー、キョウヤ!-♪My brave Seiryu Engetuto to now-」
キョウヤと美冷はシンフォギアを纏いノイズ達を倒して行き、デュランダルと響を乗せた車は人通りの少ない工場へ向かった。
「やっぱ来たか!」
クリスはネフシュタンの鎧の鞭で了子の車の前輪を破壊する。
「危ない!-♪Balwisyall nescell Gungnir tron-」
響はシンフォギアを纏い、了子とデュランダルを抱えて車から脱出し、キョウヤと美冷もやってくる。
「やっぱりお前の仕業か!」
「それがどうした!」
タンクの上に立っていたクリスはジャンプし、キョウヤに跳び蹴りを放つが、キョウヤは回避する。
「ちっ。歌う暇すら与えてくれないってわけか。」
「ったりめーよ!」
クリスはNIRVANA GEDONを放ち、キョウヤと響を攻撃。それによって響はデュランダルの入ったケースを落としてしまい、ケースが開いてしまう。
「しまった!」
キョウヤはクリスをデュランダルに近づけさせないようにするが、
「ちょせぇんだよ!」
クリスは鞭を伸ばしてデュランダルを手に入れようとする。
「ッ!?させない!」
響はデュランダルを奪われるのを防ぐ為にデュランダルを手に取る。すると、凄まじい力の流動が響を包み込んだ。
(何、これ?私が、私で無くなるような……)
その瞬間、響の身体が黒い靄で包まれる。
「一体何が起きてんだ!?」
クリスは驚き、
「ヤバい!想定していた事が起きやがった!こうなったら、こっちも使うか!トライデント、限定解除!レリックドライブ!」
キョウヤはそう叫び、キョウヤの素肌は黒い靄で包まれ、背中に悪魔のような翼が生える。
「響ちゃん、俺の言葉が解るか!」
キョウヤは響に話しかけるが、
「ウウゥ、ウガアアアアア!」
響は問答無用と言わんばかりにデュランダルのフルパワーを発揮してキョウヤとクリスを切り裂こうとする。しかし、
「そんなこと、させない!」
キョウヤは、デュランダルのエネルギーの刃を掴み、その位置で爆発させる。当然、工場地帯は完全に破壊され、クリスは逃げてしまっていた。

夕方になり、二課のメンバーは現場に集まり、デュランダルの移送計画の中止を決定した。
「キョウヤさん、すみません。私、キョウヤさんにまで怪我させようとするなんて。」
「大丈夫だ。響ちゃんのガングニールを考えると、何時かこうなると思っていたから。」
キョウヤは響をなだめている。
(あれがデュランダルの力。ようやく始まるのね。全てが。)
了子は一人、そう考えていた。



戦姫絶唱シンフォギア~海神の槍~
つづく 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧