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英雄伝説~菫の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第80話

探索を続けたロイド達は牢屋らしき場所に到着した。



~太陽の砦~



「あ……!」

「もしかして……行方不明になった?」

牢屋がある場所に到着し、牢屋の中に閉じ込められている一般人達を見つけたロイドとティオは声をあげた。

「あ、あんたたちは……!」

そして牢屋の中に閉じ込められている一般人の一人―――ガンツはロイド達の声に気付いて振り向き、ロイド達を見つめて驚いた。

「ガンツさん………ご無事で何よりです。」

「警察の兄ちゃんたち………!た、助けに来てくれたのか!?」

ロイドに声をかけられたガンツはロイド達が自分達を救援しに来てくれたと思い、明るい表情で訊ね

「ほ、本当に!?」

「あたしたち、出られるの!?」

ガンツと同じ牢屋に閉じ込められている市民達もガンツの言葉を聞いて希望を持った表情になった。

「それは………」

「………とにかく扉だけでも開いてしまいましょう。」

現在の最優先目的がヨアヒムの逮捕の為、ガンツ達にどう答えるか悩んでいるロイドにエリィが助言した。

「どうやらあれが扉の開閉装置みたいだね。」

「向こう側にもあるからとっとと開けちゃいましょ!」

「ああ!」

その後ロイド達は牢屋の開閉装置らしきレバーを操作して市民達を牢屋から出した後市民達にすぐに脱出できない事を説明した。



「す、すぐには出られない!?」

「………すみません。自分達も敵の目を盗んで何とか潜入している状態です。」

「魔獣や操られたマフィアがあたりをウロウロしている………この遺跡もそうだが街までの安全も保障できねぇ。」

「しばらくここで救援を待っていただく方がいいかと。」

「幸いこのフロアには魔獣はいないわ。だから現状ここが貴方達にとっての安全地帯よ。」

「そ、そんな………」

「ああっ………どうしてこんな事に………」

ロイド、ランディ、ティオとレンの説明を聞いたサーベルバイパーの少年は肩を落とし、アルカンシェルの劇団員は嘆いた。

「じきに混乱が収まれば警官隊も駆け付けると思います。どうかそれまでご辛抱を。」

「遊撃士協会も全面的に事態の収拾に協力しています。」

「敵を制圧したら私達も救援に向かいますからどうかそれまで気をしっかり持ってください!」

「わ、わかった………」

「私達も出来るだけの協力をさせてもらおう………!」

そしてエリィ、ヨシュア、ルフィナの言葉に市民達は希望を持ち、力強く頷いた。その後ロイド達は探索をさらに続け、別の牢屋がある広間に到着した。



「ここも牢屋か……」

「見た所誰もいないようだが………」

牢屋がある広間に到着したロイドとレオニダスは呟き

「いえ――――」

「あら……」

その時何かに気付いたティオがジト目である牢屋の方向を見つめ、レンは意外そうな表情でティオと同じ方向を見つめた。

「だ、誰かいるのか………!?」

「マルコーニ会長………!」

2人が見つめた方向から男性の声が聞こえ、声を聞いたロイド達が見つめるとそこにはなんとマルコーニ会長を始めとしたルバーチェのマフィア達が数人牢屋の中にいた。

「え………あの”ルバーチェ”の!?」

「何で”ルバーチェ”のトップがこんな所に……しかも閉じ込められているんや?」

「恐らく彼らはヨアヒムに”用済み”と判断されて切り捨てられたのじゃないかしら。」

声をあげて驚いたロイドの言葉を聞いて牢屋の中に入っている人物がルバーチェのトップである事に気づいたエステルは目を丸くし、ゼノの疑問にルフィナは自身の推測を答えた。



「お、お前達どこかで見たような………」

一方自分達の目の前まで来たロイド達を見つめたマルコーニ会長が不思議そうな表情をしたその時

「お、お前らは………!?」

「特務支援課のガキども……!」

「それに”西風の旅団”までいやがる………!」

「なに………!?”黒の競売会(シュバルツオークション)”を台無しにした連中だと!?」

ロイド達に見覚えのあった為驚きの声を上げたマフィア達の答えを聞くと信じられない表情でロイド達を見つめた。



「別に台無しにするつもりはありませんでしたが………」

「いずれにしても自業自得ではないかと。」

一方マルコーニ会長の言葉を聞いたロイドは溜息を吐き、エリィは厳しい表情で指摘した。

「ええい、黙るがいい!お、お前らのせいでわしは議長の機嫌を損ねて危ない橋を渡る事に………す、全ては貴様らのせいだ!」

「物凄い責任転嫁っぷりね……」

「この後に及んで悪あがきとは………あのヨアヒムともいい勝負をする小物だな。」

「やれやれ……こんな小物がトップのガルシアには同情するわ……」

「ヨアヒム氏と共謀していた訳ではないと言い張るつもりですか?」

自分達の今の状況をロイド達のせいにしているマルコーニ会長の指摘にエステルとレオニダス、ゼノは呆れ、ヨシュアはマルコーニ会長にヨアヒムとの関係を訊ねた。



「も、もちろんだとも!”グノーシス”……ま、まさかあんな恐ろしい薬だったとは……」

ヨシュアの疑問にマルコーニ会長は力強く頷いた後表情を青褪めさせ

「さ、最初は潜在能力を高める薬という話だった……”黒月”の襲撃も成功して皆、競い合って服用したが………」

「昨日の夜、服用した連中の様子が全員おかしくなってしまって………そ、それでこんな事に………」

「………それどころか……化物みたいになったヤツも………」

「おお女神(エイドス)よ………!我等の罪をお許しください………」

マルコーニ会長に続くようにマフィア達は事情を説明した後”グノーシス”に手を出してしまった事を後悔していた。



「………なるほどな。」

「大方、睨んだ通りですね。」

「…………………………………」

事情を聞いたランディは頷き、ティオは真剣な表情で呟き、ロイドは考え込んでいたが

「こ、これでわかったろう!ワジも被害者の一人なのだ!とっととここを開けて安全な場所に連れて―――」

「――――ふざけるな!」

「な……!」

自分達の立場もわからずに胸を張って自分達も被害者であり、自分達を安全な場所に避難させるように指示をしようとしたマルコーニ会長を一喝して黙らせた。

「元凶は確かにヨアヒムだろう!だが、あんたたちに責任が無いと言わせるものか!市民達に薬を流したのは他ならぬあんたたちだろうが!?」

「そ、それは………」

ロイドの指摘で図星を突かれたマフィアは口ごもった。

「………その狙いもわかっている。”グノーシス”に危険が無いか市民を使ってテストしたんだろう。あわよくば販売ルートを確保して、抗争後には広めようとすらした……違うか――――!?」

「ぐっ………」

「…………………」

「……さすがにやりすぎだったかもな………」

そしてロイドに自分達の狙いを指摘されるとさすがのマルコーニ会長も返す言葉もなく唸り声をあげ、マフィア達は自分達が”やりすぎてしまった事”に肩を落としたり、後悔していた。



「………今度ばかりは貴方がたをかばう議員は現れないでしょう。ハルトマン議長に至ってはヨアヒム氏との関係について幾つもの疑惑が持たれています。もう後ろ盾は無くなったと覚悟した方がいいでしょうね。」

「クスクス、まさに”年貢の納め時”ね♪」

「ぐぐぐぐぐぐ………」

エリィとレンの指摘に対する反論が思いつく事ができないマルコーニ会長は悔しそうな表情で歯ぎしりをした。

「ま、それはともかく………ガルシアのオッサンはどうしたんだ?てっきり一緒に捕まってるものと思ったが……」

その時ガルシアが牢屋にいない事が気になったランディはマルコーニ会長達にガルシアの行方を訊ねた。



「………若頭は最後までヨアヒムに抵抗していた………」

「だが、化物になった仲間達に力ずくで抑えこまれて……」

「その後は見かけていない………」

「フン………そうか。」

(おい、レオ。現状を考えると今のガルシアは………)

(………間違いなく”グノーシス”を投与されてヨアヒムに操られている状況だろうな。)

マフィア達の話を聞いたランディが頷いている中ガルシアが現在どんな状況になっているのか察したゼノとレオニダスは表情を引き締め

「………ちょっと心配ですね。」

「うーん、確かに………―――ねえ、ロイド君。この牢屋の扉、どうするつもり?」

二人の様子に気づいていないティオの意見に頷いたエステルはある事に気付いて真剣な表情でロイドに尋ねた。

「なっ………」

一方エステルの疑問を聞いたマルコーニは驚いた。



「このままにしておいたらちょっと危険な気もするし………かといって扉を開けたら逃げられちゃうかもしれないし。」

「……ああ。」

「正直、難しい判断だと思う。僕達は君の判断に従うよ。さすがに遊撃士が守るべき民間人とは言いにくいからね。」

「…………………」

エステルとヨシュアの話を聞いてどうするか考え込んでいたロイドだったが近くにあるレバーを降ろしてマルコーニ会長達の牢屋の扉を開けた。

「は、ははは………!」

「おお……!」

「お、恩に着る……!」

ロイドの行動にマルコーニ会長達は明るい表情をし

「ロイドさん………」

「やれやれ………甘いねぇ。」

「ふふ………仕方ないわね。」

ティオは驚き、ランディとエリィは苦笑し

「うふふ、相変わらずエステルみたいに甘すぎね。」

「あんですって~!?それはどういう意味よ!」

「まあまあ………」

「フフ、貴女達の関係も相変わらずね。」

レンは口元に笑みを浮かべ、レンの言葉を聞いたエステルはレンを睨み、ヨシュアはエステルを宥め、その様子をルフィナは微笑ましく見守っていた。



「………あくまで緊急措置だ。それに、丸腰で脱出できるほどこの遺跡の魔獣は生易しくはない。大人しく警察の救出を待った方が身のためだと思いますよ。」

「フ、フン!ワシに指図するな!これで貴様らも用済みだ!とっとと行ってしまえ!」

ロイドの警告にマルコーニ会長は鼻を鳴らした後ロイド達を睨んで怒鳴り

「………行きましょう。」

「ああ……先を急ごう!」

エリィはロイドに先を進むよう促し、エリィの言葉にロイドは頷いた。その後ロイド達は探索を再開し、奥に向かって進んで行くと聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「フフ………やっと来たようだね。」

「この声は………!」

「アーネストさん………!」

声を聞いたロイドとエリィは驚いた後仲間達と共に剣を構えている自分達を待ち構えているアーネストに走って近づいた。

「あ………!その人って確か……!」

「君達が逮捕した市長暗殺未遂事件の犯人か………」

アーネストを見たエステルは驚き、ヨシュアは真剣な表情で呟いた。



「クク、遊撃士諸君に加えて”西風の旅団”もご一緒とは。”(イン)”といい、君達もなかなか顔が広いじゃないか。」

「―――戯言はそのくらいにしてもらいましょう。マフィアや警備隊と違ってあなたは意志を封じられて操られているわけではない………自分の意志で協力しているならさらに罪が重くなりますよ?」

不敵な笑みを浮かべて自分達を見つめるアーネストにロイドは厳しい表情で警告した。

「クク、その”罪”というのは人間が勝手に決めたものだろう?今日から、このクロスベルは新たなる”聖地”となる………どうしてそんな下らないルールを気にかける必要があるんだい………?」

「アーネストさん………」

「話が通じませんね……」

「………駄目だな、これは。」

「ヨアヒムと”同類”ね。」

「”類は友を呼ぶ”とはまさにこの事でしょうね。」

アーネストの意味不明な答えを聞いたエリィは厳しい表情でアーネストを睨み、ティオとランディ、レンとルフィナはそれぞれ呆れた表情でアーネストを見つめた。



「………貴方がどんな経緯でヨアヒムに取り込まれたのか………いずれ、事件の後にでもきちんと聞かせてもらいます。だが今は――――そこを退いてもらう………!」

そしてロイドはアーネストを排除する為に武器を構え、ロイドに続くようにエリィ達も武器を構えた!

「ハハ、いいだろう!偉大なる同志から授かった”真なる叡智(グノーシス)”に至る力……!その目で確かめるがいい………!」

ロイド達の様子を見たアーネストは凶悪な笑みを浮かべて笑った後、全身にすざましい瘴気を溜め始め

「こ、これって………!」

「まさか………!」

魔人化(デモナイズ)か――――!」

アーネストの様子を見たエステルが驚き、ヨシュアとレオニダスが真剣な表情で叫んだその時!

「オオオオオオオオオッ!!」

なんとアーネストは異形の怪物―――”魔人”となった!



魔人化(デモナイズ)………!」

「しかもこいつは、あのマフィアどもより………!」

「ああ……明らかに”格上”やな……!」

アーネストの魔人化(デモナイズ)がマフィア達の時と比べると圧倒的に強い事をランディとゼノが悟ったその時翼竜が2体飛行してアーネストの傍に現れた!

「……ククク………イイ心地ダ………魔ノチカラヲ取リ込ミ人ヲ超エタ存在ニ進化スル………コレゾ真ナル叡智(グノーシス)ヘノ道!」

「アーネストさん………!どうしてそこまで………!どこまで墜ちれば気が済むんですか………!」

「………なんか哀れね………」

アーネストの変わりようにエリィは悲痛そうな表情をした後アーネストを睨み、エステルは溜息を吐いてアーネストを哀れんだ。

「どんな姿になろうとも同じだ………―――アーネスト・ライズ。公務執行妨害の現行犯により、これより身柄を拘束させてもらう!」

「シャアアアアッ!!」

そしてロイド達はアーネスト達との戦闘を開始した―――――!


 
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