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龍が如く‐未来想う者たち‐

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冴島 大河
第三章 内部崩壊
  第五話 義兄弟の盃

緊迫した空気の中、突然乱入してきたのは警察にいたはずの喜瀬。
大吾たちも驚きを隠せない中、さらに2人喜瀬の後からやって来た。


「伊達さんに、狭山さん……?」


秋山が小さく呟くと、息を切らした伊達が半笑いで話しかける。


「喜瀬は俺たちが見張る事を条件に、外へ出してもらったんだ」
「伊達さんが勝手に喜瀬を外へ出そうとしてたんで、私は伊達さんの見張りとして付いてきただけです」


狭山が厳しく言うと、伊達は言い返す言葉も無いまま苦笑いを浮かべた。
だがそんな空気もお構いなしに、喜瀬は倒れ込む足立の胸ぐらを掴み掛かる。


「屋良たちとは、縁切ったんちゃうんかボケ!」
「……何の事かい?喜瀬」


血が滴る口角を吊り上げ笑う足立に、喜瀬はもう一発殴りかかった。
慌てて冴島は、喜瀬を止めに走る。


「落ち着けや!!何があったっちゅうねんな!?」
「お前には、何も関係無い!!」
「関係無いことあらへん!!お前らのせいで、東城会はメチャメチャや!!」


決して、喜瀬たちだけのせいだとは思っていない。
だが、詳しく話を聞かないと気が済まなかった。
振り上げる喜瀬の拳を止めようと、必死に腕を握る。
少しして、根負けした喜瀬が腕を下ろした。


「俺らは……足立と宮藤とは、五分の盃を交わした兄弟なんだ。幼い頃からずっと一緒にいた、かけがえのない親友。極道の世界に入っても、それは変わらなかった。そんな俺たちの腕を買ってくれたのは、屋良と湯川だったんだ」


掴んでいた胸ぐらを放すと、代わりに足立に向けて手を差し出す喜瀬。
手を取り足立が立ち上がると、今度は足立が話を始める。


「屋良さんたちとも、五分ではないですが盃を交わしました。ですが私たちは、屋良さんたちの行動について行けずつい最近盃を返したのです」
「盃を返したやと?」
「返したはずなんだが、足立はまだ屋良と結託してるって俺は聞いたんだ」


喜瀬は、更に頭に血が上ってる様だ。
顔を真っ赤にし、怒りに震える。
よっぽど親友のやっている行為が、許せなかったのか。
それとも、何か別の意味で怒っているのか。


「屋良と接触しているのは……事実です」
「テメェ、俺らを裏切ってまで……!」
「勘違いしてるぞ、喜瀬。屋良さんたちと縁を切ったのは、お前だけだ」


驚きの声を上げる前に、乾いた銃声が部屋に響く。
足立が構えた拳銃、向けた先は大吾では無かった。

肩から流れる血が自分のものだと、喜瀬は理解する。
撃たれたのは、喜瀬だった。


「私は、友を裏切ってまで成し遂げたいのです。新たな東城会の……最強だった昔のような東城会を」


その言葉を残し、足立は逃げるようにその場を去る。


「くそっ!俺は足立を追う!狭山は喜瀬を頼む!」
「わかりました」


伊達と狭山が言葉を交わす間も、冴島はその場を動けずにいた。
頭に言葉が巡る。
どの情報が正しくて、どの情報が嘘なのか。
だがどれだけ馬鹿だって、この結果には辿り着くだろう。


「兄弟」
「あ?」


冴島の言葉に、真島が反応する。
決意の眼差し。
真島が冴島の方へ振り返った際に、その目を見る。
互いに頷き、ニヤリと笑った。


「6代目、ワシらちょっと出かけてくるわ」
「えっ?真島さん、どちらに?」
「決まっとるやろ」


真島は冴島の肩に手を置き、ニヒヒと声を漏らした。
奪われたものは、取り返す。


「桐生を、迎えに……」


絶望の流れを止める最後の希望は、もう彼しかいなかった。
桐生一馬。
東城会を繋ぐ、最後の壁。
冴島は自身の想いを託す為、桐生奪還へと動き始める。
 
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