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龍が如く‐未来想う者たち‐

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冴島 大河
第三章 内部崩壊
  第四話 ぶつかる想い

冴島は、谷村たちと別れ走っていた。
向かう先は、さっき逃げ込んだ真島組事務所。
遥か高く聳える、神室町ヒルズに向かって。


「ヒルズで、銃声が聞こえたみたいっすよ」


その谷村の一言が、怒りから焦りへと変わった。
ヒルズには、真島や大吾がいる。
何かが起きた、そう考えただけでいてもたってもいられなかった。
別れの言葉を告げぬまま、冴島は走り出していた。

丸一日寝ていないだけで、身体が重い。
昔は、こんな程度で疲れる事は無かった。
改めて歳を痛感するが、今は走るしかない。

ヒルズに辿り着き、運良く開いていたエレベーターに乗り込む。
殴るようにボタンを押すと、急ぐ冴島を苛立たせる程のんびりと扉が閉まった。
ゆっくり上がる中、必死に呼吸を整える。
何があっても、すぐ動けるようにと。


しばらくして扉が開くと、目の前には嫌な光景が広がっていた。

足立の隣に麻田、それに向かい合うように秋山に真島、大吾も立っている。
麻田のこめかみに突きつけられている拳銃が、全てを物語っていた。


「足立ぃ!!」


エレベーターから飛び出した冴島が声をあげると、全員の視線が冴島に向けられた。
足立は、気味の悪い笑いを零す。


「もう来ましたか、冴島さん」
「何でこないな事になっとんや!?」
「まだ気付かないんですか?麻田は人質ですよ。堂島大吾と交換するための」


拳銃を向けられている麻田は、パニックになっていた。
目を見開き、唇は震え、何が起きているのか理解出来ていない様。
組長である足立の行動だから、尚更だ。


「私はね、別に7代目を目指してない訳ではないのです。ですが、上には上がいる。勝ち目の無い者は、その者に付き従うしか無いのです」
「それが喜瀬や、屋良という事ですか?」


秋山が問いかけると、足立は素直に頷く。
だがその顔は余裕の笑顔ではなく、悔しさに滲んだ苦い顔だった。
本当は悔しい。
だけど歯向かえば、すぐに蹴落とされる。
ここは、そういう世界だから。


「お前は、それでええんか?」


冴島の言葉に、肩を震わす足立。
まるで図星かのような、呆然とした顔になる。


「挑戦もせずただ強い奴に尻尾振って、保身するだけでお前は満足なんか?足立、お前にだって目指したい所あるやろ」
「うるせぇっ!!」


耐えかねた足立は、銃口を麻田から冴島に向けた。
解放された麻田は慌てて真島たちに駆け寄り、とりあえず安全が確保される。


「私だって……俺だって男だから、テッペン目指してぇよ!!だがな、現実見せられちゃ……!!」
「その程度の夢やったっちゅうことやな」
「その、程度?」


銃口は、向けられたまま。
だがそれに臆する事なく、足立の方へと歩み寄る。
銃を持つ手が震える姿に、どこか自分を重ねた。
足立だってバカじゃない。
冷静に話し合えばきっと……。
そう思った矢先、何かが横を通り抜けた。

何だ?と思う頃には、それは足立の元へ駆けていた。


「足立ぃぃぃっ!!」


大声を張り上げ、男が足立に向け拳を振り切った。
避けられるはずもなく拳をまともに顔面にくらい、そのまま後ろへ尻餅をつく。


「喜瀬!?」


大吾と真島と秋山が、3人声を揃え名を呟く。
バンダナをした男・喜瀬は、大きく息を吐いた。
 
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