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第三章

 また夜に急患が来た。そして救急車の看護士が言ってきた。
「またです」
「前のあの患者さんですか?」
「針があちこちに刺さってた」
「その患者さんがでるか」
「来たんですか」
「はい、そうです」
 その通りだとだ。救急車の中にいた看護士がだ。蒼ざめた顔で言ってきた。
 そしてだ。彼はこう言うのだった。
「今度も酷いことになってますよ」
「酷いって一体」
「どういう状況なんですか?」
「酷いといっても色々ありますけれど」
「一体」
「今回も口では言い表せないです」
 前と同じくだというのだ。
「それも前よりも酷いです」
「あの針の時よりも酷いって」
「どんな事態なんですか」
「患者さん生きてますよね」
「大丈夫ですよね」
「はい。生きてますが」
 だがそれでもだとだ。また口ごもるその看護士だった。
「それでもです。危ういので」
「じゃあ今日も当直津上先生ですから」
「先生に連絡して手術室に行ってもらいますね」
「今から緊急手術」
「それですね」
 こうしてだ。その患者はすぐに来てだった。そのうえでだ。
 話を聞いた津上は手術の用意をし手術室に向かった。その中でだ。
 彼は共に手術室に向かう看護士達にだ。こう言うのだった。
「言った通りだっな」
「ええ、またですか」
「先生のお言葉通りまた来ましたね」
「まさかと思いましたけれど」
「こうなるなんて」
「わかってたんだ」
 そうなるとだ。彼はマスクの下で言った。
「それで患者さんはまた滅茶苦茶なことになってるらしいな」
「ええ。今度も凄いらしいですよ」
「酷いらしいです」
「しかも前の針の時より酷いだろうな」
 見ればその目が鋭い。その目での話だった。
「もう洒落にならない位にな」
「はい、そうみたいです」
「どうやら」
「それでも患者さんで危ないならな」
 それならとだ。言う津上だった。
「助けないとな」
「医師としてですね」
「絶対に」
「医者は助けられる命を助けるのが仕事だ」
 簡潔にだ。こう言った津上だった。
「それならな。やるさ」
「そうですね。じゃあ私達も」
「先生と一緒に」
「その後で話すな」
 そしてだった。津上はこうも言った。
「あの患者さんのことな。そうするわ」
「わかりました。じゃあ」
「それもお願いします」
 こうした話をしてだった。津上は手術室に入った。今度はだ。
 全身火傷だらけであり前の穴と後ろにだ。棒を入れていた。しかもだ。
 手足の爪が剥がされている。そして首には縄だ。そしてその中でだ。患者は気を失いそうになりながらも恍惚としながらだ。喘いでいた。
 まさに異様な光景だった。それを見てだった。看護士の一人が言った。
「妙なんですけれど」
「そう思うな」
「凄い痛そうで死にそうなのに」
「しかしだな」
「何か凄く気持ちよさそうですけれど」
 首を捻ってだ。この看護士は津上に言った。
「おかしなことですね」
「そうだな、まあとにかくだ」
「手術ですね」
「すぐに何とかしないと危うい」
 それでだと言ってだった。
「話はそれからだ」
「はい、手術をしてから」
 こう話してだった。すぐにだ。 
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