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上からマリコ

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3部分:第三章


第三章

「だからつい。あの時も」
「声をかけてくれたのね」
「はい、何ていいますか自分でも」
 あの時のことを思い出して。僕は自分の顔が真っ赤になることを感じながらそのうえで答えた。
「不思議なんですけれど」
「それでもなのね」
「あの時どうしても止まらないで」
「一目惚れかしら」
「それでした」
 僕は真っ赤な話で答えた。
「ですからマリコさんがブスとかそんな」
「そう。それならいいわ」
「有り難う。それじゃあね」
「はい、それじゃあ」
「私も言うわね。さっきも言ったけれど私年下の子が好きなの」
 こう言ってきた。僕に対して。
「それに君の外見も性格もね」
「性格もですか」
「人間は中身だからね」
 それでだと。僕に顔を向けてまたくすりと笑って言ってくれた。
「君のそうした性格好きになったわ」
「僕の性格が、ですか」
「だって。いきなりだったじゃない」
 そのだ。一目惚れで告白したことを言ってきた。
「もう率直で。好きなのよね、私のこと」
「はい」
 即答だった。ここは。
「勿論です」
「その気持ちが嬉しいのよ」
「ってそうなんですか?」
「あのね。人が好きだっていうことも素晴らしいことだけれど」
 年上の女の人らしく余裕を以てだ。マリコさんは僕に言ってくれる。
「人に好かれるってこともね」
「そのこともなんですか」
「こっちは素晴らしいというよりは嬉しいの」
「嬉しいんですか」
「そう。それに幸せなのよ」
 この二つの感情がだ。一緒にあるというのだ。
「だって。人って好かれることって嬉しいじゃない」
「はい、それは僕もですけれど」
「誰だってそうなのよ。ましてやいきなり。人前で告白されるなんて」
「すいません、恥ずかしかったですよね」
「とてもね。けれどね」
 それと一緒にという言葉だった。マリコさんの今度の言葉は。
「映画とかドラマみたいで。そうしたののヒロインになった気分になれて」
「それで、なんですか」
「とても嬉しいのよ、私」
「けれど病院じゃ」
「囃し立てられてるわよ、色々とね」
「すいません、本当に」
 恐縮することしきりだった。このことは幾ら謝っても足りないと思った。けれど。
 その僕にだ。マリコさんは今度はこう言ってくれた。その言ってくれた言葉はこうしたものだった。
「これもまるでヒロインみたいよ」
「ドラマとかのですか」
「こうしたのに憧れてたのよね」
「憧れてたんですか」
「しかも相手は君みたいな可愛い男の子」
 マリコさんは今度は僕のことを言ってきた。今目の前にいる僕のことを。
「嬉しくない筈ないじゃない」
「あの、可愛いって」
「そうよ。君はかなり可愛いわよ」
「可愛いんですか」
「だからね」
 それでだと。マリコさんは今度は何処か小悪魔っぽい笑みになってだ。その笑みで僕を見ながらこうも言ってきた。何かずっとマリコさんのペースだ。
 そのペースのままだ。マリコさんは僕に言ってくる。
「私が年上のせいよ。けれど年下の彼氏なら」
「彼氏、僕がですか」
「人はこうしてデートする相手を彼氏って言うのじゃないかしら」
「それはそうの」
「私が彼氏って認めたから彼氏よ」
 そうなった僕は今。
 
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