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呪いの指輪

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2部分:第二章


第二章

 ヒルダの両親はだ。笑顔でありながらもこう漏らしたのだった。
「凄いけれど何かな」
「そうよね。おかしいわよね」
「何であそこまで急に台頭できたんだ?」
「あっという間にドイツの大統領になってドイツを立て直してくれたけれど」
「また。どうしてなんだ?」
「何の後ろ盾もなかったのに」
 こう言うのだった。生活が一気に楽になったことに感謝しながらもだ。
「おかしいな」
「有り得ないことではあるわね」
 これは二人だけが思っていることではなかった。
「資金だってなかったのに」
「急に集ったっていうし」
「周りに急に人が集まって」
「まるでヒトラーだよ」
「そうね。何か独裁的だし」
 二人でだ。こんな話をしていたのだった。そのジンツァーについて。
 しかもだ。彼の経歴もだ。これがまただった。
「普通の高校を出てっていうか何の変哲もない」
「一介の自動車工場の従業員が急に政治家になった?」
「選挙には行ってて組合活動もしてたけれど」
「それでもどうしてなんだ」
「政治家としてあそこまで大成できた」
「わからないな」
 とにかくだ。何故急にドイツの大統領にまでなれたのかだ。誰もがいぶかしんだ。経歴を見ても政治家になれる様な者ではなかった。しかしだったのだ。
 彼はドイツの大統領になりドイツを建て直しだ。そのうえでだった。
 今度はそのドイツがある欧州全体をだった。
 EUの理事長に立候補してだ。何なく就任した。やはり絶大なカリスマの下でだ。そして今度は欧州全体を立て直してだ。そのうえでだったのだ。
「EUの大統領か」
「権限が凄く拡大されて」
「まるで独裁者だね」
「今度もね」
 まただ。ヒルダの両親が難しい顔でだ。家で話していた。ヒルダはその話を聞いている。食事の場だが話はだ。今一つ浮かない顔で為されていた。
 その中でだ。両親は言うのだった。
「確かに立派にやってくれるけれど」
「何であそこまであの人の思い通りになるのかしら」
「それがわからないよね」
「全くよね」
 こうだ。二人はジンツァーへの疑問の声を出す。そしてだ。
 それを聞いたヒルダ、学生になった彼女がだ。夕食のジャガイモを食べながら両親に尋ねた。
「大統領は立派な人じゃないの?」
「立派なことは立派さ」
「欧州の為に働いてくれている人よ」
 両親もそのことは認めた。少なくとも彼は欧州では英雄になっていた。
 だがそれでもだった。彼はだ。どうしてもだった。
「経歴とかを見てもそれでもだよ」
「急にあそこまでになったのよ」
「選挙に急に出て来て当選して」
「ドイツの大統領からEUの大統領よ」
「人もお金も集まってきてね」
「それでだから」
 何故一介の工場労働者が本当に瞬く間に欧州の総統になれたのか。二人はこのことがどうしてもわからなかったのだ。
 それでだ。もう十代後半になっているヒルダに話したのである。
「ヒルダもそろそろ政治のことがわかる歳だけれど」
「ヒトラーでもあそこまで急に登りつめてはいないのよ」
「それでだから」
「不思議で仕方ないのよ」
「そういえばあの人私がまだ子供の頃に出て来て」
 そして今はだというのだ。
「EUの大統領になったけれど」
「何の後ろ盾もないのに」
「どうしてかって思うとね」
 そこが疑問だというのだ。そしてだった。
 二人でだ。ジャガイモにバターを乗せて食べながらだ。娘に話すのだった。
 
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