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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第87話(4章終了)

その後、ロイド達はティオと共にバスに乗って夜のクロスベル市へと戻った。支援課に戻って、疲れたティオを自室で早めに休ませた後………ロイド達は改めてセルゲイと話をする事にした。



~夜・特務支援課~



「―――そうか。その名前が出てきたか。”真なる叡智(グノーシス)”………」

ロイド達の報告を聞いたセルゲイはロイド達背中を向けて外の景色を見ながら重々しい様子を纏わせて呟いた。

「………課長、教えてください。6年前に兄が関わったという、ティオとレンを拉致した教団―――”D∴G教団”について。」

「当然…………課長はご存知なんですよね?」

「最初っからティオすけの事情を知ってるような感じだったしな。」

ロイド達に尋ねられたセルゲイは黙り込んだ後振り向いてロイド達に言った。

「―――俺が知ってるのは当然だ。当時、ガイと共に教団のロッジの一つを制圧した当事者だったからな。」

「そ、そうだったんですか!?それじゃあ課長は、兄貴の―――」

「直接の上司だった。………当時から俺はちょいとハミ出し気味でな。ある時、規格外の新人を2人も押し付けられちまったんだ。そのうちの一人が、お前の兄貴だ。」

「あ…………」

「直接的で無鉄砲だったが………ヤツは優秀な捜査官だったよ。いい意味で、もう一人の新人と好対照な組み合わせだった。」

「もう一人の新人の方というのは……?」

「ひょっとしてあの一課のダドリーとか?」

セルゲイの話を聞いていてある事が気になったエリィとランディは質問し

「いや、ヤツは生粋の一課上がりの男だ。俺が受け持ったもう一人の規格外の新人……―――それがあの、アリオス・マクレインだ。」

「ええっ!?」

「あの人、元は警察の………!?」

セルゲイの答えを聞いたロイドと共に驚いた。

「数年前に警察を辞め、遊撃士に転向しちまったがな。警察が遊撃士協会に微妙な距離感を持っている理由の一つでもあると言えるだろう。」

「なんとまぁ……」

「兄貴とアリオスさんが同期の新人同士だったなんて………」

「年齢はアリオスの方が2つばかり年上だったがな。」

自分の話を聞いて驚いているロイド達にセルゲイは話を続けた。



―――既に結婚して、娘も生まれたばかりのアリオスはとにかく生真面目すぎる男だった。一方ガイは、奔放で無鉄砲でとにかく前向きな馬鹿野郎だった。そんな2人だからこそ、逆にウマが合ったんだろうな。わずか2年足らずで、あいつらはクロスベル警察最強の若手コンビと言われるようになった。



「…………………………」

「た、確かにその2人なら最強という言葉もわかりますね……」

「ああ………正直、俺も誇らしかったもんだ。そんな凄い部下どもを育てる絶好の機会に恵まれたんだからな。そうして俺達の班は華々しい実績を打ち立てて行き……ついには一課に代わって国際的な犯罪事件の合同捜査を任されることになった。」

「国際的な犯罪事件……」

「ひょっとしてそいつが……」

セルゲイの話の中である事が気になったロイドは察し、ランディは目を細めて尋ね

「ああ―――例の”教団”だ。『D(ディー)∴G(ジー)教団』………それが連中の正式名称らしい。」

尋ねられたセルゲイは重々しい様子を纏って答えた。

「………………」

「エステルちゃん達に聞いた時も疑問に思ったがその∴ってのは何なんだよ?」

「∴は『~ゆえに』を意味する数学的な記号だけど………『D∴G』というのは何を意味してるんでしょう?」

「未だそれは不明だが………そのうちの”G”に関しては何とか突き止められている。G―――すなわち”真なる叡智(グノーシス)”だ。」

「あ……」

「ヨアヒム先生が言っていた悪魔の力を得る薬…………」

「そう繋がんのきょ………!」

セルゲイの説明を聞いたロイド達は表情を厳しくした。

「事件が終結して6年あまり―――多くの謎を残した宗教団体だが………一つ確かに言えることがある。それは、ここ数十年で最悪の組織犯罪を引き起こした最低の連中だったってことだ。……各地で拉致した子供達を何十人と犠牲にしやがったな。」

「っ………」

「昨日、イアン先生が言っていた……」

そして怒りの表情のセルゲイが語った言葉を聞いたロイドは怒りの表情になり、エリィは静かな様子で呟いた。



――――『D∴G教団』………奴等はゼムリア大陸の各地で10以上の拠点(ロッジ)を持っていた。そして、それぞれのロッジで様々な形での”儀式”を繰り返した。おぞましい悪魔召喚的なもの、”古代遺物(アーティファクト)”を利用したもの、そして人体実験的なもの………そして、それらの儀式の時に必ず使用されていたのが……”グノーシス”という名の正体不明の薬物だったという。



「…………………………」

「………その……衝撃的すぎる話ですね………」

「それで、事件はどんな風に解決されたんスか……?」

「ああ………」



―――昨日も言ったが、被害が厳重な警備を敷いていたメンフィル帝国領を除いた各国に広がっていた事から国際的な捜査体制が設立された。各国の軍、警察、ギルド関係者、そして最後には協力してくれたメンフィル帝国の”剣皇”達が一堂に会する中………ある高名な遊撃士――――”剣聖”カシウス・ブライトの指揮により各地のロッジを一斉検挙・制圧する大規模な作戦が実行された。そして俺達3名は、共和国最先端、アルタイル市の郊外にあるロッジの制圧を担当し………ガイは、当時8歳だったティオ・プラトーを保護した。ティオは衰弱しきっていたが、まだマシな方だったのかもしれん。………それ以外の子供たちが全員、助からなかったというのもあるが………他のロッジで試みられていたおぞましい”儀式”に比べたら、まだマシな扱われ方だったからだ。



「………なんで………なんでそんな連中が存在を許されてるんだ………ッ!!」

「……吐き気がしてきたわ………」

「クロスベルにおける犯罪とはちょいと次元が違いすぎるな………」

セルゲイの説明を聞いたロイドは怒りの表情で叫び、エリィは静かに呟き、ランディは考え込みながら呟いた。

「まあな………そういう意味ではあの”剣皇”達が担当したロッジの教団関係者達が裁きを受けたと言えるだろう。」

「?どういう意味ですか?」

「………”剣皇”達は俺達と違って最初から教団関係者達を”制圧”ではなく”殺害”していたからな。当時作戦に参加したのは”剣皇”、”戦妃”、”空の覇者”、そして”闇の聖女”だ。この4人が殲滅を目的で動けば、大体予想はつくだろう?」

「………それは………」

「一人一人、兵器をも超える強い力を持った方々ですものね………」

「そんな奴等が殲滅を目的で動いていたら、相手は誰一人助からねぇのは確実だな………」

「……その。どうしてリウイ陛下達は殲滅を目的に動いていたのでしょうか………?」

セルゲイの話を聞いていてある事が気になったロイドは尋ね

「……そのロッジってのがまた、とんでもない事をしていた場所でな。………何でもそのロッジに集めた子供達を使って各国の権力者達に娼婦のような事をさせて、活動資金を受け取っていたらしい。」

「なっ!?」

「そんな………!じゃあ、レンちゃんも………!」

「チッ………外道どもがっ!!」

セルゲイの話を聞いてエリィと共に驚き、ランディは舌打ちをした後怒りの表情で叫んだ。

「………ま、そういう事もあって各国の権力者達と鉢合わせした時、作戦に参加した各国の連中がそいつらを庇う可能性がある事をカシウス・ブライトが恐れていたからな。だから、関係のない”剣皇”達がそのロッジにいた教団関係者ごと全員殺害したそうだ。」

「……………」

「……ある意味、それが正しい判断でしょうね………ゼムリア大陸全土の国をも超える戦力を持つメンフィル帝国に権力者を殺されたぐらいでは、さすがに逆らえないでしょう。………下手に逆らえば、自国が滅びるのは目に見えているようなものですし。」

「………で、その時にあのレンって嬢ちゃんが”英雄王”達に保護され、メンフィルの皇女になったのか………」

「―――ただいずれにせよ、6年前のその作戦をもって、『教団』は完全に叩き潰された。信者たちは全員、自決するか精神に破綻を来して衰弱死した。残党もいたって話だが………教会や例の”結社”、メンフィルの諜報部隊とやらが動いて密かに殲滅したっていう噂もある。『D∴G教団』の悪夢は完全に終わったはずだった―――」

「ですが、この『蒼い錠剤』。これがその教団が使っていた『グノーシス』である可能性は出てきたというわけですね。」

セルゲイの話を聞いたロイドは真剣な表情で蒼い錠剤が入った袋を取り出して尋ねた。

「現時点では憶測の範囲だが………もしそれが本当なら6年前の悪夢が別の形で引き起こされるかもしれん。それもマフィア同士の抗争を巻き込むような形でな。」

「最悪すぎんだろ………」

「それが本当なら………絶対に見過ごせません………!」

「ああ……もちろんだ。」

怒りの表情のエリィの言葉に怒りの表情で頷いたセルゲイは煙草を口に咥えて火を付けた。



「―――ロイド。3年前、お前の兄貴を殺った犯人はいまだ見つかっていない。」

「……はい。何でも手掛かりが少なすぎて迷宮入りになってしまったとか。」

「ああ……一課に移ってからヤツはもっぱら単独で調査をしてたって話だからな。大国の諜報機関、ルバーチェ、それとも全く別の犯罪組織………もしくはどこぞの猟兵団やテロリストなんてのも考えられたし、ルファディエルのヤツは顔見知りの犯行かもしれないと推理はしていた。だが―――それ以外にも俺の頭を掠めた可能性があった。」

「『教団』の残党……ですね。」

(………………………)

セルゲイの言葉にロイドは頷き、ルファディエルは考え込んでいた。

「ああ……今となってはその可能性も現実味を帯びてきた。その意味では、俺にとっては元部下の弔い合戦になるだろう。お前らには悪いが、この先は俺も出しゃばらせてもらうぞ。」

「課長………」

「わ、悪いどころかすごく助かりますけど……」

「つーか、まるで今まであえて放任してたような口ぶりッスね?」

そしてセルゲイの申し出を聞いたロイドは驚き、エリィとランディは口元に笑みを浮かべた。

「クク、どうだかな………ただまあ、この特務支援課は元々はガイのアイデアを参考に設立したってのは確かだ。」

「そ、そうなんですか?」

「ギルドの評判に対抗するため設立された部署だったのでは………」

「そいつは上層部を納得させるための口実だ。―――生前、ガイのヤツが俺に語っていた言葉がある。今のクロスベルに必要なのは”壁”を乗り越える力だ………若いモンが失敗してもいいから力を合わせて前に進める場所……それが警察には必要なんじゃないかってな。」

「兄貴が……」

(………ガイらしい考えね…………策で相手を嵌めるのではなく、正面からぶつかっていく私とは対になる考え……まあ、だからこそロイドには私の持つ知識等を教えたのだけどね………私の知識や策も取り入れた人物―――ガイをも超える”英雄”の道を歩ませる為に………)

セルゲイの説明を聞いたロイドは驚き、ルファディエルは納得した様子で頷いた後、優しげな微笑みを浮かべ

「やれやれ……とんだ熱血アニキだな。」

ランディは苦笑していた。

「もしかしてティオちゃんが支援課に来たのも………?」

「あ……」

「ああ、ガイの意志が息づく場所に居たかったんだろう。本人からはっきりと聞いたわけじゃないがな。」

「そうか………そうだったのか。………兄貴の事はともかく………今は、この薬の被害を食い止めることが先決です。それと、キーアですが………例の『教団』と何らかの関わりがあるかもしれません。」

セルゲイの話を聞いたロイドは頷いた後考え込み、そして言った。

「あ…………!」

「チッ、そいつはありそうだな。記憶喪失の原因が薬物って話もあったし……」

「ああ……俺もそう睨み始めている。」

「ですから課長………動くのは俺達に任せて課長はここでキーアを守ってやってくれませんか?一課との連携もありますし、俺達には司令役が必要なんです。」

「ほう…………」

そしてロイドの意外な提案を聞いたセルゲイは驚き

「た、確かに……」

「誰かが支援課に詰めとく必要はありそうだな。」

(フフ、その人それぞれの適性がわかってきているじゃない………)

エリィとランディは納得した様子で頷き、ルファディエルは微笑んでいた。

「……すみません。せっかくの申し出なのに、生意気なことを言ってしまって。」

「クク……いや。―――いいだろう、引き受けた。ただし今まで通り、わざわざ俺から指示は与えん。相談にはいくらでも乗るし、各方面と連絡も取ってやるが………お前達自身が判断して今回の事件を解決してみせろ。どうだ、やれるか?」

申し訳なさそうな表情で謝罪するロイドに静かな笑みを浮かべて見つめたセルゲイは真剣な表情で指示をして尋ね

「はい……!」

「了解しました!」

「やれやれ、明日から鬼のように忙しくなりそうだぜ。」

尋ねられたロイド達はそれぞれ力強く頷いた。そして翌日………


 
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