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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜

作者:波羅月
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第一章 情熱の体育祭
  第21話『準備』

 
前書き
今回はざっくり言うと、暁君の魔術会得編です。
ありきたりな展開しか書きませんが、どうか楽しんで読んで頂けたらと思います。 

 
GWが明けて学校が始まって早1週間。
学校全体が徐々に体育祭ムードへと変わり始める。
俺が負った怪我も日に日に良くなっており、肩の動きは大分取り戻した。

こういう状況の中、体育の時間で行進やら応援やらの練習を行う俺であったが、ようやくそれらも終わった日の放課後、いつものように魔術室に寄っていた。


「あの部長、質問が有るんですが…」

「何だ?」


大して生活は変わらないと感じていたが、唯一変化を感じたことがある。それは・・・


「三浦、そんな奴より私に訊きなよ。そんな奴より」

「お前何で2回言いやがった」


長い間部室に姿を見せなかったという副部長が、合宿を境に来始めたのだ。他の部員達も、以前よりは集まりが良くなった気がする。


「大事な事だからに決まってるじゃない」

「それでも三浦は俺に頼んだんだ。邪魔者はすっ込んでろ」

「むぅ…」


部長が最もらしい理由で副部長を強制的に退けた。
てか、どこだろうと毎回毎回この喧嘩をできるのか、この二人。


「…で、何だ三浦?」


一仕事終えたかのように清々しく訊いてくる部長。
そして何なんだこの身代わりの早さは。


「えっと…以前部長は俺らに、体育祭までに魔術を覚えろって言いましたよね? それってなぜですか?」


俺は以前疑問に思ったことを問う。

いつだったか、部長は俺らに「体育祭までに魔術を覚えろ」というようなことを言った。その話を聞いた時は、体育祭はただの目安なんだなと考えていた。が、今となってはそれはおかしいんじゃないかと思う。
そもそも、体育祭“までに”というのが引っかかる。この学校のことだから、もしかすると魔術が必要になる競技が有るのかもしれない。


「そういやまだ説明してなかったな」


部長はそう一言言うと、次の言葉をタメるかの様に大きく息を吸うと、勢いのある声で言った。


「実は体育祭のプログラムの中に、毎年恒例であることをやる! その名も“部活動対抗部費争奪戦”、通称『部活戦争(ぶかつせんそう)』だ!!」


部長は言い切ったと言わんばかりにふんぞり返る。
だが、内容が俺の思考を突破していたため、理解するのに時間がかかった。


「えっと…部費、ですか?」


俺は首を傾げつつそう訊く。
だって普通、部活動対抗といったらリレーでしょ? 何でそれがわざわざ“戦争”と表現され、しかも部費まで決定されなきゃいけなくなる訳だ?


「簡単な話で言うと、それが一番盛り上がるんだ」

「は、はぁ…」


部長は「盛り上がる」を強調して言った。
要するに、この学校の人たちは盛り上がりが欲しい訳なんですね、ハイ。


「ちなみにルールは…?」


俺は単純にもう一つ気になった事を訊く。
そりゃ『戦争』と言うくらいだから、きっと騎馬戦みたいな派手な感じなのかな…なんて。


「えっと…かいつまんで言うと、“まず部活動ごと数名を1チームとして学校中に散らばらせ、そして争う”という感じだな。詳しく言うと、学校中に宝箱のように置かれている部費・・・というかいわゆる“部費チケット”を集め、時間切れまでに持っていた部費チケット分を換金し、それが部費となるんだ」

「何ですかそれは…」


あまりにも現実味のない争い方と部費の決め方に、俺は唖然とする。
何だよ部費チケットって。もはや宝探しじゃん。


「まぁさらに詳しいルールはその内プリントで貰えるだろうから言わないでおく。あ、ちなみにさっきの説明は去年のルールだ。一昨年とも違うルールだから、今年も違うルールになるだろうな」

「じゃあ、さっきの得意気な説明は何だったんですか!」

「と!に!か!く! お前の次は、早く暁に魔術を会得させるぞ!!」

「お~い、主旨変わってるよ~」


部長のあまりの話の変わり様に、副部長がツッコミを入れる。もっとも、部長本人は全く気づいてないが。

そうか、俺の次は暁君が魔術を覚える番か。俺が会得するのも時間がかかったし、きっとこれも時間がかかるのだろう。
あ、そうだ、熊でも呼んで無理やり会得させるのはどうだろうか。命がけの状況なら何とかなるんじゃないかな。うん、俺のトラウマが刺激されるだけだからやめよう。


「よし! 三浦、今暁はどこに居る?! 俺が徹底的に教えてやるんだ!」


魔術室の扉を開けつつもコチラを見ながら言ってくる部長。なんという行動力だろうか。


「そんなこと訊かれても…」


しかし、彼がどこにいるのかなんて俺には知りえない。気がつけばふらっと教室からいなくなって、いつの間にか帰ってくる。そんなことが彼にはよくあるのだ。


「んだよ。アイツを選手に使おうと思ってるから練習させたいのに・・・」

「え?」


部長がサラッと愚痴ったその言葉に俺は違和感を覚える。


「暁君を出場させるんですか?」

「ああ。もちろんお前もな」

「えぇ!?」


マジかよ!? ルール知らないけど大丈夫なの!?
てか何で先輩方じゃないの?!

・・・あ、もしかして魔術が関係してるのか? 先輩方には使えないから…。


「わかったならお前は特訓! だがその前に暁を連れてこい!!」

「は、はい!!」


俺は部長の大声に対して反射的に行動に移った。
暁君どこに居んの~? 何か部長のキャラ変わり始めたよ~!
つか何で俺が探しに行くことになってんの!?







「あ、暁君! ようやく見つけた!」


俺は廊下の端でようやく暁君を見つけた。全く、この学校は広いから骨が折れる…。


「ん? 三浦か。どうした、そんなに息を荒くして?」


小走りで移動していたから、俺は息が上がっていた。だから、手短に要件を伝えることにする。


「実は、カクカクシカジカ・・・」





「──なるほど。で、俺が魔術を早く会得しろと部長が」

「うん」


俺の拙い説明でよく理解できたな暁君。さすが天才、一を聞いて十を知るとはまさにこのこと。


「じゃあ早く行こ!」

「お、おう」


俺は暁君と共に魔術室へと引き返した。






暁君を魔術室に連れてきた後のこと。


「あれ、今何か光が見えなかったっすか?」

「おぉ良いぞ、その調子だ!!」


・・・なぜだ。なぜ暁君はそんなスムーズに会得しようとしてるんだ?! やめろ、俺の努力が虚しくなる!


「部長、俺の“暁光”っていうのは光メインの魔術なんすよね?」

「え? まぁそうだが…。でも火属性も持ってるぞ?」

「いえ。ただ“魔術で何ができるのかな”と思って」


しかも俺とは違って、後のこと見据えてるし!
もうヤダ…俺って惨め…。


「よし、暁もいい具合に仕上がってきたことだし、ここらで実戦といくか! 三浦、準備しろ!」

「どうせ暁君より俺は・・・ってはい! 何ですか?!」

「実戦だ。暁とな」

「えっ、いいんですか!?」

「マジすか…」


暁君はまだ未完成なのにと不安そうにしている。確かに、まだ実戦には早いんじゃないだろうか。
でもきっと、部長には何か考えがあるのだろう。俺は素直に従うことにする。







俺と暁君、そして部長が学校内の裏庭に集まった。
部長曰く、ここはあまり目立たない所で、人目を避けて魔術を使うにはもってこいの場所なんだそうだ。
さすが、色んな場所があるなこの学校は。


「審判は俺がする。二人ともこっちだ」


部長に言われた通り動く。
そして、俺と暁君が向かい合うように立つ形になった。


「随分と早く叶ったな」

「そうだね」


以前俺はこう口にした。いつか暁君と魔術を使って戦いたいと。
なんとあれから数日でもう現実に起こったのだ。驚く他ない。


「俺はもう魔術を使えるんだ。負けないよ、暁君!」

「俺だって負ける気はねぇさ。この戦いの中でチャチャッと使いこなせるようになってやるぜ」


部長が離れた所に立ち、いよいよ始まろうとしている。


「いくぞ二人とも。よーい始め!」


手を振って開始を合図した部長。
そしてその瞬間、俺は一直線に駆け出した。


「はぁっ!」


俺は走りの勢いに合わせて右の拳を構える。
すると、その拳の周りの大気が歪み、拳を纏うように風が生まれた。


「それがお前の能力(アビリティ)か」


暁君は向かってくる俺を恐れずにそう言った。
だが彼の魔術は未完成。これを防ぐことなんて出来る訳が・・・


「おっと」

「へ!?」


避けた!?
しまった。その行動は予想してなかった。
魔術同士の戦い、ということで魔術で防ぐかなと思ってたし。

いくら運動の苦手な暁君でも、俺の動きを読み、避けることは容易いだろう。そして俺は無様にコケると。


「ほら、どうした三浦」


無表情でそう言う暁君。
クッソ~、これ俺が優位に立つ場面じゃねぇのかよ!


「まだまだ!」


俺は座り込んでいた状態から一気に立ち上がり、もう一度拳を構えた。
避けるなんて行動は大体1回しか通用しないんだよ!


「ほらよ」

「眩しっ!?」


…とか思ってたら、暁君の手から不意に光が放たれた。まるで懐中電灯を照らすかの様に。もちろん、直視したため目が眩む。
俺は両目を手で塞ぎ、大いに焦っていた。


「光は…出せるのかよ…」


苦し紛れに俺はそう洩らす。
そういやさっき光ったとかどうとか言ってたな。まさか光はもう出せるとは。なんたる不注意・・・


「隙あり!」

「がっ!」


俺は目を塞いでいて無防備だった為、暁君の拳が腹にヒットする。威勢が良い割りには威力が弱い気がしたけど、それでもちょっと苦しい。


「もう一発!」

「二度も喰らうか!」


俺は目を瞑ったまま、両手を勢いよく扇ぐように広げた。
すると、(よく見えないのだが)風が前方を吹き飛ばす。
いや~練習してると応用が効くなぁ。さっき思いついたんだけど。


「くっ、やるな」


暁君の声が聞こえた。よし、効いてる効いてる。
それにしても、目がチカチカして全然前が見えない。


「よし…!」


が、もうそろそろいいだろうと思い、俺は目を開けた。少々ボンヤリしていたが、慣れるのはすぐだろう。


「ホイ」


「目がっ! 目がァーー!!!」


あぁぁぁ!!! ヤバい、目がヤバい!!
失明とかしないだろうな!!? 大丈夫だよな?!!


「クソっ、一度ならず二度までも…。こうなったら一か八か…」


俺は周囲が見えないが、ある技に賭けることにした。それは・・・


「全てを吹き飛ばす…!」


周囲が見えないのであれば、全方位を攻撃すれば良い話。できるかかどうかはわからないが、この技は汎用性が高そうだから是非とも使えるようになりたい…!


「うぉぉ!!」


俺は両足を踏ん張り、力を溜める。
ちなみに“力を溜める”という表現は、今となっては見に染みて感じることが出来る。
ホントに力が溢れてくる感じだもん…!


「チャンス!」


暁君が叫んだ。
フフフ、気づいていないな、俺の大技に。
為す術なく、吹き飛ばされるがいい!


「うおぉぉぉ・・・って、おぁ!?」


?? 何だ今の声は?
暁君…だよな。随分焦ってる…? というか驚いてる??
あぁ! 周りが見えなくて状況がわからん!!

・・・まぁ、とりあえず吹き飛ばす。


「!? ちょ、三浦、ストップ! ストーップ!!」


急に部長からストップがかけられる。
何だ? 暁君が焦ってるのに関係あるのかな?
でも大丈夫ですよ部長、手加減はするので。
まだ使ったことない技ですけど。


「いくぜ!!」


力を波の様に、円状に広げる感じで・・・解き放つ!!!


「ぶっ飛べ!!」


ブォォォォォオ!!!


轟音と共に暴風が吹き荒れた。目を瞑っていた俺でも分かるほど、凄い勢いだった。その轟音に混じって、部長と暁君の声が聞こえた気がするのだが…怪我はしてないよな…?
まぁでも、やろうと思えばぶっつけ本番でできるじゃねぇか! グッジョブ俺!

はは! やっぱり俺って凄いんじゃないの?!
ちょっと目を開けて見てみるか!


「──は??」


俺の目の前には、焼け野原となった裏庭がポツンと残っていた。







「ったく…だからストップって…」

「すいません…」


後で部長と暁君から状況を聞いた。

何でも、あの暁君の驚いた声は、暁君があの一瞬で炎が右手に出たからだそうだ。
そして当の本人は、「何で熱くないんだ?」などと呑気なことを考えていたせいで、俺の大技には気がつかなかったらしい。
そして俺が風放出、暁君の炎が風に乗る、後はその風が全方位に…。

ザッとこんな感じだ。


ちなみに今の裏庭の現状としては、戦闘時に俺が立っていた場所を中心に半径5mほどが黒焦げになっていた。そして、その範囲を出たところは無害。


よって後日、偶然通りかかった生徒にそれが見つかって、『体育祭前にUFO来日!?』などという、アホらしい新聞が貼り出されることになった。人が来にくいって言っても、絶対に来ない訳じゃないんだね、あの裏庭は。気をつけよう。

つか、まずミステリーサークルじゃねぇっつの!!





──とにもかくにも、暁君もようやく魔術を会得したようだった。
言うなれば、あのミステリーサークルは暁君の炎で作ったんだし、威力も中々なのだと思う。

あの勝負は一応俺の勝ちとはなったが、以後、彼の光には気をつけたい。


体育祭まであと一週間。
部活戦争・・・なんか楽しみだ!!

 
 

 
後書き
暁君の魔術会得はある程度簡単にさせて頂きました。
その方が話を繋げやすかったんで。

何かバトルシーンって難しいですね(今頃)
得意とほざいていた自分がアホらしいです…。

まぁ良いですよ!
次回は更に端折って体育祭始めますよ、ハイ!
あ、やべ、夏期講習が…。
まぁ頑張ります!! 
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