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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第79話

~夜・特務支援課~



「ふう、ただいま。」

「あ、かえってきた!おっかえり~!」

ロイド達がビルに入るとソファーで本を読んでいたキーアは嬉しそうな表情でロイドの身体に抱き付いた。

「はは………キーアはいつも元気だなぁ。」

「うんっ!キーアげんきだよー。セティ達は夕方にかえってきたのに、ロイドたちは遅かったねー。おしごと、いそがしかったの?」

「ふふっ、まあまあかしら。」

「ま、今日は移動に車を使えたからその意味でも助かったかもな。」

「ですね………」

キーアの質問にエリィ達が頷いたその時、キーアはティオに近づいて心配そうな表情でティオを見つめた。

「ねえねえ、ティオ―。なんか疲れたカオしてるけどだいじょーぶ?」

「ええ………大丈夫です。キーアの顔を見たら元気になっちゃいました。」

「んー………」

ティオの話を聞いたキーアは考え込んだ後ティオに抱き付き

「キ、キーア………!?」

抱き付かれたティオは戸惑った。

「キーア、げんきだからティオにおすそ分けしてあげるね!ん~、すりすり。」

「あ………」

「はは、なるほどね。」

「確かにそいつは効きそうだな。」

「ふふっ、何よりの特効薬かもしれないわね。」

「………ありがとう、キーア。元気、出てきました。」

「えへへ、そっかー。」

「そういえば………課長はまだ帰ってないのか?」

「かちょーならそこの部屋にいるよー。さっきおきゃくさんがきてお話ししてるみたい。」

「お客さん?こんな時間に珍しいな。」

「どんな人だったの?」

キーアの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をし、エリィは尋ねた。

「んー、おヒゲが生えたクマさんみたいなオジサン。かちょーはせんせーって呼んでたかなぁ?」

「ああ、イアン先生か。」

「珍しいな、こんな時間に。」

「一応、わたしたちも挨拶した方がよさそうね。」

「わたしは夕食当番ですからそちらはお任せしておきます。」

「大丈夫か?何だったら夕食当番くらい俺が代わるけど………」

「はい、大丈夫です。キーア、晩ご飯、もう少し待ってください。」

ロイドの申し出に答えたティオはキーアに言い

「あ、だったらキーアもてつだうー!」

「そうですか……?ふふっ、それではよろしくお願いします。」

キーアの申し出を聞いて静かな笑みを浮かべてキーアと共に厨房に入り、ロイド達は課長室に入った。



「―――失礼します。」

「おう、遅かったな。」

「やあ、お邪魔しているよ。」

ロイド達が部屋に入るとそこにはセルゲイとイアンが話し合っていた。

「やっぱりイアン先生でしたか。」

「珍しいですね。先生がいらっしゃるなんて。」

「ああ、セルゲイ君に少し聞きたいことがあってね。他の用事もあったついでに足を運んだというわけなんだ。」

「他の用事、ですか?」

イアンの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をした。

「ああ、端的に言うとキーアの身元についてだ。」

「も、もしかして………」

「何かわかったんスか!?」

そしてセルゲイの話を聞いたロイドとランディは血相を変えて尋ねた。

「いや………残念ながら。ギルドにも依頼したそうだが私もセルゲイ君に頼まれて他の可能性について調べていてね。残念だが――――いや幸いと言うべきかその可能性は無いとわかったんだ。」

「他の可能性………ですか?」

「ああ………数年前の話なんだがな。カルバード共和国を中心に子供が拉致される事件が相次いだことがあったんだ。」

「子供が拉致……!?」

「そ、それって………」

自分の話を聞いて血相を変えたロイド達を見たセルゲイは一息ついた後、説明を始めた。

「詳細は省くが………かなりのデカイ事件でな。カルバードだけじゃなく、周辺諸国にも被害が及んでいた事から国際的な捜査体制が組まれる事になった。この捜査体制には、各国の軍隊、警察組織、遊撃士協会、最後にはメンフィル帝国が協力した。」

「え………それって………」

「まさか”D∴G教団事件”ですか!?」

セルゲイの説明を聞いたエリィは驚き、ロイドは血相を変えて尋ねた。



「なっ………!?」

「……………どこで耳にした?その教団の名や事件を。」

ロイドの言葉を聞いたイアンは驚き、セルゲイは目を細めてロイド達を見つめて尋ねた。

「実は……………」

そしてロイド達は創立記念祭にあった出来事の中でのコリン捜索でレンに関わり、その後に訪ねて来たエステル達からレンの事情を聞き、その話の中で”D∴G教団事件”が関係していた事を説明した。

「…………なるほどな。あの事件に関わった”剣聖”の子供であり、今では公式上最高ランクであるA級の正遊撃士である”ブレイサーロード”達なら知っていてもおかしくはないかもしれんな。」

「ちょ、ちょっと待ってください!”剣聖”ってまさか………!」

「”百日戦役”で窮地に陥っていたリベール軍を立て直して、エレボニアを追い払っていうあの”英雄”ッスか!?」

事情を聞いて溜息を吐いて呟いたセルゲイの言葉を聞いたロイドは驚き、ランディは驚きながら尋ねた。

「ああ、そうだ。”剣聖”カシウス・ブライト……………彼が当時の事件の指揮を取っていてな。あの事件の解決は彼の働きが大きかった。」

「まさかエステルがあの”剣聖”の娘だなんて………」

「まさに”英雄”の血筋じゃねえか………」

「親子揃って、”英雄”って、凄い家族よね………」

セルゲイの説明を聞いたロイドとランディ、エリィは疲れた表情で溜息を吐いた。

「………それにしてもまさか、ハロルド君達の亡くなった娘さんがその事件に巻き込まれた挙句、今はそんな事になっているとはな………」

「え………」

「先生はレンちゃんの事を知っていたんですか?」

一方重々しい様子を纏って呟いたイアンの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは尋ねた。

「ああ。彼らの債務の整理を手伝ったのは私でね………娘さんが亡くなったと知った当時の彼らの様子は今にも自殺しそうな様子だったよ………」

「……なんとなくですが、その光景が思い浮かばれますね………」

(………まさかあの事件で生きていた”もう一人”があの”殲滅天使”だったとはな……………)

イアンの話を聞いたエリィは疲れた表情で溜息を吐き、セルゲイは考え込んでいた。

「………あの、先生。くれぐれもレンの事はハロルドさん達には教えないでください。その方が互いが幸せに生きて行けるでしょうし………」

「………正直、心苦しいが仕方ないね。下手をすれば、メンフィル帝国の皇女になってしまった娘さんを取り返そうとしたり、接触しようと行動するかもしれないしね。そんな事をしてメンフィル帝国に睨まれれば、ハロルドさん達が最悪な事になるだろうからそれだけはなんとしても止めないと………」

「それにレンちゃんはハロルドさん達の娘としては戸籍上既に死んでいる事になっていて、メンフィル帝国の皇家からはリウイ陛下の養女として正式に認められていますから、どの道法律でも勝ち目はありませんし………」

そしてロイドの言葉にイアンは重々しい様子を纏って溜息を吐き、エリィは複雑そうな表情で呟いた。

「それにしても先生も知ってたんスね、その”D∴G教団事件”っていう話を。」

一方ある事に気付いたランディはイアンに視線を向けて尋ねた。

「ああ。私は民間人のアドバイザーとして偶然、関わっていたんだが………」

「ちょ、ちょっと待ってください!もしかしてキーアがその数年前にあったという”D∴G教団”事件の被害者である可能性が………!?」

ランディの質問に答えたイアンの説明を聞いたロイドは驚きの表情で尋ねた。



「そう思って、当時の被害を改めて調べてみたんだが………キーア君に該当する子は結局、見つからなかったんだ。事件を起こしていた連中も殆んど検挙されているか自滅している。その事が改めてわかったのでセルゲイ君に伝えに来たわけだ。」

「そうだったんですか………」

「キーアちゃんがその事件に巻き込まれていなくて、安心しました………」

イアンの話を聞いたロイドとエリィは安堵の溜息を吐いた。

「ただ、結局キーアについては振り出しに戻っちまったんだがな。」

「ま、いいんじゃないッスか?身寄りが見つかるまで俺達が面倒見りゃいいんだし。」

「ああ、当分の間はここで保護した方がいいだろう。ただ、本当に身寄りが無かった場合………里親を探すなり、教会の福音施設に預ける事も考えるべきかもしれない。」

「そ、それは………」

「………で、でも………」

「いずれそういう事も含めて考える必要があるってことだ。子供一人を預かって育てるってのはハンパな覚悟で出来る事じゃねぇ。どれだけその子が可愛くったってな。」

イアンの話を聞いて迷っているロイドとエリィにセルゲイは真剣な表情で言った。

「そう、ですね………」

「確かに、猫の子を預かるのと同じわけにはいかねぇし、大人であるエルファティシアちゃんとは訳が全然違うしな………」

「はは、すまない。厳しい事を言ってしまったな。そういえば、任務から戻ってきたばかりみたいだな。報告もあるだろうし、私はそろそろ失礼させてもらうよ。」

「いえ、そんな。実は先生にも相談しようかと思っていた案件だったんですが………」

「ほう、私に?」

「ええ、実は―――」

ロイド達はセルゲイとイアンに失踪していた鉱員の一件を説明した。

「なるほど………そんな事がありやがったのか。クク、いかにも支援課らしい仕事じゃねえか?」

「結局、事件ではなかったので本人の説得はしませんでしたが……町に帰るよう説得くらいした方が良かったんでしょうか?」

「ふむ、難しいところだな。遊撃士だったら、説得や交渉も仕事のうちに入るんだろうが………」

「警察の人間がそれをやった場合、民事介入になる可能性もある………なかなか難しい線引きの所だな。」

「やはりそうですか………」

「ま、いい歳した大人なんだし、余計なお世話ってモンだろ。これでガキだったらケツでも叩いて家に連れ戻してやるところだが。」

「ふふ、そうね。

セルゲイとイアンの意見を聞いたロイドとランディは納得した様子で頷き、エリィはランディの言葉に微笑んでいた。



「しかし天才的なギャンブルの腕と別人のようなツキとカンか…………………………」

一方イアンは黙って考え込み始め

「………先生?何か心当たりでも?」

イアンの様子に気付いたセルゲイは尋ねた。

「いや、偶然かもしれんが………ここ最近、似たような話を2つばかり聞いた事があってね。」

「本当ですか?」

「まさか他にも、ギャンブルで一山当てたヤツがいるとか!?」

「いやいや、そうじゃないよ。聞いた話というのは、とある証券会社の証券マンと貿易会社の経営者なんだがね。どちらも最近、大きな損失を出して非常に困っていたそうなんだが………ここ数日で、耳を疑うほどの素晴らしい業績を上げたらしいんだ。特に証券マンの方は………まるで未来が見えていたかのようなツキとカンで株を売買したらしい。」

「それは………」

「どこかで聞いた話だな………」

イアンの説明を聞いたロイドとランディは真剣な表情で呟いた。

「はは、もちろんただの偶然だろうけどね。ただ、聞くところによるとその2人の態度もあからさまに横柄になったという話でね。少し気になってしまったんだ。」

「確かに気になりますね………」

「ふむ………イアン先生。その2人の身元について詳しい情報はわかりませんか?」

「ああ、その気になればすぐに調べられるだろうが………念のため確かめておくか?」

「ええ、できれば。」

「課長………何か気がかりでも?」

イアンに依頼したセルゲイの行動を見たロイドは尋ねた。

「ま、こういう稼業をしてたら情報は多いに越したことはねぇ。意外な所から事件の解決の糸口が掴めるかもしれねぇしな。お前達にわかりやすい例で言えば、ルファディエルの功績がその例になっているだろ。」

「確かに豊富な知識を持つルファディエルさんが私達の知らない知識や情報を持っていたから、解決できた事件もいくつもありましたしね………」

「旧市街や脅迫状の件なんかもそうだったよな。」

そしてセルゲイの答えを聞いたエリィとランディは納得し

「なるほど………(兄貴も言ってたな………捜査の決め手は、カンと足による情報集めだって………実際、それをルファ姉が実行していくつもの事件を解決しているしな………)」

ロイドも納得した様子で頷いていた。

「さてと、私はこれで失礼しよう。君達も、気になる事があったらいつでも相談してきてくれたまえ。出来る限りの協力はさせてもらうよ。」

「イアン先生………ありがとうございます。」

「その時はどうか、よろしくお願いします。」

その後ロイド達は夕食を取って、明日に備えてそれぞれ休み始めた………




 
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