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Three Roses

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第五話 ロートリンゲン家その八

「どの国と比べても」
「だからですね」
「半島、そして島国において」
「王国派の貴族達がですか」
「次々とです」
 まさにというのだ。
「消えていっています」
「急死、ですね」
「若しくは失脚です」
「その名目で次々と」
「消えていっています」 
 そうなっているというのだ。
「そしてそれはです」
「恐ろしいことですが」
「我々にとってはいいことです」
「王国派の有力者が消えていっていることは」
「はい」
「ではこの機にですか」
「我々は乗じるべきです」
 大公はここで王に進言した。
「是非共」
「わかりました、それでは」
「はい、両国との縁談を進めていますが」
「王国派の諸侯が消えていっているので」
「王国派は即ち我々の敵でした」
 彼等の国が王国と対立しているからだ、王国もその為半島や島国そして北の王国のそうした諸侯と結んでこの国に対していたのである。
「ですが」
「その彼等が弱まったので」
「これに乗じましょう」
「それでは」
「しかも」 
 さらに言う大公だった。
「もう一つあります」
「両国は、ですね」
「後継に恵まれていません」
「国王はおられても」
「我が国と同じです」
「男子が少ないですね」
「はい、王家に」
 そうした弱みがあるというのだ、両国には。
「ですから」
「そこにもですね」
「付け入りましょう」
 王にこうも言うのだった。
「是非」
「そして両国をですか」
「和を結ぶだけでなく出来れば」
「その時は」
「はい、共に入れましょう」
 王国にというのだ。
「あくまで出来れば、ですが」
「強く狙うことはなく、ですね」
「そこは帝国の様にはいきません」
 戦いよりも婚姻政策で大きくなったこの家の様にはというのだ。
「あの家は特別です」
「運がいいだけでなく」
「王も不可解と思われますね」
「何故あの家が嫁いだ、妃を迎えた先の家は衰えるのか」
 王は大公に以前話してもらったことを思い出した、ロートリンゲン家が嫁いだり妻を迎えた相手の家は必ず継承権者が次々と死んでいくのだ。
 そしてロートリンゲン家の者が跡を継ぐ、そうしたことが起こるからだ。
「無論正室を迎えた、嫡女の夫となったうえでお子をもうけることが最も多いですが」
「そうでない場合は」
「はい、常にです」
「そうしたことになっていますね」
「これは不自然です」
 あまりにもというのだ。
「どう考えてもおかしいので」
「カンタレラ」
 ふとだ、王はこの毒の名前を出した。
「大陸の南の半島に伝わる」
「あの毒ですね」
「それを使っているのでしょうか」
「あの毒は秘伝の毒です」
 そのカンタレラを使っていた家の、というのだ。 
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