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不器用なマジシャン

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5部分:第五章


第五章

 亮太はそれを見てだ。心に残るものを感じた。そしてである。
 そのことをだ。また小津に話すのだった。
「今回もでしたね」
「木更津さんだね」
「はい、小津さんの言われる通りですね」
 こう彼に話すのである。場所はまた事務所だ。
「素晴らしい人ですね」
「そうなんだよ、本当に」
「あの人みたいな人にはそうはなれませんね」
 亮太は唸る様にして述べた。
「滅多に。ですから」
「まただね」
「はい、また御願いします」
 今度はだ。彼から言うのだった。
「行かせて下さい」
「それじゃあね」
 こうしてだった。彼はそれからもその学校での仕事をしていった。その度に香を見た。それが続いていってだ。
 やがてだ。いつもだった。
 香のことを考えるようになってしまった。それはどうしてなのか。彼はすぐにわかった。
 それでだ。また小津に話すのだった。
「実はですね」
「実は?」
「俺、好きになったみたいです」
 こうだ。彼に話すのだった。
「あの、木更津さんですけれど」
「ああ、あの人をなんだ」
「はい、とても」
 恥ずかしそうにだ。彼に話す。
「なってしまいました」
「いいね、あの人ならね」
「いいですか?」
「うん、君に合ってるよ」
 小津は笑顔で彼に話した。
「とてもいいよ。御互いに凄くいい心の持ち主だしね」
「それじゃあ」
「うん。告白するんだね」
「します」
 それをだ。するというのだ。
「いいですよね、本当に」
「さっき答えた通りだよ」
 微笑んでだ。小津は答えた。
「是非。そうしたらいいよ」
「はい、それじゃあ」
「あの学校に行くんだね」
 笑顔でだ。亮太に対して問うたのである。
「そうするんだね」
「学校にいるんですよね」
「先生だからね」
 教師は学校にいる。これは当然のことだ。
 それでだ。彼は香のいるその学校にだ。行くというのである。
「そこには絶対にいるよ」
「だからです。行って来ます」
 また話す彼だった。
「学校に」
「行って来るといいよ」
「さて、どうしましょう」
 行くことを決めてからだ。亮太はだ。
 苦しむ顔になってだ。また小津に話したのである。
「どうして告白しましょうか」
「告白の仕方だね」
「はい、どうした感じがいいでしょうか」
「そういう経験ないんだ」
「ないです」
 これまで生きてだ。そうしたことがないというのだ。
 そんな彼の言葉を聞いてだ。小津は怪訝な顔になってこう尋ねた。
「その顔でかい?」
「顔は関係ないのでは?」
「いや、顔がよかったらもてるよ」
 これは世の中の自明の理の一つだ。定説と言ってもいい。
「君位の顔だったら余計にね」
「けれど告白とかそういうのは」
「したことはないんだね」
「はい、ないです」
 本当にだ。ないとだ。亮太ははっきりと答える。
 
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