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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第69話

~遊撃士協会・クロスベル支部~



「―――失礼します。」

「あら……?あらま、誰かと思えば支援課の坊やたちじゃない?ふふ、いらっしゃい。ようこそ遊撃士協会(ブレイサーギルド)へ。」

ロイドの声に気付いたミシェルは入口付近にいるロイド達を見て微笑み、ロイド達は受付に近づいた。

「こんにちは、ミシェルさん。」

「ご無沙汰してます。」

「アナタたちが訪ねてくるなんて珍しいこともあるものねぇ。―――でも、いいの?何でも”ルバーチェ”とトラブルを起こしたんですって?」

ロイドとティオに挨拶されたミシェルは興味深そうな様子で2人を見つめた後尋ねた。

「やっぱりそちらにも伝わっていましたか………一応、それに関してはケリが付いたんですけど。」

「ねー、ロイド。どうしてこのオジサン、オンナのヒトみたいなしゃべり方なのー?」

「あら。中々ストレートな事を言う娘ね。」

「キーア、それは………」

ミシェルをじっと見つめた後聞いてきたキーアの疑問を聞いたエルファティシアは感心し、ティオは焦り

「す、すみません。まだ子供なもので………」

ロイドは申し訳なさそうな表情でミシェルに謝った。

「フッ、いいこと仔猫ちゃん?人には人それぞれのスタイルというものがあるの。アタシにとって、この喋り方が一番合っているスタイルなワケ。アナタが着ているその服やアクセサリーがアナタに似合っているみたいにね。」

「おー、なるほど。キーアもオジサンのしゃべり方、かわいくてイイと思うよー!」

「あら、見所あるじゃない。それはともかく………オジサンはやめてくれない?ミシェルって呼んで頂戴。」

「うん、ミシェル!」

キーアとミシェルの会話を聞いていたロイドとティオは冷や汗をかいていた。

「ウフフ、いいわねこの子。アナタたちの知り合いなのかしら?」

「はい、実は………この子について、遊撃士協会に相談したいことがあり、それとそちらの女性について、エステルとミントに頼みたいことがありまして。」

「へぇ………?」

ロイドの話を聞いたミシェルが興味深そうな表情をしたその時

「あれ、お客さん?」

エステル、ヨシュア、ミントが2階から降りて来た。

「あ………ロイド君達!?」

「こんにちは~!」

ロイド達に気付いたエステルは驚き、ミントは元気よく挨拶した。

「やあ、エステル、ヨシュア、ミント。」

「エステルさんとヨシュアさんは1週間ぶりくらいですね。」

「珍しいね。ギルドに来てくれるなんて。」

「えへへ、ひょっとしてあたしたいに会いに来てくれたの?あれ………その子は………」

ロイド達と話していたエステルはキーアに気付いて、近づいた。

「わわっ………すっごく可愛い子ねぇ!どうしたの?ロイド君達の知り合い!?」

「ああ………キーアっていうんだ。」

「おねえちゃん、髪がピョンピョンしてるねー。もしかしてゆーげきしのヒト?」

「うん、あたしはエステルはこっちのお兄さんはヨシュア、こっちのお姉さんはミント。そっか、キーアちゃんって言うんだ。よろしくね!」

「うんっ!」

「うーん、速攻で馴染んだなぁ。」

エステルとキーアの会話を見ていたロイドは苦笑していた。

「はは、エステルは子供に懐かれやすいタイプだけど………それにしても人懐っこい子みたいだね。」

「ええ、それは折り紙付きかと。」

そしてヨシュアの言葉にティオは自慢げに頷いた。

「………なるほど。貴女がヴァイスハイトとリセルの話にあったかの”姫神”と契約した人間で、そちらの貴女が”竜”ね。………同じ”竜”のエア=シアルとは色々な意味で全然違うわね………」

一方エルファティシアは興味深そうな表情でエステルとミントを見て言った。

「へっ!?なんでフェミリンスの事を………」

「そ、それに今ヴァイスさんとリセルさんの名前が出たよね………?」

「………もしかして2人と面識があるんですか?」

エルファティシアの言葉を聞いたエステルは驚き、ミントは信じられない表情でエルファティシアを見つめ、ヨシュアは真剣な表情で尋ねた。

「ええ。私はヴァイスハイトとリセルが”影の国”から帰還後、”元帥”になったヴァイスハイトの下で2人と共に戦ったのよ。」

「ええええええええっ!?」

「た、確か2人ってものすごく前の時代の人だったよね………?」

「それに今、”元帥”って言ってた事は………ヴァイスさん、あれからさらに昇進したんだ………見た所、異種族の方のようですが………」

エルファティシアの話を聞いたエステルは大声で叫び、ミントは驚きの表情でエステルやヨシュアを見回して尋ね、ヨシュアは驚きの表情で呟いた後、エルファティシアを見つめ

「ええ、私はルーンエルフ。私の名はエルファティシア・ノウゲート。よろしくね♪」

見つめられたエルファティシアは名乗った後微笑んだ。

「それで、その子とそちらの女性について何か相談があるそうだけど………どうする?2階で聞かせてもらおうかしら?」

「あ………はい、差し支えなければ。」

「あれ、そういう話なの?」

「何か事情があるみたいだね。」

そしてロイド達は2階でエステルやミシェル達に事情を説明した。



「そ、そんな事が……」

「この一週間、裏通りの空気が少し緊張した感じだったけど………」

「まさかロイドさん達とルバーチェがそんな状態になっていたなんて………」

事情を聞いたエステルとヨシュア、ミントは真剣な表情で呟き

「やれやれ………そんな顛末になってたとはねぇ。」

ミシェルは溜息を吐いた。

「………警察としてはルバーチェ側の言い分を一応認める事になりました。できればその前提で話をさせて欲しいんですが………」

「むむむ……」

「むう~………」

ロイドの話を聞いたエステルとミントは頬を膨らませて唸り

「まあ、仕方ないわね。こちらは部外者だったワケだし。それにしても”黒の競売会(シュバルツオークション)”に潜入捜査を敢行するなんて………やるじゃない、見直したわよ?」

ミシェルは納得した様子で頷いた後、感心した様子でロイド達を見つめた。

「そ、そうですか………?」

ミシェルの言葉を聞いたロイドはどこか嬉しそうな表情をした。

「あ、あたしたちだって何とか調べようとしてたのに……しかも招待カードを渡したのがレンだったなんて………まったくあの子ったら………あたし達にくれればいいのに!」

「そうだよね~。しかも話を聞いていた感じ、レンちゃん、最低でも2枚は持っていたっていうんだから、もしかしたらもっと持っていたんじゃないのかな~?」

「ハハ………確かにそれはありえそうだね。」

一方エステルは悔しそうな表情をし、エステルの言葉に頷いたミントは頬を膨らませ、ヨシュアは苦笑していた。

「結果的に、君達から聞いた話を横取りした形になっちゃったな………ゴメン、連絡くらいすればよかった。」

エステル達の様子を見たロイドは複雑そうな表情で答えた後、頭を軽く下げた。

「あ、ううん。そっちの方は気にしてないわ。それはロイド君達の頑張りだよ。………でも………確かに問題はキーアちゃんとエルファティシアさんか。」

「はい………」

「ふえ~?」

「………………」

エステルの言葉にティオは頷き、キーアは首を傾げ、エルファティシアは黙ってエステル達を見つめていた。

「察するに、その子の素性を当たってみて欲しいわけね?遊撃士協会の情報網を使って。」

「はい………まさにそれをお願いに来ました。その、依頼料も何とか用意できると思います。」

「ああ、必要ないわ。こういった案件についてはウチは無料(タダ)でやらせてもらってるの。早速、各地の支部に問い合わせてそれっぽい情報を当たってみるわね。」

「あ、ありがとうございます………!」

「………随分とあっさり引き受けてくださるんですね?」

ミシェルの答えを聞いたロイドは表情を明るくし、ティオは意外そうな表情で尋ねた。

「まあ、この手の話についてはウチは即断即決がモットーだから。」

「ちなみに、こういう案件の費用は各種の基金や寄付が当てられるんだ。だから、遠慮することはないよ。」

「な、なるほど………」

「まさに民間人を助けるためのシステムがあるわけですか………」

「へえ………私達の世界にもあったら、民間人にとっては便利な組織になりそうね………」

エステルとヨシュアの説明を聞いたロイドとティオは頷き、エルファティシアは興味深そうな表情でエステル達を見つめていた。

「結果が出るまでちょっと時間はかかるけど………まあ、1週間くらいでそちらに連絡できると思うわ。」

「………十分です。どうかよろしくお願いします。」

ミシェルの説明を聞いたロイドは頭を軽く下げて言った。

「そうだ、何だったら、ウチでキーアちゃんを預かる?一応基金から、保護対象者の生活費なんかも出るんだけど。」

「え………!?」

そしてエステルの提案を聞いたロイドは驚き

「そうだな……安全のことを考えるならそれもアリかもしれないよ?いざとなればクロスベル以外の安全な避難先も手配できるし。」

「それにもし、ルバーチェの人達がキーアちゃんを狙ってきたら、ミントとママも護衛部隊のメンフィルの兵士さんの人達にお願いして守ることもできるよ?」

「………それは………」

「………………………………」

ヨシュアとミントの話を聞いたティオとロイドはそれぞれ複雑そうな表情で考え込み

「んー?どうしたの、ロイド?おなか痛くなっちゃった?」

ロイドの様子に気付いたキーアは首を傾げて尋ねた。

「ああ、いや………そうだな。この子がクロスベル以外の出身である可能性は高そうだし………何よりも安全の事を考えたら………」

「………ロイドさん………」

「???」

複雑そうな表情で考え込んでいるロイドとティオを見たキーアは首を傾げた。

「えっとね、キーアちゃん。しばらくあたしたちと一緒に暮らさないかって話なんだけど………」

キーアの様子を見たエステルはキーアに事情を説明し

「エステル達と?それじゃ、エステル達もあのビルに引っ越してくるの?」

説明を聞いたキーアはエステルに尋ねた。

「あ、ううん………キーアちゃんがこっちに引っ越してくる感じかな?」

「ロイド達もいっしょに?」

「うーん。それはちょっと無理かな………でも、そんなには離れてないし、会おうと思えばすぐに会えるわよ?」

「…………………」

エステルの話を聞いたキーアは考え込んだ後

「ゼッタイにヤダ。」

笑顔で意外な答えを言い

「ガーン!」

キーアの答えを聞いたエステルはショックを受けた。



「キーア……」

一方キーアの答えを聞いたロイドは驚きの表情でキーアを見つめた。

「だってロイドたちと離れるなんてヤダもん。ティオだって、エリィだって、ランディだって、セティだって、シャマーラだって、エリナだって、エルファティシアだって、テンシさんやアクマさんたち、セイレイさんたちだって、ツァイトだって、かちょーだっているし。キーア、ゼッタイに行かない。」

「……………………………」

「あらら。私もいつの間にか数に入っちゃっているわね。」

(フフ、嫌なら嫌と自分達の口から言えばよかったものを……)

(くかかかっ!子供のくせに我輩を恐れないとは見所のあるガキだな!)

(フフ………たった一週間で随分と懐かれたものね。)

キーアの話を聞いたティオは感動し、エルファティシアは苦笑し、ティオの様子を見たラグタスは苦笑し、ギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは微笑んでいた。

「そ、そっか………」

「はは、フラれちゃったね。」

「あらら、エステルちゃんが子供にフラれるなんてすっごく珍しいわね~。何気にショックを受けちゃってる?」

「う、受けてないってば!あたしにはミントがいるんだから!ねー?」

ミシェルに尋ねられたエステルは答えた後微笑みながらミントを見つめ

「うん♪」

見つめられたミントは嬉しそうな表情で頷いた。

「べつにエステルのことはキライじゃないけど………でも、ヤなもんはヤなんだもん。」

「あはは、ゴメンゴメン。あたしが無神経だったわ。ロイド君達、いいなぁ。こんなに好かれちゃって………」

「はは………何でかわからないんだけどね。この子の知り合いに似ている可能性はありそうなんだけど………その割には何も思い出せないみたいなんだよな………」

「―――それなんだけど。身元の確認についてはミシェルさんに頼むとして………記憶喪失の方は専門家に相談しなくてもいいのかい?」

「え……」

「専門家、ですか?」

ヨシュアの提案を聞いたロイドは驚き、ティオは尋ねた。

「うん、キーアちゃんの記憶喪失が心や精神の問題と仮定するなら………この場合、専門家といったら七耀教会の人達だと思うけど。」

「あ………」

「………なるほど。」

「へえ………こちらの世界の教会関係者の治癒術も発展しているのね………」

そしてヨシュアの説明を聞いたロイドは表情を明るくし、ティオは頷き、エルファティシアは感心し

「しちよーキョウカイ?」

キーアは首を傾げた。

「そうね、クロスベルでは近代医療が発達してるけど……心の分野に関してはまだまだ教会の専門家の方が詳しいかもしれないわね。」

「うんうん!確かに。あたし達も色々と助けてもらったくらいだし!」

「ケビンさんだね♪」

「へえ、そうなのか………?」

エステルとミントの言葉を聞いたロイドは驚きの表情でエステル達を見つめた。

「うん………主に僕の方が色々と助けてもらったんだ。その人ほどの使い手がクロスベル大聖堂にいるかはちょっとわからないけど………一度、相談してみたらどうだい?」

「………わかった。貴重なアドバイス、ありがとう。―――なあ、キーア。この後、街外れにある教会に行きたいんだけど、いいかな?」

「んー、いいよ。キョウカイって女神さまにオイノリするところだよね?それじゃあ、れっつごー!」

「あはは………」

「ホント、元気な子ねぇ。」

ロイドの言葉に嬉しそうな表情で頷いたキーアを見たエステルは苦笑し、ミシェルは微笑みながら見つめていた。

「そういえば………エルファティシアさんの事はどうするんだい?」

「それとエステルちゃんとミントちゃんに用があるみたいな事を言ってたけど………もしかしてそちらの異種族の女性が関係しているのかしら?」

一方ある事に気付いたヨシュアはミシェルと共にエルファティシアに視線を向けて尋ねた。

「あ、はい。実は―――」

そしてロイドとティオはエルファティシアの故郷であるメルキア帝国の”エレン・ダ・メイル”に異世界を繋ぐ転移門を守るメンフィル大使館のリウイと親交があり、メンフィルから爵位を貰っているエステルやミントにリウイ達―――メンフィル帝国に連絡して欲しい事を頼みたい事を説明した。



「なるほど………うん、勿論リウイ達にその事を頼むし、どうせならセリカにも頼むわ!」

「え………セリカさんにですか?」

「なっ………!”神殺し”に!?」

エステルの言葉を聞いたティオは不思議そうな表情をし、エルファティシアは信じられない表情をした。

「ええ。だってセリカ、いつでも頼ってくれていいって言ってたし。それにセリカは確かレウィニアっていう国の客将で、”水の巫女”っていう神様やレヴィアやレクシュミっていうレウィニアの将軍さん達と知り合いらしいってハイシェラやエクリアさん達から聞いたから、その”エレン・ダ・メイル”だっけ?そこに連絡するように手配できるかもしれないし。後、マウアっていうメルキアの皇女様とも知り合いみたいよ?」

「………確かにレウィニア神権国は私の知る限りメルキア帝国とそれなりに親しいし、”水の巫女”や”レウィニアの赤き盾”、メルキアの王族自身が動けばメルキア帝国領内の森にある”エレン・ダ・メイル”に連絡できるかもしれないけど………貴女、”神殺し”とそんなに親しいの?」

エステルの説明を聞いたエルファティシアは考え込んだ後、真剣な表情でエステルを見つめて尋ねた。

「うん。『いつか俺達の力が必要になった時、呼んでくれ。いつでも手伝う。』って言ってくれたもん。」

「セリカさんにとってエステルは恩人なんです。だからきっとエステルの頼みに応じてくれると思いますよ。」

「……………………………」

エステルとヨシュアの話を聞いたエルファティシアは信じられない表情で黙ってエステルを見つめていた。

「とりあえず………エルファティシアさんの故郷に連絡する事は君達に頼んでいいかな?」

「うん、任せて!」

そしてロイドに尋ねられたエステルは力強く頷いた。

「エルファティシアさんはこれからどうします?私達はキーアの件でクロスベル大聖堂に行きますが……」

「そうね………私はいいわ。エステル達に色々と聞きたい事ができたし。」

ティオに尋ねられたエルファティシアは考え込んだ後、真剣な表情でエステルを見つめて答え

「あたしもエルファティシアさんとは色々話したいわ!”影の国”から帰還したヴァイスさんとリセルさんの話を聞きたいし!」

エルファティシアに見つめられたエステルは明るい表情で頷いた。

「………決まりだな。エルファティシアさんは支援課のビルの場所はわかりますか?」

「ええ、それは大丈夫よ。エステル達の話を聞き終えたら、ビルに戻って来るわ。」

「話も決まった事ですしそろそろ、クロスベル大聖堂に行きましょうか。」

「はーい!」

そしてロイドの言葉にエルファティシアは頷き、ティオはエステルとキーアを促し、キーアは元気よく返事をした。



その後ロイドとティオはキーアを連れてクロスベル大聖堂に向かった……………
 
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