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とある科学の裏側世界(リバースワールド)

作者:偏食者X
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  ep.010 決戦1

ー2日後
的場はとある廃ビルのような場所に辿り着いた。
腐敗区はほとんどの建物が崩れたり壁や天井がないにも関わらずこの周辺の建物にはヒビすら入っていない。

「すべての答えがここに.......。」

的場は自分の考えを信じたくなかった。
的場の中で今回の事件の犯人は『野口』だ。
しかし、それでも的場は野口とは戦いたくなかった。
そんな不安にも似た感情を残しながら的場は建物の中に入っていった。
建物の中は何もなく建物を支える柱が規則正しく並んでいるだけのコンクリート製のものだった。
そんな建物の中を見ていると1人の少年を見つけた。

「俺は騎城優斗だ。 お前が的場聖持だな。」

的場が軽くうなずくと騎城は腰辺りのケースに手を掛けて武器を取り出した。
それは2本の"サバイバルナイフ"だった。
騎城はそれを手の上で弄ぶ。

「やっぱり得物は手に馴染むほうが良い。」

空気にほんのちょっぴりの刺激が走り、戦闘の空気になった。
的場は武器を持たないため、拳を構えた。
静寂に包まれ、1呼吸の内に戦闘が始まった。

騎城はサバイバルナイフを逆手に持ち猛ダッシュで一気に的場との距離を詰める。
騎城がサバイバルナイフを振るう。
戦闘経験のない一般人なら普通は避けるのは難しいはずなのだが的場はあまりにも冷静だった。

『避けた.......?』

『これは...いける!!』

的場は初めて見るにも関わらず、何度も経験したかのように洗練された動きを見せる。
ふと、騎城のモーションに僅かな隙を見つけた。
的場はサバイバルナイフの斬撃を見切ると、態勢を低くして騎城の足をとった。
騎城は隙をつかれたため、バランスを崩してしまう。
的場は落ち着くために一旦騎城と距離をとった。
騎城もその間に立ち上がった。

「なるほどな。 どうやら地上(うえ)の素人共とは明らかに違うらしいな。」

騎城はそう言うとさらに集中力を高める。
今度は姿勢を的場の腰の高さくらいまで下げて、ダッシュする。
的場の両脚を刈り取るように2本のサバイバルナイフが的場の脚を捉える。
的場は、持ち前の瞬発力の高さでジャンプしてサバイバルナイフを避ける。
騎城はダッシュの勢いを殺すためにサバイバルナイフの1本を地面に突き立ててストッパー代わりにする。
残りの余ったサバイバルナイフで空中の的場を狙う。
空中の的場は、サバイバルナイフを確認すると、脚でサバイバルナイフをガードする。

『まだだっ!!』

的場はサバイバルナイフをガードしている状態からさらに体をねじり騎城にサバイバルナイフを離させる。
騎城はこの状況をよろしくないと思い、的場と距離をとった。
地面に突き立てたサバイバルナイフは咄嗟に抜けないと判断して敢えて突き立てたままにしておいた。

「武器は2本とも封じましたよ。」

「そうか....少し思い込みが激しいぞ。」

的場は何の事かと不思議に思ったが、その直後に何かを感じ取る。
的場の横を肉眼でギリギリ捉えられるくらいの細い糸のような物を見た。

「布石は既に打ってある。 ゴミ溜めの中で俺が唯一身に付けたのは"どんな手を使っても勝つ"そんな薄汚れた意地だけだからな。」

持ち手の部分に頑丈なワイヤーのような物をの巻きつけられたサバイバルナイフが勢いよく背後から的場を狙い飛んでくる。
的場は反応が一瞬遅れ、サバイバルナイフが的場の頬をかすめた。

「なに!!」

的場は動揺を隠せなかった。
同時にはじき飛ばしたサバイバルナイフのほうを警戒して騎城から目を離してしまう。
次に的場が視線を戻すと、騎城が静かに懐まで近づいて来ていた。

「お前は上等だが、それでもまだ未熟だ。 取るに値しない。」

騎城はギリギリまで溜めた拳を全力で振り切った。
的場はそれを顔面に直撃し、その勢いで吹き飛ぶ。
だが、騎城の攻撃はまだ終わっていなかった。
的場は殴り飛ばされ、後を確認した。
すると、的場がはじき飛ばしたサバイバルナイフがちょうどその近くに転がっていたのだ。
騎城は腕自体に糸のような物を巻き付けていて、それを勢いよく引く。
サバイバルナイフは騎城の長い手のように、正確に的場の手足をかすめていく。
気付けば的場は全身から血を流していた。

「序盤の有利はどうした? もっと楽しませられるだろ、お前なら.......野口の認めた男なら。」

的場は一度『無』になった。
精神を統一し、周辺の空気すら触覚で感じ取るように意識を研ぎ澄まし、感覚を敏感にする。
それでも足りないと感じた的場は目を閉じた。

『絞り出せ....極限の状態....空気の流れすら読むように.....。』

騎城は試しにと的場にサバイバルナイフを投げる。
的場は文字通り"ゾーン"に入っている状態で、最小限の動きでサバイバルナイフを避ける。
次に騎城は糸のような物を引き、同じように的場を背後から狙った。
しかし、今度は当たらなかった。
騎城はその瞬間に的場の空気が変わったことを察知して、急に無口になった。

両者の呼吸すら聞こえなくなり、その場は本当の静寂に包まれた。
先手を打ったのは騎城のほうで、サバイバルナイフを構えて、一息に目の前まで接近し、的場に逆手で振りかざす。
的場は目を瞑ったままにも関わらず、先程とは明らかに動きの質が違っていた。
騎城のサバイバルナイフを騎城の腕から止めることで防ぎ、その守りはまさに"絶対防御"と言うに相応しいものだった。
さらに的場は目を瞑った状態で、騎城の動きに再び僅かな隙を発見する。
今度は、野口直伝の武術で騎城の脇腹に強力な正拳突きのような技を叩き込む。

弱点設定(ダメージポイント)ッ!!!」

的場の能力は相手の肉体の近くに特殊な磁場のような物を発生させ、的場の拳が触れると、同じ極の磁石が離れ合うように体の中の細胞が離れ合う。
軽く当たるだけでも脱臼、能力を全力で引き出せば腕がもげるという状態が発生する。
唯一の欠点があるとするならば、それは、1度に1つの磁場しか発生させられないことだ。

「グッ..........的場....お前....。」

騎城は脇腹辺りを抑えているが、その部分から血が滲み出ているからか騎城の服が脇腹辺りから赤黒く染まっていく。

『あと一撃.....撃ち込めば....。』

騎城は、重症の状態でまさに最後の一撃を振るうためにサバイバルナイフ2本を構えていた。
その間にも騎城の脇腹からは血が出ている。

「ウオォォォォォォォォォオオオ!!!」

騎城は雄叫びをあげながら的場に突っ込んでくる。

「ウオォォォォォァァァァァアアア!!!!」

的場も力を振り絞るために雄叫びをあげながら、騎城に突っ込んでいく。
お互いの攻撃は、お互いの肩に命中した。
的場の肩にはサバイバルナイフが突き立てられ、的場の能力全開の拳は騎城の腕を肩から吹き飛ばした。
騎城は的場にもたれ掛かるようにして力尽きた。

「騎城さん.......。」

七草は騎城の戦闘が終わったことを確認すると、騎城を倒した的場に対して覚悟を決めた。

『騎城さんの分も私が......。』 
 

 
後書き
こんな書き方になりましたが、安心してください。
騎城くんは死んでません。 
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