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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第67話(3章終了)

~夜・ミシェラム~



「はあはあ………」

「手こずらせてくれたね………」

戦闘を終えたロイドは息を切らせ、ワジは溜息を吐き

「わ、若頭………!?」

「………だ、大丈夫ですか!?」

戦闘不能になり、地面に膝をついているマフィア達は驚きの表情でガルシアを見つめた。するとその時

「ククク………ハハハハハ………味見だけのつもりだったが楽しませてくれるじゃねえか………ぺっ!」

ガルシアは凶悪な笑みを浮かべた後口に溜まった血を吐き、そして立ち上がり、ガルシアに続くように戦闘不能になっていたマフィア達も次々と立ち上がった!

「わっ……生き返っちゃった。」

「何!?」

「ば、馬鹿な………!?」

「あのヴァルドよりも遥かにタフみたいだね………」

ガルシア達の様子を見たキーアとラグタスは驚き、ロイドとワジは信じられない表情をし

「チッ………化物が。」

ランディは舌打ちをして、ガルシアを睨んだ。

「クク、何を抜かしてやがる。―――ランドルフ・オルランド。テメェだって同じだろうが?」

するとその時、ガルシアは凶悪な笑みを浮かべてランディを見つめ

「ッ………!」

ガルシアに見つめられたランディは顔色を変えた。

「ランディ………?」

ランディの様子に気付いたロイドはランディを見つめたその時

「クク、やっぱりそうだったか。大陸西最強の猟兵団の一つ”赤い星座”…………その団長の息子にして、ガキの頃から大部隊を率いて敵を殺しまくった赤き死神……――――”闘神の息子”ランドルフ・オルランド………!」

「…………………………」

ガルシアはランディの真の名と異名を叫び、それを聞いたランディは目を細めてガルシアを睨んでいた。

「”闘神の息子”………」

「”赤い星座”………有名な猟兵団ですね………」

「……そうだったの……」

「……元猟兵の方だったんですか………」

「ほう……まさかあの”闘神”の縁の者だったとはな………なるほど。他のメンバーと違って、一際強いのも納得がいくな。」

「あっはははっ!やっぱりあたいが睨んだ通り、あんた相当の修羅場をくぐってきているじゃないか、ランディ!」

一方ロイドは驚き、ティオは信じられない表情で呟き、エリィは溜息を吐き、エリナは静かな表情でランディを見つめ、銀は興味深そうな様子でランディを見つめ、エルンストは大声で笑っていた。

「―――ハハ。バレちまったら仕方ねぇか。ま、そのオッサンの話はだいたい間違っちゃいねぇぜ。”闘神の息子”って呼び名はヘドが出るほど気に喰わねぇがな。」

一方ランディは凶悪な笑みを浮かべながら答えた。

「クク、どうやら訳アリでクロスベルに流れてきたらしいな。俺の古巣”西風の旅団”と”赤い星座”は昔からの宿敵………丁度いい、ここらで因縁の対決と行ってみようじゃねえか………今度はタイマン勝負でなァ!」

「………ぬかせ………」

ガルシアの叫びを聞いたランディは静かに呟いた後、ガルシアの正面に来て、対峙した!

「なっ、ランディ………!」

「ランディさん!?」

ランディの行動を見たロイドとシャマーラが驚いたその時

「………ここは任せろ。このオッサンを始末したら突破口が開ける。後の雑魚共もさっきの戦いで弱っているか使い物にならねぇ奴らが多い。俺のことはいい………とにかくこの場を切り抜けろ!」

ランディは驚きの提案をした!

「そんな………!」

「だ、駄目よ………!」

「ら、らしくないです………!」

「自己犠牲なんていけません!」

ランディの提案を聞いたロイド、エリィ、ティオ、セティは制止しようとし

「あら。これはまた面白いものが見れそうね♪」

レンは口元に笑みを浮かべて呟いた。するとその時!

「うおおおおおおお………ハアアアアアアアァァァッ!!」

ランディは溜める動作をした後、大声で叫んで膨大な殺気や闘気を纏った!

「”戦場の叫び(ウォークライ)”………爆発的な闘気を引き出す猟兵ならではの戦闘技術………クク、そう来なくっちゃなァ!うおおおおおおおおおおおおっ!!」

ランディの行動を見たガルシアは凶悪な笑みを浮かべた後、ランディのように膨大な殺気や闘気を纏った!

「ひっ………」

「さ、さがれ………!」

2人がさらけ出す殺気や闘気を感じたマフィア達は悲鳴を上げた後、ガルシアの背後に下がった。

「くっ………凄いね………」

「びりびりする~………」

2人がさらけ出す闘気や殺気を感じたワジは表情を歪め、キーアは真剣な表情で呟き

「あっはははははっ!いいね、いいね!まさかこんな面白そうなものが見れるとはねっ!」

「フン、戦闘凶が………」

エルンストは凶悪な笑みを浮かべて大声で笑い、エルンストの様子を見たラグタスは鼻を鳴らしてエルンストを睨み

「くっ、このままじゃ―――」

ロイドは表情を歪めた。するとその時!



ウオ―――――ン!!



どこからともなく狼の遠吠えが聞こえ、遠吠えを聞いた2人は驚いて溜めていた闘気や殺気を解放した後、遠吠えが聞こえた方向を見つめた。

「な………」

「この遠吠えは………!」

「うふふ……やっぱりただの狼さんじゃないわね♪」

遠吠えを聞いたロイドは驚き、ティオは明るい表情をし、レンは口元に笑みを浮かべた。するとその時なんとツァイトがガルシア達の背後に現れ



ウオ―――――ン!!



再び遠吠えをして、軍用犬達を怯ませた!

「なっ………」

「こ、こら………!怯えてんじゃねえ……!」

「ガルルルルゥッ………!!」

「ぎゃっ!?」

「うわっ!?」

軍用犬達の行動に戸惑っているマフィア達に電光石火で攻撃し、湖面に落としたり、気絶させた!

「チッ、犬コロが………!」

それを見たガルシアは舌打ちをして、まだ無事な腕を動かして攻撃の構えをしたその時!

「甘い!―――雷電!!」

「なっ!?グアッ!?」

銀がガルシアの背中に雷が宿ったクナイを命中させて、ガルシアを怯ませ

「うふふ、隙ありよ!」

「キャハッ♪だっさ!」

「ふふっ、切り刻んであげる!」

さらにレン、エヴリーヌ、セオビットがそれぞれの武器で一瞬でガルシアの背後に詰め寄って同時攻撃をして、ガルシアの正面に現れた!

「グアアアアアアアアアアアッ!?」

「わ、若頭――――!!」

するとガルシアの全身から血が噴出し、ガルシアは悲鳴を上げて地面に倒れ、それを見たマフィア達は悲鳴を上げた!そしてガルシアが地面に倒れると、一隻のボートが波止場に近づき、ロイド達の傍に停泊した!

「……グズグズすんな。とっとと乗りやがれ。」

ボートの運転手―――セルゲイは運転席からロイド達を見上げて指示をし

「課長………!」

「わぁ、ぼーとだぁ!」

「……どうやら脱出に成功できそうね………」

セルゲイを見たロイドやキーア、エルファティシアは明るい表情をし

「ナイスタイミングです………!」

ティオは静かな笑みを浮かべて言った。

「行かせるかああああああっ!!」

その事に気付いたガルシアは全身血まみれでありながらも立ち上がって、ロイド達に攻撃しようとしたが

「させん――――雷電!!」

「グアッ!?銀………貴様―――――――――――ッ!!」

銀が放った2本の雷がこもったクナイがガルシアの両足に命中し、ガルシアを転倒させ、転倒させられたガルシアは足に伝わるダメージや雷を受けた事による痺れ、そして今までの戦闘によって負った傷によって立ち上がる事はできず、怒りの表情で叫んだ!

「フフ……今宵はこれまでだ。―――さらばだ。」

そして銀は口元に笑みを浮かべて呟いた後空間の中へと消えて行き

「うふふ……そろそろレン達も失礼しようかしらね。」

「ふふっ♪久しぶりに楽しめたわ♪」

「キャハッ♪結構遊べて楽しかったよ♪」

「それでは皆さん、御機嫌よう♪―――エヴリーヌお姉様、お願い。」

「ん、転移。」

さらにレン達はそれぞれ口元に笑みを浮かべた後、エヴリーヌの転移魔術によって、3人はその場から消えた。

「悪いな、オッサン………今回は付き合えなさそうだ。それより………アンタら知ってたのか………?”人間の子供”と”異種族の女性”を競売会に出品しようとしてたのを……」

銀達が消えた後、ランディは地面に倒れているガルシアを見下ろして尋ね

「なにィ………!?」

尋ねられたガルシアは目を見開いた。

「………この子は、出品物の部屋にあった革張りのトランクに閉じ込められ、そちらのエルフの女性は出品物のシーツの中に隠されていた。それが何を意味するのかあんたにはわかっているのか………?」

「ふえ~?」

「……………………」

ロイドの質問を聞いたキーアは首を傾げ、エルファティシアは真剣な表情で考え込み

「な、なにをフカシこいてやがる!あのトランクにはローゼンベルクの人形が入っているし、あのシーツの中には目玉品の一つの女神像が………!」

ガルシアは信じられない表情で叫んだ。

「まあ、でも事実だからねぇ。事と次第によってはタダじゃ済まないんじゃない?」

ガルシアの叫びを聞いたワジは静かな笑みを浮かべてガルシアを見つめて言った。

「やれやれ………妙な事になってるみたいだな。―――ルバーチェの。改めて話は付けさせてもらう。そっちはそっちで状況を整理しておくんだな。」

「グッ………」

そして溜息を吐いた後、目を細めたセルゲイの話を聞いたガルシアは悔しそうな表情をした。

「特務支援課、撤収!とっとと契約している異種族達を自分達の身体に戻して全員乗りやがれ!」

「はいっ!それぞれと契約している者達はそれぞれの主の元に戻ってくれ!」

セルゲイの指示に頷いたロイドはルファディエル達に指示をし、指示をされたルファディエル達はそれぞれの主の身体や召喚石に戻り、ロイドはキーアを抱き上げてボートに跳んで乗り込み、エリィ達やエルファティシアも次々と跳んで乗り込み、最後にツァイトが素早い動きで乗り込み、ロイド達を乗せたボートは発進して去って行った!

「ああっ………!」

「くっ………他にボートはないのか!?」

「若頭、大丈夫ですか!?」

「おい、こっちの奴等の手当てを手伝え!酷い傷だぞ!」

「なっ!?腕や脚が………!クソッ、なんだあの3人は!あの女達は鬼か悪魔の化身か!?」

去って行ったボートを見たマフィア達は慌て、さらに周囲に重傷を負って倒れているガルシアやマフィア達を見て慌てたり、悔しそうな表情をしていた。

「ぐうううううう~ッ………うおおおおおおおおおおおっ!!」

マフィア達が慌てている中、ガルシアは仰向けに倒れた状態で夜空を睨んで悔しそうな表情で大声で叫んだ!


~ハルトマン議長邸~



一方その頃、オークション会場は招待客達が壇上にいるマルコーニとハルトマンに文句を叫んでいた。

「み、皆さん、ご静粛に!少々ハプニングはありましたが予定通りオークションを開催して――――」

対するマルコーニは慌てながら招待客達を宥めようとしたが

「それより、先程の銃声や爆発音はいったい何だったのかね!?」

「わ、我々を誰だと思っている!」

「こ、事と次第によっては自治州政府に抗議しますわよ!」

招待客達は怒りの表情でマルコーニ達に文句をぶつけていた。

「どうか、どうか落ち着いて……!」

「フン、使えん連中だ………よりにもよって私の顔に泥を塗るとは………」

マルコーニが慌てている中、ハルトマンは不愉快そうな表情をした後、去って行き

「ハ、ハルトマン議長!?一体どちらへ………ど、どうか待って下され!」

ハルトマンの行動を見たマルコーニは表情を青褪めさせ、さらに招待客達は次々とオークション会場を出て行った。

「フフ……競売会もお流れですわね。少々アテが外れてしまったけど………面白いものが見られたから良しとしましょうか。」

その様子を見守っていたマリアベルは口元に笑みを浮かべて見つめていた。



~ミシェラム・街区~



一方その頃、レクターは湖を見つめていた。

「……行っちまったなァ。んー、できればもうちょい本格的に遊びたかったが………ま、あの辺りで我慢しておくか。」

去っていくボートを見つめたレクターが独り言を呟いたその時

「………我慢も何も、好き放題にやっていたのではなくて?」

なんとキリカがレクターに近づいてきた。

「鉄血宰相とハルトマン議長の間に作られたパイプ………その繋ぎ役としてはいささか不適切な言動が多かったように見受けられるけど。」

「ん~、何のことかな?別にオレは、誰かさんみたいに直接助けたワケじゃないからなァ。いいのか、アレ?完璧に内政干渉だろう。」

キリカの言葉を聞いたレクターはとぼけ、口元に笑みを浮かべて尋ねたが

「ああ、あの偃月輪はなかなか見事だったわね。”(イン)”とかいう噂の凶手がやったみたいね?実際に現れて彼らと共に戦ったみたいだし。」

キリカは意外そうな表情で答えた。

「………そう来たか。ま、今回のオレの主要任務はアンタに会うことだったしな。”ロックスミス機関”………キリカ・ロウエン室長どの。」

キリカの答えを聞いたレクターは口元に笑みを浮かべた後、キリカを見つめて言った。

「フフ、さすがに耳が早いわね。帝国政府付き、二等書記官………いえ、帝国軍情報局所属、レクター・アランドール大尉と呼んだ方がいいかしら?」

一方見つめられたキリカは不敵な笑みを浮かべてレクターを見つめて尋ねた。

「ま、お互いカードはある程度見えてるってことか。―――そんじゃ、ホテルのラウンジあたりで話すとするか。クロスベルでの諜報戦に関する今後の取り決め………不戦条約と導力ネットを視野に入れた新時代のルール作りってやつをな。」

「ええ、始めましょう。―――破壊工作とテロリズムで状況を動かす時代は終わったわ。かつてのような”不幸な事故”をクロスベルで起こさない為にも………私達は仮初(かりそめ)とはいえ、新たな秩序を構築する必要がある。」

その後レクターとキリカはホテルに向かった。



~エルム湖~



「………なるほどな。ま、俺の忠告を完璧に無視した挙句、ルバーチェと全面戦争しやがったことはいったん置いておくとして………」

ロイド達から事情を聞いたセルゲイは目を細めて呟いた。

「す、すみません………」

「問題はその子と女性だな。事と次第によってはとんでもない事になるかもしれん。」

「だな………オークションで人形と女神像の代わりに出品される所だった子供と女性………」

「ま、よくない想像ばかり働いてしまいそうだね。」

「…………………………」

セルゲイの言葉に頷いたランディはワジと共にキーアとエルファティシアを見つめ、ティオは考え込み

「………まさかマフィアもそこまで愚かなことをしないとは思うけど………」

「”人身売買”………それも異種族を巻き込むなんて……」

「……一体どこでルーンエルフの方を捕えたのでしょう?ルーンエルフ族は総じて、滅多に森の外には出ないですし、ましてや森を出て異世界にまで来るなんて方、ほとんどいないと思いますし………」

エリィは溜息を吐き、エリナは怒りの表情で呟き、セティは考え込んでいた。

「ん~?キーア、とんでもないことになっちゃうのー?」

一方ロイド達に見つめられたキーアは無邪気な笑顔で尋ねた。

「大丈夫………そんな事にはさせないから。それより、キーア。名前以外について何か思い出せた事はあるかい?」

「ん~………えへへ。ぜんぜん思い出せないや。」

「そっか………」

「困ったわね………」

キーアの答えを聞いたロイドとエリィは溜息を吐いた。

「そういえば………エルファティシアさんだっけ?エルファティシアさんはどこの国にある森の人なの~?エルフだからあたし達と同じ、ディル=リフィーナの人だよね??」

一方ある事に気付いたシャマーラはエルファティシアを見つめて尋ね

「………ええ。その前に………水色の髪の貴女、名前は?」

尋ねられたエルファティシアは頷いた後、ティオに視線を向けて尋ねた。

「わたしですか?ティオ・プラトーですが………」

エルファティシアに尋ねられたティオは不思議そうな表情をした後答えた。



「………そう………………どうやら私はヴァイスハイトとリセルの話にあった異世界どころか、彼らが”影の国”という場所を共に冒険した仲間達の時代―――未来に飛んで来たようね………」

「へっ!?」

「ど、どういう事ですか!?」

エルファティシアの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情をして尋ね

「えっ!?ヴァイスさんとリセルさんを知っているという事はまさか貴女は………!」

ティオは驚きの表情でエルファティシアを見つめ

「………ええ。私は過去の時代の者。……それも本来なら私は既に死んだはずなのよ。」

見つめられたエルファティシアは静かに頷いて答えた。

「えええええええっ!?」

「………どういう事なのですか?」

エルファティシアの答えを聞いたロイドは驚き、セティは真剣な表情で尋ねた。そしてエルファティシアは自分がメルキア帝国のセンタクス領内にある森――――”エレン・ダ・メイル”のかつての王である事を明かし、メルキア帝国軍の元帥の一人―――ヴァイスハイトとその仲間達と共に”神”の力を使って世界を掌握しようとした人物と戦って勝利し、そしてその人物に利用され、消滅しようとしていた親友をエルフとして転生させる為に生贄として自らを犠牲にした事を説明した。

「………………………」

「エ、エルフ族の王の方だったんですか………」

「………かつてのメルキアにそのような戦いがあったなんて………」

エルファティシアの事情を聞いたロイドは口をパクパクし、セティは驚きの表情でエルファティシアを見つめ、エリナは真剣な表情で考え込み

「………まさかヴァイスさんとリセルさんがあの後そんな凄い戦いを潜り抜けたなんて……………」

ティオは信じられない表情で呟いた。

「わぁ~!エルファティシア、おうさまだったんだ~♪」

一方キーアははしゃぎながらエルファティシアを見つめ

「そうだぞ~、偉いんだぞー♪………ま、今は王の座はメイメイに譲ってただのルーンエルフになっているから気楽に接してくれていいわよ♪第一、肩っ苦しい態度で接されても全然嬉しくないし、肩が凝っちゃうしね~。」

「な、なんというか………普通のルーンエルフ族の方には見えないですね………」

キーアの言葉に乗った後、ロイド達に笑顔を見せて言ったエルファティシアの様子を見たセティは苦笑しながらエルファティシアを見つめ

「フフ、同族の人達からも”変わり者”って言われているわ♪」

「わあ……!セラ母さんみたいな人だね♪」

「フフ、言われてみれば確かにそうかもしれませんね………」

見つめられたエルファティシアは微笑み、エルファティシアの言葉を聞いたシャマーラは口元に笑みを浮かべながらセティを見つめ、セティは苦笑していた。

「け、けど、こちらはこちらで困ったな………出身地とかわかったのはいいんだけど………エリィ。メンフィル帝国はそのメルキア帝国という国と親しいのかい?」

一方気を取り直したロイドは疲れた表情で溜息を吐いた後、エリィに尋ね

「ううん………確かメルキア帝国はメンフィル帝国が治める”レスペレント地方”ではなく、レスペレントの南にある大陸――――”ラウルバーシュ大陸”の”アヴァタール地方”にある国でメンフィル帝国とは国交はないわ………それどころか、メルキア帝国と緊張状態になっている国――――エディカーヌ帝国と親しい関係にあるメンフィル帝国だと良くて警戒、最悪で敵対視されているわ。」

「そうか……………」

エリィの答えを聞いた残念そうな表情で溜息を吐いた。

「ユイドラの方はどうなんですか?」

一方ある事に気付いたティオはセティ達を見つめて尋ねたが

「う~ん………ユイドラとメルキアが親しいなんて、聞いた事が無いな~………」

「……ユイドラどころか、ユイドラが加盟しているミケルティ王国連合もメルキア帝国とはそれほど親しくなかったと思います。」

「はい。なのでエルファティシアさんの出身地である”エレン・ダ・メイル”に連絡するのはかなり難しいと思います………ひょっとしたらルーンエルフ族同士で何らかの交流があるかもしれませんので、”レイシアメイル”のエルフの方々に頼めば連絡はできるかもしれませんが………」

尋ねられた3人はそれぞれ難しい表情で答え

「ちなみに私が”王”であった間や”王”になるまでの間はセテトリ地方のルーンエルフ族とは交流がなかったな~………まあ、数百年経てば状況は変わっているかもしれないけど。」

「そうですか………」

セティの説明を補足するように話したエルファティシアの話を聞いたロイドは残念そうな表情で溜息を吐いた。

「ま、そんなに気を落とさないでよ。そもそも私は本来死んだはずの身………こうして生きているだけでも嬉しいし、第一私がいた時代より数百年経っているから多分、私の知り合いは全員いないわ。………ま、もしかしたら私と同じルーンエルフのメイメイなら生きているかもしれないけど、それでも正直微妙な所ね。」

「エルファティシアさん………」

ロイドの様子を見た後微笑み、そしてどこか寂しげな笑みを浮かべたエルファティシアをエリィは辛そうな表情で見つめ

「………………………あの。私の知り合いで時空を操れる人がいるんです。その人ならエルファティシアさんを元の時代に帰す事も可能だと思いますが………」

ティオはエルファティシアを見つめて考え込んだ後提案した。

「ええっ!?」

「そ、そんなとんでもない事をできる人がいるの……!?」

ティオの話を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情で尋ねたが

「―――はい。ただその人が誰なのかは皆さんにはすみませんが、秘密にさせてもらいます。それで……どうでしょうか?」

ティオは頷いた後、エルファティシアを見つめて尋ねた。

「……………必要ないわ。本来私はヴァイスハイト達の時代……いえ、歴史上既に死んだ身………過去を変える事は”禁忌”の所業だし、私は自分の行動に後悔はしていないし、私が心から愛した人間―――ヴァイスハイトやメイメイ達が私の死後に創り上げた歴史を否定する気はないわ。………それ以前に己の欲望だけで過去を変える事がどれほどの罪であり、世界中の歴史や過去の者達を愚弄する行為だと理解しているのか、人の子よ。」

一方尋ねられたエルファティシアは少しの間考え込んで静かな表情で答えた後、高貴な雰囲気を纏い、目を細めて普段と違う口調で答えた。すると周囲の空気は一気に重くなった。

「…………っ………」

「ほえ~………?なんかくうきがおもい~。」

エルファティシアが纏う雰囲気を感じたロイドは驚き、キーアは首を傾げながら呟き

「………それが貴女の本性という訳ですか……」

「……先程までの気さくな態度は”仮面”だったというわけですね………」

エリィとティオは真剣な表情で呟いた。

「どっちも私。こっちの方がみんなの反応が面白いけどね。ま、それにもしかしたら、生まれ変わったアルやヴァイスハイトと出会えるかもしれないしね。そんなチャンスを逃す訳にはいかないわ♪」

しかしエルファティシアは親しみ安い笑顔を浮かべて答えた。



「……………………………」

一方ランディはロイド達の会話に入らず、黙り込んでいた。

「そういえば、ランディ………」

ランディの様子に気付いたロイドはランディに話しかけ

「―――ま、俺の話はおいおいさせてもらうさ。………まだ俺が支援課に居てもいいってんならな。」

話しかけられたランディは寂しげな笑みを浮かべて言った。

「……怒るぞ、ランディ。」

「ええ。それにあの時、自分を犠牲にして私達を逃がそうとしたこと………まだ怒っているんですよ?」

「ランディさん、たまに空気読めなさすぎです。」

「そうそう~!あたし達は仲間でしょ?」

「ええ、あんまり馬鹿な事を言わないでちょうだい。」

「………ランディさんを含め、支援課の方達は誰一人欠けてはいけないのですから、そんな事を言わないで下さい。」

「………悪い。」

そしてロイド達に睨まれたランディは苦笑し

「フフ………互いを信頼し合っている良い関係ね。………貴方達を見ているとヴァイスハイトやアル達と共に笑い合っていた幸せな時間(とき)を思い出すわ………」

その様子を見ていたエルファティシアは微笑んだ後、目を閉じて静かな笑みを浮かべ

「ん~………?ねえ、ワンちゃん。ロイドたちどうしたの?」

「グルルル………」

ロイド達の様子に首を傾げたキーアはツァイトに話しかけていた。

「フフ、これも一種の青春ってやつじゃない?」

「せいしゅん~?」

そして静かな笑みを浮かべながら言ったワジの言葉にキーアは首を傾げた。

「ハハ………緊張感の欠片もねぇな。」

「そういや俺達、さっきまでマフィアに追われてピンチだったんだよな……」

「しかも、一杯戦ったもんね~。」

「ええ。それもレンさん達やあの銀と共に戦いましたものね。」

「なんだか実感がわかないわね………」

「………残念ながら夢ではなさそうですけど。」

「ええ。今こうして私達がここにいる………それが証拠ですよ。」

「クク………ま、とにかく全ては支援課に戻ってからだ。明日からしばらくの間………厳戒態勢になると思っておけ。」

呑気に笑い合っているロイド達を見たセルゲイは口元に笑みを浮かべた後、忠告し

「………はい………!」

「はーい!」

セルゲイの忠告にロイドは頷き、キーアは嬉しそうに頷き

(ヴァイスハイト………貴方の私と共に生きたいという願いは叶えてあげられなかったけど………かつて貴方が願ってくれたように、アルを救って私は生きている………もし、生まれ変わった貴方と出会えたその時は………ずっと傍にいて、一杯愛してあげるわ………そしてアル………いつか、エルフとして生まれ変わった貴女に会いたいわ………もし出会えたその時はリューンやベル、ナフカともお茶を楽しみましょうね………ルリエンよ、貴女の慈悲に心からの感謝を………)

エルファティシアはロイド達に背を向けて夜空を見上げてかつて心から愛した男―――メルキア帝国軍の元帥の一人、ヴァイスハイト・ツェリンダーと親友――――遥か昔ドワーフ族と共に創った4体の特殊な魔導人形―――”魔導功殻”の内の一体―――アルの姿を思い浮かべた後、一筋の涙を流してその場で祈った。



こうして波乱に満ちたクロスベル創立記念祭は終わった。なお、レン達の残虐な攻撃によってルバーチェの全戦力のおよそ4割にあたる構成員が身体の一部が無くなったり、神経が破壊されたりして2度と戦えない身体となって、戦闘員として使い物にならなくなり、レン達や銀を含めたロイド達の戦いによって軍用犬達はルバーチェが飼っている全体のおよそ8割を失った。その結果ルバーチェは様々な意味で大損害を被った………
















 
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