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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第235話 剣が届く先

 
前書き
~一言~

 ……ひ、ひじょうに遅くなってしまってすみません……、い、生きてます。何とか……。雨が酷くて、そのおかげで 色々と業務に多大なる影響が……気温が下がるのは嬉しいのですが……、じめじめとしてて……
 その上………・………・ 

 っとと、ほんと愚痴ばかりですみません……!! 改めてお詫び致します。遅くなってしまってすみませんっ!! 何とか一話、一万字、書き上げる事が出来ましたので、投稿します!

 そして 何とか、決着まで書き上げる事が出来ました! 
 ……時間が空き過ぎたので……前話をちょこちょこっと確認して、書いたのですが……、アニメとかでは、数分……じゃなく、数秒で終わりそうなシーンなのに、無茶苦茶時間がかかっちゃってます…… 苦笑
 
 次話予告! とかできたら良いのですが……、やっぱり 遅くなりそうな気配が濃厚なので……、ほんとごめんなさいっっ!! 何とか、頑張ってみます!!

 最後に、この小説を読んでくださってありがとうございます! これからも、頑張ります!!



                             じーくw  

 



――ソードスキルを見せる。


 それが リュウキの宣言だった。

 対峙しているランは勿論の事ながら、会話を訊いた周囲(ギャラリー)も聞こえた。聞こえたからこそ、だろう。……この戦いで最も空気が更に緊迫していくのを感じられたのは。

 リュウキは、剣を逆手に持ち、ただ 立ち尽くしている。
 その姿を見たランは 更に警戒を強めた。

「(単純に考えたら――、逆手持ちだから、剣の刃を後ろにしてる。……前に出してないだけで、それだけで隙を作ってるって言っていい。彼の読みは凄い。凄まじいけど、速さはユウの方がまだ(・・)上。……あの構えだったら、防御(パリィ)する為の動作も、剣に届くまでが確実に遅くなる。……あの構えの意味は……、他に?)」

 緊迫した空気の中で、ランはただただ冷静に頭を回転させた。

 そして、これまでの戦い、数合の打ち合いを思い出す。リュウキとの打ち合いは、見切り勝負、一瞬の気の読み合いと言っていい戦いだった。
 つまり、この次に何をしてくるのか? 何処を攻撃してくるのか? 或いは二手三手先、四手先、と先の先まで読み合いをしなければならない時だってあった。一瞬しかない時の中での、最良の選択、判断を繰り返し 何度も何度も刃を交えてきたのだ。
 そんな相手が、意味も無く、構えを変える筈も無い。

 ソードスキルを発動する為には、《決まった型》と言うものは確実に存在している。基本的な攻撃の型は 斬撃(スラッシュ)刺突(スラスト)から始まる故に逆手持ちでは 高確率で斬撃(スラッシュ)から始まるだろう。あの型から刺突(スラスト)へ移行する為には、逆手のまま相手に切っ先を向ける事は出来ない為、攻撃の時に剣を前に持ってこなければならない。つまり動作が多くなってしまい、隙を生じやすくなるからだ。

 手の選択は 多くは無い。そして何よりもソードスキルの理想的な発動条件はカウンターアタックにある。

 相手の攻撃に対し、カウンターでソードスキルを叩き込む。
 それが、発動後に遅延時間(ディレイ)が発生するソードスキルであれば、そのぶつかり合いでのカウンターであれば、更に理想的だ。
 ソードスキルは、基本技(デフォルト)とは、速さも攻撃力も圧倒的に違う。連撃ともなれば、見切るのは遥かに困難だ。

 だが、出来ない事はない。その超高難易度と言っていいそれを体現しているのが、ユウキであったり――ランなのだ。

 何よりランは、これまでの戦いを経て、自分に出来て、この相手にできないとは思っていない。だから、あの逆手持ちは、カウンターを狙っているのだと、最終結論が出た。

 だが――単純に、セオリー通りに考える事などしない方が良いのは、ランは判っている。結論を出しても尚、相手が何をしてきても決しておかしくない、とも考えだしている。

 ただ、対峙しているだけで、圧倒的な威圧感が漂ってきているから。

 それは、先ほど対峙した2人組。……自分達と同じ様に姉妹関係だろう彼女達と対峙した時にも、感じた。ある時を境に、集中力が変わった、と言ったらいいだろうか。

 それが、眼前の彼にも起きた、と言う事だ。

 だが、そんな中でも……極限まで集中していると思える表情をしていても――、その彼の()は、変わらない


『――本当に楽しそうな()をしてるんです。――目だけは、誤魔化しきれないみたいなんですよー』


 そうだ。
 彼女(・・)の言う通りだった。彼女(・・)の言っていた彼とは違うのかもしれない。ただただ、どこか惹かれる目をしている彼を見て、彼女(・・)の言葉が頭に過ぎりだしたのかもしれない。

 だけど――判らない事だらけだけど、勝手に決めつけてるだけだけど――、彼女(・・)の言葉は間違ってない、とランは強く思えた。




 そして、ランにとっても、周囲(ギャラリー)にとっても、体感時間が以上に長く感じる時の狭間で――、秒針が再び動き出した。
 それは、リュウキの目が鋭さを増したから動き出したのかもしれない。それが全ての合図、時を動かす鍵だった。

「(くるっ!!)」

 だが、その強張りを一瞬の変化をランは見逃さなかった。
 リュウキが動き出したと殆ど同時に、ランも動き始めていたから。





 時を少しだけ、巻き戻そう。
 2人の戦いを見ていて、息をのんだ。


――この瞬きさえ許されない刹那の時間で、2人の戦いを観戦しているメンバーの1人、シノンは 全て理解した。


 キリトが言っていた言葉の意味、『持っている』と言っていた意味を。

 剣聖と呼ばれている少女、ランが持っているもの、それはリュウキと同系統の物、他のメンバーにしてみれば、理不尽極まりない代物だという事がシノンにもはっきり判った。

《システム外スキル》の《眼》を持っていると言う事が。

 以前、リュウキにそれとなく訊いた事があったシノン。だが、リュウキ自身は謙遜をしていて、詳しくは説明してくれなかった。彼を以前から知っているメンバーは口をそろえて教えてくれたのが、《眼》の存在だ。

 嘗て、あの世界を生き抜いてきた者達曰く、その眼は《神眼》とも呼ばれていたらしい。

 この仮想世界の全て。有限ではあるが果ては無い世界を作っている原子構造……、いや もう無限にすら思える数列の流れ――、デジタル信号の流れの全てを視る事が出来る眼だ。

 全てを視る事が出来る為、相手の動きも視える。現実世界でいえば、僅かな筋肉の収縮、力み、それらを見て 相手の動きを察知する様に、動きを予測する様に、アバターの中で流れるデジタル信号の流れを読み取る事が出来る。

――後ろにも眼がついている。

 嘗て、キリトはそう思っていた。いや、そう思えてならなかったと言った方が良いだろう。それは、何もない目の前にただ広がっている空間にも流れ出るデジタル信号、それらが彼に知らせたのだ。敵の息遣いから、超感覚(ハイパーセンス)と読んでいた僅かな機微も視逃さなかったのだ。

 その眼の力は、銃の世界(GGO)でも遺憾なく発揮していた。

 流れ、世界の流れが判るからこそ、無数に討ち放たれる銃弾の動きも当然判る。――あの世界の闇も、その眼で捕らえる事が出来ていたんだ。

 隣で共に戦ったからこそ、シノンは 理解する事が出来た。キリトが言う様に、判った。……それと同時に、あの剣聖(ラン)の力にも、脱帽する思いも改めてだった。
 彼女も同じだと思った。……そう、特殊な環境で育った故に、リュウキは身に着ける事が出来た。つまり――彼女もそういう事(・・・・・)、なのだろう、と。




 そして、時は再び元に戻る。

 リュウキの超接近にランが迎え撃つ構え。コンマ数秒レベルの超接近戦である。
 だが、ランには違和感があった。それは、この僅かな時の狭間で感じた違和感だった。

「(ソードスキルは、強力。……だけど、その分、通常よりも大きな隙も当然生まれる……筈なのに?)」

 ソードスキルを決める理想的なタイミングは、たった1つしかない。
 それは、前の戦い、アスナ・レイナ vs ラン・ユウキとの一戦で、ユウキが披露したタイミング、相手のソードスキルを見切り、相手が硬直した瞬間、無防備な所に叩き込むカウンター、それが理想的だ。無防備な体に全て命中させるから。
 無論、相手はMobの様なアルゴリズムで動く訳ではなく、ソードスキル自体の威力と速度は通常技(デフォルト)とは比べ物にならない為、難易度がかなり高い。……狙って体現できる者は少ない。

「(だけど、ユウが出来る事を―――目の前の彼が出来ないとは到底思えない)」

 ランが脳裏に描いたのはそれだった。
 つまり、リュウキはカウンターを狙っている、と判断したのだ。防御に移す為の速度、攻撃への初速、それらが遅れる可能性の高い逆手の構えからも、それは連想出来た。

 だが、蓋を開けてみたら、全くの別物――想定外の攻撃だった。

 初撃を受けた。その瞬間から、時が動き出す。

 フェイントや巧みな太刀筋などではない。そう、言うならば渾身の一撃。
 リュウキは、ただただ全力で、本当に全力で、振り抜いてきたのだ。小細工の1つなく。

「くぁ……!!(な、なに……!? こ、このちか……らっ!!)」

 動き始めた時の中で、懸命に堪え続けるラン。
 僅かな時で、様々な手段を想定してきたラン。だが、これは 考えすぎていたからこそ、受け止める気概が損なわれてしまっていたのだ。その圧倒的ともいえる剛剣に。

「―――はぁっ!!」

 次に聞こえたのは、裂帛の気合。
 その声に追従する様に、更に力が上がっていく剣。あまりの威力に、ついには ランの身体が宙へと浮いたのだ。

「くぅぅ……!!!」

 ランも全力で、それ以上は何も考えずに リュウキの一撃にただただ集中し、受け止め様と力を加え続けたのだが、それでも押され続けた。不安定な体勢故に、それ以上堪える事が出来ずに、遂には宙へと上げられてしまった。
 打ち上げられ、高所からの落下すれば、当然ながらダメージはある。
 
 だが、この世界ALOでは、代名詞と言っていい翅がある。

 空高くへと飛ばされた、とは言え ここは屋外。太陽と月の恩恵が得られる場所では、飛行する事が可能なため、高所落下等のダメージはこの世界では有りえないのだ。

 だから、ランはまず、背中の翅を広げた。落下によるダメージだけは阻止する為に。だが、リュウキの真の狙いはここからだった。

「な……っ!!」

 次の瞬間、ランは我が目を疑う事になった。

 目の前に迫ってきていた筈の、相手が突如、眼前から消えたのだ。
 先ほどまで、すさまじい圧力だった筈なのに、まるで幻の様に、その圧力をも一瞬で消えてしまったのだ。

 それは意識の隙間、絶対的な死角になってしまった。

 キリトやシノンが感じた様に、ランもリュウキと同属性、と言っていい凄まじい観察眼を持っている。如何に趣向を凝らし、裏の裏をかこうとしても、直ぐに把握して 即対応する。観察眼だけではなく、それを実行するだけに足る能力をも持ち合わせている。
 そんな眼を持っている者同士だからこそ、取れる戦術と言うものがある。

「こっちだ――」
「っっ!!」

 声が聞こえたと同時に、反射的にランは背後に振り返った。
 そこには いつの間にか、背後へと移動していたリュウキの姿があった。リュウキは、翅を使っている訳ではなく、空中に静止しているかの様に、立っていたのだが、次の瞬間 再び高速移動をした。

 それは、翅を使った飛行ではない。それは体術スキルの1つである《疾空》。

 別に高度な体術スキルと言う訳ではなく習得している者も多数いるだろう。翅を使用するのが当たり前だから、問題ない、と言う事で習得していない者もいるかもしれないが。
 
 《疾空》は空中で二段以上のジャンプが出来る様になるスキルである。ジャンプの方向は上下左右、全方向何処でも可能であり、リュウキの様に、素早く空中を移動する事も出来る。

 だが、だからと言って 今繰り広げらている攻撃方法には、不可解な事もある。

 疾空(あれ)は、体術スキル(・・・)だから。

 スキルと言う名を冠している技は併用する事は基本的に不可だ。
 スキルを発動する際は、ある程度のイメージ力と言うものが必要になってくる。嘗て、キリトがクラインに、ソードスキルの使用の仕方を説明する際に、感覚や擬音で説明をした様に、従来のゲームでいうコマンド入力が、脳内で行われて初めて使用する事が出来るのだ。

 つまり、出来ない事は無い。……が、殆ど同時に2つの事を強く、更には正確にイメージし、トリガーを引く事は非常に難しい。感情の僅かな機微でさえ、拾ってのけるこの仮想空間においては、雑念を全く持たず、正確に思い描くなど、難しい事極まれりだ。
 それが、ソードスキルとの併用を考えたら、尚更だった。

「っ!!」
「くぅっっ!!」

 ランは、瞬時に接近し 剣を振るってきたリュウキの剣を、何とか受け止める事が出来たのだが――、受け止めた瞬間また、消えたのだ。

「!!」

 今度ははっきりと見えた。
 超接近し、攻撃をした瞬間 また 移動をした。目にも止まらぬ速度で、反対側に移動したのだ。移動……と言うより、反動をつける為に、速度を更に上げる為の所作だろう。
 そして リュウキは 再び宙を蹴り、接近し斬りつける。そしてその反動を利用し離れ、再び戻ってくる――その繰り返し。

 空中にいるランを中心に、縦横無尽に空中疾走をし、攻撃を繰り返す。
 動く事も、回避する事も叶わない。軈て、剣に宿っているソードスキル発動のエフェクトが、リュウキ自身の動きについていけていないのか……、リュウキ自身が光になったかの様な錯覚に見舞われる。光の奔流に呑まれるラン。

「(こ、これ……が……、彼の――オリジナル……)」

 ランは、光速で迫る攻撃を、2度、3度と防ぐ。それだけでも十分過ぎる程驚嘆だ。寧ろ、不安定な体勢のままで、防いでいるランの方を褒めるべきだとも思える。

 だが、1撃目より2撃目、2撃目より3撃目、と反動を全てに利用している為、どんどん切れ味が、威力が増している様な攻撃。ラン自身のオリジナル・ソードスキルで迎え撃つ、反撃する、それらの隙はまるで無い。

 軈て、ランの反応速度を上回る攻撃が来た為……或いは集中力が切れかけたのか、ランは対応しきれなくなった。

「あっ!!」

 防ぎきる事が出来ず、肩口に一撃を入れられてしまい、残された少ないHPゲージが削られる。もう、1割を切ってしまった。

 この時点で合計9連撃。

 そして、一撃を受けてしまった事で、綱渡り状態だったランは、一気に崩れてしまった。
 
「……っ……!?(これ……が この世界の……頂き、……一番の……)」
 
 技術、速度、センス。

 現実で言えば、所謂 心技体 の全てが極限にまで備わっている、と言っても良い相手に、ランは改めて称賛と尊敬の念を向けた。

 この戦いの前に、彼が場に出た時、周囲があっという間に湧いた理由も、今なら納得出来る。その強さに絶対的な信頼をしているという事も。

 そして次が今までよりも強い。……最も強力な一撃が来る事を、ランは意識した。

 四方八方に瞬間移動の如き速度で移動を繰り返していたリュウキが、今度は頭上へと移動したから。頭上からの振り下ろし、だという事は理解できた。同時に、その攻撃はもう防げないという事も。

 この止むる事無き連撃……まだ、これが最後か判らない。だが 仮に、10以上の連撃を放っても、ランはこれ以上の驚きは無いだろう。自分自身の10連撃、妹ユウキの11連撃、それらが1、2番だとは思ってなかったから。

 絶対に、上がいる。……上には上がいるという事を、彼女は知っているから。
 
 リュウキの剣が より深い輝きを発したその時。
 

『いつも話をしてるその人(・・・)の事で、判った事があるんですが――』
『え? ほんと??』


 ランは、この刹那に再び思い返していた。

『とっても強くて、それにとっても格好いい。 って、ずっと思ってるのは凄く分かりましたよー。あ、とっても好きだって事もっ!』
『あ―……、あ、あはははは』

 楽しそうに説明する彼女(・・)の顔を見て、そして 図星をさされてしまったのか、顔を僅かながらに紅潮させて恥ずかしそうに悶えてしまっている彼女(・・)を見て、ランは思わず吹き出しそうになってしまう。
 普段の陽気な笑み、それに、普段は何処となくのんびり屋さん。そんな彼女(・・)が、また別の一面を見せてくれているのだから、とても新鮮だったから。

『あ、やっぱり、私達よりも強いですか? 一応、今までの仮想世界で、対戦型のゲームでは、ユウ以上の人はまだお目にかかってないので、私も気になって』

 頭を掻きながら、ランはそういう。
 
 いつも話をしてくれる()の事―――。

 それは、彼女の中に眠っている存在だった。
 記憶の中に、鍵をかけられてしまっていて、まだはっきりと見る事が出来ない かつて……いや、今であっても彼女自身の大切な宝物(きおく)

 ランはそれとなく、その中身を訊く事をタブーにしてきた。

 思い出せないもどかしさ。……想っているのに、会えない。顔も思い出せない。それ程辛く苦しい事は無いだろう。
 だからこそ、話題に触れまいとしてきたのだけど……、そんな想いも笑顔で一蹴された。

――普通に話してくれて良いです。いえ、寧ろ話してください。

 そう笑顔で言っていた。そして、更に付け加えていく。

――例え、思い出せなくても、少しでも共有してくれる人がいるだけで嬉しい、だけど、少々惚気に似た話になってしまうのは、ご勘弁してください。

 笑顔でそう言われてしまえば……、もう遠慮してしまう方がよろしくない、とも思ってしまえるのはランだ。だから、そこからは意識したりはしなかったのだ。
 
『んー。私はユウキの事も、ランさんの事も大好きですから……、贔屓する様な事は無いです。……それを踏まえて』

 これまた、小っ恥ずかしいセリフを臆面もなく言われて同性だというのに、顔が赤くなりそうだった。……勿論、変な意味ではない。

『うー……ごめんなさいっ。やっぱり、僅差で、すーーーっごく僅差で―――あの人(・・・)の勝ち、かな? あ、勿論 ユウキとランさん2人が力を合わせたら、別ですよ?? そうなったら、無敵ですからっ! ……寧ろ反則の様な気がしますが』
『もうっ 1人相手に、2人掛は無いですよー』

 笑顔は、当然の如くランにも影響され、更に一段階質が増した。

『ただいまーー って、ん?? なんの話してるのー? 2人ともー』

 そんな時――、席を外していたユウキが帰ってきた。

『あ、お帰り。ユウ』
『おかえりなさい。ユウキ』

 笑顔で迎えてくれたから、ユウキも手を挙げて、同じく笑顔で返事をした。

 そして、ランはユウキの方へと数歩よると単刀直入に答えた。

『もしかしたら、すっごい強い人に会えるかもしれないよー、って話だよ、ユウ』
『え、ええ?? なに? なにそれ??』

 ランの言葉を訊いて目を輝かせて訊くユウキ。

 そんな2人を笑顔で見守る。この構図も最早茶飯事だった。
 
 そして、全部話を聞いたユウキは、大きな声で言っていた。


『えー、姉ちゃん。ボク以上って、姉ちゃんもだし、それに―――』


 大きなユウキの目に映っているのは、太陽の様な笑顔を向けてくれている、温かい気持ちにさせてくれる笑顔を向けてくれている彼女(・・)


サニー(・・・)もじゃんっ! ボク、2人にはどーやったって、勝てないもんっ。勝てるイメージ、まったく湧かないよー』


 ユウキの言葉を訊いて、ランは『あっ そう言えばっ!』と僅かに声を上げて、手を叩いた。
 ずっと話をしていた当事者の事なのに、完全に除外視してしまった様だった。

『………え? ええ?』

 きょとん、とするのは彼女……サニー。

 そんな顔も大好き。
 ランとユウキは、光に寄り添う様に サニーの傍へと向かっていくのだった。


 
 軈て――彼女(サニー)の姿が光に包まれる。



 その光の中から現れるのは、銀に光る剣と、凛とした表情の彼。
 とても真剣な表情。そして その眼の奥には 本当に輝いている。心から楽しんでいる事がよく判る。

「(これ程の人に。……その剣に敗れるのなら―――、悔いなんて、ある訳はない、かな……。ユウの前で、っていうのは、やっぱり恥ずかしいけど――)」

 ゆっくりと微笑むラン。

 この一瞬が、本当に長い。長く感じられる。彼女(サニー)の声を何度訊いて、何度振り返ったか判らない程に。

 そして、剣の輝きが一段階増した所で、強烈な閃光のエフェクトと銀の煙が周囲に吹き荒れた。




 リュウキのオリジナル・ソードスキルが放たれた。

「……隠して磨いてた、って事かよ。リュウキ」

 とっておきの隠し玉を披露されて、それとなく悔しくも思っているキリト。だが、それ以上にその攻撃シーンを目の当たりにしたキリトは、眼を見開いていた。いや、キリトだけじゃない。

「あれは………」
「うん………」

 アスナ、そして レイナも同じ表情だった。

 3人は、共にあの時の事を、鮮明に思い返していたのだ。

 そう、リュウキが、今 放ったソードスキル……オリジナル・ソードスキルは、嘗て、あの旧アインクラッドで放った事があるスキルと非常に酷似していたからだ。違うのは、100%攻撃の軌道が同じ、と言う事はありえないから、僅かにはずれがあるだろう、と言う点と、一種類のみの武器で使った、と言う点のみだ。

 その技を知っている者は、この世界には極少数。あの戦いに加わった者しか知らない者であり、キリトが放った二刀流の最上位スキル《ジ・イクリプス》と同じく、いや或いはそれ以上。半ば伝説。色々と飛び火した噂になっている程の代物だった。当然……、そのスキルと連想出来るものは、顔なじみのメンバーであっても、この場では キリトとアスナ、レイナの3人しかいない。 後は、この場にはいないクラインとエギルの2人のみだ。

 この世界の本当の創造主にして、SAOのラスボス……魔王、ヒースクリフを実質的には打ち破ったソードスキルなのだから。

「……確か……、武神覇斬剣、と聞いた……な。ん 間違いない――な」

 キリトはそう呟く。
 あの世界の終焉の地、朱い空の下で訊いた。名を付けた本人がどことなく恥ずかしそうにしていたと記憶している。

「ぶしん……? ああ。そういうの、好みそうよね」

 横で聞いたシノンは、軽く口元に手を宛がい、笑っていた。
 シノンは今の今まで、ずっと真剣な表情を崩さなかった。その表情が漸く綻んだ。……まだ、決着がついたかどうかは、正確には判らない。だけど――判ったから。決着の付け方。自分自身の考え、それが間違いない事が。

 
「………姉ちゃんが…………」

 固唾を呑んで見守っていたユウキは、やはり衝撃的だった。
 2人の戦いを見ていて、相手の実力は判った。自分の中で最強だと思っていた姉のランと互角以上に渡り合っている時点で、実力は折り紙付きだという事は、もうすでに分かっていた。ボーダーラインを超過している、と。
 だけど……、攻撃を受け止めきれず、遂には直撃を許してしまう場面を本当に見てしまうとは思ってもいなかったから、衝撃的だった。 
 
「…………」

 僅かながらに、ユウキの手には力が籠もった。

 それは、よくも姉を! や 負けたかもしれないランの仇を討つ! と言った類の決意の物ではなく……、純粋に驚いていて、それでいて 見る者すべてを魅了した程の白熱とした戦いを見た事で、自然と力が入った様だ。

――ボクも戦ってみたい……、かも。

 当初の目的をすっぱりと忘れてしまったかの様に、ユウキは 手を握っているのだった。




 軈て――閃光と煙が晴れてきた。

 各アバターには、例外なく翅は実装されてはいるが、使用しなければ、基本的に空中にとどまる事は出来ない。つまり、原則、空中浮遊を翅なしで行う事は不可能であり、体術である程度は出来ても、それでも限界はある。
 故に、宙にとどまり続ける為には、翅を使う事が必須だ。そして、現状でそれが出来るのは翅を出す事が出来る余裕がある者のみである。……つまりは、リュウキの攻撃を受けてしまったランにそんな余裕があるとは思えないという事で、もう地面に落下するのは免れないだろう、と周りの者達は思っていたのだが……。

「……あ、あれ?」

 リュウキとラン、2人は宙にとどまっていた。

 戸惑いの声を上げたのはランだ。最後の一撃は しっかりと目に焼き付けようとしたのだが……、ここまで見事な一撃を、無防備な体に入れられるのは初めての経験だった為、反射的に目を閉じてしまっていたのだ。

 目を開けてみれば―――びっくり。

 リュウキは兎も角、落下する事なく、ランが宙に留まる事が出来ているのは、リュウキがランの手を掴み、そして 翅を広げているからだ。手を引いてくれている事に気づいてびっくり。何でまだ無事なのか、直ぐに判らなかったから、びっくり、なのである。

「……悪い。真剣勝負、とは言え……、デュエルで、とは言え…… 最後まで出来なかった」

 耳に入ってきた言葉を訊いて、益々首を傾げるラン。
 こればかりは、リュウキをよく知るメンバーでなければ、判らないだろう。



「ははは………、や~っぱり、紳士なのよねー? 大会系の戦いや純粋な敵同士のデュエルならまだしも、辻デュエルとは言え、こ~んな健全な戦いだったら、最後の一撃を入れる~なんて、リュウキには……ねぇ?」

 腕を組んで、深々と頷きながらそういうのはリズである。
 そして、その隣のシリカとリーファも同意していた。

「リュウキさん、ですから!」
「そうだね。……私も何度か手合わせしてくれたけど、最後までは 一度も無かったし。よくよく考えたら大会の時も、タイムアウト狙ったりしてたしね」

 そんな意見を聞いた所で、リズが占める。

「ま、あのお爺ちゃんの背中見て、育ったんだし。納得はするもんよ。うんうん」

 リュウキ自身のバックボーンと言っていい人物……綺堂源治の事を思い描きながら……、リズに続いて、2人共頷くのだった。

 

 
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