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IS―インフィニット・ストラトス 最強に魅せられた少女

作者:伊10
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第4話 私、中二病になります。

セシリア視点

強い、恐ろしい方ですわ。神宮寺楓さん。どうやら貴女は本物の強者のようですわね。

斥力バリアの完成度は予想外でしたが、それよりも驚いたのは彼女の柔軟な戦闘スタイル。恐らく本来の彼女の得意距離は接近戦、刀の間合いでしょう。にも関わらず彼女は、速射力で劣る砲を用いて私と互角に撃ち合い、あまつさえ直撃さえ与えている。

生来のセンスもあるのでしょうが、相当な努力を積み重ねたのでしょう。その方を相手にするのに手の内を隠すのは失礼というものでしょう。

偏向射撃(フレキシブル)。現状の世界で私にしか使えない特殊技能。彼女が驚愕しているように、これは机上の空論の類いでした。私とて出来る様に成るまでは半信半疑でした。

でも、この子、ブルーティアーズが語りかけて来たのです。貴女ならできる。信じて、と。

幻聴……もしくは夢だったのだと思います。ですが、それ以来偏向射撃が可能になったのも事実です。それからも時々聞こえます。

その声が、私に告げてきました。
――――まだ、まだ終わってない――――
と。

その瞬間、彼女が笑いました。その顔は、敗北を悟り、いい試合になったという清々しいものでも、逆転の手段が見えたという希望でもない。貪欲で、無邪気な狂喜。ただ、強さと戦いを求める。そんな笑み。

寒気が走り、意識を集中する。いや、させられる。一瞬でも、一厘でも他の何かに意識を向けたら、その瞬間に墜とされる。そんな脅迫にも似たイメージが頭に浮かんだ。



一夏視点

俺は目の前で繰り広げられるその戦いに、ただただ圧倒されていた。次元が違う、そうとしか思えない。

今俺は、一次移行(ファーストシフト)の終わった専用IS、『白式』を身に纏っている。

専用装備は《雪片弐型》、バリアー無効化攻撃を行える近接刀。千冬姉の剣だ。

さらに、通常第二形態からつかえる唯一仕様(ワンオフアビリティー)《零落白夜》も使用可能だ。機体だけなら、負けてない。

でも、勝てる気がしない。目の前で戦う二人は、明らかに俺とは下地が違う。俺だって剣術をやっていたし、ここ一週間、箒との特訓でそれなりに勘は取り戻した。

でも、いや、だからこそ分かる。あの二人の実力が。どうしても埋めがたい、遠い遠いこの差が。

そして同時に思う。追い付きたい。あの高みに、自分も登ってみたい。

その為にも、この対戦、一瞬たりとも見逃す訳にはいかない。

決意を新たに、食い入るように戦闘を見始めた。



千冬視点

一夏の纏う空気が変わった。どうやら萎縮せずに済んだようだ。これで一夏の勝ち目も出てくる。限りなく薄いだろうが、ゼロではない。

一息つこうとしたその瞬間、アリーナを濃密な殺気が埋め尽くした。出所は分かっている。神宮寺だ。

その目には見覚えがあった。過去、モンド・グロッソで幾度となく見た、真に勝利を渇望する目。ひたすらに高みを目指す瞳。

そうか、神宮寺、やはり、お前は、



最強という名の魔物に、魅せられているんだな。





楓視点

オルコットさんがこっちすごい凝視してる。なんかあったのかな?まあいいや。

さて、一応作戦は立てたし、後は特攻あるのみ!

その思いで一歩踏み出した瞬間、ブルーティアーズのビットが動いた。斥力バリアを全周展開すれば防げるけれど、スラスターを使って回避する。なおも迫るレーザー。一瞬でも止まれば包囲射撃の餌食になることは、想像に難くない。

だから避ける。ひたすらに避ける。反撃の糸口は掴んでいる。後は待つだけ。





「よし、行ける。」

10分は続けただろうか。ようやく“読めた”。一度弓張月を展開、そして“わざと”動きを止める。普段のオルコットさんなら何かわざとらしさを感じたんだろうけど、決着を急ぎ、焦っている今なら、必ず誘いに引っ掛かる。案の定、包囲して偏向射撃を撃って来た。

そのレーザーの軌跡を、私はもう全て“知っている”。

人間、同じ事を何度も繰り返していれば、意識しなくてもパターン化してくる。ましてや偏向射撃が脳に掛ける負荷は絶大な筈だ。戦闘中に一発一発弾道を描ける訳がない。必ず固定パターンを用意している。

だから私は、そのパターンを見切ることだけに、この10分間専念した。そして、レーザーが来る位置と角度が分かればどうとでも出来る。

例えば、斥力バリアの角度を調整して、弾き返す方向をコントロールしたりとか。

向かってきたレーザー四発を、全て同じ一点、四基のビットの内の一つに弾き返す。回避する間もなく撃墜。動揺しながらも流石の切り替えでビットを操作する。だけどね、オルコットさん。

「動揺した人間の行動ほど!読み易いものは無いのよ!!」

事実、ビットの動きは、それまでにくらべて遥かに単調だった。

瞬時加速で三基を素早く射界に捉えると、秋雨と弓張月で射撃、呆気なく撃墜する。更に弓張月でもう一撃、流石に立ち直っていたのか回避しようとするが、ちょっと遅かった。

オルコットさんの手前20m程で砲弾が炸裂する。その砲弾は散弾だ。そして―――動きが止まったね?

弓張月を投げ捨て、血染紅葉を展開。同時に瞬時加速を使用して一気に距離を詰める。再びミサイルで迎撃しようとしてるけど………

「甘い!!」

「なっ!?」

私は刀を“投げつける”。ミサイルを切り裂き、爆発させる。当然血染紅葉も弾かれるけど、ここまで来れば問題無い。オルコットさんは悪足掻きと判断したのか、今度は余裕を持ってインターセプターを構える。

さて、ここでおさらい。玉鋼の第三世代兵装である水鏡は、『搭乗者のイメージで自在に形状を変えられる。』

だから、イメージさえ出来れば、武器は『作れる』。まぁそのイメージが厄介なんだけどね。だからイメージを固めるために、毎回毎回名前を呼ぶ必要がある。

こんな風に



「……『天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)』!!」



中二か

瞬時に形成された『斥力バリアのブレード』は長さも幅も自在だ。だから、5mの距離なんてあって無いような物だ。

蒼い光刃が、ブルーティアーズを直撃し、残りのエネルギーを全て食い尽くした。

『試合終了。勝者、神宮寺楓。』

無機質な合成音声がそう、告げた。










ISを解除すると、オルコットさんはアリーナの地面にへたりこんだまま、ピクリとも動かなかった。恐らく最後何をされたか理解出来てないのだろう。理解されても困るが。

「お疲れ様。」

なるべく嫌味にならない様言ったがオルコットさんは反応して何か言いかけて……そこで止まった。少ししてどこか改まった風に言った。

「貴女達の祖国を侮辱したこと、謝りますわ。」

侮辱?ああ、そう言えばそーゆー流れだった。戦ってたら忘れちゃったけど。

「気にしないで、お互い様なんだし。」

そう言ってはみたけどやっぱり沈んでいる様子のオルコットさん。いや――――



「何はともあれ、楽しかったよ!セシリア♪」



「ええ、そうですね………え?」

「ほら、立って立って。このままじゃ色々台無しだよ?」

そう言って私は“セシリア”に手を差し出す。最初は戸惑っていたセシリアだったけど、最後は満面の笑顔でこの手をとってくれた。 
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