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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第59話

―――創立記念祭 最終日―――



~特務支援課~



「いや~!しかし昨日の話は凄かったな。あの3人、どんだけ修羅場を潜り抜けてんだよって話だぜ。しかもあのフェミリンスっていうお姉さんが本物の”神”って話にはマジでびっくりしたぜ~!そりゃ、アリオスのオッサンも負けて当然だよな。」

「ふふ………お父様達から話には聞いていましたが、まさか”神”と戦って勝利したなんて、本当に驚きました。」

「うんうん!お父さんたち、凄い冒険をしたんだね!」

「リベールの異変については色々と話は聞いていたけど………真相はそれ以上に驚くべきものだったみたいね。それとまさかエステルさんが”姫神フェミリンス”の心を変えて、契約をするなんて………あの事には本当に驚いたわ………まさか”神”と契約するなんて………」

「フフ………お父さんも一緒に説得した事を忘れないでくださいね?」

「それに”結社”ですか………最先端技術で、エプスタイン財団やZCFを超える勢力があるというのは噂程度には耳にしていましたけど………まさかそのような規模で本当に実在していたなんて………”影の国”でエステルさん達と出会った時、もっと聞いておけばよかったです。」

「ああ………正直、実感はわいてこないよな。まあヨシュア曰く、クロスベルに”結社”の手は殆んど及んでいないって話だけど………」

ランディ達の話を聞いたロイドは頷いた後溜息を吐いて呟いた。

「もしかしたら、エレボニアとカルバードの目が他より厳しいからかもしれないわね。両国の諜報関係者も多く入り込んでいるでしょうから尻尾を掴まれたくないのかも………」

「……それはそれで全然嬉しくない話だな。」

「謎の結社か、大国の諜報組織か、はたまた巨大な犯罪シンジケートか。ま、どれも厄介なのは変わらねぇか。」

「………ですね。」

「つーか、エステルちゃん達が話してくれたおかげでティオすけが隠していた”特殊な事情”がようやくわかったな♪」

「”虚構”によってできた世界………”影の国”………まさかティオがエステル達と共にそんな凄い冒険をしたなんて………」

話が終わった後口元に笑みを浮かべたランディやロイドは驚きの表情でティオを見つめた。

「………あの時は一生分の恐怖や驚きを体験しましたよ。ラグタスやエステルさん達、探索の途中で出会い、契約したラテンニールの助けのお蔭で戻れたようなものです。………長い道のりで現れる”悪魔”や”ありえない存在”達との戦いは最初の頃は何度か死ぬ思いをしましたよ……」

(あっははは!まさかラグタスがそんな面白そうな戦いを体験したとはねぇ!どうせならあたいも巻き込まれたかったよ!その”影の国”とやらに。)

見つめられたティオは溜息を吐いて答え、それを聞いていたエルンストは好戦的な笑みを浮かべていた。

「道理で体力もあるし、私達より遥かに戦闘慣れしている訳よ………もしかしてティオちゃんが身に着けている戦衣も”影の国”に関係しているのかしら?」

「ええ。ウィルさんやさまざまな分野に”才”があるティータさんやレンさん達と一緒に創ったんです。その結果私が身に着けている戦衣には”神”の加護も少しだけ宿っていて、とてつもない防御力を持っているのです。」

エリィに尋ねられたティオは頷いた後説明し

「か、”神”の加護!?」

「うわ~!凄い!父さんたち、そんな凄い戦衣を創ったんだ!」

「ええ……一体、どんな過程でそれほどの戦衣を創れたのか気になりますね……」

「フフ、さすがお父さんですね………」

説明を聞いたロイドは驚き、シャマーラ達は興味ありげな様子でティオが身に着けている戦衣―――”知識神の神衣”を見つめていた。

「……言っておきますけど、”その程度”で驚いていたら、これから話すさまざまな事情についていけませんよ?その話の中にはセシルさんも関係しているのですから。」

「なっ!セ、セシル姉が!?」

「ま、まさか………セシルさんも”影の国”に巻き込まれたの??」

そして静かな表情で言ったティオの言葉を聞いたロイドは驚き、エリィは信じられない表情で尋ねた。

「ええ――――」

その後ティオはロイド達に魂は転生する理がある事を説明し、そしてセシルは”影の国”で現れたリウイの側室の一人―――ティナ・パリエである事を説明した。



「セ、セシル姉が………あの”英雄王”の側室の一人にして”癒しの聖女”の母親でもある人物が生まれ変わった人物……」

「転生自体も正直、信じられないわね………」

話を聞いたロイドは驚きの表情で呟き、エリィは信じられない表情をし

「そうかな~?あたし達の世界ではわりと知られている事だよ?」

「ええ。”冥き途”の事や魂の理は私達の世界では広く伝わっていますよ。」

「フフ、もしかしたら私達の世界とこちらの世界が繋がった際に魂の理も影響しているかもしれませんね。」

シャマーラは不思議そうな表情で呟き、エリナは頷いた後説明し、セティは微笑みながら説明を補足した。

「つーかよ。その転生だったか?そんなお伽噺みたいな事って本当にあるのかよ?」

「ええ、セシルさんも自分がティナさんの生まれ変わりである事を自覚していますし、他にも転生した人の例としてはエステルさんやイリーナ皇妃もそうですよ。」

そして疲れた表情で呟いたランディの言葉にティオは頷いて答えた。

「へっ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!セシル姉がそのティナさんっていう人の生まれ変わりである事を自覚しているって……どういう事だ!?」

「そ、それにエステルさんやイリーナ皇妃も誰かの生まれ変わりである事も凄く気になるんだけど………」

ティオの話を聞いたロイドは驚いた後、真剣な表情で尋ね、エリィは信じられない表情でティオを見つめて言った。

「………最初にセシルさんと出会った時………わたし、ロイドさん達から離れてから確認しましたから。セシルさんがティナさんの生まれ変わりであるかを。そしたらセシルさん、認めましたし。」

「最初に出会った時………?――――あの時か!」

ティオの説明を聞いたロイドは首を傾げたが、セシルと別れた後すぐに病院の中へと入って行ったティオの行動を思い出した。

「――――はい。それとセシルさんが隠している今の恋人の方がどのような方かも知っています。本人に確認しましたし。」

「ハアッ!?」

「………一体誰なんだ?」

ティオの話を聞いたランディは声を上げ、ロイドは真剣な表情で尋ねた。

「………セシルさんが生まれ変わる前の人が愛していた人です。」

「生まれ変わる前の人………?――――!そ、その人ってまさか………!」

「メンフィル大使―――”英雄王”リウイ・マーシルン………!」

(私も推測した時はありえないと思ったけど、まさか本当にそうだったなんて………)

「ハアッ!?おいおいおいおいっ!その話はマジなのか!?」

ティオの言葉を聞いたエリィは首を傾げたがすぐに気づいて信じられない表情をし、ロイドは目を見開いて叫び、ルファディエルは驚きの表情で考え込み、ランディは声をあげて言った。

「はい。……というかセシルさん、既にリウイ陛下の側室の一人としてメンフィル皇室に認められていますよ。」

「ええっ!?」

「ハアッ!?」

「なっ!?それは本当なのか、ティオ!?」

そしてティオの話を聞いたエリィとランディは声を上げ、ロイドは驚いた後信じられない表情で尋ねた。



「ええ。セシルさん自身が言ってたので間違いないかと。……ちなみに第一側室として認められ、その証拠に”パリエ”の名を貰って、名義上セシルさんはパリエ家の人で”癒しの聖女”の義母になったとセシルさんから聞きました。”癒しの聖女”自身もセシルさんを義母として認めているそうです。だから今のセシルさんの本当の名前は”セシル・パリエ・ノイエス”です。」

「嘘だろ、オイ………」

「まさかセシルさんがリウイ陛下の側室………それも第一側室だなんて………」

「……………………………なあ、ティオ。どうしてセシル姉はメンフィル大使館やメンフィルの城で暮らさないんだ?側室―――リウイ陛下の妻の一人になったのなら、一緒に住むのが当然なんじゃないのか?」

ティオの説明を聞いたランディは疲れた表情で溜息を吐き、エリィは信じられない表情で呟き、ロイドは複雑そうな表情で考え込んだ後、静かな表情でティオに尋ねた。

「……………全てはロイドさんの為だそうです。」

「え…………」

「『ロイドが私達から巣立つ所を見るまでクロスベルを離れる気はないわ。一人前の大人になって、可愛いお嫁さんを迎えたその時があの子が私達――――私とガイさんから巣立つ時だもの。』………そうセシルさんが言ってました。だからそれまではクロスベルでロイドさんを見守る為に、リウイ陛下に無理を言って待っていてもらっているそうです。」

「………セシル姉………………」

(……あの娘らしいわね。)

ティオの話を聞いたロイドは複雑そうな表情で黙り込み、ルファディエルは静かな様子を纏って目を閉じ

「ロイド…………」

「「「ロイドさん………」」」

ロイドの様子を見たエリィやセティ達は心配そうな表情でロイドを見つめ

「やれやれ………………セシルさんが幸せになる為にも、早く一人前の大人にならないと駄目なようだな、ロイド?」

ランディは口元に笑みを浮かべてロイドを見つめて言った。

「ああ、そうだな……………!」

ランディの言葉にロイドは力強く頷き、決意の表情になった。

「それにしてもティオはそのティナさん………だったか。その人に会った事があるんだよな。」

「ええ。」

「一体どんな人だったんだ?」

「……口で説明するより写真で見て貰った方がいいかと。」

そしてティオは懐から一枚の写真を出して、机に置いた。

「これは………」

「最終決戦の場所………”幻影城”に向かう前に皆さんがこうして集まった記念に撮った写真です。」

「エステルさん達も映っているし、クローディア姫やユリア准佐、オリヴァルト皇子、リウイ陛下達も映っているわね………(そんな………リースさんまでいるなんて……!隣に映っている神父の方も”星杯騎士”なのかしら?)」

ティオを含めた”影の国”に取り込まれた者達全員が映った写真を見たエリィは驚きの表情で呟いた後、七耀教会のシスターの服装の女性―――リースを見て驚いた後、リースの隣にいる七耀教会の神父の姿をした青年を見て考え込んでいた。

「あ!父さんやセラ母さん達も映っているよ!」

「へえ~………どこに映っているんだ?」

シャマーラが嬉しそうな表情で言った言葉を聞いたランディは尋ね

「……この方が私のお父様で、右隣にいる女性はセティ姉様の産みの母親―――セラヴァルウィ母様で、左隣りにいるのは最近父様の”守護天使”になり、父様の愛人の一人になった”主天使(ドミニオン)”のエリザスレイン母様です。」

「うおっ………3人共、若すぎだろ!特にこのセティちゃんのお母さん………か?セティちゃんと姉妹のようにしか見えねぇぞ。」

ウィル達の部分を指さして説明したエリナの話を聞いたランディはウィル達を見て驚いた後、セティとセラウィの容姿を見比べて驚いた。

「フフ、よく言われます。それにお母さんはああ見えて、100年以上生きているんですよ。」

「マジか!?異種族は俺達人間より遥かに寿命が長いって聞いた事はあったが………それにしても羨ましい!こんな美女達を両脇に侍らすなんて、世の中不公平だ!」

微笑みながらセティの話を聞いたランディは驚いた後悔しそうな表情でウィルを睨んで言った。



「………言っておきますけど、リウイ陛下やセリカさんはさらにその上を行っていますよ。」

その時ティオはジト目で写真を見つめながら言い

「ハアッ!?その”英雄王”やセリカって奴はどいつでどんな美女を侍らしているんだ!?」

そしてティオは驚いているランディにリウイやセリカが映っている部分を指さし、さらに2人を愛する女性達をそれぞれ指さして名前を言った。

「おのれっ……!こんな美女達を妻や恋人にしながら、これほどの美女達を侍らして、さらにセシルさんともイチャイチャできるだと!?”神”は不公平すぎだろっ!!」

「この人がセシル姉が生まれ変わる前の人で………そしてこの人がセシル姉の今の恋人―――リウイ陛下か………(なんだろう……このティナっていう人の笑顔とセシル姉の笑顔がどこか似ている感じがする………)」

ティオの説明を聞いたランディは悔しそうな表情で叫び、ロイドは複雑そうな表情でティナとリウイが映った部分を見比べていた。

「………というか、セリカさんやサティアさん自身、”神”の上、リウイ陛下やイリーナ皇妃は”神”の末裔ですし、不公平なんか最初からないかと。」

「へっ!?」

「ハアッ!?」

「い、一体どういう事、ティオちゃん!?」

そしてティオは驚いているロイド達に”神殺しセリカ・シルフィル”や”正義の大女神アストライア”―――サティア、リウイや生まれ変わる前のイリーナに隠されていた血統―――”姫神フェミリンス”の末裔である事を説明し、さらにサティアはエステルの身体に宿り、エステルが生む子供がサティアになることやリウイと初代イリーナ皇妃の出生の秘密、2代目イリーナ皇妃が初代イリーナ皇妃が転生した人物である事を説明した。

「…………………………」

説明を聞いたロイドは口をパクパクし

「(そんな………お姉様が………初代イリーナ皇妃が生まれ変わった人だったなんて………でもその理由なら、侍女であったお姉様がリウイお義兄様と結婚でき、何故民達からも祝福され、メンフィル皇室関係者全員から慕われている理由も納得がいくわね………でも……お姉様………今の貴女は私の姉の”イリーナ・マクダエル”か、初代”イリーナ”皇妃………どちらが”今”のお姉様なのですか………?)………まさか異世界の伝承にあった禁忌の存在――――”神殺し”にそんな哀しい事実が隠されていたなんて………」

エリィは心の中で迷った後、悲痛そうな表情をしてセリカやサティアを見比べた後

「………とは言っても、将来サティアさんはエステルさんの子供として生まれ変わりますから、近い将来2人は幸せになれますよ。」

「そう………で、でもまさかエステルさんに”女神”の魂が宿っていて、さらに”神剣”を持っている上、扱えるなんて驚きね………」

ティオに言われて微笑んだ後、ある事に気付いて表情を引き攣らせながらエステルが映っている部分を見つめていた。

「なんつーか………どれも話が壮大すぎて現実味が出てこねぇな………正直言って、”神話”を聞いているような気分だったぞ………つーか、ロイド。今の話を聞いて思ったが俺達がエステルちゃん達をライバル視するなんて、無謀じゃねえか?」

「うっ………!ま、まあ気の持ちようは自由だろう?目標は高ければ高いほど、俺達も成長できるしさ。」

そして疲れた表情で溜息を吐いたランディに視線を向けられたロイドは唸った後、苦笑しながら言ったが

「………その目標が高すぎると言っているんです。冗談抜きでエステルさん、”神”に近い存在ですよ?ただでさえあの人、生まれ変わったラピス姫やリン姫の力を使ったらとんでもなく強い上、契約している異種族達はどれも高位の存在で中には”魔神”やルファディエルさんやラグタスより高位の天使―――”主天使”もいて、さらに”神”―――”フェミリンスさんやサティアさんの加護で”神”の力も扱えるんですよ?それこそ、エステルさんが本気になれば一国を滅ぼすことも可能だと思います。」

「ええええええっ!?」

「出鱈目すぎだろ、エステルちゃん………」

「………冗談抜きで、私達が一生頑張っても追いつけそうにない相手よね………」

ジト目のティオの言葉を聞いてロイドは驚き、ランディとエリィは疲れた表情で溜息を吐いた。

「ハ、ハハ………でも、ティオだって、エステル達の戦いについて行けたんだろう?俺達もいつか、そうなれるよ。」

「………あの。完全に人間の範疇から離れて、もはや人外としか言いようがないエステルさんとわたしを一緒にしないでくれますか?さすがにあんなどう考えても”人間”止めているとしか思えない強さを持っているエステルさんと一緒にされては困りますし………」

そして苦笑しながらロイドに見つめられたティオはジト目で突っ込んだ。

「ハハ………そうだ、ティオ。リウイ陛下って、どんな人なんだ?」

突っ込まれたロイドは苦笑した後、話を変えてティオを見つめて尋ねた。

「?どういう人………とは?」

「どうしてリウイ様の事が気になっているの~?ロイドさん。」

ロイドの疑問を聞いたティオは首を傾げ、シャマーラはロイドに尋ねた。

「いや、まあ………セシル姉が複数の女性と結婚している事をわかっていながら結婚した人ってどういう人なのか気になるし………」

尋ねられたロイドは苦笑しながら答えた。

「………まあ、唯一の欠点を除けば男性として完璧な人かと。財力、容姿、強さの全てが完璧な人ですよ。性格だって、普段から恐そうな雰囲気を纏っていますけど、実際話したら身分とかあまり気にしないわりと気さくな方ですから。なのでセシルさんも超お買い得な男性をゲットしたと思います。」

「………今更だけど、”英雄王”って反則すぎだろ……この写真で見る限り滅茶苦茶イケメンだし、あのメンフィルの元皇帝なんだから金なんか唸るほどあるし、しかも”大陸最強”って謳われているんだから、あらゆる意味で”世界最強”の男じゃねえか!」

「で、でも欠点もあるって話じゃないか。……ちなみにどんな欠点を持っているんだ?」

ティオの説明を聞いたランディは疲れた表情で溜息を吐いた後悔しそうな表情で叫び、その様子を見たロイドは苦笑した後ティオに尋ねた。

「………ロイドさんと一緒ですよ。」

「へっ……………」

しかしジト目に見つめられたティオの言葉を聞いて呆け

「リウイ陛下………無自覚で女性を惹きつけるとんでもない女タラシですから。”影の国”の時だってこの人―――シルフィエッタ姫って言うんですけど、最初はシルフィエッタ姫、わたし達と出会った時にリウイ陛下達―――”闇夜の眷属”に恐怖や嫌悪感があったんですけど、短期間でリウイ陛下、無自覚でシルフィエッタ姫に自分を惚れさせて、自分達への恐怖や嫌悪感を無くしていましたから。しかも”影の国”から帰還後、シルフィエッタ姫を側室の一人にしたそうです。『英雄色を好む』とはまさにこの人の事でしょうね。」

「………言われてみれば確かに。」

「……………よかったわね、ロイド。あのリウイ陛下と共通点があるなんて、光栄な事じゃないかしら?」

「アハハ………」

「「フフ………」」

ティオの話を聞いたランディは目を細めて、蔑みの表情のエリィや苦笑しているシャマーラ達と共にロイドを見つめ

「ちょ、ちょっと待ってくれ!いつ、俺がそんな事をしたんだよ!!」

見つめられたロイドは慌てた。

(リウイ陛下と違って、責任をとらないところが余計に性質が悪いわね………)

(そうですね。)

(この弟王めっ!)

そしてエリィとティオはジト目でロイドを見つめながら小声で会話し、ランディは悔しそうな表情でロイドを見つめ

「(ううっ、みんなの視線が痛すぎる………)……ほ、他には!他には何か特徴がないのか!?」

見つめられたロイドは疲れた表情になった後、話を変えようとし

(今、思いっきり話を誤魔化したよね?)

(ええ。それも露骨に。)

(まあまあ、2人とも。ここは黙っておいてあげましょう。)

ロイドの行動を見たシャマーラ達はそれぞれ小声で会話をしていた。

「………他に特徴と言っても敵に対してはとんでもない威圧感を出していたぐらいですかね。正直、味方だとわかっていてもあの人が出す威圧感に慣れるのには時間がかかりました。味方だとわかっていても、凄い恐怖を感じるんですよ?」

「……………(な、何となくわかるわ、その気持ち……)」

「まさに”覇王”のオーラって奴か………」

ティオの話を聞いたエリィは心の中で苦笑し、ランディは呟いた。

「………まあ、そのお蔭で大抵の脅しをされても、全然恐怖を感じなくなりましたよ。……例えばルバーチェのあの営業本部長さんの脅しとか、正直こけ脅しのようにしか感じられず、全然恐怖を感じませんでしたね。………”影の国”で出会ったリウイ陛下もそうですが、”影の国”では”悪魔”どころか、伝承にあるような邪悪な魔術師、そして”神”とも戦ったんですから、あれらが出していた威圧感と比べれば、天と地の差ですよ。………まあ、あんなこけ脅ししか出来ない”小物”とリウイ陛下達を比べる方がおかしいのですけど。」

「………………」

「あのガルシアのオッサンを”小物”扱いするほど成長するとは………ティオすけ、お前マジでとんでもない体験をしてきたんだな………」

「ティ、ティオちゃん………その”影の国”で色々な意味でたくましくなったのね………」

そして静かな表情で答えたティオの話を聞いたロイドは口をパクパクさせ、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、エリィは表情を引き攣らせながらティオを見つめた。するとその時、扉が開く音がした。



「ちわーす!ライムス運送会社です!」

「あなたは………」

「昨日の運送会社の………」

ビルに入って来た人物――――コリンが潜り込んだ運搬車の運転手を見たロイドとエリィは驚き、仲間達と共に近づいた。

「いや~、昨日はお疲れ様!でもよかったよ!あの子が無事見つかって!親御さん、心配してただろう?」

「はは、それはもう。」

「アンタの方は会社にどやされなかったか?」

「ああ、配達が遅れたことは警備隊の人に文句言われたけどさ。親父―――社長の方からはそこまでお咎めはされなかったぜ。ま、ちゃんと車内をチェックしろって一発ゲンコはもらっちまったけどさ。

「ふふ………」

「まあ、その程度済んで幸いだったかもしれませんね。」

青年の話を聞いたエリィは微笑み、ティオは静かな表情で頷いた。

「はは、違いない。―――おっと、昨日の確認をしに来たんじゃないんだ。あんた達にお届け物だよ。」

「え………」

「警察本部からですか?」

「いや、何でも朝一番で速達で入ったらしいけど………はいこれ、受け取って。」

そしてロイドは青年から小さな小包を受け取った。

「これは………?」

「ずいぶん小さなものだけど………」

「それじゃあ、確かに渡したぜ。配達があるんで俺はこれで失礼するよ。」

「おお、お疲れさん。」

「また迷子に忍び込まれないよう気を付けてください。」

「はは、肝に銘じとくよ。」

ティオの言葉に苦笑した青年はビルを出て行った。

「………………………」

一方ロイドは小包を見つめて黙り込んでいた。

「それで、結局誰からなんだ?」

「―――差出人の名前がある。”仔猫(キティ)”からみたいだ。」

「えっ……!?」

「レンさんから………」

ランディの疑問に答えたロイドの話を聞いたエリィとティオは驚いた。その後ロイドは仲間達と共に机に座って、小包を開いて入っていたもの―――メッセージカードと金の薔薇がついた漆黒のカードを取り出した。



『―――昨日のお礼にそのカードをプレゼントするわ。面白い出物があるみたいだから覗きに行こうと思って手に入れたんだけど、1枚お兄さん達に譲ってあげる。うふふ、有効に使って頂戴ね。』



「”黒の競売会(シュバルツオークション)”の……!」

「ど、どうしてあの子がこんなものを………!?」

金の薔薇のカードを見たロイドとエリィは驚き

「確か、各国のVIPにしか贈られない招待カードだったよな?今はメンフィル皇女だって話だから、持っていてもおかしくないんじゃねえか?」

「それ以前に………どうして、わたしたちがこれに関心を持っているのを知っていたんでしょう………」

ランディは納得した様子で呟き、ティオは考え込んでいた。

「………―――あの子に関しては深く考えても仕方なさそうだ。それより……このカード、本物だと思うか?」

「そうね……高級感のあるあつらえといい、本物である可能性は高いと思うわ。」

「金色の薔薇の刻印……本物の金箔が使われていますね。」

ロイドに尋ねられたエリィは答え、セティが漆黒のカードを見て説明を補足した。

「本日夜7時、保養地ミシェラムのハルトマン議長邸にて開催、か。」

(………まさか、招待カードを手に入れるなんて………)

そしてランディはカードに書かれてある内容を読み、ルファディエルは真剣な表情で考え込んでいた。

「………――なあ、みんな。課長にはあんな風に釘を刺されたばかりだけど……」

「みなまで言わないで、ロイド。」

「ここにいるみなさんはみんなロイドさんと同じ思いですよ。」

「ま、据え膳喰わぬは何とやらってヤツだな。」

「……課長が今日も本部に出ていて幸いでした。」

「そうそう。この事を知ったら、取り上げられるかもしれないしね~。」

「後はルファディエルさんですね……」

ロイドに尋ねられたエリィ達がそれぞれ頷いている中、難しそうな表情をしたエリナが呟いた。

「―――ルファ姉。」

するとその時、ロイドがルファディエルを召喚し

「………言いたいことはわかっているわ。いざという時は私も全力でサポートするから、大船に乗った気で行きなさい。」

召喚されたルファディエルは静かな表情でロイド達を見回した後、微笑みながら言った。

「……ありがとう。―――みんな………いいのか?俺の我儘に付き合わせる形になると思うんだけど……」

「ふふ、勘違いしないで。私はある意味、あなた以上に”黒の競売会”に興味がある………私の属していた世界に近い人達が集まるみたいだし。」

「わたしは純粋にオークションへの好奇心ですね。レンさんが言っている『面白い出物』というのも気になります。」

「私達は”工匠”としてどんな物があるのか興味があります。」

「そうそう!あたし達が今後何かを創るアイデアになるかもしれないし。」

「いかなる物もアイデアにする……それが”工匠”なのですから。」

「ま、俺はゴージャスでセレブなパーティそのものに興味があるな。美味いモンを飲み食いしてセレブで高めなお姉さんともお近づきになれるチャンス……見逃す手はねえだろうが?」

そしてロイドに尋ねられたエリィ達はそれぞれ賛成の答えを口にした。

「……みんな………―――今日は最終日だ。昼までに一通り仕事を片付けて港湾区の水上バス乗り場に行こう。本当に競売会に潜入するか………”ミシェラム”に行って考えたい。」

「ええ、わかったわ。」

「そんじゃあ、残った仕事をとっとと片付けるとするか。」

「一応、新しい依頼がないか端末もチェックしましょう。」

その後ロイド達は手分けして支援要請を終わらせた後、ミシェラムに行く水上バスに乗る為に港湾区に向かった……………




 
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