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とある科学の傀儡師(エクスマキナ)

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第42話 アイテム

 
前書き
遅くなりました
リアルが忙しくて、なかなか執筆の時間が取れなかったです
申し訳ありません 

 
「協力者という人物からの依頼〜?」
茶色の髪をしたスタイルの良い女性が自分の長めの髪を弄りながら、間伸びする言葉を吐き出すように言った。
「誰の何の協力者よ......依頼者について詳しく話せない?」
学園都市の裏に潜む組織の一つ「アイテム」のリーダー「麦野沈利(むぎのしずり)」が積まれた箱に前のめりに体重を掛けながら電話を続ける。

アイテムの主な仕事内容は、学園都市統括理事を含む上層部や暗部組織の監視や暴走の阻止。
更に、学園都市での不穏分子の削除•抹消も含まれているため綺麗な内容の組織ではない。
基本的にギャラが発生すればどんな依頼でも受けるような形だ。

電話をしている麦野の真後ろでは、他のメンバーが時間潰しとばかりに近づいてくる夏に向けての乙女的な会話に華を咲かせていた。
何か戦闘でも行われたのか、足元や壁には黒服の屈強な男性が無残に倒れている。
「でもさー、結局水着って人に見せつけるのが目的な訳だから。誰もいないプライベートプールじゃ、高いヤツ買った意味がないっていうか」
帽子を被り、短めのスカートを履いた「フレンダ=セイヴェルン」が倒れている男性の頭を踏みつけながら言った。

「でも市民プールや海水浴場は混んでて泳ぐスペースが超ありませんが」
フードを深々と被ったメンバー最小の「絹旗最愛(きぬはたさいあい)」がスキンヘッドの男性を壁にめり込ませる。

「んー、確かにそれもあるのよねー。滝壺はどう思う?」
フレンダがうつ伏せに倒れている髪の長い男性の指を掴むと何の躊躇もなく、指の骨を折った。
フレンダ達はすでに意識がない黒服の男性に向けて、暇を潰すように無意識的に嬲り続けていた。
電話している時にメモがあったらイタズラ書きをするような、軽い意味合いの弄りに近い。
「......浮いて漂うスペースがあればどっちでもいいよ?」
今回の目的の品か依頼された品か不明だが、スチール製の鞄を大事そうに抱える「滝壺理后(たきつぼりこう)」が無表情に呟くように返事した。
「そ......そお」
理解できないかのようにフレンダは首を傾げた。
「はーい。お仕事中にだべらない。新しい依頼が来たわよ」
電話でのやり取りが完了したのか、リーダーの麦野が手を叩いて注意を自分に向けさせた。
依頼された内容の概要を掻い摘んで紹介する。
「不明瞭な依頼で注意事項があるけど悪くないギャラよ」
「依頼って?」
にやりと麦野は口角を上げて、心底楽しむかのように少しだけ目線を上げた。
「暗殺よ」

組織で使っている中継車にメンバー全員で乗り込み、モニターからの声に耳を傾ける。
「特異能力者(シングラースキル)ねぇ......」

『依頼人からの情報から類推するとね。複数の並外れた能力を使うみたい』
モニターには「SOUND ONLY」とイタリック体で表示されており、スピーカーから機械的な音声が流れて麦野と会話している。
『暗殺に成功したら、死体は依頼人が回収するみたいよ』
その言葉に釈然としないメンバーは眼を細めて、互いに顔を見合った。
「暗殺だったら、こちらから超襲撃になる?不意討ちで」
絹旗が率直に思った疑問を口に出した。

『そうもいかないみたいよ「不意討ちでは逆に負ける可能性が高い。待ち構えて罠に仕掛けた方が得策」らしいわよ』

「はあ?そんなに強い相手なの?」
フレンダが頭を抱えて、苦い顔をした。
暗殺だが、こちらから襲撃しないことに何か納得いかないみたいだ。

『時間が無いから手短に説明するけど「絶対に一対一で殺り合わないこと。敵の眼を直接見てはいけない」今回の仕事はかなり危険が伴うらしいわ』

「眼を見るなって超不利じゃないですか?能力は超不明ですか」
戦闘において、相手の眼を見ることは重要な情報源になる。
相手の眼の開き具合から目線などから次の一手を読み、対処できることが多い。
しかし、今回の仕事では「眼を見てはいけない」という縛りがあり、どう戦ってよいか不明だ。

『どうも能力が多岐を渡り過ぎてね。こっちもかなり混乱状態よ』

「時間が無いってどういう事?」
麦野が長めのスパッツを上に引っ張り上げながら訊いた。
『今からターゲットがアンタ達の居る施設に来るからよ』
「はあ!今から?」
『じゃあ、暗殺の仕事頑張ってねー』
やや乱暴に通信が途絶えた。
静かになった車内で暫く沈黙が流れる。
「あー、もー!!結局、意味分かんない」
背もたれに暴れながら寄りかかり、手足を大の字に伸ばした。
「滝壺は何か超分かりました?」
「......ボーっとしていたよ」
「でしょうね。会話に参加してなかった訳だし」

しかし、その隣で麦野は拳を合わせてポキポキと鳴らしていた。
これから来る謎の強者との戦いを密かに楽しみにしていた。

******

「ん?!」
木山を背負ったサソリが何かに気付いて、青々と葉っぱを揺らしているベンジャミンが置いてあるビルの屋上で立ち止まった。
「どうした?赤髪く......いや、サソリ君」
サソリは木山を背中から降ろすと手にチャクラを集中させて木山の頭にかぶせた。
「??」
木山が事態が飲み込めずに固まっていると
「お前じゃないか......ゼツにでも感知されたか」
サソリは、面倒そうに視線を巡らすと木山の頭から手を離し、屋上に置いてあったベンジャミンの植木鉢をひっくり返して土を弄り出した。
「どうしたんだ?」
「オレ達が動いているのがバレているみたいだ。お前が案内した目の前の研究所に数人待ち構えている」
「な、何?......」
木山は数軒先の研究所を目を細めて眺めた。
「これくらいあれば良いか......よし」
サソリは印を結び、植木鉢に入っていたやや湿り気のある土が散り散りとなり、サソリや木山の周りに集まり出した。

「木山」
サソリが写輪眼を発動しながら木山に声を掛けた。
「何だい?」
「お前ってなんか能力使えるよな?前みたいに」
「いや、あれはレベルアッパーを使っていたからね。今は何も使えないはずだ」
「そうか......」
「?」

サソリは巴紋をクルクル回しながら、軽くその場に座り出した。
「という事は、レベルアッパーが使えればお前もなんかの能力が使えるってことだな」
「そうだが......今は装置がないからできないよ。ほとんど消失してしまっ......!?」
突然、木山の耳に金属と金属がぶつかるような耳鳴りが響き、目が真っ赤になった。
「これは?!」
レベルアッパーを研究する上での思わぬ副産物「多才能力者(マルチスキル)」が再び、木山に付与された証だった。
「はあー......」
サソリが腕を後方に下げて、体重を支えるとダルそうに木山を見上げた。
「これは?......」
「ある程度、コピーさせて貰ったからな......これ以上強くすると意識が無くなるな」
サソリは、前に起きたレベルアッパー事件の時に意識を失い倒れた佐天のチャクラの流れを写輪眼で解析し、レベルアッパーと同じ原理の術を施した。

前は自分のチャクラの流れに組み込んだが、今回は木山の脳波に合わせてチャクラを調節して、レベルアッパー使用者と同じような状況にサソリ自身にかけたようだ。

フラフラとしながら、サソリは立ち上がると頭を掻いた。
「一応、これでお前もオレの術の一部が使えるようになるはずだな」

サソリが写輪眼を解除すると、木山の耳鳴りが治り、真っ赤な眼が元の目色に変わる。
木山の目の前でサソリは、砂を弄りながら指先で目を押さえている。
サソリの掌に砂が球体状に集まり出して、何か見覚えのある形へと変化した。
「よし」
それは、砂で作られた目玉のようだ。
サソリはその眼をギョロギョロ動かして動作を確認している。

「少し見てくる」
サソリはその目玉を握り潰すと砂塵となり、風に乗って研究所の小さな隙間から内部へと進入して行った。

木山は、そんなサソリの能力の高さに脱帽していた。
自身が数ヶ月も緻密に開発したレベルアッパーを僅かな時間見ただけで使いこなして、常識を上回る能力を使うサソリに畏敬の念を抱いた。

居るものだな......
天才というものは
サソリ君......君は一体?
......何かが違う、まるで住む世界が違うような気がしてならない 
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