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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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決意する天竜

 
前書き
最強チームにウェンディが加わるのはよくあるけど、ジュビアが加わってるのって珍しいよね?
今週のFAIRYTAIL読んで気付いたんです。「あれこれ珍しくね?」って。ジュビアの方がウェンディよりギルドにいる期間長いのにね。 

 
第三者side

「か・・・勝った・・・」

地面に大の字になり倒れているノーラン。それを見下ろしているシリル。その様子を見て、彼の相棒であるエクシードのセシリーは、涙を流しそう呟いた。

「俺の負けだ・・・殺せ・・・」

敗北したノーランは、起き上がることなくそう言う。しかし、シリルはそんな彼に背を向けた。

「俺は殺さないよ。俺がそんなことをするのを、ウェンディもみんなも、誰も望まないから」

そう言った少年は、ふらつきながらラクサスやカミューニ、そしてセシリーの待つところに歩いていこうとする。

「あ、でも薬はもらうから」

だが、彼はすぐにノーランがラクサスたちを治せる薬を持っていたことを思い出し、彼のポケットからそれを奪い取ると、一度息をついてから仲間たちの元へと戻ってくる。

「シリル~!!お疲れ~!!」
「あぁ、ありがとう」

(エーラ)を出してこちらに向かってくるシリルに飛び付くセシリー。シリルは大喜びの彼女を受け止めると、突然その場に膝をつき、崩れて落ちる。

「ムギャ!!」

前のめりに少年が倒れたことで、彼に飛び付き、腕に抱えられていたセシリーは下敷きにされ苦しそうに手足をバタバタさせている。

「か・・・カミューニくん助けて~!!」
「何やってんだか・・・」

自分よりも何倍も身長があるシリルに潰され助けを請うセシリーに、カミューニは呆れながら手を伸ばし、彼女を救出する。

「シリル~、どうしたの~?」

助けられたセシリーはすぐさまシリルの体を揺すり彼の状態を確かめている。なかなか動かない少年を見て、彼女は顔を覗き込む。すると・・・

「スゥ・・・スゥ・・・」
「寝てるし~!!」

静かに瞳を閉じて、寝息を立てている顔が目に入り、ずっこけていた。

「まぁ頑張ったしなぁ。仕方ねぇだろ」

カミューニはそう言うと、シリルの体を持ち上げ背中に乗せる。その後彼は、うつ伏せになっているラクサスに肩を貸すと、その場から離れていこうとする。

「おい、殺さないのか?」
「あぁ。そうだな」

目線だけを立ち去ろうとする男たちに向け、ノーランがそう言うと、カミューニは平静な表情でそう答えた。

「シリルが殺さないって言うんなら、今回はそれに従っておくよ。俺がやるべきことをやったのは、こいつなんだからな」

彼の背中に重なり、目を開けることなく深い眠りについているシリル。自分が本来やらなければいけないことを彼にさせてしまったと思っているカミューニは、少年の考えを尊重し、ノーランに手を下すのをやめているとのことだった。

「あばよノーラン。次は同じことしたら、そん時はぶっ殺してやるからよ」

カミューニはそう言い残すと、負傷したラクサスとシリル、そしてセシリーを従えてその場を後にした。




















「ハッ!!温いこと言いやがって」

残されたノーランはそう言うと、大きく息を吐き出す。

「今ここでトドメを刺さなかったこと、後々後悔することになるぜ」

ノーランはそう言うと、ある場所のイメージを頭に浮かべ、目を閉じる。

「ここで二度と再生できないようにしておけば、俺にやられることもなかったのになぁ」

彼の頭に思い描いている場所は、シリルとミラが捕らえられていたラボと言われる施設。そこでは、キョウカが連れてきた冥府に相応しい人材を悪魔に転生させることの他にある重要な役割がある。
それは、冥府の門(タルタロス)のメンバーが負傷した際の再生。それがある限り、彼らは何度でも甦ることができる、不死者たちなのである。

「それじゃ、ラボに向かうとするか」
「その必要はないよ」

体をラボに転送しようとしたその時、青年の姿をした悪魔の耳に、聞き覚えのある声が届く。彼はそちらを向くと、そこには待ち焦がれていたある人物が立っていた。

「ゼレフ・・・」

そこにいたのは、彼を作り出した人物であり、冥府の門(タルタロス)の全員がそのもとへと帰ることを望んでいる人物、ゼレフだった。

「なぜ・・・こんなところに・・・」

痛む体にムチを打ち、ゆっくりと体を起こしていくノーラン。彼はなんとか上体を起こすと、真っ直ぐに創造主の方を見据える。

「やった・・・俺たちはあなたに会いたく――――」

ズドンッ

手を伸ばしたその時、彼の体から何かの音が周囲に響き渡る。

「え・・・?」

何が起きたのかわからず、疑問符を頭に浮かべているノーラン。その直後、彼は痛みを感じたかと思うと、咳と共に口から血が吹き出してくる。

「なんで・・・」

青年が顔を下げると、己の体に大きな穴が空いているのに気付き、その部位を押さえる。

「ゼレフ・・・卿・・・これは・・・」

自分に攻撃を加えた人物の方を見て、疑問を投げ掛ける。それに対し男は、冷酷な目で彼の方を見下ろしていた。

「君はかなりの傑作だと思ってたんだけどね。やはり力不足だったかな?」

その時のゼレフの目を見て、ノーランは寒気を感じた。彼のその冷酷な瞳は、見るものすべてを凍てつかせるほどの恐怖を与えるほどのものだったであろう。
ゼレフは右腕を前に出すと、そこに魔力で構成した黒い球体を作り出す。それを見たノーランは、慌てふためいた。

「君、もういらないから」
「ま・・・待ってくれ!!」

その声もむなしく投げ出された暗黒の魔法。それは、ノーランの頭を瞬く間に消し去った。

「さようなら、もう会うこともないだろう」

黒髪の青年はそう言うと、ピクリとも動かない悪魔を本へと戻し、焼き消した後、その場を後にした。





















カミューニside

「ん?」
「どうした?カミュ」

後ろから何かの叫びみたいなのが聞こえたような気がして振り返るが、その正体が何かわからず首を傾げる。

「いや、なんでもねぇ」

気のせい・・・か?そう思い、気を取り直して先へと足を進める。だけど・・・

「ね~?これからどうするの~?」

後ろをついてきている空飛ぶ猫がささやかな疑問を投げ掛ける。それを受け、意識のある俺とラクサスは上空に浮かぶ四角い島を見上げる。

冥界島(あれ)に戻りたいが、どうしようもねぇよなぁ・・・」
「あぁ。ちょっと無理だな」

空を飛んでいる冥府の門(タルタロス)の本部。そこには他の妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーもいるから、彼らと合流するためにも戻りたいところだけど、その手段があいにく俺たちにはない。

「僕がみんなを連れていこっか~?」

手を挙げありがたい提案をしてくれるセシリー。だけど・・・

「いや、いい」

その提案をここは断っておく。セシリーが運べるのは一人ずつ。それに、普段はシリルなんて軽くて小さい奴を持ってるから、俺やラクサスみたいな成人男性を持てるのか疑問があるし、何となく怖い。それに、

「なんか疲れて、もう動きたくねぇわ」
「俺もだ」

ドサッと音を立ててその場に倒れ込む俺とラクサス。目が見えないせいで色々と神経を尖らせていた俺と、魔障粒子に犯されていたことで体力を奪われていたラクサス。そんな状態で暴走したシリルを止めたから、きついの何のって・・・

「二人とも大丈夫~!?」

突然倒れた俺たちを見てあたふたとしているセシリー。こいつも疲れてそうなものだが、意外と平気そうで安心した。

「悪ぃ、少し休ませてくれ」
「う・・・うん!!わかったよ~!!」

体力の限界を感じ取ってくれたセシリーは、見張りのつもりなのだろうか、周囲をキョロキョロと見回し始める。その姿に和んだ俺とラクサスは、意識が遠退いていき、しばしの眠りへとついた。
























ウェンディside

「ん・・・んん・・・」

オレンジ色の光が目に入り、ゆっくりと目を開く。そんな私の視界に入ったのは、大きな岩の天井。

「ここは!?」

その光景に見覚えのない私は飛び起きると、周囲を見回して現在地を把握しようと頭を回転させます。

「ウェンディ!!」
「シャルル!!」

そんな私に声をかけてくれたのは、頭に包帯を巻いているシャルルでした。その彼女の姿を見て、私はあることを思い出しました。

「あれ?私たち・・・爆発して・・・」

フェイスの起動を阻止するために、自律崩壊魔法陣を用いてフェイスを爆発させた私たち。それなのに、なんでこんなところにいるの?

「フェイスは!?フェイスはどうなったの!?」
「君たちのおかげで、起動は停止した」
「ドランバルトさん!?」

何がわからずにいる私にそう告げたのは、岩の壁に背を持たれかけているドランバルトさんでした。なんで彼がここにいるの?

「爆発の瞬間に、私たちを助けてくれたらしいの」
「ギリギリだったけどな」

なぜ私たちが無事なのかを教えてくれるシャルルと、ホッと一安心といったように息をつくドランバルトさん。

「じゃあ・・・」

それを聞いた私は、込み上げてくるものがありました。嬉しさに震えながら、シャルルに視線を向けます。

「シャルル・・・」
「ウェンディ・・・」

私と同じように、目に涙を浮かべているシャルル。そんな彼女を抱き締めると、シャルルも同じようにそれを返してくれました。

「私たち、生きてるんだね!!」
「ええ、そうよ!!」

一時は死を覚悟していた私たち。だけど、ドランバルトさんのおかげて生還できたことに嬉しくて、思わず声を出して泣いてしまいました。

「本当に・・・生きてるんだね・・・」
「えぇ」

たぶん、私とシャルルの頭の中には、同じ人たちの顔が浮かんでいるんじゃないかな?
幼い頃からずっと一緒で、以前所属していた化猫の宿(ケットシェルター)の時からのお友だちであるシリルとセシリー。大好きな彼らとまた歩んでいけると思うと、それだけで笑顔になってしまいます。

「ありがとうございます、ドランバルトさん」
「いや・・・」

私たちを助けてくれた彼にお礼を言うと、どうしたのでしょうか?ドランバルトさんはポリポリと頭をかきます。

「その・・・君たちには伝えにくいんだけど・・・
まだ、何も終わってないんだ」
「「え・・・?」」

彼が何を言っているのかわからず、次に続く言葉を待つ私とシャルル。彼はそんな私たちを見て、空を指さします。

「実際に見てもらった方がいいと思う。その方が、わかりやすいから」

言われるがままにシャルルの魔法(エーラ)で上空から大陸を見下ろせる位置まで飛び上がる私たち。その光景を見て、唖然としました。

「そんな・・・」

大陸の至るところから伸びている真っ白な塔のような形をした兵器、フェイス。それはどこまでも続いていて、地平線の先まであるように見えました。

「こんなのって・・・」

頑張ってフェイスを破壊したと思っていた私たち。だけど実際には、フェイスは一つではなく、大量に存在していたということなんですね・・・

「現在確認されているフェイスは、約二千機。これが大陸全域、魔導パルス爆弾の正体だったんだ」

評議院の方たちでさえ知らないことだらけだったフェイス。それは、予想よりも遥かに上を行っていたものでした。






















地上に降りてきた私とシャルル。そこからでも、地面から姿を見せるフェイスをいくつも視認することができます。

「私たち・・・あんなに頑張って一つを壊したのに・・・こんなにたくさん・・・」

低いトーンでそう言ったのは、私の大切な友達であるエクシード。彼女は、この絶望的な光景に、どうすればいいのかわからないといったような顔をしています。

「もう終わ・・・」
「言わないでシャルル」

諦めようとしていた彼女の言葉を、前に立つ私が遮ります。

「もう絶望なんかしたくない。私はシャルルと・・・シリルとセシリーと・・・みんなと生きていくって決めたんだよ」

私は右手に魔力を纏わせると、さっきの悪魔との戦いで切れてしまった髪の毛を、バッサリと切り落とします。

「ウェンディ!!」

私がそんな行動を取ったことで、シャルルとドランバルトさんは驚愕の表情を浮かべています。でも、私は気にすることなく、彼女たちの方を向き直りました。

「弱音も吐かないし、涙も流さない。みんな戦ってる。だから私も諦めないよ」
「うん!!」

シリルもナツさんもきっとこの状況を何とかするために戦ってるはず。私たちだけ諦めるなんて、絶対しない!!

「でも・・・これだけの数のフェイス、一体どうしたら・・・」

シャルルのもっともな疑問。私は今ここから見える景色を見て、一つの解決策を思い付きました。

「ドランバルトさん。瞬間移動(ダイレクトライン)でマグノリアまでどのくらいかかりますか?」
「ここからだと中継地点をいくつもはさむからな・・・急いで五分くらいか」

私たちがいるのはドクゼリ渓谷の近く。そこから皆さんが戦っているマグノリアまでの移動時間を聞くと、ドランバルトさんがそう答えてくれます。

「みんなと合流するのね」
「うん。でも、それだけじゃない」

シャルルの問いにうなずくけど、目的はそれ一つだけじゃありません。もっと、大きな目的があります。

「ウォーレンさんの魔法で大陸中のギルドに呼び掛けるの。
大陸中のギルドの力があればろフェイスをどうにかできるかもしれない」

私たちだけじゃ難しくても、この大陸全ての魔導士たちが力を合わせれば、どんなことだってできるはず。
私の考えを聞いたシャルルとドランバルトさんは、静かにうなずきました。

「急ごう」
「はい!!」

あとどのくらい時間があるのかもわからない。今はとにかく、急いでウォーレンさんのところに行かないと。
そう思った私たち三人は、冥府の門(タルタロス)との戦いを繰り広げているマグノリアへと大急ぎで戻っていきました。











 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
予想を遥かに上回る勢いで話を省略している人←私です。
ルーシィとグレイのところは、以前からこんな感じになると思っていたので仕方ないか。
次はウェンディとシリルが合流する予定です。 
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