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最初はお菓子

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6部分:第六章


第六章

「これからもね」
「うん、それじゃあ」
 こうしてだった。恭子にも彼氏ができた。このことは瞬く間に学校中に広まった。そしてだ。
 女組はだ。この日も恭子の作ったお菓子、今回はクッキーを食べながらだ。彼女に言うのだった。クッキーと紅茶やコーヒーを楽しみながらだ。
「まさかこうなるなんてね」
「そうよね。予想外」
「全くのね」
 皆口々に恭子に対して言う。
「彼氏ゲットなんてね」
「それもこの展開ってないよね」
「ちょっと。いきなりっていうか」
「しかもいいっていうのね」
「それで」
「ううん、確かにね」
 恭子もだ。ここで話すのだった。
「まさか恭子に告白してくる人がいるなんて思わなかったけれど」
「それで何でいいって言ったの?」
「告白してきたの向こうからでしょ?」
「彼の方からよね」
「うん、健一郎君の方からね」 
 もうだ。彼を名前で呼んでいた。仲はそこまで進んでいた。
「けれどね」
「けれど?」
「けれどっていうと?」
「普通に告白してくれても。こうはならなかったかも」
 ここでだ。恭子はこう言うのだった。
「付き合わなかったかも知れないわね」
「なかったの?それは」
「そのまま告白したら」
「なかったっていうの」
「うん、あれなの」
 恭子もクッキーを食べている。そのうえで周りに話すのだった。
「お菓子。一緒に食べたいっていうから」
「あんたの作ったそのお菓子を?」
「それをなの」
「そう、それでなの」
 こう周りに話すのだった。
「彼の告白ね。だから嬉しかったの」
「ここでもお菓子なの」
「彼がお菓子食べたいからいってね」
「何かね、それって」
「だって。恭子お菓子好きだから」
 それでだというのである。
「お菓子が生きがいだから。それを一緒に食べてくれる人ならね」
「それでいいの?」
「あんたのお菓子を一緒に食べてくれるから」
「それでいいっていうの」
「お菓子には心入れてるから」
 恭子の心、そうした意味での言葉だった。
「だからなの。それを食べてくれるから」
「成程ね。そういうことだったの」
「あんたの心を受け入れてくれるから」
「だからいいのね」
「そうよ。だから恭子健一郎君が好き」
 ここでだ。にこりと笑って話した恭子だった。
「お菓子よりもね」
「そう来るのね」
「最後は」
 女組は彼女の作ったクッキーを食べながらやれやれといった顔になる。結局彼女も女の子だった。お菓子だけでなくだ。彼も好きなのである。


最初はお菓子   完


                 2011・4・1
 
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