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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第23話

~数年前~



「ちょ、ちょっと待ってよ………!しばらく旅に出るって………そんないきなり。一体どこに行くつもりなのさ?」

幼少のロイドは驚きの表情で家を出ようとする青年に尋ね

「レミフェリア公国だ。なァに、しばらくと言っても2ヵ月くらいで済むだろう。場合によっちゃ、半月足らずで帰ってくるかもしれん。」

尋ねられた青年は何でもない風に答えた。

「そ、それはわかったけど……兄ちゃん、一応は警察の捜査官なんだろう?そんな長い間、旅行なんかしてもいいのかよ?」

「おっ、なんだなんだ~。お兄様が留守にするのがそんな寂しいか~?もう、ロイドきゅんったら寂しがり屋さんなんだから~っ。」

ロイドに尋ねられた青年はからかうような口調でロイドに言った。

「………2ヵ月と言わずに2年くらい旅行してればぁ?僕、そのくらい一人で平気だし。」

青年にからかわれたロイドはジト目で青年を見つめて言った。

「ウソウソ、調子に乗りました。実はな………これには深い訳があるんだよ。トップシークレットってやつだよ。」

「うさんくさいなぁ。ちなみに聞くけど、どんなトップシークレットなのさ?」

「おう、よくぞ聞いてくれた。実はな………とびっきり可愛い女の子をエスコートしながらの旅なんだ。」

「へ………」

青年の話を聞いたロイドは呆けて青年を見つめた後

「その子と一緒に、麗しの北国、レミフェリアへ逃避行ってわけだ。どうだどうだ、うらやましかろう?」

「……………………」

蔑むような視線で青年を見つめた。

「とまあ、冗談はこのくらいにして。俺がいない間、お前の夕食はお隣さんにお願いしといたからな。朝昼くらいは自分で何とかしろよ?」

「いや、食事くらい自分で何とかできるけど………――――じゃなくて!可愛い女の子って……いったいどういうつもりだよ!?そんなこと、セシル姉に知られたらどうするつもりさ!?」

「へっ………なんでそこにセシルの名前が出てくるんだ?」

「なんでって………ああもう!(セシル姉も何だってこんな鈍感な馬鹿兄貴をっ………)」

青年に尋ねられたロイドは叫んだ後、青年を睨んでいたが

「???ていうかセシルにはもうとっくに話してるんだが…………」

「!?」

青年の話を聞き、信じられない表情をした。

「んー、なんか妙な誤解があるみたいだな。旅って言っても一応、警察の出張だぞ?それにその子は………まだ………歳なんだから………」



~朝・特務支援課~



「…………ん…………」

数年前の出来事を夢に見ていたロイドは目を覚ましてベッドから起き上がった。

「………夢、か………懐かしいな………あれはいつ頃だったっけ………確かあの後帰って来た兄貴がルファ姉を連れ帰って来た時だったから………俺が12………いや、13くらいだったか?そういえば確かその後で――――」

夢の内容を考え込んでいると机の上に置いてあるエニグマが鳴りはじめ、ロイドは考え込むのを止め、エニグマを手に取って通信を始めた。

「はい、ロイドです。」

「おう、起きてたか?調書ってのはもうまとまってるか?」

「あ、はい。昨日の調査に関しては一通りまとまっている状態です。」

「結構だ。とっとと支度して全員で課長室まで来い。お前達に客人だ。」

「!!」

セルゲイの話を聞いたロイドは表情を真剣に変えた後着替えて仲間達と共に課長室に向かった。



「―――失礼します。」

ロイド達が課長室に入るとそこにはセルゲイとソーニャ、そして副局長室でもいた女性の警備隊員がいた。

「ソーニャ副司令………」

「やっぱ予想通りか。」

「ふふ、おはよう。」

「お疲れ様です。」

「おはようございます。やはりお客様というのは副司令だったんですね。」

ソーニャ達に挨拶をされたエリィは頭を軽く下げた後、納得した様子でソーニャを見つめた。

「ああ、丁度さっきこっちを訪ねて来たんだ。お前達の調査について聞いておきたいらしい。」

「それは構いませんが………ずいぶん急な話ですね?」

「まだ鉱山町方面の調査が終わっていませんが………」

セルゲイの話を聞いたロイドとエリィは不思議そうな表情でソーニャを見つめた。

「悪いわね、急かすつもりではなかったんだけど………こちらの状況が少し変わってしまったのよ。」

「状況が変わった………?」

「実は昨日まで、ウチの方で鉱山町方面の警備・巡回を行っていたんだけど………今朝を持って完全に引き上げることになったのよ。」

「警備を引き上げるって………」

「確か鉱山町に魔獣が現れたのは3日前のことですよね………?」

(………何かあるわね………)

ソーニャの説明を聞いたロイドは表情を厳しくし、ティオは確認し、ルファディエルは考え込んでいた。

「ええ、こちらとしてもせめて1週間くらいは警備を続けたかったんだけど………警備隊司令からのお達しでね。これ以上、無駄なことをするなって。」

「む、無駄なことって………」

「チッ………あの腰巾着オヤジか。」

(あー、いたねぇ。あんたをクビにした情けないあの男。ここでもあたいらの邪魔をするとは………いい加減、殺っちまわないか?あたいなら証拠も残さず殺れるよ?)

ソーニャの話を聞いたエリィは表情を厳しくし、ランディは舌打ちをし、エルンストは面白くなさそうな表情をした後、好戦的な笑みを浮かべ

(気持ちはわかるが、止めとけ………)

ランディは疲れた表情でエルンストの念話に答えた。

「ランディ、知ってるのか?」

一方ランディの様子に気付いたロイドは仲間達と共に見つめて尋ねた。

「俺がベルガード門に詰めてた時、何度かお目にかかってるからな。一応、警備隊のトップだがエレボニア派議員のお偉いさんと深い繋がりがあるらしくてな。ロクに仕事もしないで接待ばかりやってたみたいだぜ。」

「噂には聞いていたけど………やっぱりそんな人だったのね。」

(………なるほど。そういう事ね………)

ランディの説明を聞いたエリィは複雑そうな表情をし、ルファディエルは考え込んだ後納得した様子で頷き

「ですが、魔獣の被害を放っておくというのはさすがに問題があるのでは………?」

ティオは疑問に思った事を口にした。

「ええ………その通りよ。局地的な魔獣の被害なら最悪、遊撃士協会に任せるのもアリだったけれど………今回は被害の範囲が広すぎる。警備隊としてもこれ以上は看過できるわけがないわ。」

「―――問題は、3週間に渡って魔獣の正体が突き止められなかった事………そして、広範囲とは言え、実際の被害状況がそれほど深刻ではなかったこと………それを理由に、司令閣下からストップがかかったんです。」

ティオの疑問にソーニャと女性隊員はそれぞれ答えた。

「そうだったのか………」

2人の説明を聞いたロイドは重々しく頷いた。」

「ああ、そうだ。紹介していなかったわね。―――彼女はノエル曹長。まだ若いけど、戦闘能力、運転技術共に優れていてね。私の護衛やサポートをしてもらっているわ。」

「ノエル・シーカーです。改めて、よろしくお願いします。」

ソーニャの説明に続くように女性隊員―――ノエルは敬礼をして自己紹介をした。

「こちらこそ………よろしくお願いします。あれ………シーカーって………」

「ひょっとして、警察本部の受付をしているフランさんの?」

「ええ、姉になります。いつも妹がお世話になっているみたいですね?」

ロイドとエリィに尋ねられたノエルは頷いた後、口元に笑みを浮かべた。

「はは、こちらこそ妹さんには世話になりっぱなしですよ。」

「久しぶりだな、ノエル。警備隊の中でも黒歴史のあの件――――メンフィルのお姫さん達に喧嘩を売った時の戦い以来だな?」

「ア、アハハ………ランディ先輩………それは言わないで下さいよ………未だにあの事件に関わった人達は後悔しているんですから………」

ランディの言葉を聞いたノエルは苦笑した後、疲れた表情で溜息を吐いた。

「気持ちはわかるぜ………あれも全てあの腰巾着オヤジのせいなのに、あの野郎は何のお咎めもなしだったからな………メンフィルのお姫さんが優しいお蔭で俺達も助かったが、あの野郎には罰を与えて欲しかったぜ。」

「それは同感です………もしかしたらその事が原因で司令閣下が辞職せざるを得ない状況になって、ソーニャ副司令が司令になったのかもしれないのに………」

そして不愉快そうな表情で語るランディの話にノエルは頷いたが

「2人とも。不謹慎な話はそこまでにしておきなさい。」

「へいへい。」

「ハッ!」

ソーニャの注意にそれぞれ頷いて話を止めた。

「現状は伝えた通り………ちょっとマズイ状況なのよ。打開できる要素があるとしたらあなた達の調査結果くらい………正直、ワラにもすがる思いで様子を確かめに来たってわけ。」

「なるほど………」

「では、調書の提出と合わせて一通り説明させていただきます。」

そしてロイド達は調書をソーニャ達に渡して、説明をした。



「…………………………」

「ふむ………なるほどな。どうだ、ソーニャ。ウチの小僧どもの手際は?」

調書を読み、説明を聞いたソーニャは驚きの表情で黙り込み、セルゲイは頷いた後ソーニャに視線を向けて尋ねた。

「……期待以上ね。『神狼』の言い伝えに病院屋上に現れたルート………どうかしら、ノエル?」

「………正直、驚きました。やはり本職の捜査官は目の付け所が違いますね。」

「目の付け所というより発想法の違いでしょうね。――――うん、決めたわ。あなた達には引き続き、鉱山町方面の調査をお願いします。この調子だと、思いも寄らぬ新事実が見えてくるかもしれない。」

ノエルと話し合った後ソーニャはロイド達を見つめて言った。

「ええ、こちらはそのつもりでしたけど………」

「例の司令殿の命令を無視することにならないッスか?」

ソーニャの言葉を聞いたロイドは戸惑った様子で頷き、ランディは目を細めて尋ねた。

「ふふ、あなた達への要請まで取り下げろとは言われなかったもの。魔獣の手掛かりが判明次第、すぐに行動に移れるようにする――――それなら問題ないでしょう?」

「なるほどね。」

「ふふ、さすがにやり手でいらっりゃいますね。」

そしてソーニャの説明を聞いたランディは納得した様子で頷き、エリィは感心した様子でソーニャを見つめた。

「………それにどうも、魔獣達に我々の動きを感づかれているらしいんです。大部隊で捜索するよりも少人数で行動したほうが相手も隙を見せるかもしれない………それを期待したいところですね。」

「なるほど………わかりました。とにかくこれから、鉱山町に足を運ぶつもりです。」

「ええ、お願いするわね。何かわかったらタングラム門の副司令部に連絡してちょうだい。―――そうだ。貴女の方は彼らの報告以外で何かわかった事はあるかしら?ルファディエル警部。」

ロイドの言葉に頷いたソーニャはロイド達に伝えた後、ルファディエルに視線を向けた。



「――――ええ。今の話で今回の事件に隠された謎………全てわかったわ。」

「へっ………!?」

「もう、わかったんですか………!?」

「ほう………」

視線を向けられたルファディエルが答えた言葉を聞いたロイドとエリィ、セルゲイは驚きの表情でルファディエルを見つめ

「う、嘘………?」

「………信じられません………」

「さすがッスね!」

ノエルとティオは信じられない表情でルファディエルを見つめ、ランディは嬉しそうな表情でルファディエルを見つめ

「フフ、噂通りの方ね………是非教えて貰ってもいいかしら?」

ソーニャは感心した後、尋ねたが

「………………申し訳ないけど全ては無理ね。」

ルファディエルは予想外な事を答えた。

「ル、ルファ姉!?」

「ど、どうしてですか………!?」

ルファディエルの答えを聞いたロイドとノエルは驚いてルファディエルを見つめ

「………理由を尋ねてもいいかしら?」

ソーニャは真剣な表情で尋ねた。

「理由は二つあるわ。一つは今、ここで私の推理を説明するとロイド達が成長しない。旧市街の件のような色々と不可解な謎があるこの事件………警察のイメージアップに貢献しているとはいえ、未だに冷遇されているこの支援課では中々関われない事件よ。」

(かかかっ!全てはロイドの為か!)

ルファディエルの説明を聞いたギレゼルは笑い

「ル、ルファ姉………」

「なるほどな………」

ロイドは驚きの表情で、セルゲイは納得した様子でロイド達を見回した後ルファディエルを見つめ

「もう一つの理由は?」

ソーニャは続きを促した。

「もう一つの理由は貴女達に今動かれた場合、犯人を現行犯逮捕できないわ。」

「えっ!?」

「犯人って事は………」

「まさか人の手によるものなのか!?」

そしてルファディエルが説明したもう一つの理由を聞いたエリィとランディは驚き、ロイドは真剣な表情で言った。



「――――ええ。それも旧市街の件同様、厄介な相手よ。」

「………旧市街の件同様という事は………」

「まさかルバーチェか!?」

ルファディエルの話を聞いたエリィは真剣な表情で呟き、ロイドは表情を厳しくして尋ね

「正解。さすがにわかりやすすぎるヒントだったわね。」

ロイドの答えを聞いたルファディエルは頷いた後、苦笑していた。

「フム………現時点での情報で連中が犯人だと推測した根拠はなんだ?」

一方セルゲイは考え込んだ後尋ねた。

「それを答える前にロイド。貴方達に確認するわ。警察がルバーチェに手を出せない理由は何かしら?そして警備隊が何故、満足な結果を出していないという理由だけで鉱山町から引き揚げる事になったのかしら?」

尋ねられたルファディエルはロイド達を試すような視線で見回しながら尋ねた。

「ルバーチェに警察が手を出せない理由は彼らが有力者と繋がっている事が最大の理由ですが…………あ!」

「………そういう事か!」

「………確かにそれが理由なら今回の事件の不可解の部分がいくつか繋がりますね………」

尋ねられたエリィは不思議そうな表情で答えた後ある事に気付き、ランディとティオは納得した様子で呟き

「ルバーチェが何らかの理由や方法で狼型の魔獣を操り、その実験も十分になって、これ以上騒ぎを起こす気もないからエレボニア派議員に連絡して、警備隊を引き揚げさせる指示を警備隊の司令に出したのか!」

「エレボニア派議員と深い繋がりがあるあの腰巾着野郎なら簡単だわな。」

ロイドは詳細な答えを言い、ランディはロイドの説明を補足した。

「なるほどな……………」

「そ、そんな………でも、その推測なら魔獣が私達の動きを察知している事にも納得できますね………ルバーチェが狼型の魔獣を操っているのなら私達の動きも筒抜けでしょうし………」

一方ロイド達の話を聞いたセルゲイは納得した様子で頷き、ノエルは驚いた後複雑そうな表情で呟き

「………なるほど、彼らか。………フフ、それにしても噂通りとてつもない推理力を持っている方ね。よくこれほどの実力を持つ捜査官を新人だらけの特務支援課に所属させられたわね?今の推理を聞いて思ったけど、どう考えてもエリートと名高い一課でも彼女程の実力はないんじゃないの?一体どんな手を使ったのかしら?」

ソーニャは頷いた後口元に笑みを浮かべてセルゲイに視線を向け

「クク………確かに一課に所属させる話も上がったが、奴にその話を持っていった所で断られる事は最初からわかっていたからな。だったら、契約主であるロイドと同じ課なら奴も警察にその知恵や力を発揮してくれるだろう?」

視線を向けられたセルゲイは不敵に笑った後答えた。

「フフ………それほどまでに警察は彼女を取り込みたかったのね………まあ、こうして彼女の実力の一端がわかった今ならその気持ちはわかるわ。」

セルゲイの話を聞いたソーニャは口元に笑みを浮かべた後頷いた。

「……本来ならヒントもなしに貴方達に答えに辿りついて欲しかったのだけどね………まあ、事件の依頼者である副司令の手前もあったし、それに今度はルバーチェを直接捕える策の為には彼女達の力が必要不可欠だしね。………せめてルバーチェが魔獣を操る理由に関しては貴方達だけで辿り着きなさいよ?」

「うん、ここまで教えてもらったんだ………後は俺達で辿り着いて見せるよ…………って!ルバーチェを逮捕!?」

「そんな事ができるのですか?」

ルファディエルに言われたロイドは頷いた後、驚き、エリィは驚きの表情で尋ね

「ええ、魔獣を操っているのが彼らだという証拠をおさえたら、いくら彼らでも言い逃れできないでしょう?」

「それはそうだけど………」

「………何か策があるのね?先程のロイド捜査官の推理だともう、騒ぎは起きないみたいだったけど………」

ルファディエルの答えを聞いたロイドは戸惑った様子で頷き、ソーニャは真剣な表情で尋ねた。



「ええ。今までの襲撃された場所を考えると彼らにとって利益になる場所もあるし、いくら彼らでも現行犯なら言い逃れはできないだろうし。彼らが魔獣を操っているという証拠をおさえたら無力化、そして魔獣はそうね……………証拠の為に一匹だけ残しておいて、後は全て滅しておきましょうか。どうせ現行犯で抑えたら証拠を隠滅する為に魔獣と一緒に私達を襲うでしょうし、その時の戦闘の最中に一匹だけ残して後は滅しておきましょう。」

「あ、相変わらず容赦がないですね………」

(それがルファディエル様だからな………)

「ルバーチェが悔しがる所が目に浮かびますね………」

「ああ。魔獣をしつけるなんてかなりの時間と金や手間がかかるしな………意趣返しにはちょうどいいぜ。それにしてもさすがッス!いや~、こんな美人で頼もしい姐さんと一緒の職場になれて幸せだな~♪あの腰巾着の元に居た時と比べたら、天と地の差ッスよ!」

ルファディエルの説明を聞いたエリィは冷や汗をかきながら苦笑し、メヒーシャは静かな様子で呟き、ティオは静かな笑みを浮かべ、ランディはティオの言葉に頷いた後嬉しそうな表情でルファディエルを見つめ

「ハハ………相変わらず凄いな、ルファ姉は………」

ロイドは苦笑しながらルファディエルを見つめた。

「………それで私達はどうすればいいのかしら?その様子だと次に襲撃される場所やいつ襲撃されるか、そして何故そこを襲撃する理由がわかっているのではなくて?」

一方ソーニャは真剣な表情でルファディエルを見つめて尋ねた

「ロイド。ここまでヒントがあるのだから、貴方なら次の襲撃場所、時期、理由がわかるはずよ。推理してみなさい。上司として命令です。」

尋ねられたルファディエルはロイドに視線を向けて言った。

「………………………襲撃場所は鉱山町マインツ。時期は………恐らく今夜か数日以内の夜かな。」

視線を向けられたロイドは考え込んだ後、真剣な表情で答えた。

「場所がマインツで、時期が近い理由と襲撃する理由は?」

「……マインツを含めた襲撃された3ヶ所を考えるとルバーチェにとって一番利益があるのは七耀石が発掘されているマインツだからね。大方魔獣に襲撃させて、その事に危機感を抱いている町長に町を守る代わりに七耀石の独占取引を迫る可能性が一番高い。時期が近い理由は今日、警備隊がマインツから引き揚げる事になったから。」

「ええ、正解。成長したわね。」

推理をした後のロイドに尋ねられたルファディエルは微笑みながら頷き

「ハハ………ここまでヒントをもらったら、さすがにわかるよ。」

ロイドは苦笑しながら答えた。

「なるほど………魔獣の実験と共に小遣い稼ぎや魔獣にかかった金を取り戻そうってハラか………!」

ロイドの推測を聞いたランディは納得した様子で頷いた。

「………それで話を戻すけど私達はどう動けばいい?ルファディエル警部。」

一方ソーニャは真剣な表情でルファディエルに尋ねた。



「そうね…………副司令やそこのノエル曹長でも構わないから、一部隊の隊員達と共に今から3日程休暇を取って頂けないかしら?」

「休暇………ですか?それも一部隊の隊員達と共に………」

ルファディエルの話を聞いたノエルは不思議そうな表情をし

「なるほどね………緊急指令を利用するのね?休暇を取っている私達が現場に近い場所にいた場合、緊急指令の規則に則って休暇中の者達も動く義務があるし。」

ソーニャは納得した様子で頷いた後口元に笑みを浮かべてルファディエルを見つめた。

「あ………!」

「そ、そこまで考えているなんて………」

「クク………さすがだな。」

ソーニャの話しを聞いたノエルは声を上げ、エリィは驚きの表情でルファディエルを見つめ、セルゲイは不敵に笑いながらルファディエルを見つめた。

「ちなみに3日なのは何故ですか?」

一方ある事が気になったティオはルファディエルに尋ね

「………長引かせていたら襲撃があった事に不安に感じている町長が遊撃士協会に相談する恐れがある………そうだろう?」

「ええ、そうよ。ちなみに私の予想では今日何らかの動きがあると睨んでいるわ。警備隊を引き揚げさせた直後が一番狙いどころだもの。それに万が一私の予想が外れていて襲撃がなくても、3日ぐらいなら僅かの数の警備隊員の休暇程度、怪しまれないわ。」

ロイドがルファディエルの代わりに答えた後ルファディエルに確認し、ルファディエルは笑顔で頷いた後、説明を補足した。

「―――ノエル。すぐに隊員達に理由を内密に説明して一部の者達と共に休暇を取るわよ。」

「ハッ!」

ロイドとルファディエルの話を聞いたソーニャはノエルに指示をした後、セルゲイに視線を向けた。

「それじゃ、セルゲイ。例の話はまだ後日にでも。」

「ああ、了解した。あんまり無理すんじゃねえぞ?」

「ふふ、そちらこそ。ノエル、失礼しましょう。―――それじゃ、私とノエル、どちらでもいいから”プライベート”としての連絡を待っているわ。遅くとも午後休は取れるから、昼以降ならいつでも出れるわ。」

セルゲイの言葉に微笑みながら頷いたソーニャはノエルを促した後、ロイド達に視線を向け

「はいっ。それでは失礼します!」

ノエルと共に敬礼をした後、課長室を出て行った。

「クク………それにしても相変わらず恐ろしい奴だな。ルバーチェの動きを全て把握している事には正直、驚いたぜ?」

ソーニャ達が部屋を出て行った後セルゲイは不敵な笑みを浮かべながらルファディエルに視線を向け

「フフ………長年軍の参謀を務めていたのだから、この程度の動きは把握して当然よ。」

視線を向けられたルファディエルは口元に笑みを浮かべて答えた。

「そういえば、課長と副司令ってお知り合いだったんですか?」

「何気に名前で呼び合ってましたけど………」

「そういや俺をここに推薦してくれたのも副司令だったんだよな。一体どういう関係なんッスか?」

一方ある事が気になっていたランディはロイドとティオと共にセルゲイに尋ね

「ま、昔馴染みってやつだ。ふ~っ………それよりもお前ら、昨日は大変だったらしいな。今日鉱山町に行くだろうがまた歩いて行くつもりかよ?」

尋ねられたセルゲイは答えた後煙草に火を付けて一服し、ロイド達に尋ねた。

「いや、昨日はその色々と偶然が重なって………」

「さすがに今日は、バスで行こうと思っていますけど………」

「なんだ、そうなのか?クク、てっきり遊撃士あたりを見習ってんのかと思ったぜ。」

ロイドとエリィの話を聞いたセルゲイは意外そうな表情をした後、口元に笑みを浮かべた。

「遊撃士を見習う………?」

「どういう事ッスか?」

セルゲイの言葉を聞いたティオは首を傾げ、ランディは尋ねた。



「連中の習慣らしいが………まず手始めに、自分の足だけで周辺地域を一通り回ってみるらしい。スタミナも付くし、魔獣との実戦経験も積めるし、何より土地勘が得られる………一石三鳥って理屈らしいな。」

「自分の足だけで周辺地域を………」

「なるほど………連中、そんな事をしてんのか。」

「もしかして昨日会った、エステルさん達も……」

「………さっそく徒歩で一通り回るつもりだったのかもしれないわね。」

「クク………その3人だが………どうやら大した経歴らしいぜ。エステル・ブライトとミント・ブライトはあのメンフィルの貴族であると同時に私兵を抱える”ブレイサーロード”と”黄金の百合”で、さらにヨシュア・ブライトを含めたあの3人はなんでも去年起きたリベールの異変を解決するのにかなりの貢献をしたって話だ。」

(なるほど……只者ではないと思っていたけど、彼女達は”英雄の器”を持つ者達のようね………)

セルゲイの話を聞いたルファディエルは考え込み

「リベールの異変って………!」

「あの、王国中の導力が動かなくなったっていう事件ですね。………(そしてその異変のお蔭でわたしとエステルさん達が”影の国”で出会う切っ掛けになったんですよね………)」

「おいおい、マジかよ…………?」

「エステルさん達の事はある程度知っていましたけど………まさかそれほどの活躍をしているなんて………彼女達が相当の実力者なのも頷けますね。」

ロイドは驚き、ティオは静かな表情で呟き、ランディは目を細め、エリィは疲れた表情で答えた。

「さらにこれは最近入った情報なんだが………あの3人のサポートで付いている女―――フェミリンスって奴だが戦闘能力を確かめる為にアリオス・マクレインが直々に相手したとの事だが………その時にあのアリオス・マクレインを軽くあしらったとの事だ。」

「ええっ!?」

「マジかよ!?確かに他の3人と比べて、明らかに実力が違う事を感じていたが………」

「あの”風の剣聖”の遥か上だなんて………(”フェミリンス”………ま、まさかね。)」

「(まあ、当然かと。あの人は”神”なんですから。セリカさんやリウイ陛下のような”魔神”や”神”、”神格者”だらけの超人外メンバーに加えて多くの”闇夜の眷属”や数人の中位を冠する”天使”達、そしてわたしやエステルさん達全員で力を合わせて勝てたんですから………そんなとんでもない人にただの人間の身のアリオスさんが勝てるなんて、ありえません。)……………………」

そしてフェミリンスの戦闘能力を知ったロイドとランディは驚きの表情で叫び、エリィは心の中で冷や汗をかきながら信じられない表情をし、ティオはかつての”影の国”でのフェミリンスとの戦いを思い出して、納得した様子で黙り込んでいた。

「………というか、なんでそれほどの実力を持つ人が遊撃士にならずにエステル達のサポートをしているんだろう………?」

「さあな。それは本人に聞いてみないとわからん。………ま、このクロスベルじゃお前達より新米ではあるんだ。あっという間に追い抜かれて引き離されちまわないよう、せいぜい気張っておくんだな。今回の件も、長引かせたら間違いなくギルドが出張るだろう。」

ロイドの疑問に答えたセルゲイはロイド達を見回して忠告し

「………わかりました。幸い事件はもうすぐ解決可能ですから、速やかに解決できるよう動きます。」

セルゲイの忠告にロイドは仲間達を代表して頷いた。するとその時

「こんにちはー!」

元気そうな娘の声が聞こえ

「どなたかいらっしゃいませんか?」

続くように落ち着いた様子の娘が聞こえ

「特務支援課の分室はこちらでよろしいのでしょうか?」

さらに聞こえて来た2人の娘とは違う娘の声も聞こえて来た。

「?誰だろう………こんな朝から。」

「俺達を呼んでいたようだから………ひょっとしたらわざわざ俺達に依頼を持ってきた客じゃねえのか?」

声を聞いたロイドは首を傾げ、ランディは口元に笑みを浮かべ

「………そう言えば奴等が来るのは今日だったな。クク………丁度いいタイミングで来やがったな。」

「課長の知り合いですか?」

セルゲイは口元に笑みを浮かべて呟き、その様子を見たエリィは尋ね

「お前達、行くぞ。――――ご待望の短期間の増員が満を期して到着だ。」

セルゲイは答えた後ロイド達を促した。

「え…………?………!それってまさか………!あ、課長!」

セルゲイは驚いているロイド達を無視して部屋を出て、ロイド達も慌ててセルゲイの後を追った。



そしてロイド達が部屋を出ると入口に3人の娘達がいた…………


 
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