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魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者

作者:niko_25p
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第九話 対AMF

シャーリーとのBLWから数日が経ち、特に何が変わった訳でもなく厳しい訓練の日々が続いていた。

唯一変わった事は、シャーリーに対するアスカの態度くらいだ。

以前と違い、タメ口で接するようになったのだ。

シャーリー自身は特に気にする事も無かったし、アスカもタメ口とは言え、それ程失礼な口調をしている訳でもない。

対等に、友達と話すような感じで接しているのだ。

そんな中、いつの間にかうやむやになった腐女子設定にティアナは胸をなで下ろしていた。





魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。





outside

「ティアナ!フォローくれ!」

ガジェットのレーザーを集中的に喰らっているアスカがヘルプを求める。

「エリオ!回り込んで!スバルは逆からアスカのフォロー!」

状況を見てティアナが指示を飛ばした。

スバルのリボルバーシュートはAMFに阻まれるが、エリオの斬撃はソニックムーブキャンセルで加速しているのでガジェットに届く。

怯んだガジェットを、スバルが拳撃で撃墜する。

「アスカ、バリア張り直して前進!ガジェットを引きつけて!スバル、ウイングロードで上から攻撃!エリオは下がってブースト!」

矢継ぎ早にティアナが指示を出す。

前衛はその指示に従い、作戦を実行していた。

「ティアナのリーダーも、だいぶ様になってきましたね」

データを収集していたシャーリーがなのはに言う。

「うん。まだ焦ると周りが見えなくなる所もあるけど、判断力は凄くいいね。スバルとのコンビネーションは流石だけど、よくライトニングも使えてる」

「ただ、アスカの撃沈数が……」

「うーん、それが問題なんだよねぇ……あ、落ちた」

言っている側からアスカがガジェットのレーザーをまともに喰らって撃沈する。

「AMFの影響圏内に入るなって何回言ったら分かるの!」

アッサリと撃沈したアスカに、ティアナの怒声がぶつけられる。

「今のはフォローしろよ!完全に囲まれてただろが!」

その声に納得がいかないアスカがやり返す。

「突っ込みすぎでしょ!」

「死角にいるガジェットにまで気づけるかよ!そっちで見えてるんなら言えよ!」

今にも掴み掛かりそうな感じで怒鳴り合うアスカとティアナ。

「はーい、そこまでね。もう一回やるよ」

なのはが間に入り、その場を納める。

「「はい……」」

隊長に言われては、従わない訳にはいかない。

二人は意識を切り替える。最近ではよく見られる光景だ。

怒鳴り合っているとは言え、別にアスカとティアナな仲が険悪と言う訳ではない。

模擬戦をして問題点があればその場で言い合うようにしていたら、いつのまにかそうなっていたのだ。

スバルはティアナに絶対の信頼をもっているので衝突はしない。

エリオ、キャロに関して言えば、今やれる事を必死に追いかけている状態なので誰かに意見する余裕が無い。

だから、アスカが口出しをしている。

最終的に判断するのはリーダーでいいが、意志決定するまではリーダー以外の意見もあった方がいいとアスカは考え、ティアナもそれに賛成してくれてる。

チームとしては、理想に近い形だ。

「AMF、ヤッパ厄介だぜ」

頭を(さす)り、アスカが呟く。

「エリオ。次の模擬戦でオレがシールドを飛ばすから、AMFで消される瞬間に切りかかってみてくれ。魔力全開でな」

アスカは側にいたエリオに頼み込んだ。

「え?でもAMFで……?」

言い掛けたエリオを、待てと抑える。

「シールドが消される瞬間ならAMFに穴が開くかもしれないだろ?やってみないとわからないけど、やるだけの価値はあると思うんだ」

アスカは昇格試験のラスボス戦で使った、バリアを対消滅させる方法をAMFに使ってみようと思いついたのだ。

「そうですね、分かりました。やってみます!」

エリオが頷いてアスカの作戦に同意した。

『と言う訳だ。いいよな、ティアナ』

念話で確認をとり、再度模擬戦に挑むアスカ。

「トライシールド、射出!」

三角形のトライシールドを展開したアスカは、ガジェットに向けて撃ちだした。

AMFでシールドを受け止めるガジェット。

「……」

エリオは切り込むタイミングを測り……

「今だ!」

シールドが消える瞬間、ソニックムーブで突撃した!

バン!

弾けるような音がして、ガジェットが大きく仰け反る。

今までとは違い、かなり勢いよくガジェットは弾かれた。

「いけます!いけますよ、アスカさん!」

手応えを感じたエリオが嬉しそうに叫ぶ。

「スバル、エリオ、タイミング合わせろよ!ティアナ!」

「キャロ、スバルにブースト。エリオは敵を攪乱してアスカがバリアを当て易いようにして。アスカ、バリア3つ飛ばせる?」

「まっすぐにしか出せないからな!」

「OK!やるわよ!」

見つけた攻略法を元に、瞬時にティアナがプランを練る。





「AMFの攻略法、案外早く見つけましたね」

データを収集しているシャーリーが感心したように言う。

「……どうだろ?あの方法じゃタイミングがシビアだし、何よりアスカ君が無防備になるよ。目の付け所はいいけど、運用は難しいかな?」

なのはの言葉通り、3つのバリアを飛ばして無防備になった所にガジェットのレーザーがアスカを直撃する。

大きく弾き飛ばされるアスカ。そのまま大の字になる。

「クッソ~!いけると思ったんだけどな!」

ジタバタと駄々をこねるように手足をバタつかせてアスカが悔しがる。

「いいアイデアだと思ったけどね。タイミングを合わせるのが難しいわ」

側まで来てアスカを起こすティアナも残念そうに言う。それだけ、AMFが厄介と言う事だ。

「アスカ。前に言っていたAMFの原理。電気か何かで干渉出来そうって言ってたやつ、何か分かったの?」

ティアナの問いかけに、アスカは首を横に振った。

「ダメだ。あれから先に進めてない。シャーリーにも聞いたけど、本局技術部も似たようなもんらしい。悔しいよ」

せっかくの発見が、とアスカが愚痴る。

「だいたい、専門屋だって手こずってる難問を、現場の思いつきで何とかなるかよ」

はあ、とため息をつくアスカ。

「頼みの綱は、スバルのナックルとエリオの斬撃ね」

ティアナの呟きに、アスカそうだなと答える。

「動き回って攪乱して隙を突く。結局今までと同じ事をやるしかないんだ。まあ、スバルもエリオも魔力値が上がっているみたいだから、そのうちAMFを素で破れるんじゃないか?」

アスカの言うとおり、訓練初日と比べて、スバルとエリオの魔力値はグングン上がってきている。

それに伴い、攻撃力も上がってきているのだ。

「だからって、あの二人の才能だけを当てにはできないわ」

「?」

ティアナの声に、若干だが暗いものが混じっていたように感じるアスカ。

ジッとティアナの横顔を見る。

「どうかした?」

ティアナがアスカの視線に気づく。暗い感じはもうしない。

「いや……何でもない。さーて、模擬戦の再開といきますか!」

アスカは少しだけ大げさに伸びをして、ティアナから視線を逸らした。

(気のせいか?)

アスカは自分が感じたティアナの影をそう判断して気に掛けなかった。





その日の訓練が終了して、アスカは待機所で伸びていた。

「お、オレ……生きてるよ……な…?」

結局AMFの攻略ができず、今日も撃沈記録を更新してしまったアスカ。

「実戦だったら、50回は死んでたかもねー」

スバルが冗談めいて言う。

味方を守る為に盾となって攻撃を受けているので、一概に実力が無いとは言えないのだが……

「アスカさん、大丈夫ですか?」

エリオがフラつきながら、アスカにスポーツ飲料を渡してくれた。

「あんまり大丈夫じゃない。つーか、エリオも膝が笑ってるじゃん」

苦笑して、アスカは受け取ったスポーツ飲料を開ける。

そのまま口にしようとしたが……

「ん?」

何を思ったのか、スポーツ飲料のラベルを食い入るように見ている。

「電解質……?」

ポツリと呟く。そして、

「ああっ!そうか!これだ!」

バッと立ち上がってスポーツ飲料を飲み干す。

突然叫び声を上げたアスカに、全員がビクッと身体を振るわせた。

「ア、アスカさん?うわっ!」

「エリオ、これだよ、これ!」

ガバッとエリオを抱きしめると、グルグル回り出したアスカ。

ハイテンション、というよりおかしなテンションになっている。

「アスカ、アスカ!どうしちゃったの!」

いきなりバーサークしたアスカを心配そうに見るスバル。

だが、そんなスバルを余所に、アスカは訓練日誌を押しつけた。

「わりぃ!日誌頼むわ!ちょっとシャーリーの所に行ってくる!」

さっきまでヘバっていたのがウソのように、ダッシュで飛び出すアスカ。

シーン、と待機所が静まりかえる。

コホンと咳払いをしたティアナが、キャロに尋ねた。

「ねえ、キャロ。ヒーリングって、頭に効くの?」

「む、むりですぅ~」

ティアナの無茶振りに、キャロは力無く叫び声を上げた。





翌日、アスカはいち早く訓練場に出ていた。

シャーリーに頼み込んでガジェットを一機出してもらい、AMFを全開にしている。

「アイツ……本当に大丈夫なんでしょうね?」

その様子を、遠くから眺めているティアナ達。

「ものすごく笑ってますね」

キャロが不安そうに言う。

彼女の言うとおり、アスカは満面の笑みを浮かべてAMFを気持ちよさそうに浴びていた。

「うーん。AMF対策を思いついたのかな?」

心当たりがあるとすれば、スバルの言うようにAMF対策を思いついたと言う事だが、本人に確認をしないと分からない。

「さあね。エリオ、何か聞いてないの?」

「アスカさん、昨日は遅くに帰ってきてそのまま寝ちゃってましたから。今朝も起きたら居なくて、あの調子です」

ティアナに聞かれたエリオが、AMFの中で笑っているアスカを指す。

そこに、なのはがやってきた。

「おはよう、みん……」

言いかけて、AMFの中で笑っているアスカを見て絶句する、。

「「「「おはようございます!」」」」

アスカを除いた4人が敬礼して挨拶をした。

「あ……おはよう……えーと、アスカ君は大丈夫なのかな?」

遠くでガジェットの前で胡座をかき、超笑顔でAMFを浴びているアスカを見て、なのはが不安そうに訊ねる。

「「「「……」」」」

聞かれても答えようがない4人は、スッと目を逸らす。

「ア、アスカくーん!集まって!」

その空気に耐えきれなくなったなのはが、アスカを大声で呼んだ。

その声に反応したアスカがピョン、と跳ねるように立ち上がり、ダッシュで駆け寄ってくる。

「おはようございます!高町隊長!」

ドデカい声で敬礼するアスカ。ハイテンションである。

「あー、おはよう、アスカ君。えーと、少し疲れてるかな?」「いえ全然!」

「「「「……」」」」

一人ハイテンションのアスカに彼を気遣うなのは。その微妙な空気に耐えてるフォワード4人。

カオスな現場にシャーリーも登場する。

「シャーリー、昨日の細工は別にインチキじゃないよな?」

「何度も言わせないでよ、インチキじゃないけど意味もないじゃない」

ウンザリとした感じでシャーリーが軽くあしらう。

何度もと言う事は、昨日に散々言い合っているのだろう。

「よし!隊長、早速模擬戦やりましょう!」

「少しは落ち着け!」

暴走気味のアスカに、流石にティアナが抑えに入る。

「あ、あはは……」

なのはが圧倒されたように力なく笑う。

「昨日デバイスを改造してくれって言ってきたり、なのはさんに魔力弾を撃たせたりするし、挙げ句の果てにフェイトさんにも斬撃使わせるしで何考えてるのよ?」

シャーリーが昨日からおかしなテンションになっているアスカに呆れる。

(本当に何やってんのよ!)

口には出さないが、心の中でツッコムティアナ。

流石に、エリオもキャロも呆れている。

「ねえ、アスカ。もしかしてAMF対策を思いついたの?」

スバルが聞くと、アスカはドヤ顔で即答した。

「わからん!」「わかれ!」

耐えきれなくなったティアナが怒鳴り声を上げた。

「あー、じゃあ模擬戦やろうか」

毒気を抜かれたのか、なのははやや疲れた感じになっていた。





最初の模擬戦で、アスカは最前列に陣取っていた。

試したい事があると、ティアナを無理矢理説得したのだ。

「一回だけよ」

高いテンションのアスカについていけないティアナが、諦めた感じで承諾する。

それを確認したアスカが、スバルとエリオに話しかける。

「スバル、エリオ。オレの合図で魔法攻撃をガジェットに仕掛けてくれ。これでダメなら、AMF対策は諦める」

さっきまでのハイテンションと打って変わって、アスカは真剣な目で二人を見る。

スバルとエリオは顔を見合わせ、そして力強く頷いた。

「OK!」「分かりました!」

そして、模擬戦が始まった。





3機のガジェットがAMFを全開にしてアスカに迫る。

(AMFはあくまで魔力結合を阻害するだけで無効化する訳じゃない。なら、阻害する原因を叩く!)

アスカはAMF有効範囲に入る前にデバイスを振るった。

「これでどうだ!」

アスカの周囲に赤いフィールドエフェクトが出現する。

AMFの波紋状のエフェクトではなく、針のような放射線状のエフェクトだ。

「何をする気なの、アイツは?」

バックスの位置にいるティアナにも、エフェクトが確認できる。

AMFとアスカのエフェクトが触れ合った瞬間、彼は叫んだ。

「今だ!」

「ハアァァァ!」「いっけえぇぇぇぇぇ!」

アスカの合図を受けて、スバルとエリオが同時に動いた!

二人の魔法がガジェットに炸裂する!

「え?」「うそぉ!」

多少の抵抗感はあったが、二人は難なくガジェット3機を破壊した。

「シャーリー!」

「やってます!」

なのはが言うよりも早くシャーリーがデータを収集解析する。

そして、結果を出す。

「アスカのエフェクトがAMFに振れた状態です、見てください!」

シャーリーが出した映像を見て、なのはが目を見開く。

「これは!アスカ君のエフェクトがAMFを消している?」

「そ、そんなバカな!」

放射線状のエフェクトがAMFに触れた途端、そこから穴が広がるようにして効果が消えているのだ。

その後、放射線状エフェクトが文字通り放射線状に放たれ、AMFと混じり合って消えてしまったのだ。

「シャーリー、あのエフェクトって何だか分かる?」

なのはの問いに、シャーリーは信じられないといった感じで答える。

「+イオンです。恐らく魔力で加速して撃ちだしているでしょうけど、ただの+イオンなんです!」

一瞬、なのははシャーリーの言っている意味が理解できなかった。

「プ……+イオン?何で?」

「分かりません!ただ、昨日アスカがなのはさんとフェイトさんに魔法を使わせて何か計測した後、デバイスに+イオン発生器を取り付けてくれってきたんです!」

パニックになるシャーリー。

なのはも、現状を理解できずにいる。

当然、フォワード陣も眼前で起きた事に戸惑いを隠せない……と思ったら、

「凄いよ、アスカ!ほとんど抵抗無く撃ち込めたよ!」

「どうやったんですか?AMFをほぼ無効化してましたよ!」

スバルとエリオは素直に喜んでいる。

「アスカさん、凄いです!」

キャロも、フリードを抱えながら今起きた事を受け止めていた。

この3人の天然sは驚きはしたものの、現状を素直に受け入れていた。

「……何が起きたの……」

だが、リーダーであるティアナはまだ現実を受け止め切れてなかった。

(AMFの無効化なんて本局の技術部だってまだ実現できてないのよ?アスカ一人でそこまでこぎ着けたって言うの?)





なのはside

シャーリーからの説明でアスカ君のエフェクトが+イオンであるのはわかったけど、なんでAMFの効果を消せるのかは本人に聞くしかない。

と言う事で、私はフォワードメンバーを集めて経緯を説明した。

「+イオンて……」

うん、ティアナも信じられないって顔してるね。私も信じられないもん。

「それでね、なんで+イオンでAMFを消せるのか、説明してくれるかな?アスカ君」

私が促すと、アスカ君は説明を始めた。

「答えから言うと、AMFって-イオンで構成されてるんです。そして、調べてみたら魔力は+イオンが多く含まれていました。これは、昨日隊長に協力してもらって計測しました」

なるほど。昨日は魔力弾や魔力刃の威力を計測していたのかと思ったけど、構成物質を調べてたんだ。

魔力の構成物質ねえ、突拍子のない事を思いつく子だなあ。

「つまり、AMFは-イオンだから、魔力の+イオンと結合して中和する。
そうすると、それまで魔力を支えていた+イオンが消えるから、魔力結合そのものができなくなる?」

アスカ君の説明を聞いて、シャーリーが分かりやすく言い直してくれた。

あはは、私も科学はあまり得意じゃないから助かるな。

エリオ、キャロはともかく、スバルの目も泳いでるし(^^;)

「大ざっぱに言うとそうだね。昨日、ペットボトルのラベルを見て思いついたんだ」

ん?どう言う事だろう?ペットボトルに何か書いてあったのかな?

ペットボトルがイオンに結びついたのかが分からないな。

「なんでイオンだって思いついたの?」

多分、その場にいた全員の疑問をスバルが代表して質問した。

「ペットボトルの成分説明の所に電解質って書いてあったんだよ。電解質ってイオンじゃん」

ドヤァ

どんなもんだいと、ドヤ顔のアスカ君。

でも、電解質のイオンとアスカ君の言ったイオンって、少し違ったような気が……あ、”イオン”って単語が出てくればよかったのかな?

最初からAMFは電気的なもので魔力結合を阻害しているって言っていたから、イオンって言葉に思い当たれば、後はそこから答えを導き出したんだ。

なんて連想ゲーム。呆れるやら感心するやらだね。

「この短期間でAMFを丸裸にしちゃうなんてね。驚き超えて呆れるわ」

その意見は同感だよ、ティアナ。

もっとも、ティアナも相当驚いているみたいだけどね。

「じゃあ、これで管理局はAMFの対策ができる訳ですか?」

キャロがもっともな質問をする。

その質問に、アスカ君は少しだけ渋い顔をした。

「いや、そう上手くいかないんだな、これが。+イオンを撃ち出す時に、オレは【魔力回路の加速】を使ってイオンを加速させているんだ。そうしないとAMFに届かないからな」

そうか。魔力回路の加速はアスカ君のオリジナル。アスカ君以外にはできない。つまり、対AMFは今のところアスカ君しか使えないんだ。

「イオンを撃ち出す装置でもあれば別だろうけど、そういう機械ってかなりでかいし、真空状態じゃないと上手く加速させられないんだ」

アスカ君の言うとおりイオン加速器(アクセサレーター)なんて大きな機械を導入する訳にはいかないからね。

「えー、それじゃ厳しいなあ」

スバルがガッカリしたように言う。フロントアタッカーとしては、あのAMFは邪魔だもんね。気持ちは分かるなあ。

「まあ、オレが使えりゃ何とかなるだろ。戦術の一つの手札としては十分さ。だろ?ティアナ」

「……そうね。乱発しないでここぞって時に使えば、かなりの効果を期待できるはず」

ウン、とティアナが頷く。

あー、でもなぁ……

これ言ったらガッカリするだろうなあ……特にアスカ君が。

「とにかく、データを本局技術部に回します。これを期に、AMF対策の研究が進めば、武装隊の負担も軽減できるかも」

それまでのデータをシャーリーがまとめてる。

うん、そうなんだけどね。ちょっと言いづらいなあ……

「よし!機動六課はAMF対策できたって事で!」

嬉しそうに言うアスカ君。うぅ……でも、隊長としては言わないとダメなんだよね。

「うん。でも訓練じゃ使用禁止ね」

ズテッ

あ、顔からコケた。まあ、そうなるよね。

「な、なんでですか!隊長!」

ガバッと起きあがったアスカ君が詰め寄ってきた。

ちょっと涙目になってる。

「なんでだと思う?」

意地悪だとは思うけど、私は質問を質問で返した。

するとアスカ君はウッと言葉を詰まらせた。

「……AMF影響下における戦闘訓練だからです。AMFを消す事が訓練の目的ではないからです」

ものすごく落ち込んだ感じでアスカ君が答える。

うぅ……凄い事をしたのに……ごめんね。

「正解。ちゃんと正しく訓練を理解してるね。さあ、また模擬戦するよ!」

いたたまれなくなって、私は訓練を再開させた。

アスカ君が大きなため息をついて離れていくのが分かる。

「うぅ、ゴメンね、アスカ君」

その背中を見て、思わず謝っちゃった私。

「やった事は凄い事なんですけどね。訓練内容からは外れてましたから」

そう言うシャーリーも、アスカ君に同情しているみたいだ。

訓練が終わったらちゃんと褒めておかないとね。





outside

訓練が終了して、アスカはフラつく足で隊長室に向かっていた。

昨日スバルに訓練日誌を押しつけたので、今日はアスカが当番になったのだ。

「失礼します。訓練日誌を提出しにきました」

隊長室には、なのはとシャーリーがいた。

アスカはなのはに日誌を渡す。

「あー、アスカ君。今日は調子が悪かったね?」

なのはは、何て言ったらいいのか分からない表情をする。

「撃沈数三桁になると、流石にヘコみますね」

ガックリと肩を落とすアスカ。

そして、シャーリーに待機状態のデバイスを渡す。

「シャーリー、イオン発生器を外しておいてくれよ」

その言葉に、シャーリーとなのはが驚く。

「え?対AMFの切り札でしょう?」

「これがあると甘えるからダメだ。これがあると思って動きに精彩さを欠いた、散々ティアナに怒られたよ」

元気なくアスカが答える。

撃沈数もそうだが、やはり苦労して見つけたAMF対策を使用禁止にされた事が響いているようだ。

「あ、あのね、アスカ君が見つけたAMF対策は間違いなく大きな功績だよ。今まで誰もできなかった事を、この短期間でやり遂げたんだから、それは自信をもっていいんじゃないかな?」

なのはが、何とか元気になってもらおうと言葉をかける。

「はい……ありがとうございます」

礼を言うアスカだが、その声に覇気は無い。

(うぅ、こんな時なんて言えば男の子は元気になるの?)

どうしたものかとなのはが困っていると、シャーリーが間に入ってきた。

「まあ、落ち込むのは分かるけどさ、失敗とか間違った事をした訳じゃないんだから。また何か思いついたらいつでも言って。協力するよ」

ポンポンとアスカの肩を叩いて、ニコッと笑うシャーリー。

「うん。ありがとな、シャーリー」

ようやく、アスカが笑った。

アスカが退室して、なのはがフウ、と息をはいた。

「ありがとうね、シャーリー」

助け船を出してくれたシャーリーに礼を言うなのは。

「いいんですよ。なのはさん、ちょっと困っていたみたいですから」

シャーリーは気にしないでくださいと笑う。

「部下を持つと、色々難しいね」

「ああいう事でお困りなら、いつでも私に振ってください。何とかしますから」

笑顔で答えるシャーリーに、なのはも笑う。

「でも、あのAMF対策は本当に凄いね。実用化されれば、アスカ君は間違いなく表彰されるね」

「実用化されなくてもですよ。誰も思いつかなかったやり方で実践したんですから」

なのはとシャーリーは、その事について遅くまで話し合っていた。





部隊長室

はやては、なのはからの報告書に目を通していた。

「……」

そこには、アスカの事が書かれていた。

「バリアを重ねて防御力を上げる。バリアの対消滅。ここまでは実戦経験で培ったでいいとして、エリアルウォークは足の裏にシールドを貼り付けてそれを足場にしてるんか。大きさが違うだけで、これは私達でもよくやるなぁ」

はやては、昇格試験から今までのアスカに記録を調べていた。

なぜなら、今日なのはから提出された報告書を見て疑問に思った事があったのだ。

「魔力回路の加速に、イオンを使った(カウンター)AMF……」

この二つが、どうにも気になってしょうがないようだ。

「どれも魔法文化圏内で育った子の発想やないな」

報告書を見て、はやてはポツリと呟いた。

「悪い子やないのは分かる……でも、何者なんやろ?」

書類上では何の問題もないアスカ。

だが、はやてはアスカに妙な違和感を覚えていた。 
 

 
後書き
読んでいただき、誠にありがとうございます。

さて今回、AMFの原理の解明の回でしたが、またなんちゃって科学なので、あまり突っ込まないでください(T_T;)

アスカにAMF対策を使わせる上でイオンを使おうと思いついたのは、小惑星探査機MUSES-C、通称はやぶさのイオンエンジンの原理を見てからでした。

詳しい事は省きますが、+イオンを射出して、それを-イオン電極で中和しないと推進力が得られないという一文から強引に考えてみました。

この対AMFがないと、アスカは最終決戦でゆりかごに行けませんから…

まあ、訓練での使用禁止はアスカらしいと言えばそうかもしれません。

ティアナイベントを匂わせる暗い感情を少しだけ出しましたが、今の時点では誰もそれには気づきません。
少しづつそういうのを出していければなーと考えてます。

さて、はやてがアスカに違和感を感じ始めてますね。
魔法文化圏内で育った発想じゃない。これは何を意味するのか?
モロバレのような感じもしますが、もうしばらくお待ちください。

では、また次回で! 
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