| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第16話

~朝・特務支援課~



朝食を済ませたロイド達は朝のミーティングを始める為にセルゲイを待っていた。

「………遅いな、課長。そろそろ朝のミーティングを始めたいんだけど……」

「さすがに課長抜きで始めるわけにはいかないものね。」

「んー、こんな事なら2度寝すりゃあ良かったな。そんで昼過ぎに起きてからカジノあたりに遊びに行くと。」

「典型的なダメ人間ですね…………」

「………遅れたな。」

ロイド達が話し合っているとセルゲイが近付いてきた。

「―――課長。おはようございます。」

「おはようございます。早速ミーティングを始めますか?」

「いや、その必要はない。先程本部から連絡があった。今日はお前らに特別任務を引き受けてもらう。」

「特別任務………?」

「何かウサン臭い響きだな………」

「……この前のような捜査任務という事ですか?」

セルゲイの話を聞いたロイドは不思議そうな表情をし、ランディは目を細め、ティオは質問した。

「残念ながら俺も知らん。まずは警察本部に行って来い。お前らの客人が待ってるはずだ。」

その後ロイド達は警察本部に向かい、指定された場所―――本部3階の副局長室に向かった。



~クロスベル警察本部・3Fフロア~



「またあの嫌味な副局長に呼び出される事になるとはな………一体、何の用だってんだ?」

「うーん………客が待ってるって言ってたし。ただ嫌味や小言を言う為に呼び出したんじゃないと思うけど。」

「……まあ、最近はルファディエルさんのお蔭で実績も少しずつ増えてきて支援課の人気は出始めていますから、嫌味や小言はないと思いますが………」

「そうね………本当なら自分達の力でそうなるべきだけど………今は甘んじて受けて、いつかは彼女のようになる為に精進しましょう。」

そしてロイド達はフロアを歩いて行って、副局長室の前に来て、ロイドが扉をノックした。

「―――特務支援課所属、バニングス以下4名、参りました。」

「フン………入りたまえ。」

「失礼します。」

入室の許可を聞いたロイド達は副局長室に入室した。すると副局長室にはピエールの他、軍服を着た女性が2人いた。



~副局長室~



(あれ、あの制服は……)

(警備隊………だったかしら?)

女性達を見たロイドは驚き、エリィはロイドに確認し

「げげっ………!?」

ランディは大声で驚いた後、一歩下がった。

「あら、ご挨拶ね。ランディ・オルランド。なにが『げげっ』なのかしら?」

すると軍服を着た眼鏡の女性は口元に笑みを浮かべてランディに視線を向け

「い、いや~………少し意表を突かれたっていうか。」

視線を向けられたランディは苦笑しながら答えた。

「なんだ、知ってるんのか?」

「やましい事がありそうな反応ですね………」

ランディの様子を見たロイドは不思議そうな表情をし、ティオはジト目でランディを見つめた。

「えー、ゴホンゴホン!君達、敬礼したまえ!こちらは警備隊の副司令を務めておられるソーニャ二佐だ!」

その時咳払いをしたピエールがロイド達に指示をした。

「警備隊の副司令………!」

「し、失礼しました。」

ピエールの話を聞いたロイドとエリィは驚き

(二佐というと、普通の軍隊では中佐に相当するはずですが………そんなに偉い人なんですか?)

ティオは考え込みながら小声でランディに尋ね

(偉いもなにも………実質、警備隊のナンバー2だぞ。指揮官としてのカリスマなら間違いなくナンバー1だけどな。)

(まあ、あんな馬鹿と比べるほうがおかしいよ。)

尋ねられたランディは小声で答え、エルンストは嘲笑した。

「ふふ………堅苦しくしないでちょうだい。あなたたちが『特務支援課』ね?」

眼鏡の女性―――ソーニャは口元に笑みを浮かべた後、ロイド達に尋ねた。

「は、はい。本日は、自分達特務支援課に何かお話があるとか………?」

「フフン、光栄に思うがいい。君達ごとき役立たずの新米をこの場に呼んでやったのだからな。」

そしてロイドの疑問に嘲笑しながらピエールが答え、ロイド達が顔を顰めたその時

「………役立たずとは随分な言葉ね。」

なんと人間の姿のルファディエルがロイドの傍に現れ

「な、な、なっ……!?」

「あら………」

「なっ………!?」

突如現れたルファディエルを見たピエール達は驚いた。



「支援課が設立されて数週間………この子達も目立たないとはいえ、市民達の依頼に応えて行って、警察のイメージアップには貢献しているわ。それに支援要請の完了はちゃんと報告しているはず………決して役立たずではないわよ。副局長なのに、そんな事も知らないのかしら?」

「うっ、そ、それは………………っつ!わ、私は副局長だぞ!君は確か警部のはず!階級が私より遥かに下の癖にして、なんだその口の利き方は!」

ルファディエルの言葉を聞いたピエールは一瞬気圧されたが、すぐに気を取り直してルファディエルを睨んで怒鳴ったが

「私が目障りなら今すぐクビにしてくれてもいいのよ?私は貴方達警察のイメージアップの為に”無理やり”警察官をやらされているようなものだし……………まあ、もしそうなった時、せっかく警察官にすることにできた私をクビにした貴方にどんな責任が問われるか、見物(みもの)ね?」

「グッ!?」

笑顔で言ったルファディエルの言葉を聞いて唸り

「それにマスコミはあのアリオス・マクレインに続くクロスベルの守護者になるかもしれないと噂されている私を、ただ口が悪いだけの理由で解雇した貴方をどう報道するのかしらね?ああ、後セルゲイから何故、特務支援課が設立できた理由を聞いた時にその際、貴方についての”興味深い”話も彼から聞いているわよ?」

「…………………」

口元に笑みを浮かべたルファディエルの話を聞き、表情を青褪めさせて黙り込み、身体を震わせ

「フフ、一応言っておくけどセルゲイを責めないであげてね?彼は支援課の一員である私に当然の事を話したまでだから。」

口元に笑みを浮かべ続けるルファディエルはピエールを見つめて話を続けた。

(こええ~……さすがはルファディエル姐さんだぜ。見ろよ、あの副局長の顔。)

その様子を面白そうに見ているランディは呟き

(………いい気味です。ルファディエルさんに感謝ですね。)

ティオは静かな笑みを浮かべて呟いた後、ルファディエルに視線を向け

(か、彼女に逆らえる人って、この世に存在するのかどうかと思ってしまうわね……)

エリィは冷や汗をかきながら苦笑し

(俺達をかばってくれるのは助かるけど、こんな心臓に悪い事はしないでほしいよ………)

ロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。

(クハハハッ!大事なロイドが虐められたから、我慢せずに出て来たのか!ルファディエルにあそこまでさせるなんて、さすがはロイド!)

(あっははは!ルファディエルを脅そうとするなんて、馬鹿だねぇ、あの人間。身の程知らずすぎだろ。)

一方その様子を見ていたギレゼルとエルンストは大声で笑った後、口元に笑みを浮かべ

(相変わらず容赦のない方だ………)

(フッ……世界は違っても奴は奴だな………)

メヒーシャは静かな表情でルファディエルを見つめ、ラグタスは口元に笑みを浮かべ

「フフ……こんなとてつもない方が警察に入るなんて、誰も想像していなかったでしょうね。」

「ア、アハハ………」

ソーニャは口元に笑みを浮かべて呟き、ソーニャの傍にいる警備隊の女性は苦笑していた。

「ルファディエル警部。部下を庇うのは上司として素晴らしい事ですが、話を始めてもよろしいですか?」

「これは失礼………私はロイドの中で聞いていますから、遠慮なくどうぞ。」

一方ソーニャに言われたルファディエルは微笑んだ後、ロイドの身体の中に戻った。

「―――改めて。クロスベル警備隊の副司令、ソーニャ・ベルツよ。今日は貴方達『特務支援課』の力を借りに参上したわ。まずは一通り話を聞いてくれないかしら?」

そしてソーニャはロイド達に話の内容を説明した。



「魔獣の被害調査………!?」

「ええ、そうよ。ここ一月あまり、自治州各地で特定の魔獣被害が相次いでいるの。その調査の手伝いをあなた達にお願いしたくってね。」

「「「「………………」」」」

ソーニャの話を聞いたロイド達は考え込んだ後

「ちょ、ちょっと待って下さい。クロスベル市内ではなく………市外での魔獣被害の調査ですか?」

ロイドが仲間達を代表して尋ねた。

「あら、不服かしら?」

「い、いえ………そんな事は。」

「その、警備隊の方でも既に調査されているのですよね?その上で、私達が手伝う余地などあるのでしょうか?」

「うーん、それが大アリなのよね。普通の魔獣被害というにはどうも不可解なことが多すぎてね。ウチの調査だけでは手詰まりになってきているのよ。だから別の視点を入れておきたいって所かしら。」

「別の視点、ですか。」

「そう、警備のプロではなく捜査のプロとしての視点をね。その意味では、別に貴方達支援課でなくてもいいんだけど。たとえばエリートと名高い『捜査一課』とか。」

ロイドの言葉に頷いたソーニャは意味ありげな目でピエールに視線を向け

「い、いや………ハハ。紹介したいのは山々なんですが。何分、忙しい連中でして、ハイ。それに支援課には先程現れたルファディエル警部もいますので、十分かと。彼女の実力は一課の連中を超えておりますし。」

視線を向けられたピエールは慌てた様子で言い訳をした。

「―――とまあ、色々事情がおありのようだからあなた達を指名させてもらったの。迷惑だったかしら?」

「い、いえ……―――わかりました。そういう事情があるなら喜んで。それで、魔獣被害の調査と言うと具体的には何をすればいいんでしょう?」

「ノエル、例のものを。」

ロイドの話を聞いたソーニャは隣にいる女性の警備隊員に促し

「はっ。………―――どうぞ。」

促された女性はロイドに資料を渡した。

「あ、どうも。(あれ、この人………?)」

「?どうしましたか?」

「い、いえ………すみません。(うーん……どこかで見た気がしたけど。)」

女性の言葉に答えたロイドは考え込んだ後、資料をよく見た。

「これは………」

「警備隊の調査報告書ですね。」

「こちらの調査で判明したことは一通りそれに書かれてあるわ。まずは、その調書だけを見てあなた達には捜査に入って欲しいの。余計な先入観を与えないためにもね。」

「なるほど………」

「そういう事であれば後ほど拝見させてもらいます。」

「ふふ、お願いするわね。それでは申し訳ないけど我々はこれで失礼させてもらうわ。今後は支援課と直接やり取りするからなにかわかったら報告をちょうだい。」

「了解しました。」

ソーニャの話を聞き終えたロイドは頷き

「―――副局長。どうもお邪魔しました。」

「い、いえいえ。また遠慮なくどうぞ。」

ピエールに挨拶をした後去りかけたが、足を止めてランディに視線を向けた。

「ふふ………どうやら結構馴染めてるみたいじゃない?」

「いやあ、ハハ………まあ、国境監視や演習よりは楽しく過ごさせてもらってますよ。」

視線を向けられたランディは苦笑しながら答えた。

「それは結構………私も紹介した甲斐があったわ。ノエル、行くわよ。」

「はいっ。それでは失礼します!」

そしてソーニャと女性隊員は去って行った。



「は~………やれやれだぜ。」

「ひょっとして警備隊での上官だったのか?」

「いや………直接の上司じゃないけどな。訓練や軍事演習で何度か指導を受けているんだ。美人なのに、怒らせるとメチャクチャ恐いんだよなぁ。」

ソーニャ達が去った後ロイドに尋ねられたランディは説明をした後溜息を吐き

「ランディさんの場合は、生活態度が原因なのでは………?」

「ふふ、そうね。何だか女性問題で色々とトラブルを起こしてたらしいし。」

「そういえば………副司令に付き添っていた女性隊員も知り合いなのか?」

「ん?ああ、タングラム門を警備している奴だよ。……そういや、お前、なんか気にしてたみたいだな?なんだなんだ、ひょっとして一目ボレかぁ~?」

ロイドの疑問を聞いたランディは頷いた後、ロイドを茶化した。

「あら……………」

「……………………………」

一方ランディの言葉を聞いたエリィとティオはジト目でロイドを見つめ

「い、いや、そんなんじゃないってば。ただ、どこかで見かけたような気がして………」

ロイドは慌てた様子で言い訳をした。

「オッホン!」

するとその時ピエールがわざとらしく咳払いをした。

「あ………」

「………君達はいつまでくだらない話をしてるのかね?ひょっとして………あれか?セルゲイあたりに言われて私を馬鹿にしに来たのかね………?」

「い、いや、そんな!」

「その………失礼しました。」

ピエールに睨まれたロイドは慌て、エリィは軽く頭を下げた。

「フン………ならばとっとと出て行きたまえ。全く、揃いも揃って私の忠告を無視しおって………それが何を意味するのか、当然わかっているのだろうね?」

「っ………」

「おいおい………」

ピエールの言葉を聞いたロイドとランディは表情を厳しくした。

「フフ、まあせいぜい野山で魔獣探しにでも明け暮れるんだな。何だったら全員、そのまま警備隊に移ったらどうかね?あの忌々しいセルゲイと一緒にな。」

「…………いいんですか、私達にそんな暴言ばっかり言って。また、ルファディエルさんが出てきますよ?」

そして嘲笑しながら言ったピエールの言葉を聞いたティオはジト目でピエールに言い

「ぐっ!?」

ティオの言葉を聞いたピエールは表情を歪めて唸り

「ティ、ティオ。」

それを見たロイドは慌て

「さ~てと。意趣返しはこれぐらいにして、俺達は退散しようぜ。」

ランディは口元に笑みを浮かべて提案し

「ランディ、貴方も余計な事を言わないで………失礼します。」

エリィはランディに注意した後、ロイド達と共に部屋を出て行った。



「ティオすけ。さっきはナイスだったぞ。」

「いえ。私もさっきはイラッと来ましたので。」

部屋を出たランディは口元に笑みを浮かべて親指を立ててティオを見つめ、見つめられたティオは静かな笑みを浮かべて答え

「もう…………今のは私達にも少しは非があったわけだから、そんな事をしないの。………まあ、さっきの副局長の言葉はさすがに暴言過ぎだったけど。」

エリィは溜息を吐いて注意をした後、表情を厳しくし

「――――目くじらを立てるのはそれぐらいにしておこう。とにかく一旦戻って調書に目を通してみよう。その上で、捜査方針を決めて動く必要がありそうだ。」

ロイドは話を変えて提案した。

「そうね、どうやら普通の魔獣被害じゃなさそうだし。」

「不可解な事………いったい何なんでしょうか?」

そしてロイド達は支援課に戻ってソーニャ達に貰った調査書を読んだ。



その後調査書を読んだロイド達は魔獣被害を調べる為に被害にあった関係者に聞く為、被害にあった各地に出向く事にし、最初に被害にあった場所―――アルモリカ村に行く為、支援要請をチェックした後、アルモリカ村へと続く道―――東クロスベル街道に向かった………


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧