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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第49話「微かな前兆」

 
前書き
はい第3章です。
ここからどうにかして原作キャラの影を濃くするぞ....!
 

 




       =優輝side=



「夏休みも、もう終わりか...。」

  ふと、僕はそう呟く。
  気が付けば夏休みなんてあっという間に過ぎていて、今日は8月30日。
  まだ1日あるけどもう終わったようなものだろう。

「...あの、優輝君。明後日の方向向いてないで手伝ってくれる?」

「あー、分かってる分かってる。」

  すずかにそう言われて、改めて目の前に広がる状況を見る。
  場所は月村邸。まぁ、広い勉強部屋があって今はそこにいる。
  面子は四年生の知り合い皆+アリシアと、僕や椿、葵、そして司さんだ。
  他にも、リニスさんもいる。ただし、王牙は省られてた。王牙ェ...。

「...計画的にやっておけばこんな事にはならなかったのに...。」

「管理局の手伝いしてたから、仕方ないだろ!」

「...いや、それって僕と司さんも同じ条件だからな?」

  僕、司さん、すずか、アリサ以外の皆は宿題が終わりきってないらしい。
  だから、今日ここでやっていると言う訳だ。僕らはその手伝い。
  ちなみに、そこまで多く残ってる訳ではないらしい。

「ぁあああー!国語分からないっ!」

「落ち着けって...。国語は問題が示されている所の前後の文章に答えかヒントがあるから、それを探せば分かる。苦手なら、余計に良く読むべきだ。」

「うぅ..はーい...。」

  国語が分からなくて喚いたアリシアにそう説明する。
  ちなみに、夏休み中にあった嘱託魔導師としての仕事や、今回の勉強会で、皆の事を名前で呼ぶように複数人に言われた。(なのはとかアリシアとか)
  だが、織崎だけはやめといた。織崎もなんか僕を嫌ってるし。

「....というか、一つ下の学年に教わるって...。」

「はぐっ!?...うぅ、だって分かんないし...。」

  そう、忘れやすいけど、アリシアは僕の一つ上で、六年生だ。
  なのに今のように僕や司さんに教えを乞うたりする。

「というか、優輝は一週間でほとんど終わらせたっておかしすぎるよー。」

「集中しすぎた結果だ。僕も驚いたし。」

  ちなみに、作文とかは無難に夏祭りに行ったのでその事を書いた。

「...優輝君、よぅこんな暑い夏でそんな集中できるなぁ。」

「慣れだ慣れ。贅沢してたら両親のお金が成人までなくなるからな。暑さ寒さは自力で克服した。それに、工夫すればある程度は涼しくできたからな。」

  はやての言葉にそう答える。
  実際、僕は多分集中するのは得意だと思う。魔力や霊力の精密操作ができるし。

「しかし、教えるのもなかなかですね...。」

「...あー、これは僕にもよく分からないです。偶々上手く行ってるだけだと思いますが。」

「私には、十分才能があると思いますよ。」

  リニスさんの言葉に僕はそう答える。
  ...ちょっと嘘ついたかな?
  教えるのが上手く行ってる理由は、前々世が導王だったのが関係してると思う。
  人を導くのと、人に教えるのってどこか似ているし。

「ほら、皆揃いも揃って算数は終わらせてるんだし、休憩まで気張れよー。」

「あうぅ...国語難しいよー...。」

「いや、妹だって頑張ってんだから姉らしくしろよ...。」

  ちなみにそのフェイトは、司さんやリニスさんに聞いたりしながら真面目にやっている。
  ...姉妹でなんだこの差は...。

「(...しかし、アリシアだけ少し魅了の効果が薄いよな...?)」

  その分、他の四人からは魅了の嫌な感じが濃い。
  おそらく、魔力量が関係してるのだろう。...厄介な。

「(というか、今更だけど転生者なら宿題ぐらいすぐ分かって終わらせれるだろ...。)」

  残っている宿題を焦りながら解いていく織崎を、僕はジト目で見ていた。
  ...ちなみに、奏はスラスラ解いていたけど、偶に分からない所とかもあるようだ。
  もしかしたら、前世の人生の関係上、あまり勉強が出来なかったのかもしれないな。

「(...そうなると、ますます似て....。)」

  ...と、そこまで思考してその考えを振り払う。
  今は手伝うのに集中しないとな。

「...む、所々変わっててやりづらいわね...。」

「基本は変わってないんだけどねー。」

「...って、二人も教わる側に!?」

  椿と葵がいつの間にか教わる側にいた。
  ...まぁ、二人は今まで隠れて暮らしてたからな...。仕方ないと言えば仕方ない。

「あ、竹取物語。懐かしいわ。」

「と言っても仲間にいたよね。」

  ...うん。もう二人は二人で勝手にさせておこう。
  別に、何か仕出かすような性格はしてないし。

「皆さーん、三時なので一度休憩しましょう。」

「や、やっと休憩やわ....。」

  ファリンさんの声に、はやてが机に突っ伏しながらそう言う。
  ...休憩が終わったらまたやるぞ?





「この調子なら四時半くらいに終わりそうだね。」

「まぁ、何事もなければなんだけどね。」

  休憩中、お菓子のクッキーを口に放り込んでから、皆の宿題の進行度を見る。
  ....うん。余程の事がなければ司さんの言うとおりの時間に終わるな。

「以前の内に読書感想文を終わらさせといて正解だったな。」

「管理局の仕事とかで皆本を読んでなかったからね...。」

  実は以前にも、皆で集まって宿題を終わらせようとした事がある。
  確か、夏休み終盤になっても読書感想文が終わってないのに危機感を感じたんだっけ?
  なら、ちゃんと計画的にやっとけよって話なんだが...。
  ちなみにその日には読書感想文と作文を終わらさせた。

「............。」

「...?どうしたの?」

「ああいや、管理局でちょっと思い出してな...。クロノに頼んでいる事。」

「...あー、両親の事...だね。」

  両親について、クロノ経由で調べてもらっているのだが、やはり闇雲に探しても見つからないとの事だった。
  だから、事故当時の日にちから調べる事にするらしい。この前連絡があった。

「こればっかりは待つしかないからな。嘱託魔導師だし。」

「権利がないから自分からは調べられないもんね。」

  クロノと同じ執務官ならある程度は自由に調べ回れただろうけど、これは仕方ない。

「...それと、両親の件とは関係ないけど、ちょっと気になる事が....。」

「気になる事?」

  首を傾げながら、司さんは僕に聞き返してくる。
  ...やっぱり...。

「....司さん、無理...してない?」

「...え?」

「緋雪が死んでから、ずっと思い詰めてるように見えて、さ....。」

  普通は分からないだろう。...だけど、僕には何となくそう思えた。

「...別にそうでもないよ?...うん。緋雪ちゃんの事は、もう立ち直ったから。」

「....なら、いいんだけど...。」

  普通に否定する司さん。やはり、気のせいだったか...?
  ....いや、でも...。

「(....また、嫌な予感がする...。)」

  司さんを見ていると、途轍もなく嫌な予感がした。
  ...それこそ、緋雪の二の舞になるような、そんなレベルの...。

「(...いや、もうそんな事は起こさせない。...そう決めたんだ。)」

  そのために、現在進行形で強くなっている。

「...そろそろ休憩も終わるし、もうひと頑張りするか。」

「そうだね。」

  今は頭の隅に置いておこう。無理に解決できるような事でもないし...な。











「さて、皆。宿題はちゃんとやって来たか?」

  夏休みが無事に終わり、先生の一言に何人かが呻き声を上げる。

「残念ながら待つという事はしない。さぁ、諦めて後ろから回せー。」

  渋々と、おそらく全部はやってないであろう宿題を、一部の人は回していく。
  当然僕らは全部やっているので堂々と提出できるな。

「なんで見せてくれなかったんだよ優輝ぃ...。」

「いや...あれじゃ、焼石に水じゃん。」

  隣の席の友人が、そう言ってくる。
  ちなみに、こいつはほとんどやってきてなく、僕が来た途端写させるのを要求してきた。

「そうは言ってもよー...。」

「...諦めて先生に怒られな?」

「ちくしょー!!」

  そう言って机に突っ伏した。

「(...あいつらも僕らが手伝わなかったらこうなってたかもしれんのか...。)」

  四年(+アリシア)の面子を思い出しつつ、そんな事を考える。
  あ、ちゃんと一昨日に終わらせるようにしたぞ?

「(...久しぶりの学校...。特になにも変わってないはずなんだけどなぁ...。)」

  夏休み中に色々...主に嘱託魔導師の仕事があって、なぜか新鮮に感じた。

「(ま、別にどうでもいいか。)」

  正直、二度目の小学校だ。大学まで卒業した僕からすれば、その程度の認識だった。







「じゃあ、今日はここまでだ。久しぶりの登下校だから、道中気を付けろよー。」

  礼をして、学校が終わる。
  この学校は三学期制なので、夏休み明けの初日は午前までだった。

「(...午後は暇だし、翠屋でも手伝うか。)」

  その前に家で昼食を取るので、適当にメニューを考える。
  ...別に、翠屋で食べるって手もあるな。

「(とりあえず、家に帰ったら椿と葵に相談.....あれ?)」

  下駄箱まで来た所で、ふと司さんが目に入る。
  ...ちょっと、何かを気にしてるみたいだけど...。

「司さん、どうかしたのか?」

「あ、優輝君。...ちょっとね。ここ最近、調子が悪くて...。」

  ...そういえば、夏休み中にあった仕事でも、偶にミスしてたっけ...?
  一応、心配だからと一緒に帰る事にする。

「やっぱり、無理してるんじゃ...。」

「そ、そんな事ないよ?...休息も十分に取ってるはずなんだけど、それでも調子が悪くて...。それに、シュラインも最近調子が悪いの。」

  休息も取っているのにか...。それに、デバイスも?

「...メンテナンスとかは?」

「欠かせてないよ。この前もマリーさんに見てもらったけど、異常なしだったし。」

「....うーん...。」

  シュラインに聞いてみても、“異常はありません”なのだそうだ。

「...体の方は精神的に疲れていたりするからって推測なんだけど、デバイスの方は分からないなぁ...。異常なしなのに調子が悪いって...。」

「精神的...かぁ...。うん、ありがとね?相談に乗ってくれて。...結局シュラインの方は分からなかったけど...。」

  そう言って、司さんは僕と別れて帰っていった。
  僕も、少し溜め息を吐いて、帰り道に視線を向ける。

「(...また、だ。...また、嫌な予感がした。)」

  これは単なる気のせいか?...それとも...。

「(....どの道、体の方はともかく、シュラインの調子が悪いのは気になるな。)」

  メンテナンスも欠かせてないし、なによりシュライン自身が異常はないと言っている。
  それなのに、調子が悪いだなんて...。

「(...異常はない。....“異常”は....?)」

  そう、“異常”は、だ。...もしかしたら、異常ではない範囲でおかしいのか?

「(何かしらの原因で調子が悪いのでさえも、シュラインと言うデバイスにとっては“正常”の範囲内...?..でも、だとしたら原因は....。)」

  デバイスについて詳しいマリーさんでさえも、原因は分からなかったらしい。

「(...いや、シュライン“自体には”異常がないって事も考えられるな...。)」

  なんらかの外的要因により、司さんがそう感じている場合もある。
  ...それこそ、司さん自身になにか...。

「(杞憂に終わればいいが...。)」

  原因も、それに近い事も分かってない。だから、今は動く事はできない。
  少し気になる事が増えながらも、僕はそのまま帰った。







「ありがとうございましたー。」

  帰っていく客にそう言い、他のやるべき事へ移ろうとする。

「あ、優輝君。休憩に入っていいわよー。なのはも休憩してるし、ちょっと話して来たら?」

「あ、はい。分かりました。」

  ...が、そこで休憩に入っていいと桃子さんに言われるので、お言葉に甘える。

「(...あれ?そういえば、普通にアルバイトみたいに働いてる気が...。)」

  ...いや、飽くまでお手伝いだ。別にアルバイトではないはず...。
  というか、保護者代わりになってくれてるしな。その恩返しだ。うん。

「あ、優輝君。休憩なの?」

「まぁね。あ、そうだ。ついでだからこれを...。」

  そう言って、僕はなのはに透明な水晶のような結晶を渡す。

「....これって...?」

「無色の魔力。なのはの切り札って、魔力をかき集めてるでしょ?それに、その結晶に自分の魔力を流し込めば魔力を回復できるようにもなるし。」

「へぇー....。」

  なのはは受け取った結晶を光に翳したりする。

「...そういえば、魔力を回復する道具なんてなかったような...。」

「...まぁ、人それぞれの魔力の波長が違うからな。それだって、作るのに苦労したしな。...そこで行き着いたのが、魔力を流し込む事でその魔力の持ち主の魔力にするっていう方法なんだ。」

  僕だけ回復できる結晶なら、今まで何度か作った事はあった。
  だけど、他人の魔力を回復する結晶はなかなか作れなかった。
  人から人へ魔力を明け渡す事は簡単だけど、大気中や外部の魔力を吸収だなんて、本来は僕しかやらないような事だしな。

「とりあえず、なのはは魔力量も多いし、その結晶は切り札にでも使えばいいよ。」

「くれるのは嬉しいけど...どうして私に?」

「あ、特に理由はないよ?それなりに作ってあるし、知り合いには渡すつもりなんだ。」

  試行錯誤して作ったから、ただ単に皆に使ってもらいたいだけだ。他意はない。

「(...ま、一応の保険にもなるしな。)」

  いざというとき魔力が足りなかった場合の助けにもなるだろうし。
  特に、僕みたいにあまり魔力が多くない人は役立つだろう。

「ないよりはマシ、カートリッジの代わりとでも思ってればいいよ。」

「あはは...まぁ、ありがたく貰っておくね?」

  ...さて、大した会話のネタがないから今の内に渡したんだが...。

「...ねぇ。」

「...ん?」

  せっかくの休憩時間、何を話そうかと思っていると、なのはから話しかけてきた。

「緋雪ちゃんがいなくなって、前にちょっと怖くなった事があるの。」

「...怖くなった事?」

  唐突にそう言ったなのはは、だいぶ不安そうだった。

「緋雪ちゃんが事故に遭って、“あぁ、人ってこんなにあっさり死ぬんだな”って、思う様になって...。そんな事を考えてたら、今もやってる管理局の仕事って、死ぬかもしれないって、途端にそう思えてしまって.....。」

「.........。」

  ...“死”を目の当たりにして、死と隣り合わせでもある管理局の仕事に、死ぬかもしれない恐怖を自覚したって事か....。

「...私が魔法に関わった始まりはね、ジュエルシードって言うロストロギアが地球に落ちてきてからなの。...そこから、ユーノ君と出会って、魔法に関わって来たんだけど...。」

「...なのは?」

「....よくよく考えれば、ジュエルシードの時も、闇の書の時も、どうして死人が出なかったんだろうってぐらい、危ない事件だったんだなって...そう思えるの。」

  ....随分と、深く考えてるな...。
  僕が言うのもあれだけど、まだ四年生だぞ?ここまで考えれるものなのか?

「“死”ってこんなに怖いんだなって、そう思ったら途端に怖くなって...!」

「.....なのは。」

  でも、やっぱり子供だ。
  こんなにも、魔法に、“死”に敏感になっている。

「...そうやって、怖がっているからこそ、人って言うのは頑張れるんだ。」

「....え...?」

  ふと、なのはとシュネーが重なる。
  ...どうも、怯えてるのを見ると慰めたくなるんだよな...。

「何かに怯えて、だからこそそれを乗り越えようとする。...何にも怯えずに、ただ真っ直ぐ行ってるだけじゃ、すぐ折れちゃうからな。」

「あ.....。」

  一度それに恐れを抱いたからこそ、覚悟も決められるってもんだ。
  なんでもかんでも、最初からできる奴なんていないからな。

「“人の死が怖い”。そんなの、当たり前だよ。....だからこそ、覚悟するんだ。」

「....うん。」

  慰めにはあまりなっていない。
  だけど、なのはには何かが見えたようだ。

「...そうだね。うじうじしてても何も変わらないし....うん、ありがとう、優輝君。」

「...まぁ、立ち直れたならいいけど、無理はするなよ。いざという時は、逃げてもいい。周りを頼ってもいいんだから。」

  頼るのと頼らないのでは、大違いだからな。

「それと、これからはそう言うのは士郎さんに相談しな。...士郎さんはなのはの親なんだから、きっと僕よりも良い事を教えてくれるよ。」

「あはは...うん。そうだね。そうするよ。」

  ...っと、そろそろ休憩も終わるとするか。

「じゃ、僕は手伝いに戻るよ。」

「え?ああっ!私も行かなくちゃ!」

  ばたばたと、慌ててなのはは店の方へ向かった。

「....ありがとう、優輝君。」

「士郎さん...。」

  休憩室を出ると、すぐ傍に士郎さんが立っていた。

「...まさか、態と同じ時間に休憩させました?」

「いや、なのはは僕達にも秘密にしている想いがあるからね。あわよくば...程度にしか思ってなかったよ。まぁ、交流を深めてくれれば、とは思っていたけど。」

「そうですか。」

「それに、どちらかと言うとそう言う風に仕向けたのは桃子じゃないかな。」

  ...桃子さん...。まぁ、結果的にいい方向に向いたと思うし、いっか。

「じゃあ、僕も手伝いに戻ります。」

「ああ、頑張ってね。」

  さて、もう一仕事頑張りますか!







「ただいまー。」

  まぁ、アルバイトでもないのにたくさん働ける訳もなく、四時ぐらいに帰宅した。

「あら、お帰りなさい。」

「優ちゃんお帰りー。」

  椿と葵が、リビングで何かをしていた。

「...何やってるの?」

「優ちゃんみたいにちょっと研究をね。」

「優輝の霊力操作が凄まじいから、私達も何かしなきゃって思ってね。」

  見れば、御札に複雑な術式が込められている。
  これは....。

「...霊力保管?」

「...よく分かるわね。そうよ。これに霊力を込めておけば、いざと言うとき霊力を回復できるの。...まぁ、優輝が試行錯誤してた奴の霊力版って所ね。」

「呪い師の分野だから作るのに苦労したよー。」

  そう言って同じような御札を数枚見せてくる。

「本当、優輝は規格外よね。本来なら数枚で発動させる術式を、たった一枚に収められるんだから。...私達、同じ事をするのにどれだけ苦労したか...。」

「作れたのこれだけだもんねー...。」

  葵が手に取ったのは、複数枚の御札の中でも三枚だけ。
  それだけ、失敗を繰り返していたのだろう。

「いや、何かしてくれようとしただけでも僕は嬉しいよ。ありがとう、椿、葵。」

  本心から、その言葉を二人に掛ける。

「なっ...べ、別に優輝のためじゃ...!それに、お礼なんていらないから!」

「あははー、かやちゃん照れてるー。」

「そういうアンタだって顔を赤くしてるじゃない!」

  椿の周りに咲き誇るように花が出現する。
  ...椿は、こう言う所わかりやすいよな。そう言う所が椿らしくていいんだけどさ。

「じゃあ、霊力関連の方は任せたよ。二人の方が専門家だからね。」

「...任せなさい。あっと驚かせてやるんだから。」

  照れているのを一度落ち着かせ、椿はそう言った。

「(僕が作った魔力結晶と、椿たちの霊力回復の御札...なーんか、フラグが...。)」

  まさにこれから必要になるかもしれないというタイミングの良さに、少し不安になった。

「...よし、夕飯まで時間はあるし、軽くリヒトとシャルのメンテでもするか。」

  その不安を振り払うように、僕は二機のメンテに取り掛かった。



















「...くくく...管理局も存外に警備が甘いな...。バレてもまんまと逃げれる程度とは...。」

  薄暗い部屋の中、一人の男が嗤っていた。

「...これで...これで全てが揃う。」

  男の手の中には、青色の菱形の石があった。
  どうやら、複数個あるらしく、机の上にいくつも浮かんでいた。

「さぁ、全てを思い通りにできるよう、願いを叶えてくれよ...?」

  封印処理を済まされているとはいえ、膨大な魔力を秘めているソレに、男は手を翳す。







「―――()()()()()()()よ...!」







   ―――...脅威は、すぐ傍まで忍び寄って来ている...。









 
 

 
後書き
アリサとすずかに対する優輝の二人称が呼び捨てになっていますが、それはムートの記憶が蘇ったからです。年上に対しては基本敬称で呼んでます。(アリシアは例外)
ついでに言えば、夏休み中にいくらか交流があったため、他の人も優輝の事を君付けで読んでいます。(敬語とかもなし)

いつの間にか優輝に惹かれている葵。
葵は可愛いもの好きな傾向があるので、今の所ショタな優輝が気に入った→好きになった。的な感じの流れで惹かれて行った感じです。
まぁ、一つ屋根の下で暮らしてるからね。しょうがないね。 
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