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媚薬

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4部分:第四章


第四章

「ひ、髭は敏感なんです!引っ張らないで下さい!」
「なら余計なことは言わない」
「す、すいませんすいません」
 比佐重の完敗だった。しかし何はともあれだった。
 津波にもそうした想い人ができた。それでだった。
 自然と告白するなり何なりして交際まで至ろうと思った。しかしだ。
 どうしたらいいのかだ。津波はわかりかねていた。
「どうしたものか」
「あれっ、告白とかは」
「あれはできない」
 まずはだ。告白を否定するのだった。
「前に立つだけで気持ちが動転してだ」
「それでなんですか」
「とてもできない」
 そうだというのだ。
「今まで告白しようと思ったことはなかったが」
「いざしようと思うと」
「ここまで勇気が必要だとは思わなかった」
 二十九になってようやくわかったことだったのだ。
「とてもだ」
「じゃあどうするんですか?」
「答えは出た」
 それはだ。既にだというのだ。
 そしてだ。自分の前に様々な薬品を出したうえでだ。比佐重に言うのである。
「薬を使う」
「へえ、お薬をですか」
「媚薬だ。それを作りだ」
「それを松田教授に飲ませてですね」
「私を振り向かせる。私に振り向かせる為に」
「どうするんですか?」
「中に私の髪の毛を入れる」
 その長い髪の毛を一本取ってから言う。実際にだ。
「これでいける」
「何かそこまでいくと魔術みたいですね」
「魔術もまた科学だ。錬金術も然りだ」
 博士にとってはそうなのだった。
「だから研究している」
「何かそれを聞きますとですね」
 どうなのかとだ。比佐重は話す。
「何処かのショッカーの科学者みたいですね」
「死神博士か」
「それじゃないんですか?」
「理想だ」
 津波はその悪役そのものの博士についてこう話した。
「あの博士はだ」
「尊敬してるんですか?」
「ああした博士になりたい」
 そうだとだ。また話すのだった。
「是非な」
「あの、それって危険思想ですよ」
「危険思想上等だ」
 見事なまでに居直っている言葉だった。
「私は天才だ」
「天才だからですか」
「天才科学者は同時にマッドサイエンティストでなければならないのだ」
「それで世の中を混乱に陥れるんですね」
「そうしなければならない」
 こう言うのである。
「だから私はそのうちあの博士の様になる」
「じゃあ御自身を烏賊の改造人間にしちゃうんですね」
「鮫ではなかったか?」
「あれ諸般の事情で烏賊になったんですよ」
 比佐重はそうした内部事情も津波に話した。
「まあ主役の人が騒動で一時失踪してたって話です」
「ふむ。そうした事情があったのか」
「そうだったんですよ」
「成程な。しかし私はだ」
 自分はどうするかとだ。津波は比佐重に話した。
 
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