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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第2章 Fate/Fight with me Seriously
  第1話 新たなる住人

 
前書き
 この話を書いている途中で気づきました。
 3人共、王じゃん。いや、1人は正確には違いますけどね。 

 
 「では、自分でも何故そんな姿なのか身に覚えが無いと?」
 「うむ。生前はオカルト分野も齧ろうとしたが、結局魔術回路を具えていなかった上、自分をライオン顔や半機械化のスーパーヒーローに改造手術した覚えもとんと無いからね!」

 あまりの衝撃から立ち直った一同は、本人から事情を聴いていた。
 因みに、真名はトーマス・アルバ・エジソンだと言うのだから、また驚いた。
 先程よりかはマシだったが。

 「しかし、少年いや、マスター・・・」
 「士郎だよ、衛宮士郎。――――従属なんて求めてないし、呼ばれ方にもこだわりは無いからな。好きに呼んでくれていいぞ?発明王エジソン」
 「なるほど。ならばシロウ、結果的に私とそこの彼の二体のマスターになってしまった様だが、魔力供給は大丈夫かね?」
 「それならば心配は要らん。お前たちの存在を特殊な人形に納めているから、魔力が必要なのは宝具解放時のみよ」
 「おおっ!なんと言う合理性!実に結構な事だ。ところで大変恐縮なのですが、レディのお名前を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 話に混じって来たスカサハに、とんでもない格好(本人のせいでは無い)で紳士然としながらエジソンは尋ねた。
 それに対し、僅かに悪戯を企む小悪魔のような微笑をしたまま答える。

 「――――スカサハだ。聞いた事位はあるだろう?今はアルバとも名乗っているから人前ではそちらで呼んでほしいモノだな」
 『スカサハ?』
 「ん?知らないのか2人とも?」

 しかし実に意外な事に、エジソンも記憶欠如の少年英霊もスカサハの名前が初耳の様子だ。
 此処日本ならば兎も角、現地では光の御子の師匠で影の国の女王として有名な大英雄だ。
 それ以前に2人は英霊だ。寧ろ知らない方がおかしいのではと、疑問が尽きない。

 『・・・・・・・・・・・・』

 ただ士郎や他を除き、利信とスカサハの2人は理由を推測が出来たのか黙っていた。
 その内スカサハの事に気付いた士郎は、敢えて黙っていることを汲んで2人に話す。

 「――――と言う事で、ここでは出来るだけ師匠をアルバと呼んで欲しいんだ」
 「ふぅむ?それは命令かね?」
 「いや、頼みだけど。出来れば聞いて欲しい」

 確実に人並み以上に人を見る目がある2人は、士郎がそれを本心から言っていることを悟る。

 「頼み――――つまり対等な関係からの希望か、余は構わんぞ。キャスター、汝は如何だ?」
 「大いに結構だとも!それではこれからは、レディの事をミス・アルバと呼ばせてもらっても宜しいですかな?」
 「構わぬよ、メロンパークの魔術師。本来はお主の本名だと言うのに、偶然でこの様な事に成ってしまい、すまぬがな」
 「いやいや、その程度の事を気になさいますな。私の名を貴方の様な絶世の美女の偽名で使われる事など、光栄の極みと言うモノですよ」

 エジソンはスカサハを褒めちぎるが、スカサハの感想はそうか、で終わってしまった。

 「――――ところで、お主の呼び名は如何する?」 

 今度は対象がスカサハから記憶欠如の少年英霊に移った。

 「セイバーでは駄目なのか?」
 「・・・・・・念のため、その呼び名は控えた方がよかろうな。お主の素性は今も解らぬが、一般人を巻き込みかねない事態を良しとする人格性では無いのだろう?」
 「確かに、無辜の民に余計な被害を出すのは余も好むところでは無い・・・・・・気がする」

 一々自分の考えを吟味させながら言葉を選ぶ。
 そんな不安定さに、難儀な事だと僅かに同情した。

 「――――理解してくれて感謝するけど、如何する?」
 「ふむ・・・・・・・・・余に関わる何かを思い出して付けるとしよう」

 言いながら難しい顔をしながら必死に思い出そうと唸る。
 そして――――。

 「僅かに・・・思い・・だせたぞ」
 「ほう・・・それで何とする?」
 「うむ。余の仮初の名は――――」


 -Interlude-


 早朝。
 百代は士郎への借金返済の為と、組手稽古の条件の一つとして、元気よく掃除をしに来ていた。
 早朝の鍛錬は、組手をやる条件の一つの精神鍛錬をやったと証明させるため、今日からはやる気を出してくる前の川神院にて終わらせていた。
 だが・・・。

 「やぁ!君が噂のMOMOYOと世界で有名な、パワフル・ビューティフル・レディの川神百代嬢だね?私は昨夜からこの屋敷にてやっかいに与る事となった、トーマス・スティルウェルだ。今日から宜しく頼むよ、ミス・モモヨ!!」
 「・・・・・・・・・・・・」

 百代は呆然としていた。
 衛宮邸の敷地内に入った瞬間、いかにも濃ゆそうな金髪の巨漢が大声で豪快に挨拶して来たのだ。
 百代のが衛宮邸に通い出してまだ六日目。知る限りこの家の住人は士郎だけだ。
 少なくとも百代は、こんな巨漢の外国人が昨夜から住み込む事に成るなど初耳だった。

 「如何したんだい、ミス・モモヨ?君は庭の掃除をしに来たのだろう?」
 「え?あっ、は、え、あ、はい・・・」

 巨漢の外国人男性――――トーマス・アルバ・エジソンは昨夜のあの後、あの姿のままでは生活などままならないので、スカサハが魔術で人形に偽装を施したので、今の姿だった。
 勿論、本人の意思でON、OFFの付け替え可能だ。
 さらに、真名そのままではいろいろと問題が起きて来るので、生前の1人目の妻のファミリーネームを借りてトーマス・スティルウェルと名乗る事に成ったのだ。
 そのトーマス・スティルウェル(エジソン)から竹ぼうきを受け取った百代は、今だ衝撃を完全に拭いきれないながらも掃除をし始めた。

 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」

 居心地が悪い。
 何故かと言えば、トーマス・スティルウェルと名乗った巨漢にじっと見られているからだ。

 「あの・・・何ですか?」
 「ふぅむ。見れば見るほど美しい少女と思ってしまってな。如何なる理由があろうとも、嬉々として男の家に早朝から来て掃除をし始めるなど、一種の通い妻みたいなものかな」
 「なっッッっっっっ!!?!!???!!」
 「とは言え、庭の掃除だけでは通い妻と言うのも適切ではないか・・・ふむ?如何したのかね?」
 「なん・・・・・・お前の発言に、面を喰らうのを通り過ぎる程の衝撃を受けているのであろう!」

 自分をお前呼ばわりする声に向けて振り向くと、そこにはシーマと言う仮初の名に決まった爛爛と煌めく髪をなびかせる少年がいた。
 因みに、彼の鉤爪の様な手も銃刀法違反に引っかかるので偽装してある。
 勿論握手などをしたときに切り裂かれないように、感触の方も問題ない。

 「衝撃を受けるとは失敬な!彼女は非常に美しい少女であるが、女性であれば誰であろうと幾つになろうと褒める。ジェントルマンとして当然の姿であろう!!」
 「モノには限度があれば、時や状況と言うのもあるだろう。あと声のボリュームが一々デカい。近所迷惑になるであろう。マス――――シロウ達に迷惑を掛けるぞ」

 動きを一時停止させている百代の横で、衛宮邸の新たなる住人達はぎゃあぎゃあと言い合う。
 その隙にと、限定的な結界を張って掃除を既にあらかた終えた士郎に、スカサハが道場にてある話をしていた。

 「――――聖杯戦争が!?」
 「そもそもあの二体は、聖杯戦争というシステと枠組みの中で呼ばれた可能性があると言うだけじゃ。互いにセイバーとキャスターと呼び合っているのが良い証拠よ」
 「でもあれは、遠坂からの特殊な術式で――――」
 「もしかすれば特殊な術式だったのかもしれぬが、この世界に大聖杯や小聖杯が何処かにあれば、いとも容易くシステムに上書きされても可笑しくないぞ?」

 スカサハの言葉に押し黙る士郎。

 「とはいうモノの、この冬木市は勿論、川神や七浜にも小聖杯は無い。それは確かだ」
 「だったらそれは聖杯戦争では無いのでは?」
 「確かにそうとも言い切れるが・・・・・・・・・士郎、まさか気付いていないのか?」
 「何がです?」
 「左腕を見てみろ」

 スカサハに促されるまま衣服をまぐわって見たところで驚く。

 「これは・・・!?」
 「お前の記憶で覗き見たのが確かなら、令呪だな。間違いなく」

 スカサハの指摘通り、士郎の腕には令呪が刻まれていた。
 しかも六画―――つまり、二体分。
 今まで気づけなかったのは、令呪が刻まれた時はまだエジソン召喚時の驚愕から抜け出せていない時だったからだ。

 「じゃあ、ホントに・・・聖杯戦争?」
 「残念ながらな。――――それで私が言いたい事はこれからが本題だ」
 「これからが、ですか」
 「ああ。あの2人とも、共通して覚えていない事がある。恐らく召喚される前に2人の霊器が衝突するなどして、その衝撃で自分たちの諸々や聖杯から刷り込まれる英霊としての基本知識などを忘れているのだろう。――――それで私が言いたい肝心な記憶は、聖杯に託す祈りだ」
 「あっ!」

 スカサハに言われて今更に思い出した。
 士郎とは別の道を歩んだエミヤシロウ(可能性の象徴)の様な守護者なら兎も角、他にも例外が無い限り通常は自分の意思で召喚に応じて、自分の祈りを叶える為に聖杯戦争に参加するのだと第二・第三の魔術の師匠たちに教わっていたのだ。

 「通常の聖杯戦争であれば叶えてくれる祈りは一組のみ。故に、その時は覚悟しておけよ」
 「・・・・・・・・・・・・」

 黙る士郎を見て、スカサハは恐らく自分の分とは引き換えにとか考えているだろうなと、全く切り捨てる選択肢を取ら無さそうな姿を容易に想像できて苦笑する。

 「それでも悪い事ばかりでは無いぞ?少なくとも昨夜の事でよかった事が、現時点ではだが二つある」
 「良かった事ですか・・・?」
 「一つは双方がお互いに対して、明確な敵愾心を抱いていない事だ。通常であれば本人たちにその気があるかは問われずに、強制的に敵愾心なるものを刷り込まれている筈だからな」
 「確かに、あの2人にはそんな気は見られませんでした」

 ただ今現在2人は、百代の近くで言い争っている。

 『そもそも男子たる者、短髪が当然であろうが!百歩譲って長髪もありとしても限度がある!!何だその腰など遥かに超えた髪の長さは!私は君を初めて見た時、幼子と見間違たぞ!!』
 『不敬な!汝は中々の眼力と評価していたのにこれとは、その眼は節穴だったようだな!!』

 それを横で見ている百代は驚いた。
 いつの間にかに1人増えた事にも驚いていたが、男だと言う事実にも驚いていた。

 (私も美少女だと思っていた・・・)

 割りと酷い感想を内心で思っている百代をよそに、ますますヒートアップする2人の口論は続いて行く。
 その音量故、士郎もスカサハも気づいたが敢えて無視した。

 「もう一つは通常か、今までにない例外的な事態か、はたまたその枠組みを破壊する程かは知らぬが、聖杯戦争が始まっている事実を確認できている事だ」
 「そう・・・ですね。認識出来でいるか否かでは、別物ですからね」

 士郎は自分が聖杯戦争に知らない内に巻き込まれた事を思い出した。
 最後は結果的に勝利することが出来たが、事前に備えていれば無関係の人間の多くを救えたかもしれないと悩み悔やんだ事もあった。
 一応補足しておけば士郎自身も本来は被害者なのだが、自分をその中にカウントしないのは相変わらずである。

 「だがしかしまぁ、その備えが不確定要素満載のキャスターと、真名が分からぬ故に何に弱く何に強いかなどの対策もとれない上に宝具が使えないセイバーと来たものだ。不安満載だな!」
 「他人事のように言わないで下さいよ・・・」
 「しかも私自身、まだまだ面倒な制約の重複のせいで身動きが取りずらいと来たものだ。これで規格外級の宝具を持つ大英雄クラスの敵サーヴァントが今来たら、一巻の終わりだな・・・!」

 何所までも人ごとのように言うスカサハの態度に嘆息する士郎だったが、ある疑問が湧く。

 「そう言えば、通常の聖杯戦争とは違うと言うのは、参加しているペアの何処かがルール違反をしているとかですか?」
 「それだけならまだ可愛いだろう。私の予想する形は世界全てを巻き込むものだ。――――つまり、この星全土が聖杯戦争の戦場と言う事だな」

 スカサハの当たって欲しくない予想に、士郎は息をのむ。
 その反応に構わず続ける。

 「あり得ないと思うか?最悪の事態を回避したいのであれば、慎重しすぎ備えしすぎと言うモノは無いぞ。何せ、ガイアやアラヤ自体も巻き込まれているのやもしれぬのだからな」

 その言葉に以前自分が口にした疑問を思い出す。
 百代を抹殺するガイアの使徒のレベルが低すぎる。それに絡み手が多い。
 つまりそうせざる得ない何かがあると言うスカサハからの指摘もあった。

 「それは当然、大聖杯かそれ以上の物を作り、運営している“誰か”がいるって言う事ですよね?」
 「或いはどこかがな」
 「どう予想します?」

 士郎の疑問に目を閉じながら言う。

 「九鬼財閥に仕えるヒュームと言う男を(じか)に見ているし、総裁の九鬼帝だったか。あの男もテレビで見ているが、奴らでは無いな。まぁ、世界を又にかける大企業だ。組織が大きすぎれば親の監視の目を掻い潜り、裏でこそこそやっていても者達がいても可笑しくは無い。だが・・・」
 「こそこそレベルでは実現不可能ですよね」
 「ああ。だから恐らく九鬼財閥は無い。川神院は言うまでも無く論外。魔術協会は解体されているが、それと裏で殺し合いをし続けていた聖堂教会を取り込んだ西欧財閥は可能性があるな」
 「それともう一つ」

 士郎が強く答える。

 「以前の世界同様、この世界でもお前を拾ってくれた里親、衛宮切嗣とかいう奴が死に際に行っていた言葉か・・・」
 「はい。爺さんは確かにこう言ってました。―――――『マスターピースに気を付けろ』と」


 -Interlude-


 此処はマスターピースの代表、トワイス・H・ピースマンの執務室。
 そこには部屋の主も含めて、ある3人が揃っていた。

 「アメリカでの見届け役、ご苦労だったな」
 『ああ。とんだ茶番だった』

 トワイスの労いに対して皮肉気に答えたのは、残りの2人の内1人である軍神ラミー・ルイルエンドだった。
 背を壁にもたれ掛けるラミーは、仮面越しでも判る程に不機嫌さを露わにしていた。

 「茶番と言うのは正確では無い。彼らは真剣そのものだった」

 それを以前モニター越しでトワイスと話していた、全身黒づくめの怪人。黒子と呼ばれている男がラミーの不機嫌さに頓着せずに訂正を加えた。
 それに対し、嫌見たらしく真実を吐く。

 『その真剣さを利用された上でな。如何でも良い事だが、アイツらはこれからある種のオカルト集団として捕まる予定なんだろ?そんな使い捨てに同行したんだ。茶番で無く何だと言う』
 「仕方がない。これもいずれ必ず呼び寄せる全世界の黄金時代への布石だ。その為にはどうしても時間と犠牲がいる」
 『その為に表では戦争撲滅を掲げて、裏では人の進化を促すなんていう御題目のために、適度にテロリスト組織を支援・援助したり、紛争を煽る訳だ』
 「・・・・・・・・・・・・」
 「何か文句でもあるのか?エゴイスト。私欲優先の“狂戦士”風情が」

 ラミーの皮肉にトワイスは押し黙り、代わりにでは無いが黒子が言い返す。

 『いーや、その事については無い。単なる今回の事に対する腹いせだ。――――それにしても、そんなしれっとした態度でよくやるモノだなと、ついつい褒めたくなってな・・・!』
 「・・・・・・・・・覚悟なら出来ている。完全なる、永劫続く人理の黄金時代を成し遂げたなら、私は喜んで罪を自白してから、なぶり殺しだろうと受け入れよう」
 『そんな綺麗なお題目装うだけの自己満足だろ?エゴイストはお前もじゃないか。なぁ、トワイス・H・ピースマン殿・・・!私欲を満たすために誰かを犠牲にするやり方、私は嫌いじゃないぞ?』

 人間ぽくってと付け出し揶揄うラ軍神。
 そこへ黒子がある事を言う。

 「トワイスを揶揄うのもいいが、良いのか?此処で何時までも油を売っていて」
 『私がいつまで居座ろうと勝手だろう』
 「そう言う事では無い。そろそろ此処に、マスターピース技術局長の“ドクター”が来」

 全て言い終える前に、ラミーはその場から最高速度を以て去った。
 ラミーはこれから来る技術局長が苦手なのだ。
 そこへ僅かに遅れて“ドクター”が、ドアを乱暴に開けながら入って来た。
 ドクターと呼ばれた男は、昔の研究者っぽい服にマントをはためかせる。
 後は右腕は義手なのか、いかにも機械仕掛け精巧なのが特徴的だった。

 「ラミーが、彼女が!私の愛し“復讐者”が帰ってきていると言うのは!私がこれから築き上げる人類神話に誓って、本当かね!?トワイス・H・ピースマン!」
 「その名で呼ぶのは禁句だろう。“アレ”は今はあくまでも“狂戦士”だドクター」
 「む。やぁ、黒子!君も来ていたのか!だがいただけない、いただけないぞ!私の愛しの彼女を“アレ”と呼ぶなどと、今後は気を付けて欲しいモノだな!!」

 黒子の冷静な対応にドクターの声はよく通り過ぎて、いとも容易く部屋中に響き渡っていた。
 そんなハイテンションの魔人の態度に苦笑しながらトワイスが応える。

 「相変わらず楽しそうだな。ああ、来ていたよ。ただ君が来ると言ったら即座に出て行ったがね」
 「なんと!我々の仲だと言うのに、そんな照れる必要などないだろう?だがそんな所もチャーミングだ!そのおかげで私の心を今も直、鷲掴みにして離さないのだっっ!!はははははははははははははははははは!!」

 真実を告げても超ポジティブである。
 自分に対して、過剰なほどにまでに絶対の自信がある故だろう。
 この男はラミーが自分に対して、苦手意識を持っているなど露程も気づいていなかった。
 それを見かねて黒子が言う。

 「確か“アイツ”にも(・・)求愛していなかったか?」
 「いただけないと言えば何度判るんだね!!彼女こそは我ら英国紳士の誰もが求め敬うほどの至宝!!いや、英国だけでは無い!世界が生んだ未曾有の奇跡が顕現したお姿なのだ!そんな彼女こそ、いや、あの御方こそ!私と共に歩むに相応しすぎる存在なのだ!ははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 よくそんな高笑いをして声が涸れないなと、疑問視したくなるほどの声音だった。
 それにトワイスが爆弾を放り込む。

 「だが彼女は確か、どうしても思い出せないある男に一途な恋心を抱いて居た筈だが?」
 「そう・・・だった・・・・・・。おっのれぇええ!この天才を差し置いて、身の程を知らぬどこぞの馬の骨メェええええ!あの御方をどの様に騙して篭絡したか知らぬが、万死いや、億滅に値する!!」

 怒りが収まらないのか、未だ見ぬ仇に対して絶叫が鳴りやまない。
 時折ドクターから電撃が無差別に放たれて、部屋のあちこちに当たって火傷後を作っていく。
 ラミーがいると言う事も報告したが、本来はこれから彼自身と話し合わなければならない重要事項があるので、トワイスは逃げられない。

 (――――当然逃げたか・・・・・・)

 もう此処に居る意味は無かったので、黒子はドクターが怒り始めてからさっさと退散したのだ。
 トワイスを1人躊躇なく残して。
 文字通り孤軍奮闘となったトワイスは、自分の迂闊な発言に後悔しながら電撃を躱しつつ、彼の怒りが収まるのを堪え続けるしかなかった。 
 

 
後書き
 シーマと言うのはお分かりかと思いますが、自分の本名の『マ』と、彼が求めてやまない彼女の名の『シー』から取って繋げたモノです。
 決してスペイン語の“頂上”ではありません。
 ガーベラ・テトラを駆る海賊傭兵でもありません。
 私服については、各自のご想像にお任せします。
 服のセンス無いんで考えんのメンドクサイ。

 エジソンの偽装の姿は『鋼の錬金術師』に出て来るアレックス・アームストロングの様なガタイで、彼の実父のような顔をして、お洒落な柄のスーツに同じ柄のハットをかぶったダンディな男をイメージして下さればいいと思います。 
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