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英雄伝説~光と闇の軌跡~(零篇)

作者:sorano
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第1話

~クロスベル市・駅前通り~



「――――ここから先はクロスベル市の地下に広がる『ジオフロント区画』になる。今から、この中に潜ってもらう。」

ロイド達を目的の場所まで連れて来たセルゲイは説明をし

「ええっ!?」

「も、潜るって………」

「おいおい。どういうことッスか?」

説明を聞いたロイドは驚き、エリィは戸惑い、ランディは尋ねた。

「お前達の総合能力、および実戦テストのためだ。ジオフロント内部はそれほど手強くないが魔獣のたぐいが徘徊している。それらを掃討しながら一番奥まで行ってもらおう。」

「なるほど………」

「実践テストか。ま、それなら気が楽かね。」

そしてセルゲイの説明を聞いたエリィとランディは納得したが

「ちょ、ちょっと待ってください!テストはともかく……どうして魔獣の徘徊する場所にわざわざ入る必要があるんですか?警備隊じゃあるまいし………捜査官の仕事じゃないですよね?」

(………一体、何を考えているの、セルゲイ………)

ロイドは焦った様子で尋ね、ルファディエルは考え込みながらセルゲイを見つめていた。

「クク、確かに普通は捜査官の仕事じゃないだろう。―――だが、特務支援課に所属するメンバーは話が別だ。」

「え”……………」

そしてセルゲイの答えを聞いたロイドは固まり

「――――詳しい説明は後だ。まずはコイツを受け取れ。」

セルゲイはロイド達に携帯端末らしきものを手渡した。

「これは………」

「新型の戦術オーブメント?」

「へえ………ずいぶん洒落たデザインだな。」

「第5世代戦術オーブメント、通称『ENIGMA(エニグマ)』………ようやく実戦配備ですか。」

渡された携帯端末―――”ENIGMA(エニグマ)”をロイドとエリィは驚きの表情で見つめ、ランディは感心した様子で呟き、ティオは説明をした後セルゲイに確認した。

「ああ、財団の方から先日届いたばかりの新品だ。お前達の適正に合わせてすでに調整もされている。使い方は――――ティオ。お前がレクチャーしてやれ。」

「………面倒だけど了解です。新型用のクオーツはありますか?」

「ああ、少ないが受け取れ。」

ティオに尋ねられたセルゲイは頷いた後各種のクオーツをロイド達に手渡し

「それと、肝心のコイツだ。」

続いてジオフロントAの鍵をロイドに渡した。



「それじゃあ、一通り魔獣を掃討したら本部に戻って来い。細かい話はその後してやろう。おっと――――ついでにこいつも渡しておくぞ。」

そしてロイドにいくつかの手帳を渡したセルゲイはどこかに向かい始め

「ちょ、ちょっと課長!?」

セルゲイの行動に驚いたロイドは呼び止めた。

「―――ああ、それとロイド。とりあえずお前、リーダーな。」

「へっ…………」

「今の所、捜査官としての正式な資格を持っているのはお前だけなんだ。そんじゃあ任せたぞ。」

呼び止められたセルゲイはロイドに指示をした後、去って行った。

「………………」

(おおっ!いきなりリーダーに昇格とはさすがはロイドだな!かかかっ!)

(笑いごとではないでしょうが………一体何を考えているつもり、セルゲイ………)

セルゲイが去った後ロイドは固まり、ギレゼルは陽気に笑い、ルファディエルは溜息を吐いた後考え込み

「ハッハッハ。押し付けられちまったなぁ?」

「ふふ、でも捜査官の資格を持っている人がいて心強いです。ロイドさん。よろしくお願いしますね。」

ランディは笑いながらロイドを見つめ、エリィは微笑みながらロイドを見つめた。

「あ………いや、呼び捨てでいいよ。見た所歳も近いみたいだし。」

「そう?ちなみに私は18だけど………」

「ああ、それなら同い年だ。えっと、あなたたちは………?」

エリィの答えを聞いて頷いたロイドはランディとティオを見回して尋ね

「俺は21だが、堅苦しいからタメ口でいいぜ。よろしくな、ロイド、エリィ。」

「ええ、こちらこそ。」

「ああ、よろしく頼む。」

尋ねられたランディは答え、ランディの言葉に頷いた2人はランディと共にティオを見つめた。

「………えっと……それで、君の方は………?」

「――――14ですが、問題が?」

「い、いや~。別に問題があるわけじゃ………」

ティオの答えを聞いたロイドは苦笑しながらティオを見つめたが

「って、14歳ッ!?」

すぐに驚きの表情で叫び

「ハハ、なんだ。見た通りの歳ってわけか。」

「驚いた………そんな若くて警察に入れるものなのね。」

ランディは笑みを浮かべ、エリィは驚きの表情で見つめた。

「いやいや!どう考えてもおかしいから!たしか一般の警察官でも16歳以上だったはずだし………日曜学校も卒業していない子がどうして警察なんかに――――」

一方ロイドは慌てた様子で突っ込んだ後、真剣な表情で尋ねようとしたが

「………正確に言うとわたしは警察官ではないです。エプスタイン財団から出向したテスト要員ですので。」

ティオが先に答えた。

「へっ………!?」

「エプスタインっていやあ、さっきの戦術オーブメントの………」

「そう………なるほどね。ここ数年、クロスベル市が財団と協力して大規模な計画を進めているのは聞いていたけど………」

ティオの答えを聞いたロイドとランディは驚き、エリィは納得した様子でティオを見つめた。

「『導力ネットワーク計画』ですね。そちらにも少しは関わっていますがわたしの出向目的は別にあります。………これです。」

一方ロイド達に見つめられたティオは説明をした後、魔導杖を見せた。

「それは………」

「機械仕掛けの………杖?」

「『魔導杖(オーバルスタッフ)』といいます。この新武装の実戦でストのため、わたしは財団から出向しました。………ロイドさん。ご理解いただけましたか?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!もしかして………その杖を使って君も戦うのか?」

「………捜査官の資格があるのにずいぶん察しが悪いんですね。『実戦』テストのために出向したと言いましたが………?」

自分の話を聞き驚いた後、真剣な表情で見つめてくるロイドをティオは呆れた様子で溜息を吐いた後、ジト目で見つめて言った。



「うっ………」

ティオに見つめられたロイドは一歩下がった。

「まあまあ。ここでモメても仕方ないぜ。この先のジオフロントってのがどれだけ危険かは知らないが……まずは、あのオッサンが押し付けた任務(ミッション)をクリアする事を考えようや。」

「そうね……納得できないことも多いけど。」

「……わかった。すまない、ティオ。気分を悪くしたら謝るよ。」

そしてランディとエリィに諭された後頷き、ティオを見つめて言った。

「別に……あなたの反応は常識的だと思いますから。それと話の続きになりますが、他にも魔術を数種類扱えますので後方からの援護は任せて下さい。」

「へっ……!?」

「まあ……」

「こりゃ、驚いたな………”魔術”っていやあ、噂の異世界独特の術とやらで異世界出身者以外は使えないと聞いた事があるぜ?」

ティオの話を聞いたロイドとエリィは驚き、ランディは興味深そうな様子でティオを見つめて尋ねた。

「………別に異世界出身者のみしか使えないわけではありませんよ。魔術の適性があり、指導があれば私達でも習得は可能です。」

「それは私も知っているけど………ティオちゃんは誰かに指導してもらったの?」

ティオの説明を聞いたエリィは頷いた後、尋ね

「ええ。――――”闇の聖女”と言えば誰の事かわかると思いますが。」

「へっ………!?」

「オ、オイオイオイッ!その”闇の聖女”ってあれだろ!確か異世界の宗教のトップの一人だろう!?」

「――――”ゼムリア2大聖女”の一人でありアーライナ教会最高指導者にして異世界の大国、メンフィル帝国の前皇帝――――”英雄王”リウイ陛下の側室の一人であると同時に、メンフィル帝国の中でも指折りの実力を持つ大魔術師と称されるペテレーネ様だけど………一体どんな縁で、あの方に魔術を指導してもらえたのかしら?」

「……少々特殊な事情があり、その方に指導してもらえる機会があった…………とだけ答えておきます。」

(そ、その特殊な事情が非常に気になるんだけどな………)

(ああ。凄く気になるな……)

(…………どうしてあの方が…………………)

ティオの話を聞いたロイドとランディは小声で会話をし、エリィはティオから視線を逸らして考え込んでいた。

「ところで、わたしの武装はこの『魔導杖』ですが……皆さんの武装は何ですか?」

「ああ、それじゃあ――――俺の得物は、これだよ。」

そしてティオに尋ねられたロイドは自分の武器―――”トンファー”を見せた。

「それは、警棒の一種……?」

「トンファーか。東方で使われる武具だな。殺傷力より防御と制圧力に優れているらしいが……」

「なるほど、警察官らしい装備ね。」

ロイドが見せた武器を見たランディとエリィは頷き

「?その腰につけている2丁の導力銃は使わないんですか?」

ロイドの腰に装着されてある2丁の銃に気づいたティオは尋ね

「え?ああ………勿論、これらも使うよ。」

尋ねられたロイドはトンファーを仕舞った後、2丁の銃を左右の手に1丁ずつ持って構え、エリィ達に見せた。

「2丁の銃を同時に?」

「へー……双銃とは珍しいな。」

「見た事がない種類の導力銃ですね……」

ロイドが見せた2丁の銃を見たエリィは不思議そうな表情をし、ランディとティオは興味深そうな様子で武器を見えた。

「えっと………正確に言えば、これらは導力銃じゃないんだ。………”双聖銃”って言って、弾丸は導力エネルギーではなく、銃に内蔵されてある光の魔力エネルギーを弾丸として放つんだ。」

「初めて聞く銃だな……」

「”魔力”という事は異世界の武器なんですか?」

ロイドの説明を聞いたランディは感心した様子で呟き、ティオは尋ねた。

「ああ。知り合いで異世界出身の人がいて、俺が警察官を目指すって知った時、その人がこの銃をくれて、使い方とかを教えてもらったんだ。」

「そうなの………」

(なっ!?あの銃は……!何故あの銃をあの人間が持っている!?)

(あの銃は確かルファディエルが仙崎千尋に授けた銃と同じ銃………何故、あの銃が………あれはルファディエルしか作れないはずだが………まさか、奴もこの世界にいるのか?)

ロイドの話を聞いたエリィは興味深そうな様子で2丁の銃を見つめ、エリィの身体の中にいるメヒーシャは銃を見て驚き、ティオの身体の中にいるラグタスは銃を見た後、考え込んでいた。



「それでエリィの得物は?その腰に付けている細剣(レイピア)かい?」

「ええ。……けど、どちらかと言うと私が主に使う武器はこれね。」

そしてロイドの質問に頷いたエリィは導力銃をロイド達に見せた。

「導力銃……少し古いタイプですね。」

「ずいぶん綺麗な銃だな………」

「競技用に特別にカスタムしてもらったものよ。旧式だけど、狙いの正確さは期待してくれてもいいと思う。それと私もティオちゃんと同じで、魔術が扱えるわ。」

「エリィも使えるのか………」

「ハハ、魔術使いが2人もいるなんて心強いな。」

エリィの説明を聞いたロイドは驚き、ランディは口元に笑みを浮かべながらエリィを見つめ

「………ちなみにエリィさんも異世界出身の方に指導してもらったのですか?」

ティオはエリィを見つめて尋ねた。

「ええ。………姉の知り合いで異世界出身の方達がいたから、剣術も含めてその方達に指導してもらったわ。………最も、両方ともその方達と比べたらまだまだだけどね。」

「へ~………」

「……………………………」

「ほ~………ちなみにそのお姉さんは美人?」

エリィの話を聞いたロイドは興味深そうな様子で呟き、ティオは黙ってエリィを見つめ、興味深そうな様子で呟いたランディは真剣な表情でエリィに尋ね

「ええ。お姉様は女の私から見ても、とても綺麗な方よ。」

「歳は?」

「私の2歳年上だから、20だけど……………」

「……………………」

エリィの答えを聞いたランディは黙り込んだ後

「一つ年下で美人か…………ストライクど真ん中!おーし、みなぎって来たぜぇ!!そのお姉さんと会える機会があれば是非!紹介をよろしく頼むな!」

「あのな………(この様子だとセシル姉やルファ姉も見たら、同じ反応しそうだな……)」

「……………………………(ある意味、度胸のある方ですね………)」

空に向かって叫んだ後真剣な表情でエリィを見つめ、その様子を見たロイドは呆れ、ティオは心の中で呆れながら蔑むような視線でランディを見つめた。

「……言っておくけど姉は既に結婚しているし、もうすぐ子供を産む身よ。」

「ガクッ!それを先に言ってくれよ…………」

そしてジト目になったエリィに見つめられて言われた話を聞いたランディは肩を落とした。

「ハハ………それで話を戻すけどランディの得物は?」

「ん?ああ。俺の得物はコイツだ。」

苦笑しているロイドに言われたランディは気を取り直して自分の武器―――スタンハルバードを見せた。



「それは………ずいぶん大きな武器だな。」

「中世の騎士が使っていたハルバードみたいな形ね………」

「………財団の武器工房で見かけたことがあります。導力を衝撃力に変換するユニットが付いていますね。」

「ああ、スタンハルバードだ。ちょいと重くて扱いにくいが一撃の威力は中々のもんだぜ。」

「なるほど………ティオの杖が、どういうものかわからないけど………魔獣との戦闘になったらバランスよく戦えそうだな。」

スタンハルバードの説明を聞いたロイドは頷いた後、エリィ達を見回して言った。

「確かに………」

「ま、そのあたりも考えて俺達を集めたのかもしれんな。あのオッサン、とぼけた顔して結構したたかそうだし。」

「………そうですね。わたしの魔導杖の性能はおいおい説明するとして………先程支給された戦術オーブメントの説明をします。」

「ああ、頼むよ。」

ロイドの言葉にエリィとランディは頷き、ティオは同意した後ロイド達に新たなオーブメント――――『ENIGMA(エニグマ)』の説明をした。



その後ロイド達はジオフロントの探索を開始した……………


 
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