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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第96話

その後再び学院内を周り始めたリィンは生徒会室を訊ねた。



~トールズ士官学院・学生会館・生徒会室~



(トワ会長……こっちにいるはずだよな。ちょうど今日、生徒会の引継ぎが終わるって聞いたけど……)

部屋に為にリィンは扉をノックしたが、返事は返って来なかった。

「(……?気配はあるみたいだけど……あ……ひょっとして。)……失礼します。」

以前にも似たような経験をしたリィンは返事が返って来なかった理由を察し、念の為に一言断ってから扉を開けて部屋に入室した。



「……すーっ……すーっ……」

部屋に入るとトワが机にうつぶせになって、居眠りをしていた。

(やっぱりか……引継ぎとか、春からの準備で忙しくしてたんだろうな。はは……端末室の事を思い出すな。)

トワの寝顔を見つめていたリィンはふとかつて学院祭の出し物について悩んでいた事をトワに相談した出来事を思い出した。

(……っと、あんまり寝顔を見たら怒られるか。)

「……ん………アンちゃん……ジョルジュ君に……クロウ君も……」

「トワ会長……」

トワの寝言を聞いたリィンは複雑そうな表情で呟いた。



「ン……?」

「あ……」

するとリィンの声に反応したトワが起き上がり、リィンに気付くと慌て始めた。

「わわっ、リィン君っ!?ふええええっ!?どうしてわたしの部屋にいるのっ!?エッチなのは卒業してからだよ!って……生徒会室……そっか……寝ちゃってたんだ……」

「……はは……すみません。ノックはしたんですけど。」

我に返ったトワの様子をリィンは苦笑しながら見守り、声を掛けた。

「あ、あはは……わたしが悪いんだし気にしないで。ああもう、何でリィン君にはこんな所ばっかり……ううっ……また寝顔見られちゃったし……」

「えっと……なるべく見ないようにしましたから。」

「うう……それならいいけど。取りあえず、立ったまんまもなんだし、ソファーに座ってお話しようか。」

「はい。」

そしてリィンはトワと共にソファーに座った。



「……引継ぎ、一通り完了したんですね?」

ソファーに座り、トワのデスクを見つめて書類が無い事を確認したリィンはトワに訊ねた。

「うん、これでわたしも晴れて生徒会長退任、かな。次の子達も優秀だから教える事も無かったんだけど。」

「……お疲れ様でした。卒業したらNGO―――”非政府組織”巡りでしたか。」

「うん、政治・経済・技術・医療とか幾つかの分野があるんだけど一年間は勉強させてもらうつもり。その後……軍か省庁に入るかはちょっとわからないけど。」

「どちらからもしつこいくらい熱心に勧誘されていましたよね。それで一年の猶予付きで何とか引きさがってもらって……カレイジャスを率いてあれだけの指揮を取っていたら当然な気もしますけど。」

「う、うーん……ただ必死だっただけなんだけど。でも、これからの事を考えると色々な視点は持っておきたいから。軍に入るにしても省庁に入るにしても自分の考えは持っておきたいんだ。何よりもエレボニアの未来の為に―――って、えへへ、ちょっと大げさかな?」

リィンの話を聞いて恥ずかしがった後決意の表情で答えたがすぐに苦笑した。



「いえ……会長がそういう道を選んでくれて、本当に心強いです。頑張りすぎて無茶だけはしないで欲しいですけど……応援、しています。」

「えへへ……ありがとう。そう言えば、どうしたの?来てくれて嬉しいけど用事があったんでしょう?」

リィンの応援の言葉に恥ずかしそうに笑ったトワだったがリィンの訪問の理由が気になり、不思議そうな表情で訊ねた。

「っと、そうでした。明日は自由行動日ですから何かお手伝いすることはないか聞きに来たんです。」

「え、でも……明日は君達最後の――――」

「……だからこそ、今まで通りに過ごしたいんです。俺達”Ⅶ組”の”最後の自由行動日”を――――」

「…………そっか…………」

リィンの話を聞いたトワは静かな表情でリィンを見つめて黙り込んだ後やがて答えを口にした。

「―――うん、わかったよ。幾つか心当たりもあるし、寮の郵便受けに入れておくから。よろしくお願いね、リィン君。」

その後生徒会室から退出し、寮に戻ろうとすると誰かが声を掛けて来た。



~校門~



「リィン!」

声に気付いたリィンが振り返ると”Ⅶ組”の面々がリィンに近づいてきた。

「エリオット……なんだ、みんな勢ぞろいか。」

「あはは……すごい偶然だよね。」

「ふふ……リィンも帰るのよね?」

「ああ、もちろん。」

「じゃあ、行くとしようか。」

そしてリィンは”Ⅶ組”の面々と残り少ない全員での下校を始めた。



~トリスタ~



「………………」

仲間達と共に下校しているリィンは”ライノの花”が咲く木を見つめ

「もうちょっと、かな。」

「ああ、今月末くらいに満開になるんだったか。」

「?一体何が満開になるの??」

「フフ、”ライノの花”ですよ、エヴリーヌお姉様。」

フィーとガイウスの会話の意味がわからないエヴリーヌにプリネは微笑みながら答えた。



「3月末……ちょうど入学式と同じか。我らが初めて出会った日と。」

「そうですね……」

ラウラの言葉にエマは頷いた後仲間達と共に昔を思い出していた。

「みんな、入学式の日に初めて会ったんだよね?」

「ああ、そうだな。正直あの時はどうなるかと思ったもんだけど。」

「えへへ、そうだよね。マキアスとユーシスなんか出会っていきなりだったし。」

ミリアムの疑問に答えた後呟いたリィンの言葉に同意したエリオットは入学式でのオリエンテーションでいきなり喧噪な空気になったマキアスとユーシスを思い出していた。



「あれは……その、僕も悪かったというか。」

「まあ、気にするな。未熟さゆえの過ちは誰にもあるだろうからな。」

「ありがとう―――って、自分は悪くないような顔をしてるんじゃないっ!散々上から目線でこき下ろしてきたくせに!」

「だから誰にもと言っているだろうが?」

「あはは……」

いつものように口喧嘩を始めたマキアスとユーシスを見たエマは苦笑し

「フフッ、入学式の時と比べたら本当に天と地の差ですよ……最初の”特別実習”の時点で今のお二人の関係の10分の1でもあったら、あたしも少しは楽ができたのですけどね……」

「お、お姉様?どうしてそんなにも疲れた顔をなさっているのですか??」

疲れた表情で肩を落として呟いたツーヤの言葉を聞いたリィン達が冷や汗をかいている中、セレーネは戸惑いの表情でツーヤに声をかけていた。



「ふふ……今となっては懐かしいわね。」

「ふむ……懐かしいと言えばアリサとリィンのあれもあったか。」

懐かしそうな表情をしていたアリサだったがラウラの言葉を聞くとリィンと共に表情を引き攣らせた。

「ちょ、ラウラ!?」

(誰か言うと思った……)

アリサが慌てている中、リィンは疲れた表情をしながら入学式のオリエンテーションの際、落とし穴によって落下するアリサを助けた時にアリサの胸が自分の顔に当たっていた出来事を思い出した。



「なになに、面白そう!?」

「どうせリィンの事だから、何かの拍子でアリサの胸でも触ったんじゃないの?みんなの話だと内戦の時にアリサ達が露店風呂に入っていた時も突入した事があるくらいだし。」

「エ、エヴリーヌお姉様!」

(び、微妙に当たっていますから反論できませんね……)

「えっと……その……違いますわよね、お兄様?」

一方事情を知らないミリアムが興味深そうな様子をしている中、エヴリーヌが呟いた言葉を聞いたプリネは慌て、ツーヤは苦笑し、セレーネは表情を引き攣らせながらリィンを見つめ

「ん、エヴリーヌの推測、微妙に正解。実は――――」

「わ、わざわざ言わなくってもいいのっ!」

フィーが答えようとするとアリサが声をあげて制止した。その後リィン達は町の広場のベンチに集まって談笑を始めた。


「ふふ……それにしてもサラ教官とレオンハルト教官には驚かされたな。」

「いきなり落とし穴がガコン―――だもんねぇ。しかもレオンハルト教官はレオンハルト教官で全く反応しないで、見守っていたし。」

ガイウスの話を聞いたエリオットは困った表情で答え

「その後、何とか脱出して石の守護者(ガーゴイル)と戦って……」

「苦戦はしたが、何とか全員で倒し切ったのだったな。」

「で、その直後にプリネとツーヤが現れてわたし達が苦労して倒した石の守護者(ガーゴイル)を瞬殺して”力の違い”を見せつけていたよね。」

「そ、そうなのですか!?」

「キャハッ♪さすがプリネだね♪」

「ア、アハハ……」

「別にそのつもりはなかったのですが……」

エマとユーシスの後にジト目になってプリネとツーヤを見つめるフィーの言葉を聞いたセレーネは驚き、エヴリーヌは口元に笑みを浮かべ、プリネとツーヤはそれぞれ苦笑していた。



「そうそう、その後ちゃっかりサラ教官とレオンハルト教官が現れたんだった……」

「二人ともタイミングを見ていたとしか思えなかったわよね。」

「間違いないと思う。」

疲れた表情をしているマキアスの後に呟いたアリサの言葉にフィーはジト目で同意した。

「でも―――あれが俺達の”始まり”なのは間違いない。多分、あの日のことはずっと覚えてる気がするな。」

「リィン……」

「ふふ……そうだな。」

「……どんなに時が流れても色褪せない気がします。」

「はい。例えどれだけの時が流れようと……」

「プリネさん……」

「プリネ………………」

人間であるリィン達と違うプリネはエマの言葉の重みを誰よりも理解しており、その様子をツーヤとエヴリーヌは静かな表情で見つめていた。



「むー、いいなぁ、いいなぁ!こうなったらボクがもっと凄い事をして最後に強烈な思い出を―――!」

「やめときなさい。」

「ミリアムさんの場合ですと、色々な意味で強烈になるのですから本当にやめてください……」

無邪気な笑顔を浮かべて声をあげるミリアムにリィンとセレーネはそれぞれ疲れた表情で制止し

「まったく……先が思いやられるな。」

ユーシスは呆れた表情でミリアムを見つめていた。その後リィン達は再び寮への下校を始めた。



「そう言えば……晩ご飯、みんなどうする?」

「ふむ、キルシェあたりで済ませるつもりだったが……」

「自炊をしてもいいかもしれませんね。手分けすればメニューも豊富になりそうですし。」

「そうね、たまには料理しないと腕も鈍りそうですし。」

「うん、私も異存はないぞ。」

「えー、めんどくさい。外で食べた方が楽だし、美味しいじゃん。」

第三学生寮の前で立ち止まって夕食を自炊にする事に盛り上がっている中めんどくさそうな様子で呟いたエヴリーヌの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかき

「お願いしますから、エヴリーヌお姉様も少しは空気を読む事も覚えてください……」

「こっちもこっちで先が思いやられるよな……」

「全くだな。あの様子だと、メンフィルに戻れば自堕落な毎日を送りそうだな。」

「エヴリーヌ様は客将なのですから、そんな事はないと思うのですが……そうですわよね、ツーヤお姉様?」

「ア、アハハ……(学院に来る前のエヴリーヌさんの生活を考えたら実際そうなりそうなんだよね……)」

プリネは疲れた表情で呟き、マキアスと共に呆れた表情でエヴリーヌを見つめるユーシスの推測を聞いたセレーネに話を振られたツーヤは苦笑しながら答えを誤魔化した。



「ハハ……よし、それなら買い出しも含めてみんなで手分けして――――」

「その必要はありませんわ。」

そしてリィンがアリサ達に提案しようとしたその時聞き覚えのある可憐な声が聞こえ、声に気付いたリィン達が振り向くとそこにはシャロンが微笑んでいた。

「へ―――」

「貴女は……」

「だからシャロン!なんで貴女がいるのよっ!?

シャロンの登場に仲間達が呆気に取られている中、アリサは疲れた表情で指摘した。そして優雅にスカートを摘み上げて一礼をしたシャロンは理由を説明し始めた。



「会長のお許しを頂きまして。今一度、第三学生寮の管理人を拝命いたしました。短い期間ではございますが皆様のお世話をさせて頂きます。早速、今夜のお食事も準備している最中ですわ。

「そ、そうだったんですか……」

「じゃ、遠慮なく。」

「世話になろう。」

「えへへ、今夜は御馳走だね!」

「ん。これで卒業までのご飯は楽になったね。」

「それ以前にエヴリーヌさんはずっと楽をしていたはずですけど……」

「ま、まあまあ。」

「って、RFグループの建て直しを手伝っているんじゃなかったの!?おまけにクロスベルからの注文が殺到して生産ラインが追いつかない上新しくできた”工匠”制度によって今後様々な商業界に進出して来る”工匠”達のスカウトやクロスベル帝国の共同開発の件だって……」

仲間達が呑気な様子でシャロンを受け入れている中、アリサは疲れた表情で声をあげた後真剣な表情でシャロンを見つめた。



「大旦那様がお戻りになったので今の所は大丈夫ですわ。会長と張り合いながら諸案件を次々と片付けてらっしゃいますし。それに何より”新人”であるエウシュリーちゃん達が4人全員でわたくしの二人分は働いてくれますので♪」

「ああもう……」

シャロンの説明を聞いたアリサは呆れた表情をし

「さすがはグエン老だな。」

「しかもあの訳のわからん天使のメイド達もそんなに能力が高かったとはな。」

「4人とは言え、普通のメイドの方とは比べものにならない能力をお持ちになっているシャロンさんの二人分の働きをするだけでも十分過ぎますわよね……?」

ガイウスやユーシスは感心した様子でそれぞれの人物達の顔を思い浮かべ、セレーネは苦笑していた。



「あー、お腹空いた~。ちょっと暖かくなってきたしそろそろビールの季節よね~。と言う訳で奢りなさい、レーヴェ。上司命令よ。」

「何が”と言う訳”だ。学院長にパワーハラスメントで訴えてやろうか。」

「あら~?悪名高き”結社”の”執行者”の連中の中でもトップクラスの実力を持つ”剣帝”様がそんな”執行者”として情けない事をするのかしら―――ってあら?何してるの君達―――」

するとその時レーヴェと共に寮に戻って来たサラ教官はシャロンに気付くと血相を変えた。

「げげっ、なんでアンタがここにいるのよ!?」

「ご無沙汰しております、サラ様、レーヴェ様。ビールのおつまみでしたらカキの燻製やオイルサーディンを仕込んでありますけど……ご夕食の時にお付けしますか?」

「うぐっ……よろしくお願いします……」

「フッ、先程の言葉をそっくりそのまま返してやろう。A級正遊撃士の中でもトップクラスの実力を持つ”紫電(エクレール)のバレスタイン”が酒のつまみの為だけにかつての敵に膝を折っていいのか?」

シャロンに微笑まれて疲れた表情で肩を落としているサラ教官にレーヴェは静かな笑みを浮かべてサラ教官を見つめ

「ぐぐっ……!これだから”執行者”の連中は嫌なのよ~!特にその余裕ぶったドヤ顔!」

レーヴェに図星を突かれたサラ教官は声をあげてレーヴェとシャロンを睨み、その様子を見守っていたリィン達は冷や汗をかいた。



(シャロンさん、微妙な立場なのに結構平気で動いているよね……)

(多分、メンフィルに寝返ってそれぞれの新たな立場を確保したサンドロッド卿やクロチルダさんのようにRF社とクロスベル政府の間で協定が結ばれてるんだろうな……まあ、シャロンさんなら関係なしに手伝いにきてくれそうだけど。)

その後久しぶりのシャロンの夕食に舌鼓を打った後……リィン達もそれぞれの自由時間を満喫し始め、夜に仲間達とそれぞれ会ってこれからの未来について談笑し終えたリィンは明日に備えて休む為に自室に戻った。



~第三学生寮・リィンの私室~



「…………そろそろ寝るか。そう言えば今日は確かエーデル先輩だったけど……夕方にしたから、今夜は来ないよな。」

自室に戻ったリィンはもはや恒例化している共に夜を過ごす相手を思い出した後冷や汗をかいて呟き、就寝の準備をしようとした。

「リィン君、いるかしら?」

するとその時扉がノックされ、エーデルの声が聞こえて来た。

「エ、エーデル先輩!?え、ええ、いますけど……」

「失礼するわね。」

「エ、エーデル先輩……その……今夜は何の御用でしょうか?」

自室に入って来たエーデルにリィンは冷や汗をかきながら訊ねた。



「あら、女が就寝前の男の部屋に訊ねると言ったら理由は一つしかないでしょう♪」

するとその時カトレアへと人格が変わり、カトレアはリィンに抱き付いた。

「カ、カトレアさん!?そ、その……夕方にしましたから、今夜は必要ないんじゃ……」

「それはそれ、これはこれよ♪それにリィン君だってあれだけじゃもの足りないでしょう?」

「……ッ……!?い、いえ……あれで十分ですよ……」

カトレアに妖艶な笑みで微笑まれたリィンは一瞬で夕方の情事を思い出した後カトレアから視線を逸らしたが

「そう言っている割にはもうここは大きくしているみたいだけど?」

「ちょっ、そこは……!?」

カトレアにある部分を触られると慌て始めた。

(うふふ、結界展開っと♪)

「ベ、ベルフェゴール……」

そしてベルフェゴールが展開した結界に気付くとリィンは冷や汗をかき

「フフ、準備も整った事だし、始めましょうか♪」

カトレアはリィンをベッドに連れて行った後、エーデルと人格を交替しながらの情事を始めた。 
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