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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第94話

~トールズ士官学院・1年Ⅶ組~



「辺境の領主であったアルゼイド家がノルティア州の統括領主等今でも分不相応だと今でも父共々思っているのだがな……内戦の功績と言っても大した事はしていないしな。」

仲間達に視線を向けられたラウラは困った表情で答え

「子爵―――いや、侯爵閣下は充分功績を残したじゃないか。」

「帝国貴族の大半が皇家に歯向かった状況でありながら皇家の窮地に力になった数少ない貴族なのだから、当然の評価だな。」

「アルフィン殿下とセドリック殿下に預けるまでの間のカレイジャスの指揮にオリヴァルト殿下の護衛を務めながら、内戦の終結に大きく貢献しましたものね。」

謙遜している様子のラウラにマキアス、ユーシス、プリネはそれぞれ指摘した。



「まあ、貴族連合の中枢部だった残りの”四大名門”を統括領主にし続けるのは問題があったから、ちょうどよかったんじゃないかな~。今のエレボニア皇家が本当に信用できる貴族って誰でも覚えられるくらい少ないし。」

「それは……」

「内戦の最中実際にエレボニア皇家に味方した貴族は”アルゼイド家”と”ヴァンダール家”だけでしたからね……」

ミリアムの指摘を聞いたリィンは複雑そうな表情をし、ツーヤは重々しい様子を纏って答え

「その件もあってゼクス中将は壊滅した近衛隊を再結成する為に近衛隊の団長に就任して更に軍位が”大将”へと上がりましたし、ゼクス大将が率いていた”第三機甲師団”は近衛兵へと昇任したのでしょうね……」

「ガイウスさんは複雑ですか?ノルドの民達とゼクス大将達の関係は良好でしたし……」

「複雑というか寂しい気持ちだな。だが、オレや父さん達もみんな中将達の昇任を祝福している。」

複雑そうな表情で表情で答えたエマと共にガイウスに視線を向けたセレーネはガイウスに問いかけ、セレーネの問いかけにガイウスは静かな表情で答えた。



「機甲師団と言えば確かエリオットのお父さん達―――”第四機甲師団”は帝都……じゃなくて王都の守備部隊になって、エリオットのお父さんも大将に上がったんだっけ?」

「うん。そのお蔭で父さんが毎日実家に帰って来れるから嬉しいんだけど、同時に複雑なんだよね……ほら。父さんって、過保護だから。」

フィーの疑問に頷いたエリオットは困った表情をし

「?何で複雑なの?親から可愛がってもらえるのに。」

不思議そうな表情で首を傾げたエヴリーヌの言葉を聞いたリィン達は冷や汗をかいた。



(プリネさんに対して過保護なエヴリーヌさんにだけはクレイグ大将も言われたくないですよね……?)

(フウ……贅沢な悩みだとはわかっているけど、少しは妹離れして欲しいわ……)

苦笑しているツーヤの念話にプリネは疲れた表情で答え

「アハハ……確かに大切にされる事は嬉しいけど、限度ってものがあるし。」

エリオットは苦笑しながらエヴリーヌの疑問に答えた。

「”紅毛のクレイグ”って普段とは比べものにならないくらいエリオットには甘いもんね~。ひょっとしたら将来できるかもしれないエリオットの結婚相手とかにも姑みたいに五月蠅いかもね~。」

「た、確かにクレイグ大将のエリオットに対する過保護っぷりを考えるとな……」

「や、やめてよ……父さんだと本当にありえそうだし。というか”できるかもしれない”なんて、不穏な事を言わないでよ。その言い方だと僕が結婚できないかもしれないみたいな言い方だし。」

ミリアムの言葉を聞いたマキアスは冷や汗をかいてエリオットを見つめ、エリオットは疲れた表情で指摘した。



「結婚と言えば……リィンとアルフィン殿下の結婚式は後二ヶ月だったな。」

「………そう言えばそうだったわね。」

「ええ。しかも”空の女神”であるエイドスさん直々に祝福される歴史上初の結婚式であると、世間中を騒がせていますよね。」

「う”っ……エイドスさんが”グノーシス”を投与された人達を救う為に提示した条件の一つだったから、仕方ないだろう……?というか何でエイドスさんはあんなとんでもない条件をレクター少佐に提示したんだ……?」

ガイウスの言葉を聞いてそれぞれジト目で見つめて来るアリサとエマの視線に唸ったリィンは大量の冷や汗をかきながら答えた後疲れた表情で頭を抱えた。



「え、えっと……実はその事についてエイドス様に訊ねて欲しいとエステルさんへの便りで書いてその答えもエステルさんからの返事で知っているのですが聞きたいですか?私としてはできれば聞かない方がいいと思いますけど……」

「あ、あの……まさかとは思いますけど……」

「どう考えてもロクな答えじゃないんだろうね。」

困った表情をしているプリネの話を聞いてある事を察して表情を引き攣らせて答えを濁しているセレーネに続くようにフィーはジト目で呟いた。

「そ、それでも聞かせてくれ。」

「わかりました……『約半年しかない未来での私の滞在期間の一部をエレボニアが独占するのですから、その代わりとして面白い事をしてもらいたいので二人の結婚式をしてもらう事にした事と後は一度結婚式の時に誓いのキスを言う神父役を務めたかったのです♪』と、エイドス様は仰っていたそうです。」

そしてリィンの疑問にプリネが答えるとその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「お、面白い事をしてもらう為って……」

「しかも結婚式を仕切る神父役を務めたいからって、そんなどうでもいい理由の為だけに……」

「プリネさんの言う通り、聞かない方がよかったですね……」

「というか女性が仕切る時点で”神父役”ではないですよね?」

「ま、エステルの先祖なんだからある意味納得だよね。」

「エ、エヴリーヌさん。」

「どこまで女神の恥を晒せば気がすむのだ、あのエセ女神は!?」

アリサはジト目になり、マキアスとエマは疲れた表情で呟き、セレーネは苦笑し、エヴリーヌの言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかき、ユーシスは顔に青筋を立てて声を上げた。

「細かい事は別に気にしなくていいんじゃないかな~?”戦争回避条約の救済条約”を実行する事でメンフィルから復興に必要な物資やお金がたくさんもらえる上”空の女神”直々に祝福された事で、アルフィン皇女―――エレボニア皇家の”箔”を上げられるからエレボニアにとっては一石二鳥だしね~。」

「いや、気にしてくれよ!?そんな理由の為だけに俺とアルフィン殿下はまだ成人もしていないのに結婚を命じられたんだぞ!?」

「ま、まあまあ。落ち着いて下さい、お兄様。それに結婚式と言っても、あくまで”仮”なのですし。」

からかいの表情で呟いたミリアムに声を上げて指摘するリィンをセレーネは苦笑しながら諌めた。

「”仮”と言っても戸籍にはしっかりアルフィン殿下がリィンさんの妻になった事が登録されますから、事情を知らない人達からしたら本物の結婚式ですよね。」

「そうね。後で私達の事を知ったエイドスさんのお蔭で私達も籍を入れる事になっているとはいえ、アルフィン殿下を含めた私達との”本物の結婚式”はいつになるのでしょうね。」

「う”っ……」

そしてそれぞれジト目で見つめて来たエマとアリサの視線に耐えられなかったリィンは唸って疲れた表情になった。



「フフ、アルフィン殿下のリィンに対するお気持ちを考えれば、アルフィン殿下にとっては一石三鳥な話だろうな。」

「そうだな。確か式はエイドスさん直々の希望でユミルの教会で挙げて、式の出席者はユーゲント陛下達や陛下達の護衛としてゼクス大将とアルゼイド侯爵、クレア少佐とシュバルツァー卿達、そしてオレ達だけの小さな式になるのだったな?」

苦笑しているラウラの言葉に頷いたガイウスはリィンに訊ね

「ああ…………それだけが唯一の救いだよ。アルフィン殿下の結婚式の式場なんて普通に考えたらヘイムダルの大聖堂で、招待客もエレボニアの貴族全員や各国のVIPや有力者ばかりだったろうしな……」

リィンは疲れた表情で答えた。



「でも、アリサ達ともする結婚式にはリィンの予想通りになるんじゃないのかな~?それに確かユミルでの結婚式の翌日にはヘイムダルでお披露目のパレードをする予定だったよね~♪」

「フッ、”本物の結婚式”をする頃にはリィンもクロイツェン州の統括領主に就任しているだろうから、バリアハートの聖堂も考えられるぞ。クロイツェン州の統括領主であったアルバレア公爵家は代々バリアハートの聖堂で式を挙げたと聞いているしな。」

「フフ、リフィアお姉様が大切になさっているエリゼさんの結婚式でもあるのですからミルスのマルーダ城かもしれませんよ?実際ゼルギウス将軍とシグルーン副将軍の結婚式の式場も、本来ならマーシルン皇家の者達の結婚式の時しか使わないのにリフィアお姉様の強い希望によって特別にマルーダ城でお二人の結婚式を挙げたのですから。」

「…………」

ミリアムやユーシス、プリネの推測を聞いたリィンは大量の冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ア、アハハ…………あ、プリネさん。ユーシスさんに”いつもの件”の書類は渡したのですか?」

その様子を苦笑しながら見守っていたツーヤはある事を思い出し、プリネに視線を向けた。

「あ、そうね。―――どうぞ、ユーシスさん。いつも通り、一通りは調べてありますので後でその書類と一緒に確認して返事を決めてください。」

「ああ。いつも手間をかけて悪いな。」

プリネは鞄から数枚の書類の束が入った封筒を出してユーシスに手渡し

「?その封筒は一体……」

その様子を見て仲間達同様気になっていたガイウスは不思議そうな表情でユーシスに訊ねた。



「ただの見合い写真だ。」

「ええっ!?み、見合い写真って事はもしかして……!」

「……縁談か。」

「今のユーシスさん―――いえ、”アルバレア家”に縁談を申し込むなんて、お相手はどのような方達なのでしょう……?」

「アルバレア公爵家の爵位は剥奪されたって言うのに物好きだよね~。」

「ミ、ミリアムちゃん!」

ユーシスの答えを聞いて仲間達と共に驚いたエリオットは驚きの表情で声をあげ、ラウラは静かな表情で呟き、セレーネは複雑そうな表情をし、不思議そうな表情で首を傾げているミリアムにエマは慌てた様子で声をあげた。



「フン、物好きの方がまだマシなくらいだ。俺に来ている縁談の相手の家が考えている事は貴族連合の敗北によって貴族が衰退し続ける運命である事を悟り、せめて他国の上流階級の家に自分達が誇っている”尊き血”を残そうと思っている下らん考えを持っている者達ばかりだ。」

「そ、それって……!」

「エレボニアの貴族達か……」

「ユーシスを選んだ理由は将来メンフィルの貴族となって、ケルディックとセントアークを納める事が約束されている上、”四大名門”の血を引いているからだろうな……」

鼻を鳴らして答えたユーシスの話を聞いたアリサは不安そうな表情をし、マキアスとラウラは真剣な表情で呟いた。

「あれ?でも何でユーシスのお見合いでプリネが関係しているの?」

「ユーシスさんはまだ未成年の上、ご家族はエヴリーヌお姉様や皆さんもご存知の通り全員亡くなった為ユーシスさんの後見人がいらっしゃいませんので、ケルディックを含めたクロイツェン州の臨時統括領主である私やサフィナお姉様達がユーシスさんの後見人をさせて頂いていますから、ユーシスさんに来る縁談については一端私達の所に来る事になっているのです。」

「そうだったのか……さっき”一通り調べてある”って言っていたけど、もしかしてユーシスの見合い相手の家の事情とかなのか?」

エヴリーヌの疑問に答えたプリネの話に目を丸くしたリィンは真剣な表情で訊ねた。



「ええ、念の為にですが。とは言っても勿論縁談を受けるか受けないはユーシスさんの自由ですからあくまで参考資料としてですよ。」

「まあ、ユーシスさんは自分にはまだ早いという事で、いつも縁談を申し込んできた相手に断りの返事をしているのですけどね。」

「そ、そうなの!?”四大名門”出身のユーシスだったら、良い縁談が来てもおかしくないと思うけど。」

プリネの後に答えたツーヤの話を聞いて驚いたエリオットは目を丸くしてユーシスを見つめ

「今はそんな事をしている暇はない。」

「縁談と言えば……ラウラさんの方はどうなのでしょうか?ラウラさんのご実家―――”アルゼイド侯爵家”はノルティア州の統括領主になられたのですから、縁談も多いと思うのですが……」

「うむ……セレーネの推測通り私との結婚によってアルゼイド家に婿入りしたいという縁談どころか、父上の再婚の縁談まで来ているくらいだ。」

セレーネに尋ねられたラウラは困った表情で答えた。



「既に娘がいる侯爵閣下にまで縁談が来ているという事は余程”アルゼイド侯爵家”と縁を結びたいのだろうな。」

「まあ、今の”アルゼイド家”は新たな”四大名門”の一角と言ってもおかしくないものね……」

「フフ、さすがに”新たな四大名門”は言い過ぎだ。」

「サラにとったら嫌な情報だろうね。」

「まあ、それ以前にサラ教官には全く縁のない話だろう。」

「ア、アハハ……」

ガイウスに続くように呟いたアリサの言葉を聞いたラウラは苦笑し、フィーとマキアスの会話を聞いたエマは冷や汗をかいて苦笑し

「というか今のエレボニアで一番偉い貴族ってラウラとミュラーの実家と後はえ~と……エーデルの実家なんだから”四大名門”じゃなくて”三大名門”だよね。」

「そう言う問題ではありませんよ、エヴリーヌお姉様……」

エヴリーヌの言葉にリィン達と共に冷や汗をかいたプリネは疲れた表情で指摘した。



「し、しかしお二人とも大変ですよね。まだ成人もしていないのにもう結婚の話が来ているのですから。」

「まあ、リィンと比べれば大した事はない。」

「ええっ!?な、何でそこで俺が出るんだよ!?」

エマの言葉に答えたユーシスの話にリィンは驚き

「リィンさん……」

「どうやらその様子ですと、今まで自分には全く関係のない話だと思っていたようですね……」

リィンの様子を見たプリネとツーヤはそれぞれジト目でリィンを見つめた。



「へ……」

「リィンはもうすぐアルフィン殿下と結婚する上他にも多くの女性達と結婚する事が公表されているのに、リィンにも縁談が来ているのか?」

二人に見つめられたリィンが呆けている中ガイウスは不思議そうな表情で尋ね

「むしろアルフィン皇女達と結婚するからたくさん来ているんじゃないかな~?実際”ブルーメ伯爵家”がサザーラントの統括領主になれた理由もエーデルが将来アルフィン皇女と結婚するリィンと結婚してエレボニア皇家と縁を結ぶ事になるからだしね~。」

「……そう言えばそんな話もあったね。」

「う”っ……」

「ア、アハハ……エーデル部長は本来処罰を受けるべきであったご両親の処罰を軽くしてくれた所か、部長とお兄様の婚約によって”ブルーメ伯爵家”が統括領主に任命された事でお兄様に感謝しているような事を仰っていましたけどね……」

からかいの表情をしているミリアムに続くようにジト目になって見つめて来るフィーの視線に耐えきれなかったリィンは唸り声を呟き、セレーネは冷や汗をかいて苦笑していた。



「ミリアムがリィンのお見合いがたくさん来ているって言っているけど、何でたくさん来ているの?」

「一番の理由はリィンさんと婚約している方達や使い魔の方達の”実家”ですよ……」

「アリサ達やリィンの使い魔―――ベルフェゴール達の”実家”……?」

「それってどういう事なの?」

エヴリーヌの疑問に疲れた表情で答えたプリネの答えを聞いたガイウスは不思議そうな表情をし、エリオットは目を丸くして尋ね

「ただでさえリィンさんはアルフィン殿下を単独で”パンダグリュエル”から救出した件や内戦を終結させ、メンフィル・クロスベル連合による侵攻を喰い止めて二大国との和解の切っ掛けを作った”紅き翼”のリーダー的存在である事からエレボニアの”英雄”として見られている事と将来はクロイツェン州の統括領主になる事が約束されている事で有名なのにそこに加えてエレボニア皇家のアルフィン殿下、養子縁組とはいえメンフィル皇女の一人であるセレーネ、ノルド精霊共和国の元首であるリザイラさん、そしてクロスベル帝国の皇女であるメサイアさんがリィンさんと婚約しているか使い魔契約―――つまり主従契約を結んだ事によって、実質リィンさんは四つもの国の皇族と縁を結んでいますし、更にゼムリア大陸最大の巨大工業メーカー――――”ラインフォルトグループ”のオーナーの一人娘のアリサさんとも婚約していますから、リィンさん―――いえ、”シュバルツァー家”は世界各国の有力者にとって縁を結びたい相手なんです。」

「しかもリィンさんは好色家として見られていますから、自分の所の娘も……という考えを持つ各国の有力者達が次々と縁談を申し込んで来るんですよ……」

「い、言われてみれば確かに……」

「リィンって、リウイお兄ちゃんやセリカ、後はヴァイスみたいにたくさんの女を侍らせているもんね。」

「そだね。今の時点でもう結構な数のハーレムを作っているし。」

それぞれ疲れた表情で答えたツーヤとプリネの話を聞いたマキアスは冷や汗をかいてリィンを見つめ、エヴリーヌの意見に頷いたフィーはジト目でリィンを見つめ

「ちょっ!?何で俺がそんな風に見られているんだよ!?誤解だ!」

リィンは慌てた様子で答えた。

(リィン様……さすがに今の状況でそんな言い訳はどう考えても通用しませんわよ……)

(この期に及んで自覚無しとは、さすがは鈍感で不埒で絶倫かつ性欲旺盛なマスターですね。)

(絶倫と性欲旺盛は関係ないと思うけど、リィンがたくさんの女性と結ばれる事は事実ね。)

(うふふ、それでこそ私達のご主人様よ♪後何人―――いえ、何十人増やすつもりなのかしら♪)

(ふふふ、そしてその中には皇族や貴族が何人か加わるかもしれませんね。)

その様子を見守っていたメサイアは疲れた表情をし、ジト目で呟いたアルティナの念話を聞いたアイドスは冷や汗をかきながら苦笑し、ベルフェゴールとリザイラはそれぞれリィンの将来について面白おかしく談義していた。



「誤解も何もその通りですよね?」

「ええ、そうね。むしろ今の状況でそんな風に見られない方がおかしいわよね。」

「すみません、お兄様。全く反論が思いつきませんわ……」

「ううっ、何でこんな事に………………」

そしてジト目で自分を見つめて来るエマとアリサ、疲れた表情をしているセレーネの言葉を聞いたリィンは疲れた表情で頭を抱えた。

「あれ。”シュバルツァー家”って事はエリゼやエリスにも縁談が来ているんじゃないの?」

「!?」

「フム……普通に考えてみれば当然二人にもリィン同様多くの縁談が来るだろうな。」

「最もその二人が自分達が縁を結びたいと思っている家の息子に嫁ぐとは誰も予想していないだろうがな。」

しかしフィーの疑問を聞くとリィンは血相を変え、ラウラは考え込みながら呟き、ユーシスは静かな笑みを浮かべてリィンを見つめた。



「ええ、当初は来ていましたよ。まあ、お二人は既にリィンさんと婚約していますから、その件が有力者達に知れ渡って以降はエリゼさん達の縁談は一切来ていませんが。」

「ホ………………あれ?なあ、プリネさん。何で俺達の縁談の件でプリネさん達がそんなに詳しく知っているんだ?」

プリネの答えを聞いて安堵の表情をしたリィンだったがある事に気付くとプリネに再び訊ね

「知っていて当然ですよ……プリネさん達――――クロイツェン州の臨時統括領主の方達やリウイ陛下やリフィア殿下も手分けしてリィンさんに来ている縁談の返事をしているのですから。」

「ええっ!?プ、プリネ達どころかリウイ陛下やリフィア殿下まで!?」

「どうしてメンフィル皇家の方達がお兄様の縁談の返事をなされているのでしょうか……?普通に考えたらお兄様のご両親であられる男爵閣下やルシアおばさまだと思うのですが……」

呆れた表情で答えたツーヤの話を聞いたエリオットは驚き、セレーネは戸惑いの表情で訊ねた。



「男爵閣下から自分達に来ている多くの縁談についての話を知ったエリゼさんから何とかしてもらえないかとリフィアお姉様に相談があった上、男爵閣下御自身からもお父様に相談があったのですよ……それで事情を詳しく調べて見るとエレボニアの有力者だけでなくレミフェリアの有力者達や”ラインフォルトグループ”のような大企業からの縁談の申し込みもあった為、さすがにシュバルツァー卿一人に任せるのは常識的に考えて無理があると判断した私達―――マーシルン皇家がリィンさん達に来ている縁談の対処を手伝っているのです。リィンさん達にたくさんの縁談が来るようになった原因は私達メンフィルの思惑のせいでしたから、その事に対する責任を取る為でもありましたので。」

「そんな理由があったのか……」

「し、しかもレミフェリアの有力者達からも縁談の申し込みが来ているって事はまさかその中にはレミフェリアの元首の大公家と関係している所からも来ているんじゃないのか……?」

プリネの説明を聞いたガイウスは呆け、マキアスは表情を引き攣らせ

「そだよ~。確か”セイランド社”のオーナーからも来ているんだったよね~?」

「ええっ!?セ、”セイランド社”って言ったらエレボニアだけじゃなく各国にも有名な医療機器メーカーだよね!?」

「確か大公家とも親戚同士であったはずですよね……?」

「というか何でミリアムがそんな事を知っているの?」

「フン、大方”情報局”からの情報だろうが。」

ミリアムの答えを聞いたエリオットは驚き、エマは表情を引き攣らせ、エヴリーヌの疑問にユーシスは鼻を鳴らして答えた。



「まあね~。レクターなんか『あの暴力女がリィンと結婚したら、クレアのようにリィンに骨抜きにされてちょうどいいんじゃねぇのか♪』って言って、笑っていたけどね~。」

ミリアムの答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「いや、笑い事ですまさないでくれよ……」

「というか”暴力女”ってその女性に対して失礼すぎよ。」

「何だかその方の事をご存知のような言い方にも聞こえますけど……」

「もしかして知り合い?」

リィンは疲れた表情で呟き、アリサは呆れ、エマとフィーはそれぞれミリアムに視線を向けた。



「そだよ~。レクターがリベールの”ジェニス王立学園”に通っていた頃の同級生で、生徒会の副会長をやっていた人だそうだよ~。ちなみにレクターは生徒会長。」

「ええっ!?レクター少佐って生徒会長を務めた事があるのか!?」

「信じられん。」

「フフ、意外な経歴だな。」

ミリアムの話を聞いたマキアスは驚き、ユーシスは信じられない表情をし、ラウラは苦笑した。



「ちなみにあたしも先程話に出た”セイランド社”の令嬢の方は知り合いですから、凄い複雑なんですよね……」

「お姉様がですか?一体どこでその方と会われたのでしょうか?」

疲れた表情をしているツーヤの言葉を聞いて目を丸くしたセレーネはツーヤに訊ねた。

「前にも話したと思うけどプリネさんやエステルさん達と出会う前のあたしはミントちゃんと一緒にリベールのルーアン地方の孤児院で生活していてね。当時ジェニス王立学園を通っていたクローゼさん―――クローディア姫がよく孤児院に顔を出してあたし達のお世話をしてくれたんだけど……学園祭にもあたし達を招待してくれて、その時にその人と会ったの。名前はルーシーさんって言って、凄い綺麗な人なんだよ。」

「へえ~……学生の時点で美人なんだから大人になった今ならとてつもない美人になっているのでしょうね。」

「リィンさん、まさかとは思いますがその縁談を受けて更に増やすつもりですか?」

「それ以前に、アルフィン殿下やアリサ達がいるんだから俺はどの縁談も受けるつもりなんてないって!」

ツーヤの説明を聞いてそれぞれジト目で見つめて来たアリサとエマにリィンは疲れた表情で答えた。

「ニシシ、勿体ない事をするね~。クロウだったら『贅沢な悩みを言ってんじゃねぇ、このリア充野郎が!』って悔しがるだろうね~♪――――あ…………」

その時ミリアムはからかいの表情で呟いたがある事に気付くと気まずそうな表情をしてリィン達と共に空席となっているクロウの席を見つめた。



「……いずれにせよ、最後の自由行動日だ。お互い悔いのないよう明日は過ごすとしよう。」

するとその時重くなった空気を変える為にラウラが話を変えた。

「そうだな……少し迷ってしまいそうだが。」

「当然、部活には出たいけどそれ以外にもしたい事があるし。」

「えっと、調理部の試食に、学食とキルシェの新メニューに……」

「食べすぎですよ、ミリアムさん………」

「まったく……小ダヌキにでもなるつもりか。」

「リィンさんはやっぱりトワ会長のお手伝いですか?」

「ああ、生徒会の引継ぎは今日終わるみたいだけど。手伝う事はあるだろうし無理矢理でも引き受けるさ。」

「そうか……」

「えへへ……リィンらしいというか。」

「ふふっ、困った事があったら遠慮なく呼んでちょうだいね?」

その後解散して教室を出たリィンは学院内を周り始めた。 
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