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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第71話

その後リィン達は探索を続けていると別の牢屋がある広間に到着した。



~ジュライロッジ~



「ここも牢屋か……」

「見た所誰も閉じ込められていないようですが………」

牢屋がある広間に到着したリィンは呟き、エリスは不思議そうな表情で呟いた。

「いや――――」

「うふふ、ルバーチェの時と全く同じだったわね♪」

その時何かに気付いたラウラが厳しい表情である牢屋を見つめ、レンはからかいの表情で呟いた。



「だ、誰かいるのか………!?」

2人が見つめた方向から男性の声が聞こえ、声を聞いたリィン達が見つめるとそこには何とカイエン公爵や領邦軍の兵士達がいた!

「カイエン公……!」

「彼があのオルトロスの……」

「カイエン公……?誰だっけ??何か見覚えがあるのだけど。」

「あ、あのなあ……君はメンフィルの客将なんだからメンフィルと敵対関係だった貴族連合の上層部―――それも親玉である”主宰”の名前や顔くらいは覚えていて当然だぞ?」

カイエン公爵の姿を確認したユーシスは厳しい表情をし、リアンヌは目を細めてカイエン公爵を見つめ、心底不思議そうに首を傾げているエヴリーヌにマキアスは呆れた表情で指摘した。



「き、貴様らは!?」

「トールズの学生共……!」

一方リィン達に気付いたカイエン公爵達はそれぞれ驚きの表情で声をあげた。

「……どうやらヨアヒムに利用されるだけ利用されて、利用価値がなくなって幽閉されたみたいだね。」

「ま、当然の結果ね。」

「というか話を聞いた時からずっと疑問に思っていたけど”グノーシス”に頼った”ルバーチェ”の末路も知っているでしょうに、何で”グノーシス”に頼ったのかが未だに理解できないわよ。」

「”総参謀”であるルーファス様が処刑され、領邦軍の”英雄”と名高いオーレリア将軍が降伏し、更に度重なるメンフィル帝国領への襲撃によって大幅に戦力を減らしてしまった所に追い打ちとばかりのノルティア州の貴族連合からの脱退によって、藁にも縋る思いだったのではないでしょうか?」

「……まあ、その結果が”これ”だからね。”紅き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァ―ミリオン)”をその手にしてエレボニアの覇権を握る事をさっさと諦めて国外に逃亡すれば、命だけは助かる可能性はあったでしょうに。」

フィーは真剣な表情でカイエン公爵を見つめ、セリーヌは静かな表情で呟き、呆れた表情をしているサラ教官の疑問にシャロンは自身の推測を答え、クロチルダは呆れた表情でカイエン公爵を見つめていた。



「ええい、黙るがいい!き、貴様らのせいで私はあんな薄気味の悪い輩に頼る羽目になったのだぞ!?―――全ては貴様らのせいだ!しかも歌姫殿まで奴等といるとは……!私を見限ったばかりか、敵の軍門に降るとは歌姫殿には”結社”とやらの最高幹部としての誇りはないのか!?」

「物凄い責任転嫁っぷりね……」

「この状況でそんな事が言えるなんて、呆れを通り越してある意味感心するわね……」

「父同様”四大名門”の当主には到底見えない余りにも見苦しい姿だな。」

「自分達が劣勢になったからと言って”貴族としての誇り”を捨てて、なりふり構わないやり方をしていた公爵閣下にそんな事を言われる筋合いはありませんが。」

「というか、台詞もマルコーニとほとんど同じなのも笑えるわね♪」

「今の台詞、本とかで出て来る”三下”が言うような台詞だね、キャハッ♪」

「その意見には同感だ。それに今思い返してみるとメンフィルの”報復”を受けてから以降の貴族連合の行動もそれこそ”三下”がやるような余りにも愚かな行動が多かったな。」

「この後に及んで悪あがきとは………そう言う所も”似ていますね。”」

カイエン公爵の様子を見たサラ教官とセリーヌ、ユーシスは呆れ、クロチルダは不愉快そうな表情でカイエン公爵を見つめて答え、レンとエヴリーヌはからかいの表情になり、エヴリーヌの言葉にマキアスは静かな表情で同意し、リアンヌは呆れた表情でカイエン公爵を見つめ

「カイエン公。まさかとは思いますが、今回の件に御自分は全く関係ないと仰るおつもりですか?」

ラウラは厳しい表情でカイエン公爵を見つめて問いかけた。



「当たり前だ!”グノーシス”……正規軍やメンフィル軍相手に圧倒できる話を聞き、仕方なく奴の甘言に乗ったというのに……!」

「さ、最初は潜在能力を高める薬という話だった……あの薬のお蔭で我が軍に潜んでいたメンフィルの諜報部隊がわかった事や正規軍やメンフィル軍に勝てると信じた皆が、競い合って服用したが………」

「3日前の夜、服用した連中の様子が全員おかしくなってしまって………そ、それでこんな事に………」

「………それどころか……化物みたいになったヤツも………」

「おお女神(エイドス)よ………!我等の罪をお許しください………」

カイエン公爵の説明に続くように領邦軍の兵士達はそれぞれ暗い表情で説明し、最後はその場で祈りを捧げた。



「……なるほどね。」

「こっちの予想通りの展開だったようね。」

「うふふ、今更”空の女神”に祈った所で、エイドス様の性格を考えればエイドス様は彼らを決して許さないでしょうね♪」

「それ以前に”空の女神”扱いをした時点で許さないと思うがな。」

「実際、”空の女神”扱いされる事を物凄く嫌がっていたしな………」

「え、えっと…………(女神様って、一体どのような方なんでしょう……)」

(……ま、エステルの先祖だと考えればある意味納得だね。)

カイエン公爵達の話を聞いたフィーとサラ教官は静かな表情で頷き、からかいの表情で呟いたシャロンに指摘したユーシスの言葉に続くように疲れた表情で呟いたマキアスの話を聞いたエリスは冷や汗をかいて困った表情をし、エヴリーヌは納得した様子でいた。



「………………………」

一方リィンは何も答えず目を閉じて黙り込んでいたが

「こ、これでわかったろう!私も被害者なのだ!すぐにとっととここを開けて安全な場所に連れて―――」

「――――ふざけるな!」

「な……!」

カイエン公爵が自分達に指示をしようとするとカイエン公爵を睨んで怒鳴り、カイエン公爵を黙らせた。



「貴方にだけは今回の事件の責任が無いとは言わせないぞ!元はと言えば内戦を引き起こし、”騎神”の力欲しさにエリスを誘拐し、メンフィルが猶予を与えたにも関わらずエリスを解放してメンフィルに返還しなかった事やアルバレア公爵が雇った猟兵達によるユミル襲撃を謝罪しなかった所か、”パンダグリュエル”で再びユミルを襲撃してただでさえ貴族連合に―――エレボニアに対して燃え上がっているメンフィルの怒りの炎に更に油を注いでメンフィルとの戦争を勃発させてしまい、その結果多くの被害を被り、”グノーシス”に頼る事を決めたのは”貴族連合”の”主宰”であるカイエン公爵――――他ならぬ貴方だろうが!?」

「グググググググ……ッ!」

「…………………」

「俺達はどこで間違ってしまったんだろうな……」

「多分、メンフィル帝国を巻き込んだのが一番の間違いだろう……メンフィルが介入してから全てが狂ったからな……」

リィンの正論に反論できないカイエン公爵が悔しそうな表情で唇を噛みしめている中、領邦軍の兵士達は肩を落として後悔していた。

「―――現代の”灰”の”起動者(ライザー)”の言う通りです、オルトロスの末裔よ。全ては貴方自身の自業自得によるものです。」

するとその時リアンヌが前に出てカイエン公爵を見つめて言った。


「なっ!?何故私の偉大なる先祖を…………―――――!!な、なななななななっ!?ま、まさか貴様は……!」

「なっ!?あ、あの容姿と姿は……!」

「や、”槍の聖女”――――リアンヌ・サンドロッド卿!?」

「な、何で250年前の伝承の人物が今も生きてこの場にいるんだ!?」

リアンヌの言葉に驚いたカイエン公爵だったがリアンヌの容姿を見ると混乱し始め、領邦軍の兵士達はそれぞれ信じられない表情でリアンヌを見つめていた。



「何故カイエン公はサンドロッド卿を見て、あんなにも取り乱されているのでしょう……?」

「”鋼の聖女”が”獅子心皇帝”と共に”偽帝”オルトロスを討った人物だからじゃない?」

「……言われてみれば、サンドロッド卿とカイエン公は因縁の間柄になるな。」

「それどころか、カイエン公にとってアリアンロードは”天敵”になるわよ♪」

「うふふ、何せ尊敬していた”先祖”を討った張本人の一人だものね♪」

「まあそれ以前に伝承の人物が目の前にいる事に取り乱していると思うが。」

「むしろサンドロッド卿が今も生きている事をこの目で見て、取り乱さない方がおかしいだろ……」

カイエン公爵の反応を不思議に思っているエリスにセリーヌは推測を答え、ラウラは静かな表情で呟き、クロチルダとレンはからかいの表情で呟き、呆れた表情でサンドロッド卿を見つめるユーシスの言葉に続くようにマキアスは疲れた表情で呟いた。



「かつて私とドライケルスが激闘の末ようやく封じ込める事ができた”緋き絶望”を蘇らせてその手にするつもりだったとの事ですが……貴方の協力者であったクロチルダ殿は最初から”緋き絶望”を顕現させるつもりが無かった事はご存知でしたか?」

「何だとっ!?―――歌姫殿、今の話は本当なのか!?」

リアンヌの話を聞いて信じられない表情で声をあげたカイエン公爵はクロチルダを見つめ

「ええ。セドリック皇太子殿下で”緋の騎神テスタ=ロッサ”を起動させ、”魔王の凱歌(ルシフェンリート)”で”紅き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァ―ミリオン)”を呼び起こし、”煌魔城”を顕現する事までは予定していましたが、”紅き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァ―ミリオン)”の顕現は”最初から予定していませんでした。”もしアレが顕現してしまえば、250年前のような悪夢が起こったでしょうから、私は”緋き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァ―ミリオン)”の顕現だけは絶対にしないように自分を戒めていました。」

「な、な、な……ッ!という事は最初から私を騙すつもりだったのか!?」

クロチルダの口から語られた驚愕の事実に口をパクパクさせた後怒りの表情でクロチルダに問いかけた。



「元より”結社”の”計画”の目的は”蒼”と”灰”の勝負の”舞台”を導く事。”蒼”と”灰”の勝敗以外は興味はないと最初に申し上げたはずです。第一”緋き終焉の魔王(エンド・オブ・ヴァ―ミリオン)”の顕現をすると、一度でも私自身が発言した事がありましたか?」

「お、おのれ……ッ!”四大名門”の”カイエン公爵家”の当主であり、真のエレボニア皇帝であるオルトロス・ライゼ・アルノールの子孫であるこの私をよくも謀ってくれたな……!この薄汚い魔女が――――ッ!」

クロチルダは妖しげな微笑みを浮かべてカイエン公爵に問いかけ、問いかけられたカイエン公爵は怒りのあまり顔を真っ赤にしてクロチルダを睨んで声をあげたが

「―――戯言はそこまでにしておくがいい、オルトロスの末裔よ。オルトロスはエレボニアの”皇”になる為に、愚かにも”皇”が守るべき多くの民達の命を”緋き絶望”で奪った。自らの野望の為に民達を犠牲にしたあの男に”皇”の”資格”はない。そしてオルトロスのように、自らの野望の為に内戦を引き起こし、多くの民達を傷つけ、苦しめた貴様自身にも”皇”の資格はない!!」

「ヒィッ!?」

「………………」

「ど、どうか命だけは……!」

全身に膨大な闘気を纏ったリアンヌに睨みつけられると悲鳴を上げた後表情を青褪めさせて身体を震わせ、その余波を受けていた領邦軍の兵士達も表情を青褪めさせて身体を震わせていた。

「内戦を引き起こし、多くの民達を苦しめ、更には中立国であったメンフィル帝国をも内戦に巻き込んだ貴様の罪は余りにも重い。メンフィル帝国によって処刑されるその日まで、自分が犯した多くの罪を見つめ直すがいい!」

「………う、うーん………これは夢だ……夢に違いない……」

「こ、公爵閣下!?」

「し、しっかりしてください!」

そしてリアンヌの止めの言葉によって地面に倒れてうわごとを呟き始め、それに気付いた領邦軍の兵士達は慌て始めた。



「だっさ。怒られただけで現実逃避をするとか、情けな過ぎだね。」

「フン、貴族連合の”主宰”ならば最後くらいは潔く自分の罪を認めて自分が裁かれるその時まで大人しくするべきだというのに……こんな男が内戦を引き起こした主犯であり、”四大名門”の当主であったとは余りにも情けない話だな。」

「こんな奴のせいでエレボニアが滅茶苦茶になったのかと思うと、怒りを通り越してもはや呆れるしかないな………」

カイエン公爵の様子を見たエヴリーヌとユーシス、マキアスは呆れ

「それにしても説教だけでカイエン公をあそこまで大人しくさせるとはさすがは”結社最強”と恐れられていたアリアンロード様ですわね♪」

「うふふ、しかもカイエン公にとって憎き”仇”である”槍の聖女”に”皇の資格はない”って言われるなんて、皮肉過ぎて笑いが止まらないわね♪」

「カイエン公でなくても、サンドロッド卿に本気で怒られたら誰でもああなると思いますが……」

シャロンとレンがそれぞれからかいの表情をしている中、エリスは冷や汗をかいて苦笑しながら指摘した。



「それよりもここにいるカイエン公や貴族連合の残党はどうする?せっかく閉じ込められているんだから、むしろこのままの方がいいと思うけど。」

「しかしそれだと、万が一この場に魔獣などが現れた時カイエン公達が避難できなくなる為、危険じゃないか?」

フィーの提案を聞いたラウラは複雑そうな表情でカイエン公爵達に視線を向けた後反論したが

「………………いや、フィーの言う通り、カイエン公達に関してはこのままにしておいた方がいいかもしれない。もし牢屋から解放して逃亡でもされたら、厄介な事になるしな。」

「そうね。それにこの辺りはさっきの牢屋同様魔獣の気配もしないから心配はいらないでしょう。」

「――ま、今まで犯した悪行を見つめ直させるいい機会にもなるだろうし、ここはほおっておきましょ。」

リィンやサラ教官、セリーヌは賛成の様子を見せ、仲間達も特に反論も言わなかった為カイエン公爵達を解放しない事を決めたリィン達はカイエン公爵達を牢屋から解放せず、そのまま先に進んだ。 
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