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英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート

作者:sorano
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第58話

~カレイジャス・ブリッジ~



「リィン君……みんな……」

「無茶だけはするんじゃないよ……」

「正規軍が到着すれば、大丈夫なんだが……」

リィン達の戦いの様子をモニターで見守っていたトワとジョルジュは心配そうな表情で見つめ、操縦席に座っているアンゼリカは真剣な表情で考え込んでいた。



「あの……パント卿、本当にサフィナ元帥は正規軍のケルディック要塞の許可をしたのですのよね……?」

「ええ。先程サフィナ元帥に連絡を取った所、双龍橋に駐屯している第四機甲師団の部隊がケルディック要塞の通過を開始したとの事です。」

「……今までの経験でリィンさん達でしたら正規軍が到着するまでの間体力は持つと思いますが、問題は実戦経験があまりない士官学院生達ですね……」

心配そうな表情をするアルフィン皇女に尋ねられたパントは静かな表情で答え、ルイーズは真剣な表情で考え込み

「……ッ……!―――サンドロッド卿、それにパント卿達も。僕達の事は構いませんので、どうかリィンさん達の応援をお願いします……!」

辛そうな表情でモニターを見つめていたセドリック皇太子はリアンヌたちを見つめて嘆願した。



「セドリック殿下。例え滞空するカレイジャスにいるとはいえ、油断は禁物ですわ。ヨアヒム・ギュンターは古の魔導の使い手。ノックス拘置所の襲撃事件の件を考えるとヨアヒム・ギュンターは間違いなく転移魔術もそうですが、悪魔召喚の術も修めていると思われます。よっていつカレイジャスにも奇襲して来るかわからない状況で、殿下達の守りを手薄にする事はできませんわ。」

「部下―――いえ、”仲間”を信じて見守るのもまた”皇族の義務”です。」

「それは……………」

しかしシグルーンとリアンヌの説明を聞いたセドリック皇太子は辛そうな表情で黙り込み

(リィンさん……エリス……皆さん……どうかご無事でいてください……!女神様、どうかわたくしの大切な人達を守って下さい……!)

アルフィン皇女は映像を見つめながら祈りを捧げた。



~オーロックス峡谷~



「何とか退けられたか……!」

「チッ、手配魔獣クラスの軍用魔獣や結社の人形兵器が加わった事で若干手間取ってしまったわね……!」

「ハァ、ハァ……さっきの軍用魔獣……前より強くなっていないか!?」

戦闘を終えたラウラとサラ教官は厳しい表情で呟き、マキアスは息を切らしながら声をあげ

「……ん。スタミナ、パワー、スピード。全てが上回っていた。」

「―――恐らく”グノーシス”によって強化されたのだろう。」

「あの亡霊の仕業か……!」

フィーの後に答えたレーヴェの推測を聞いたユーシスは厳しい表情をした。

「それに敵の数もどんどん増えて来ていますね。」

「ああ……いざという時の為に今まで温存していたベルフェゴール達にもそろそろ手伝ってもらうべきかもしれないな……」

エリゼの言葉に頷いたリィンは真剣な表情で考え込んだ。



「おい……アンタはいつ”本気”を出すつもりだ?そろそろヤバくなってきてんだぞ……このままだと生徒達が―――」

一方疲れ始めている生徒達を見たマカロフ教官は真剣な表情でトマス教官に尋ね

「一体何の事を言っているのかわかりません~―――と言いたい所ですが、心配なさらなくても”剣帝”殿もそうですが”彼女達”もまだまだ余力を残していますから、心配する必要はありませんよ。”人を止めている彼ら”と比べれば”本気”になった私の力等微々たるものですよ。」

マカロフ教官は呑気な様子で答えかけたがすぐに意味ありげな笑みを浮かべてレーヴェ達―――”結社”出身の使い手達を見つめて呟いた。



「獅子の姿をした人形兵器も今まで戦った人形兵器と比べると強かったですね……」

「はい……まさに百獣の王である”獅子”そのものと言ってもおかしくない強さでしたわ。」

「つくづく思うけど、”結社”の技術力って、出鱈目すぎよ……」

先程の戦闘を思い返したエリスとセレーネはそれぞれ不安そうな表情をし、アリサは疲れた表情で呟いた。

「この調子だと、”リベールの異変”でも戦った人形兵器も出て来るかもしれないわね。」

「ええ。それどころか下手をすれば”ドラギオン”のような大型の人形兵器が出て来るかもしれませんね……」

「キャハッ♪例え出て来ても全部木端微塵にすればいいだけだよ♪」

「うふふ、そうね♪それにレン達もまだまだ”切り札”を残しているのだから、心配する必要はないわよ♪」

プリネとツーヤが真剣な表情で考え込んでいる中、エヴリーヌとレンはそれぞれ笑顔で心強い言葉を仲間達にかけ

「アハハ……エヴリーヌ達が言うと現実味があるよね。」

「フフ、だがオレ達にとっては心強い言葉だな。」

二人の言葉を聞いたエリオットとガイウスはそれぞれ苦笑していた。



「姉さん、実際の所”結社”は貴族連合にどれ程の人形兵器を提供をしたの……?」

「人形兵器の提供は”十三工房”の担当だから、私も貴族連合に提供された人形兵器の詳しい種類や数は把握していないわ。でもさすがにツーヤの口から出て来た人形兵器―――”ドラギオン”のような大型の人形兵器は提供されていないはずよ。あれは数が少ないし、”ドラギオン”のような大型の人形兵器が投入された場合にはさすがに私にも話が行くはずだし。」

「ブーブー!仮にもエレボニアでの暗躍を任されていた”結社”の最高幹部がそんな当然の事も知らないなんて、おかしくない!?」

「ったく、よくそれで”結社”の最高幹部を務められていたわね……」

不安そうな表情をしているエマに尋ねられて答えたクロチルダの答えを聞いたミリアムは不満げな様子で反論し、セリーヌは呆れた表情をし

「ふふっ、例えどのような相手が来ようとお前達には我ら”鉄機隊”がいる。」

「”結社最強”と恐れられたマスター直属の精鋭部隊の強さの真髄を今こそ見せてさしあげましょう!」

「ちょっ!?だからそれは”鉄機隊”の”筆頭隊士”である私の台詞ですわ!」

アイネスとエンネアの激励の言葉にデュバリィは慌てた様子で指摘し、リィン達を脱力させた。



「!―――うふふ、また団体さんの到着よ♪」

レンが不敵な笑みを浮かべて呟くと新手の貴族連合軍がリィン達に突撃して来た。

「ま、また来た……!」

「も~!正規軍はいつになったら到着するんだよ~!」

突撃して来る貴族連合軍を見たエリオットは不安そうな表情をし、ミリアムが疲れた表情で声を上げた。

「フフッ、心配しなくても正規軍も後少しで到着しますよ、ミリアムちゃん。」

するとその時聞き覚えのある涼しげな女性の声が聞こえて来た!


「へ……」

「この声は……―――クレア大尉!?」

声を聞いたマキアスが呆け、リィンが驚いて後ろへと振り向くと何とクレア大尉率いる”鉄道憲兵隊”が装甲車を次々と停車させて装甲車から降りて武器を取りだしてリィン達と共に迎撃態勢に入り始めていた。

「”鉄道憲兵隊”……!」

「これでちょっとは楽になるね。」

「やっと来た~!遅いよ、クレア~!」

クレア大尉達の登場にラウラは驚き、フィーとミリアムはそれぞれ明るい表情でクレア大尉達を見つめた。

「――皆さん、お疲れ様です。ようやく追いつけました……ここからは私達も加勢します!」

「助かるわ!正規軍の方はいつ到着するのかしら?」

「正規軍は先程ケルディック要塞を通過したとの報告が入りましたから、後一時間程で到着します!」

「後一時間ですか……”鉄道憲兵隊”が到着しましたし、学院生の方達は後方に下がって”カレイジャス”に回収してもらった方がよいのではないでしょうか?」

サラ教官の質問に答えたクレア大尉の答えを聞いたエリゼは真剣な表情でリィン達に提案した。



「そうだな……連戦続きでみんなも疲れて来ただろうし、俺達”Ⅶ組”以外の学院生達はそろそろ下がった方がいいかもしれないな。」

そしてエリゼの提案にリィンが頷いたその時

「フッ、私達を労わってくれるのはありがたいがその必要はない。」

ヴィンセントが髪をかき上げて意外な答えを口にした。



「え…………」

「私達を甘くみないでくださる?特にⅠ組は好敵手であるⅦ組が戦っているというのに、自分達だけ背を向けて撤退する等、”貴族生徒”の名折れのような真似は絶対しませんわ!」

「ハーッハッハ!その通り!それに私達もいつか訪れる戦いに備えて互いに切磋琢磨して来た。君達の心配は無用な心配さ!」

「フェリス…………」

「フン、今頃になってようやく”貴族”としての自覚が出て来たか。」

「お二方とも本当にご立派になられましたね……」

フェリスとヴィンセントの言葉を聞いたアリサは驚き、ユーシスとサリファは静かな笑みを浮かべて見守り

「二人の言う通りね。それに貴族生徒や平民生徒とか関係なく、ここにいるみんなは”トールズ士官学院”の学生として”Ⅶ組”と最後まで戦う事を決めて今回の戦いに参加したのよ?」

「俺達の心配は野暮ってもんだぜ。」

フリーデルとロギンス、そして他の士官学院生達も続くように心強い言葉をリィン達にかけ

「ま、この内戦で成長したのはお前らだけじゃないって事だ。」

「アハハ~、生徒の皆さんがまだ戦う意志を示している以上、教官の私も撤退する訳にはいきませんね~。」

マカロフ教官は口元に笑みを浮かべてリィン達を見つめて言い、トマス教官は冷や汗をかきながらも呑気そうな様子で呟いた。



「皆さん……」

「……これが意思が一つになった人間達の”強さ”ね。」

「フフ、私が皆さんの先輩である事にこんなにも誇らしいと思った事は初めてです。」

「最初から彼らが一丸となって内戦に挑んでいれば、メンフィルが介入しなくても内戦の結果は変わっていたかもしれないな。」

「ええ……さすがは”獅子心皇帝”の意思を継ぐ者達ね。」

「ふふん、至高の武を修めるマスター直属の私達”鉄機隊”が決戦を挑む相手として認めたのですから、そのくらいの気概はあって当然ですわ!」

士官学院生達の心強い言葉にエマは明るい表情をし、セリーヌは静かな笑みを浮かべ、クレア大尉は微笑み、アイネスとエンネアは感心した様子でフェリス達を見つめ、デュバリィは得意げな表情をしていた。



「フッ、これが”トールズ魂”とやらか。」

「フフッ、『トールズ士官学院が一つになれば正規軍よりも厄介な相手になる。』……クロウの忠告通り、もしトールズ士官学院が最初から一丸となって内戦に挑んでいれば、メンフィルの介入がなくても”幻焔計画”に支障をきたしていたかもしれないわね。」

「”支障をきたしていたかもしれない”じゃなくて”支障をきたしていた”よ。”トールズ士官学院”の意思が一つになった今、例え貴族連合だろうと結社だろうと後れを取らないわよ。」

レーヴェとクロチルダの会話を聞いていたサラ教官は口元に笑みを浮かべて答えた。

「まあ……私の存在を忘れているなんて、皆さん、薄情ですわよ♪」

「へ。」

女性の声を聞いたアリサが呆けたその時、何とシャロンが近づいてきた!



「うふふ、お久しぶりですわ、皆様♪」

「シャ、シャ、シャ……シャロン!?」

「一体いつの間に……」

シャロンの登場にアリサは口をパクパクさせた後声をあげ、ガイウスは目を丸くした。

「フフ、”新人”のエウシュリーちゃん達が優秀なお蔭でラインフォルトグループの立て直しもひと段落しまして。そのお蔭で会長からも皆さんのサポートをするように命じられまして。皆さんと合流する為にカレイジャスが停泊しているバリアハートに先程到着したのですが、オーロックス方面が随分と物々しい雰囲気になっていた事が気になりまして。それで先程サフィナ元帥閣下に接触して事情を聞き、大急ぎでこちらに参ったのですわ♪」

「ええっ!?サ、サフィナ義母さんと接触したのですか!?一体どうやってこんな短時間でメンフィルに何のコネもないシャロンさんが義母さんと接触できたのですか?」

シャロンの答えを聞いたツーヤは驚いて信じられない表情で尋ねた。



「ふふっ、さすがは”ゼムリア大陸の真の覇者”と恐れられているメンフィルだけあって、警備も中々のもので城館に忍び込むのに”少々手間取りましたわ”♪」

「え、えっと。それって……」

「統括領主の城館に潜入してサフィナ元帥と接触したって事だよね……?」

「うふふ、”執行者”で潜入の専門はヨシュアや”怪盗紳士”だと思っていたけど、どうやらその認識を改める必要がありそうね♪」

「レン、貴女ね……私達は侵入者を許してしまった事にユーゲント皇帝夫妻を保護している身として、危機感を抱くべきでしょう……」

シャロンの説明を聞いてある程度察したエリスとエリオットは表情を引き攣らせ、笑顔を浮かべているレンにプリネは疲れた表情で指摘した。

「……私もシャロンさんと同じメイドとして、今回の一件が終わったらエクリア様に頼んでマリーニャ様から諜報関係の技術を手解きをしてもらうようにするべきね。城から抜けだしたリフィアを確保する為の技術としても役に立つでしょうし。」

「エ、エリゼ……」

「ただでさえメイドとして凄いエリゼお姉様にシャロンさんが持っている技術が追加されれば、もっと凄い事になるでしょうね……」

「それにエリゼがマリーニャみたいな技術を身につけたら、もっと恐ろしくなるよ……ガタガタブルブル……!」

「フフッ、メイドという職業は本当に何でもできるんだな。」

「何度も言っているようにあの二人が”特殊”なだけだ!あの二人を基準にするな!」

真剣な表情でシャロンを見つめながら呟いたエリゼの言葉を聞いたリィンは冷や汗をかき、セレーネは苦笑し、エヴリーヌは表情を青褪めさせて身体を震わせ、感心した様子でシャロンやエリゼを見つめるガイウスにユーシスは疲れた表情で指摘した。



「雑談はそこまでにしておきなさい!―――来るわよ!」

「はいっ!みんな、もうひと踏ん張りだ!―――行くぞっ!!」

「おおっ!!」

「総員、これより貴族連合軍の制圧を開始します!但し兵達は戦闘不能に留めなさい!」

「イエス・マム!!」

そしてクレア大尉達―――”鉄道憲兵隊”とシャロンを加えたリィン達は戦闘を再開した! 
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