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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―エリートからの挑戦状―

 プロデュエリストである、エド・フェニックスの突然の来訪からしばらくたった。
依然として、あいつが何を考えて俺とデュエルをしに来たかは分からないままだったが、そんなことをずっと気にしてはいられない。

 エド・フェニックスのことはひとまず忘れ、俺はいつもの学園生活に戻ることにした。

 ……と、言ってもだ。
俺たちの周辺の人物には、今回の進級テストで寮が変わったものは少なかった為に、二年生になってもあまり変化はなかった。
変化があったとすれば、プロデュエリストとなった亮を始めとする三年生がいなくなったことと、新しくアカデミアに入った後輩ぐらいなものだ。

 だが、後輩と言われてもレイぐらいしか親しい者はおらず、また、そのレイも中等部の為に高等部である俺たちと絡むことは少ないので、俺は二年生になっても特に変化はなかった。

 だが、今回のデュエルはその後輩が引き起こしたことだった……


 デュエル・アカデミア特製デュエルフィールド・オベリスク・ブルー用。
……簡単に言うと、いつものデュエル場である。

 そこで、二人の学生がデュエルを始めようとしていた。
一人は、親友でありライバルであるオベリスク・ブルーのトップ――三沢大地。
そして、それに対抗するは、今年の入ってきた一年のオベリスク・ブルートップ……つまりは、中等部でトップだったという、五階堂宝山。
中等部トップということは、去年の万丈目と同じぐらいの強さなのだろう。

 そもそも、何故こんなことになったかと言うと。
このデュエル・アカデミアには、デュエルを申請する専用の申請用紙があり、それが相手に受託されれば待ち合わせてデュエルが出来る、というシステムがある。
余談だが、一年生の時に十代も、亮とデュエルする為に使おうとしたそうだ。
……クロノス教諭に破られたそうだが。
 まあいい。
それを五階堂が三沢に申請し、
「今年の中等部トップの実力に興味がある」
という三沢が、喜んで受託した。
そして、そのことを知ったナポレオン教頭が、トップ同士のデュエル、どうせならこのデュエル場でやって欲しいということで、今に至る。

 そんな訳で、今回のデュエルに関係はない俺は、観客席で眺めようとしているのであった。

「隣良い?」

「ああ」

 了承の返事を聞くとほぼ同時に、明日香が俺の隣の席に座った。

「そういえば、噂で聞いたんだけど。遊矢はナポレオン教頭のアイドルの件について……知らないわよね」

「アイドル? ……いやまあ、確かに知らんけど……」

 確かに俺は噂には疎いが、そこまで知らないこと前提なのはどうなんだ?
しかし、そんなことより気になることが出来た。

「なんなんだ、アイドルって?」

 俺の問いに、明日香は「ええと」と思い出すような仕草をした後、答えてくれた。

「なんでもナポレオン教頭が、デュエル・アカデミアの生徒の中から選りすぐりの生徒を亮みたいなタレントやアイドルみたいな扱いにして、デュエル・アカデミアの入学生を増やすんだとか聞いたわ」

 ……なるほど。
ナポレオン教頭の言いたいことは分かったし、効果があることも分かった。
しかし、ただデュエルしているだけだと言い、自分がタレントのような扱いを受けているとは知らない、意外と天然の亮のような卒業生はともかく、在校生にそれをさせるのはどうなんだろうな。
主に成績とか。

「ってことは、もしかしたらこのデュエルもそうかもな」

 中等部トップの五階堂と、現在トップの三沢。
どっちか勝った方がタレント……ってか。

「……フフ」

「どうしたの?」

 突然少し笑いだした俺に、当然明日香は疑問の声を投げかけてくる。

「いやなに、三沢がタレントって似合わないなって思ってさ……」

「フフ、確かにね……」

 そして、デュエル場で小さくくしゃみをした三沢と、五階堂のデュエルが始まろうとしていた。

『デュエル!!』

三沢LP4000
五階堂LP4000

「俺の先攻から。ドロー!」

 こういう時は、先攻を後輩に譲るべきだろうが、三沢のデュエルディスクは無慈悲にも三沢に先攻をとらせた。

「俺は《牛頭鬼》を召喚!」

牛頭鬼
ATK1700
DEF800

 三沢の【妖怪】デッキの中核を担う妖怪の一種、牛頭鬼。その効果もさることながら、全体的に打点不足な三沢のデッキを攻撃力で支えてくれる良いカードだ。

「牛頭鬼の効果を発動。一ターンに一度、デッキからアンデット族モンスターを一枚墓地に送ることが出来る! そして、カードを一枚伏せてターン終了だ」

「俺のターン! ドロー!」

 さて、期待のトップはどんなデッキなのか……って、なんだかあいつ、三沢を凄い勢いで睨んでいる……?

「三沢大地……遂にこの時が来た! 万丈目先輩に代わってお前を倒してやる!」

 ドローしたカードを手札に加えた矢先に、五階堂はいきなり叫びだした。
……万丈目がどうしたって?

「何のことだ?」

「とぼけるな! お前が、俺が中等部から憧れていた万丈目先輩を落ちこぼれのオシリス・レッドごときに蹴落としたんだろう!」

 五階堂のその言葉を聞くと、俺は耳が痛くなった。
なにせ、一年生の時の昇格デュエルで万丈目ともう一名をオシリス・レッドに蹴落としたのは、自分なのだから。

「それに飽きたらず、万丈目先輩をこのアカデミアから追いだしたのもお前だろう、三沢大地!」

 そのまま、三沢への五階堂の糾弾は続いた。
……正直、証拠も何もない言いがかりだったが、あいつも高田と同じく俺の迂闊な一言の犠牲者であり、それで三沢が狙われたと思うと……

「大丈夫よ。あんなのただの逆恨みじゃない……遊矢も三沢くんも、悪くないわ」

「……ありがとう、明日香」

 事情を知る明日香の一言に俺は少し救われながら、三沢と五階堂のデュエルを見学することを続けた。

「どうだ、三沢大地……このデュエル、負けた方がオシリス・レッドに落ちるっていうのは!」

 流石は万丈目の後輩……と言えば良いのだろうか。
言動が去年の万丈目にそっくりである。

 五階堂の言動に対し、反論も肯定もしなかった三沢が、遂に口を開く。

「良いだろう。万丈目をオシリス・レッドに落としたのは確かに俺だからな。だが、負けたらオシリス・レッドに落ちる条件は、俺の方だけで良い」

「フン、良い度胸だな! なら行くぞ! 俺は《切り込み隊長》を召喚!」

切り込み隊長
ATK1200
DEF400

 デュエルが続行され、五階堂は戦士族の代名詞たるモンスターを繰り出した。

「更に切り込み隊長の効果により、2枚目の《切り込み隊長》を特殊召喚し、2枚目の切り込み隊長に《融合武器ムラサメブレード》を装備する!」

切り込み隊長
ATK1200→2000
DEF400

 デュエルモンスターズにおいて、ポピュラーなロックである『切り込みロック』を作り上げながら、融合武器ムラサメブレードで低い攻撃力を補った。
このことから五階堂のデッキは、【戦士族】寄りの【装備ビート】であることが推測される。

「バトルだ! ムラサメブレードを装備した切り込み隊長で、牛頭鬼に攻撃!」

 腕をムラサメブレードと融合させた切り込み隊長が、牛頭鬼の持っていた木槌ごとその身体を切り裂いた。

「これくらいのダメージは必要経費だ……」

三沢LP4000→3700

「続けて、切り込み隊長でダイレクトアタ――」

「リバースカード、《もののけの巣くう祠》を発動! 墓地から現れよ、《カラス天狗》!」

カラス天狗
ATK1400
DEF1200

 もののけの巣くう祠。
三沢の多用するカードの一つで、自分フィールドにモンスターがいない時、墓地のアンデット族を完全蘇生出来るという、リビングデッドの相互互換カード。
更に、牛頭鬼によって墓地に送られていたのであろうカラス天狗は、墓地から蘇生した時こそ本領だ。

「カラス天狗の効果を発動! 墓地から蘇生された時、相手モンスターを一体破壊出来る! ムラサメブレードを装備した切り込み隊長を破壊せよ、悪霊退治!」

 カラス天狗が手に持つうちわのようなもので、切り込み隊長を吹き飛ばした。
……何度となく言ってきたが、悪霊はお前だ。

「くっ……切り込み隊長の攻撃を中止し、カードをセットしてターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 切り込み隊長が一体になったことにより、切り込みロックは消滅した。
ここは攻め込みたいところだが……いかんせん、三沢のデッキは初速が遅い。

「俺は《馬頭鬼》を召喚!」

馬頭鬼
ATK1700
DEF800

 そんな俺の心配も杞憂に終わり、牛頭鬼の相方たる妖怪が現れる。

「バトル! カラス天狗で、切り込み隊長に攻撃!」

「通すか! リバースカード、オープン! 《攻撃の無力化》!」

 名は体を表しまくりなカードにより、カラス天狗の攻撃は時空の渦に吸い込まれていった。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

 三沢は、こうなることを読んでいたかのように、特に驚きもせずに次の行動へ移る。
これで三沢のフィールドには、カラス天狗、馬頭鬼、セットカードが一枚。

「俺のターン! ドロー!」

 対する五階堂のフィールドは、単独では意味をなさない切り込み隊長のみ。
明らかにボード・アドバンテージで劣っており、苦しい展開だった。

「まずは魔法カード《テイク・オーバー5》を発動! デッキの上からカードを五枚墓地に送るぜ!」

 デッキの上から五枚墓地に送るという、素晴らしい効果を持つカード。
《蛆虫の巣窟》のほぼ完全上位互換であるカード……何であんなもの持ってやがる。

「俺は切り込み隊長をリリースし、《無敗将軍 フリード》をアドバンス召喚!」

無敗将軍 フリード
ATK2300
DEF1700

 隊長から将軍にランクアップしたな、と、俺は若干冷めた目で見た。
確かに優秀なモンスターではあるが、装備ビートにはアンチシナジーだろう。

「この無敗将軍 フリードには、対象をとる魔法カードは通用しないんだぜ!」

 俺の冷めた目線を知るはずも無く、五階堂は堂々と無敵将軍 フリードのアンチシナジーっぷりを高説する。
まあ、効果自体は優秀であるし構築は人それぞれなので、投入すること自体に文句は無いのだが……

「行くぜ! 無敗将軍 フリードで、馬頭鬼に攻撃!」

 三沢の妖怪を切り裂く無敗将軍 フリードは、将軍の名に恥じないかっこよさだった。

「くっ……!」

三沢LP3700→3100

「カラス天狗を破壊しなければ、墓地からの破壊効果は受けないぜ!」

 なるほど、それを考えて馬頭鬼を戦闘破壊したのか。
まあ、どっちでも構わないと思うが……

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー!」

 無敗将軍 フリードは確かに強力なモンスターだが、三沢ならば特に問題はないだろう。

「俺はカラス天狗をリリースし、《竜骨鬼》をアドバンス召喚!」

竜骨鬼
ATK2400
DEF2000

 五階堂の無敗将軍 フリードに負けじと、三沢も新たなモンスターをアドバンス召喚する。
それも、五階堂が使用する戦士族のメタカードだ。

「バトル! 竜骨鬼で、無敗将軍 フリードに攻撃!」

「甘い! トラップカード《デモンズ・チェーン》を発動! 竜骨鬼の効果と攻撃を無効にするぜ!」

 残念ながら、五階堂が発動した悪魔の鎖に竜骨鬼は捕らわれてしまう。
攻撃も、その戦士族に対抗する効果すら、あの悪魔の鎖は奪うのだ。

「ならば、メインフェイズ2に墓地に眠る馬頭鬼の効果を発動! 馬頭鬼を除外し、墓地から守備表示で蘇れ、《カラス天狗》!」

カラス天狗
ATK1400
DEF1200

「カラス天狗の効果を発動! 墓地から特殊召喚に成功した時、相手モンスターを破壊出来る! 無敗将軍 フリードを破壊せよ、悪霊退治!」

 悪霊はお前だ、というツッコミも届かず、うちわのようなものの一振りで無敗将軍 フリードを打ち倒した。
三沢は、まだ馬頭鬼の効果は使うべきでは無いと考えたのだろうが、結果的にはそれが裏目に出てしまっていた。

「ターンエンドだ」

「俺のターン! ドロー!
……墓地の《テイク・オーバー5》の効果を発動! 墓地のこのカードを除外することで、カードを一枚ドローする!」

 デッキから五枚ものカードを墓地に送り、なおかつ一枚ドローの効果を持つ。
……どっかに売ってないかな、アレ。

「スタンバイフェイズ、俺のフィールドにモンスターがいないため、墓地の《不死武士》が蘇るぜ!」

不死武士
ATK1200
DEF600

 戦士と言うよりは、むしろ三沢のデッキに似合っているカードが現れる。
先程の、《テイク・オーバー5》で落ちていたのだろう。

「更に、デモンズ・チェーンをコストに《マジック・プランター》を発動し、二枚ドロー!」

 竜骨鬼を捕らえていた悪魔の鎖を外し、代わりに二枚ドローする。
かなり有用であった、《デモンズ・チェーン》を犠牲にするほどまでに手札を補強したいのだろうか。

 だが、俺のそんな心配をよそに、五階堂はドローしたカードを見てクククと不敵な笑みを覗かせた。

「行くぞ! 俺は《不死武士》に装備魔法《グレート・ソード》を発動! 装備モンスターの攻撃力を600アップ!」

不死武士
ATK1200→1800

 不死武士に、不釣り合いなほどの豪華な剣が装備され、攻撃力が600ポイントアップする。
もちろん竜骨鬼の攻撃力には届かないが、グレート・ソードにとっては、攻撃力600ポイントアップはただのオマケ効果であり、真髄はまたもう一つの効果にある。

「グレート・ソードを装備したモンスターを使ってアドバンス召喚する時、モンスター二体ぶんにすることが出来る! 不死武士をリリースし、出でよ! 《ギルフォード・ザ・レジェンド》!」

ギルフォード・ザ・レジェンド
ATK2600
DEF2000

 グレート・ソードのもう一つの効果とは、今五階堂が言った通り、装備モンスターをダブルコストモンスターにすること。
そして、ダブルコストモンスターとなった不死武士をリリースして現れたのは、伝説となった稲妻の戦士。

「ギルフォード・ザ・レジェンドの効果を発動! このカードがアドバンス召喚に成功した時、墓地の装備魔法をフィールドの戦士族モンスターに装備出来る! 俺は墓地にある、《グレート・ソード》・《融合武器ムラサメブレード》・《神剣―フェニックスブレード》・《破邪の大剣―バオウ》・《メテオ・ストライク》の五枚の装備魔法を、全てギルフォード・ザ・レジェンドに装備する!」

ギルフォード・ザ・レジェンド
ATK2600→4800

 テイク・オーバー5で墓地に送ってあった剣型の装備魔法が合体し、優にギルフォード・ザ・レジェンドの身の丈を超える巨大な一振りの大剣になったものを、ギルフォード・ザ・レジェンドが持つ。
メテオ・ストライクも装備されていて貫通効果も完備しており、三沢のフィールドには守備表示の《カラス天狗》を攻撃することで、このデュエルは五階堂の勝利となる。
まあ、それも……

「これが俺の必殺のコンボ! バトル! ギルフォード・ザ・レジェンドで」

「リバースカード、オープン、《威嚇する咆哮》! 相手は攻撃宣言を行うことが出来ない!」

 ……攻撃出来ればの話だが。

三沢のトラップカードに攻撃を封じられ、伝説の騎士は大剣を持ったまま立ち尽くした。

「チッ、運が良い奴だ! これで俺はターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!」

 三沢のことを運が良いと言った五階堂は、気づいているだろうか。
あの《威嚇する咆哮》を伏せたのは、無敗将軍 フリードが召喚されたターンより前……つまり、運がどうとかではなく、三沢はただこの状況になるのを、読んでいたことを。

「俺は《竜骨鬼》と《カラス天狗》をリリースし……招来せよ、《赤鬼》!」

赤鬼
ATK2800
DEF2100

 三沢の妖怪デッキのエースカード、赤鬼。
だいたい墓地からの特殊召喚で、その高攻撃力で場を制圧することが多いが、もちろんリリースして現れた時の効果も十二分に強力……!

 加えて、五階堂は魔法・罠ゾーンを全て装備魔法カードで埋め尽くしているため、絶対に妨害はないのが分かる。
例外があるとすれば、俺のラッキーカード《エフェクト・ヴェーラー》であるが、《不死武士》を採用している五階堂のデッキにあるとは思えない。

「赤鬼の効果を発動! 手札を一枚捨て、《ギルフォード・ザ・レジェンド》を手札に戻す! 地獄の業火!」

「なんだと!?」

 赤鬼が口から出した地獄の業火が、大剣を貫通してギルフォード・ザ・レジェンドに当たり、そのまま手札に戻されてしまう。
そして主を失った大剣は、デュエル場に落ちて音を響かせながら砕け散った。

「利子を含めて、ダメージを返済させてもらう! 赤鬼でプレイヤーにダイレクトアタック! 鬼火!」

 地獄の業火とはまた違う炎が、五階堂を襲う。
テイク・オーバー5で《ネクロ・ガードナー》でも落ちなかったのか、炎はそのまま五階堂を直撃した。

「ぐあああっ!」

五階堂LP4000→1200

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「くそっ……馬鹿にするなよ! 俺のターン! ドロー!」

 切り札のギルフォード・ザ・レジェンドが突破されたとはいえ、未だに手札にはある。
まだまだ戦えるだろう。

「スタンバイフェイズ、墓地から《不死武士》を特殊召喚!」

不死武士
ATK1200
DEF600

「更に、《切り込み隊長》を守備表示で妥協召喚!」

切り込み隊長
ATK1200
DEF800

 またも墓地から蘇る、不死の名に相応しい不死武士と、三枚目の切り込み隊長が五階堂の場を整える。
低レベルのモンスターの展開も、戦士族の強みの一つだ。

「更に、切り込み隊長に装備魔法《ミスト・ボディ》を装備!」

 ミスト・ボディ……最近俺は使っていないが、装備したモンスターが戦闘破壊耐性を得られる、優秀な装備魔法だ。
そして、切り込み隊長に装備したことにより、『戦闘破壊されず、他のモンスターに攻撃出来ない』という、切り込みロックの亜種のような状態となった。

「これで次のターン、もう一度ギルフォード・ザ・レジェンドが出せるぜ! ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!」

 さて、《サイクロン》か《カラス天狗》一発で破れ、《九尾の狐》でサンドバックに出来るし、《火車》でデッキに戻されてしまうとはいえ、三沢の手札にそれはあるか。
無かったら、あれはあれで強固な壁だ……って、もしかしてあのロック、三沢にほとんど意味を成さないんじゃないか……?

「……よし。これで、勝利への方程式は完成した!」

「……フン! ならばやってみるんだな!」

 ああ、止めとけってそういうこと言うの……負けるから。

「言われなくてもそうさせてもらう。俺は《赤鬼》をリリースし、《砂塵の悪霊》をアドバンス召喚!」

砂塵の悪霊
ATK2200
DEF1800

 満を持してフィールドに現れたのは、砂塵を司るスピリットの妖怪。

 豊富な特殊召喚がメインのアンデット族において、特殊召喚が出来ないスピリットはイマイチアンチシナジーだが、東洋の神話つながりなのだろうか、三沢は数枚入れていた。
だが、アドバンス召喚の素材は素早く特殊召喚出来る妖怪たちがいて、いざ現れたスピリットの効果はどれも強大。
……かくいう俺も、何度となくスピリットに煮え湯を飲まされている。

 ……ああそれと。
さっき、俺は五階堂を『手札に切り札もあるし、まだまだやれる』と言ったが、訂正させてもらう。
……相手が悪い。

「砂塵の悪霊が召喚に成功した時、このカード以外のフィールドの表側表示のモンスターを、全て破壊する!」

「インチキ効果も……」

 五階堂は何か言いたそうだったが、砂塵の悪霊が大量に砂嵐を起こしているため、何を言っているのかがさっぱり分からない。

 そして、フィールドを包み込んでいた砂塵が止むと、五階堂の戦士たちは干からびて無残な姿を晒していた。

「……そ、そんな……馬鹿な……!」

「悪いが、結果は覆らない。砂塵の悪霊で、相手プレイヤーにダイレクトアタック!」

 砂塵の悪霊がまたも砂を操り、五階堂の周りを砂塵が包み込んだ。

「――――――!」

 ……悪い。
せっかくの最後のセリフなのに、何言ってんだかまるで聞こえない。

五階堂LP1200→0

 五階堂のライフが0になると同時にソリッドビジョンが消えるために、同様に砂塵も消える。
中心部からは、咳き込んでいる五階堂が無様……いや、無事な姿で発見された。

「相手が【装備ビート】ならば、遊矢以下の相手には負ける気がしないからな。……悪いが、勝たせてもらった」

 デュエル場にいた観客の拍手を背に、三沢はデュエル場から降りた。
そこで観客席にいた俺と目が合い、こちらに向かってくる。

 そこで、ふと。

「……なあ、明日香。これで三沢がタレントってことになるのか?」

「……そうじゃない?」

 二人とも同時に、あまり似合っていないタレントの三沢を想像し、笑いあった。
何なのか分からず、合流した三沢は首を傾げるのだった。 
 

 
後書き
まあ、テスト前最後の投稿ってことで。
 三沢VS五階堂でした。
原作通りに万丈目でも良かったのですけれど、何だか久々に三沢のデュエルが書きたくなりまして。
 三沢のデッキのスピリット……正直扱いが困るカード群のため、砂塵の悪霊以外の登場は怪しいかもしれませんね。
まあ、後の展開で。
 そして、五階堂……挑戦状と銘打っている為に、アニメ通りの謎プレイングではありません。
もしかすると、この二次で一番強化されたのはこいつかもしれません……代わりに、パワーカード頼りの馬鹿みたいな感じになってしまいましたが。
 デッキは、頑張れば現実でも通用するデッキなのですが……まあ、本文中にある通り、相手が悪かったのでしょう。
では、感想・アドバイス待ってます。  
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